※2019年7月:最新の情報をもとに更新
ユーザーがウェブブラウザに滞在している時間のうち、検索以外の行動に割く時間は9割を超えると言われています。つまりWebページの閲覧時間が大半を占めるということです。そして多くのページにはGoogle AdSenseをはじめとしたディスプレイ広告の広告枠が設置されていますよね。これらの広告を使ったマーケティングの攻略で新しいお客様の増加、ビジネスの成長が加速する可能性は大きくなります。
そういった背景環境もあってか、実際に弊社のクライアントワーク・セミナー質疑応答等の場で特に多くのご質問をいただくのがディスプレイ広告・ソーシャル広告の出稿・運用に関するもの(運用型広告における)です。すでにディスプレイ広告に果敢にチャレンジされ、あまりうまくいった感覚がない、という方はまず弊社の森野・菅原の記事をご参照ください。シンプルでわかりやすいはずです。
参考:Google ディスプレイネットワークで初心者が陥りやすい4つの罠
本記事ではより体系的に、新規施策としてディスプレイ広告で見込み顧客になりうるネットユーザーにアプローチする方法や考え方をまとめていきます。運用型広告マーケティングに関わる皆さんの参考になれば幸いです。
目次
ディスプレイ広告での拡大には、そもそもビジネスによって向き不向きがあることを理解する
ディスプレイ広告を出稿・拡大する前に、今一度ご自分の担当するビジネスが向いているかどうかを考えてみましょう。明らかに向いていないと思われるビジネスも少なからず存在します。「検索連動型広告はやりきってしまったからディスプレイ広告をやらなければならない」という姿勢を改め、検索連動型広告のキャンペーン構成、設定を見直すことが有意な成果の改善につながった例もあります。
比較的向いている・チャレンジを検討すべきビジネスと市場の特徴例
- Facebook広告のような、デモグラフィック(以下、デモグラ)情報を保有するメディアと相性がいいビジネス
- 対象ユーザー人口が比較的多い
- 衝動買いを誘発できる
- 顧客の検討期間が比較的長く、様々な情報を見て比較検討を実施する
- 許容CPAが高いなどの理由から検索連動型広告のクリック単価が高く、ディスプレイ広告ではより安いクリック単価でユーザーを集めることができる
検索連動型広告のクリック単価がディスプレイ広告に比べ高く、対象ユーザー人口が多いビジネスの広告活動においては様々な施策を行う余地がありそうです。予想される広告予算規模から考慮しても新規施策の予算を他のビジネスよりは用意しやすいでしょう。
比較的向いていないビジネスと市場の特徴例
- 対象ユーザーのデモグラ・興味関心があまりビジネスの需要と結びつかない、統一性がない(Facebook広告が不向きな感じがしたら、まさにそれです)
- 対象ユーザー人口が比較的少ない(いわゆる、ニッチ商材)
- 指名買い中心
- 顧客のニーズ緊急性が高く、現在のニーズをとらえる必要がある。リマーケティングさえも効果が出にくい
- 許容CPAが低く、検索連動型広告のメインキーワードのクリック単価と、ディスプレイ広告のクリック単価が同程度か、むしろディスプレイ広告の方が高い
- 媒体ガイドライン的に掲載が不可能又は難しいビジネスである
ターゲティングの精度やクリック単価相場を考えると厳しいだろう、という条件を抽象化してみました。これらに当てはまるビジネスはより検索マーケティングの価値が高く、いかに自然検索・検索連動型広告で上位を獲れるか、上位掲載を耐えられるかどうか。という議論にもなりがちです。まさにそれらが成功法則だったりします。
※もちろんビジネスによって前者後者関係なくチャレンジすべき状況はありますし、多少高低の基準は性質上実数を提示できない点ご了承ください。
※衝動買いと指名買いについての詳細はこちら
媒体ごとの掲載ポリシーガイドラインにも注意が必要
ビジネスのジャンルによってはそもそも広告の出稿が不可能なもの、使用できる機能が制限されるものが定められています。アルコール等成人向け、年齢制限があるビジネスや、美容系、医療系、金融系などセンシティブな商材に関しては必ず確認しましょう。
媒体ポリシーの例
参考:Yahoo!JAPAN マーケティングソリューション 広告掲載基準
ソーシャル広告が新規獲得流入元の8割を占めるようなポートフォリオのビジネスもある
前段にて少し触れましたが、精密かつ、正確なデモグラ情報が実データとして登録されているFacebookの広告価値は高く、独特です。求める成果に対する評価もここ数年で高まっている印象を受けます。あるたしからしい情報筋によると、日本ほどFacebook広告平均クリック単価の高騰カーブが激しい国はないそうです。それだけ出稿が加熱しているということでしょう。
※ユーザー数の増加が一段落し、広告主が急激に増加している日本ではならではの現象です。
デモグラが重要なターゲティングトリガーとなりうる一例として、人材・転職系の業界の広告出稿が活況なのは理解しやすいでしょう。
また、普段の発言・フォローしているアカウント情報などを元にターゲティングできるTwitter広告もまた独特で、他のディスプレイ広告・ソーシャル広告ではターゲティングできない層に広告を届けることができます。特に学生をメインターゲットにしたビジネス・アプリプロモーションがTwitter広告で目立って展開されている印象を受けます。
Google 広告経由のコンバージョン獲得件数よりも、Facebook広告・Twitter広告のそれが多くなるビジネスももう珍しくないのかもしれません。ディスプレイ広告での新規施策を考える際、なぜソーシャル広告は検討しないのか?実は向いているのではないか?と自問自答してみましょう。
「人」をターゲティングする広告・「広告枠」をターゲティングする広告に分類し、各媒体や機能の得意な領域を理解する
すべての機能、媒体を隅から隅まで細かく覚えて出稿の検討をするのはあまりオススメできません。まずはターゲティングが「人」か「広告枠」どちらに分類されるか、どれほど意図的に絞り込んだターゲティングができるのかを理解すれば十分でしょう。筆者も最初はそう分類し理解していきました。
全体像を理解する
ディスプレイ広告で設定可能なターゲティングの機能を、Googleディスプレイネットワーク(以下GDN)を中心に並べてみました。
※GDNを基準に、似たような機能は集約しまとめて書いています。
下記に参考URLを多く記載しますので、それぞれの機能の仕組みと設定方法の詳細や・使いこなすための考え方はリンク先を辿って勉強してみてください。
「人」をターゲティングする特徴的な広告、機能
ユーザーの興味関心、Web上の行動履歴を元に広告を配信します。インタレスト系やリマーケティング系・ソーシャル広告がこちらに分類できます。
少々乱暴ですが人をターゲティングするもので特徴がある機能を書いてみると…
- 年齢、性別、地域、学歴、家族、ライフイベントなど能動的に登録され精緻なデモグラターゲティングと類似オーディエンス配信:Facebook広告が得意
- Twitter検索やタイムラインのキーワード、フォロワーでのターゲティング:Twitter広告が得意
- 検索エンジンでの検索キーワードを元にターゲティング:YDNが得意
- GmailやGoogleアナリティクスのデータを使ったターゲティング:GDNが得意
上記のように理解しておけば十分です。
弊社の参考記事を下記に紹介します。
リマーケティング
最も有名と思われるディスプレイ広告機能の一つで、簡単に言えばcookieやユーザーIDなどをトリガーとしてサイト訪問者を追跡する広告です。まだリマーケティング・リターゲティングも出稿経験がない、という方は下記の記事を参考にチャレンジしてみてくださいね。現状のリマーケティング活用見直しにもいい記事です。
参考:リマーケティング、サイトリターゲティングの仕組みと設定、考え方までのスベテ
サーチターゲティング
YDN限定のメニュー。ユーザーの検索履歴をトリガーに設定できる機能です。3日以内に、「青汁」と2回以上Yahoo! Japanで検索したユーザーにのみディスプレイ広告を出すといったことができます。
参考:YDN、サーチターゲティングの仕組みと設定、考え方までのスベテ
類似ユーザー
特定のユーザーリストをもとに、類似していると想定されるユーザーに広告を出稿できる機能です。
参考:Facebook広告:類似オーディエンスの徹底解説、導入法
ユーザーの興味 / 関心に基づいたターゲティング(オーディエンス)
ユーザーのサイト閲覧履歴などを根拠に興味関心をターゲティングできる機能です。詳細なユーザー属性やユーザー積極的に調べている情報など、多くの選択肢をもってオーディエンスを絞り込んで選択することができます。
参考:Google ディプレイネットワークにて、購買意向の強いユーザー層を自由に設定できる「カスタム インテント オーディエンス」を追加
参考:Google 広告でより詳細なユーザー属性によるターゲティングが利用可能に
参考:Google 広告のディスプレイキャンペーンに消費者の行動パターンに基づくターゲティングが追加
ちなみに、Google 広告ではオーディエンス ターゲティングのほとんどは検索広告向けにも利用が可能です。
参考:Googleの検索広告で利用できるオーディエンスターゲティングの種類と活用方法|アナグラム株式会社
Facebook広告・Instagram広告・Twitter広告(広義で人をターゲティングする広告とした)
参考:【初心者向け】主なFacebook広告キャンペーン目的の基本仕様
参考:成功するFacebook広告クリエイティブの作り方 9の秘訣
参考:【わかりやすい】Twitter広告の種類やメリット、仕組み
参考:【運用者向け】Facebook・Instagram広告アカウントで見直すべき5つのこと
「広告枠」をターゲティングする特徴的な広告、機能
広告枠のあるWebサイトのURLを直接指定したり、Webページに含まれるコンテンツキーワード・トピックを指定する配信がここに分類できます。
少々乱暴ですが広告枠をターゲティングするもので特徴がある機能を分類すると…
・Yahoo!関連サービスの広告枠、Yahoo!メール・Yahoo! Japan TOPページへの出稿:YDA(旧:YDN)
・特定のWebサイト、特定のコンテンツを含むページへの出稿:GDN
弊社の参考記事を下記に紹介します。
プレースメントターゲット
参考:プレースメントターゲットの仕組みと設定、考え方までのスベテ
参考:YDNのプレイスメントターゲティングの仕組みと設定、考え方までのスベテ
コンテンツターゲット(キーワード・トピックターゲット)
参考:コンテンツターゲットの仕組みと設定、考え方までのスベテ
参考:プレースメントとキーワードの組み合わせ ※外部リンク
全体図再掲
※再掲:GDNを基準に、似たような機能は集約しまとめて書いています。すべての広告枠や機能をカバーできているわけではないのでご了承ください。
おすすめの取り組むべき優先順位は?
ダイレクトレスポンスを目的とするのであれば、多くのアカウントで以下の条件を満たす機能から着手することをオススメします。
- 意図的に絞り込んだターゲティングができ、コントロールが効きやすい
- コンバージョン獲得の期待値が高い
スモールスタートとさらなるディスプレイ広告施策の拡大手引き
自社広告アカウントのデータを最大限活かして成功確率の高いスモールスタート
例えば既に配信に取り組んでいる機能の配信先プレースメント実績を見て、プレースメントターゲットから取り組む方法はハードルが低くて多くの広告主さんにオススメできます。具体的には、リマーケティングの配信先でコンバージョンが発生したプレースメントURLのデータからヒントを得る方法があります。
過去1年、全期間でもいいのでデータ期間を長めにとってみてコンバージョンが発生したドメイン・URLのデータをまず集めてみましょう。コンバージョン数上位から順に掲載されたWebサイトを見てみます。「このサイトに広告が出た場合、自社や商品について知らない(リマーケティングの対象ではない)ユーザーでも興味を持ってくれるかもしれない」と思えるサイトが見つかるはずです。まずはそのサイトに、リマーケティング対象ユーザーを除外しプレースメントターゲットで広告を出稿してみるのはいかがでしょう。
参考:手動プレースメント ※外部リンク
参考:手動プレースメントの追加、編集、削除 ※外部リンク
より掲載先を広げてみたくなったら、こちらも参考にどうぞ。
リスティング広告運用者がプレースメントに指定したくなるメディアとその探し方
※注意※
原則として「リマーケティングの配信先でコンバージョンが上がった」という理由のみでその配信先にプレースメントターゲットを指すのは悪手です。リマーケティングは訪問歴をベースに”人”に向けて再訪を促す配信手法ですから、配信先、つまり”面"とは関係性が非常に薄いからです。ここでのトライとしては、あくまで「スモールスタート・さらなるディスプレイ広告施策の拡大手引き」の際に利用する、いわばテスト的な配信手法として紹介しています。仮にトライする場合にはそのキャンペーンの上限予算を1万円などとしてテストするような手法がお薦めです。
出稿を拡大する前には「誰」の「どの状態」に「何を付加価値として」広告で提案するのかを熟考する
設定予定の配信先やターゲティングから、どれだけ強くターゲットのペルソナを想起、帰結できるか?を考えて施策を広げていきます。初期は、よりCVRが高いと期待できる順に施策着手の優先順位とすると成功確率は高いでしょう。
プレースメントやユーザーの興味関心デモグラなど配信ターゲティングごとにセットで広告訴求(テキストベースでの広告文とリンク先URL)も考えるべきです。「誰」の「どの状態」に「何を付加価値として」という部分がより明確になります。
ターゲティング精度を高める、配信先プレースメント精査
ディスプレイ広告の成功にはプレースメントレポートを活用した「効果の期待が薄い配信先の早期除外対処」が不可欠です。安定して成果を出すようになってからも、定期的に過去14日、過去30日、過去90日、過去1年といった複数の期間粒度でプレースメントレポートを分析し、CPAが高い配信先の入札調整や除外対処に役立てていきましょう。
意図しない露出、広告費の無駄遣いを防ぐため、GDN開始直前に気をつけたい5つのポイント
掲載先の絞り込み
オーディエンス ターゲティングによる広告配信には2パターンあります。
- ターゲット設定:キャンペーンの広告の掲載先を特定のオーディエンスに絞り込んで配信できる。
- モニタリング:キャンペーンの広告の掲載先を特定のオーディエンスに絞り込むことなく、設定したオーディエンスごとの数値確認や入札単価の調整が可能。
デフォルトで「モニタリング」にチェックされていることがあり注意が必要です。入札単価のみ適用され、他のターゲティング方法も設定されていた場合は意図したターゲティングが絞り込まれずに広い範囲へ広告出稿を許してしまい無駄な予算消化につながってしまいます。
特に「モニタリング」に設定したい意図がない場合は「ターゲット設定」を選択すると覚えておきましょう。
ターゲティングの拡張
ディスプレイ広告キャンペーンの場合、デフォルトで「ターゲティングの拡張」がオンになっています。最初は意図的に設定したターゲティングのみで、拡張せずに出稿したほうが良いでしょう。ターゲットの拡張をオフに設定してスタートされることをオススメします。
デバイス
たとえば、BtoBのビジネスでスマートフォンへの出稿を控えたい、様子を見て徐々に露出を広げていきたい場合には入札単価調整費も設定しておきます。広告グループ、キャンペーンのレベルで調整が可能です。
日別のキャンペーン予算
初めて設定する機能は上記に挙げた3点も含め設定ミスが起こりがちです。特にチャレンジの意味合いが強い新規施策であればキャンペーンを新たに立ち上げて別予算で管理しましょう。万が一設定に誤りがあった場合や目標のKPIに到達しない場合に少ないダメージでコストの消化、損失をストップできます。新規施策キャンペーンは1日の上限予算を少額に設定してオンにし、安定的な稼働を確認してから徐々に予算・入札単価を上げるなどして広告露出を増やしていくべきです。
予算の箱分けと撤退基準を必ず決めておく
ディスプレイ広告、ソーシャル広告関係なく新しい施策をやる際には下記も明確に決めましょう。
- 既存施策と同じ予算内でやるのか?分けるのか?
- 既存施策と同じKPI内でやるのか?別KPIを設けるのか?
- 新規施策の出稿を停止しなければならない撤退基準
企業にもよりますが撤退基準を決めた上での別予算と別KPI管理したほうがチャレンジは活発になりやすいです。
広告が多彩化し、ターゲティング精度も上がった今、ディスプレイ広告施策を考えるときボキャブラリー・ペルソナ感覚が最大の武器になる
職人臭い話になってきますが1分だけお付き合いください。
ペルソナという単語を前章で出しました。社内でよく言っているのが「ボキャブラリーが豊富な人ほどディスプレイ広告の成功確率は高い」ということです。ここでいうボキャブラリー豊富というのは、良い意味でミーハー・物知りと言い換えることもできそうです。世の中のいろんなことを知っている、体験したことがある、特定分野に詳しい人と交友関係がある。そういった感覚です。十人十色、誰しもが得意領域を1つはもっているものです。弊社ではクルーのボキャブラリーも加味してアサインする案件を決めることもあります。
広告を届けたいターゲットとなるペルソナ像を豊かにし、いくつも配信先を想像できるかどうか。そのペルソナにもまた普段触れているボキャブラリーがあるはずで、その理解度でターゲティングの質が変わってきます。特にプレースメントターゲット、キーワードターゲット、サーチターゲティングといった意図的にターゲティングを絞り込める配信の質に差が出てくるのは明白です。
ペルソナ設計なきコンテンツや広告は広告を迷惑と感じるユーザーを増やしてしまい、オプトアウトされる対象となってしまったり、成果に結びつかなかったり。結果的に広告主に返ってくるのです。
まとめ
引き続き、アナグラムブログでは運用型広告のノウハウ・ヒントを記事にまとめていきます。個別の機能の記事も増えてきたため、今回はそれらをまとめ、一気に復習できるハブとなる記事でした。
インターネットユーザーには嫌がられることも少なくないディスプレイ広告ですが、節度を持って届けるべきユーザーに商品・サービスを知ってもらうきっかけとしてチャレンジを続けていきたいですね。我々も粛々と、クライアントさまのビジネスを、発展をお手伝いできるよう邁進します。