※2019年12月24日:最新の情報をもとに更新
リマーケティングあるいはリターゲティングとは、広告主のウェブサイトなどを利用したことのあるユーザーに再アプローチするための広告です。
リスティング広告においては、Google 広告では2010年4月からリマーケティング、Yahoo!広告のディスプレイ広告(旧:Yahoo!ディスプレイアドネットワーク)では2013年4月からサイトリターゲティングという名称で提供されています。名称は違えど配信の仕組みはおおよそ同じです。
今回はリマーケティングやサイトリターゲティングの仕組みと考え方をご紹介していきます。
※Google 広告は「リマーケティング」、Yahoo!ディスプレイ広告は「サイトリターゲティング」が正式名称ですが、以下表記は『リマーケティング』で統一します。
目次
リマーケティングを使用するメリット
リマーケティングを利用することで、広告主が所有しているウェブサイトやアプリ、YouTube動画にアクセスしたユーザーの行動履歴や、顧客の連絡先情報を基にユーザーをリスト化し、そのリスト(以下、ユーザーリスト)をターゲティングした広告配信が可能です。リマーケティングを利用することで次のようなメリットを得られます。
- 商品を購入せずにサイトを離脱したユーザーへ別のオファーを提示できる
- 商品の比較検討期間にも定期的にアプローチできる
- 既存顧客にセールや新商品の発売などのイベントの案内ができる
リマーケティング配信の種類
リマーケティングを使った配信は、全7種類あります。Google 広告では使えてもYahoo!広告(旧:Yahoo!プロモーション広告)では使えない機能もあるため、次の表で確認しておきましょう。
リマーケティング配信の種類 | Google 広告 | Yahoo!広告 |
標準のリマーケティング | ◯ | ◯ |
アプリのリマーケティング | ◯ | ◯ |
動画リマーケティング | ◯ | ✕ |
Google アナリティクスのリマーケティング | ◯ | ✕ |
顧客の連絡先情報にもとづくリマーケティング | ◯ | ✕ |
検索広告向けリマーケティング リスト(RLSA) | ◯ | ◯ |
動的リマーケティング | ◯ | ◯ |
各配信の特徴は、次より解説していきます。
標準のリマーケティング
広告主のウェブサイトに訪問したことがあるユーザーが、ディスプレイ広告の配信ネットワーク内のサイトやアプリを閲覧しているときに広告を配信できます。
ウェブサイトにリマーケティング用のタグを設置し、そのタグを読み込んだユーザーをリスト化して配信対象に設定することで利用可能です。
サイトの閲覧履歴によってセグメントを容易に作成できるのが大きなメリットです。たとえば、「商品をカートに入れたけれど離脱したユーザー」など購買意向が比較的高いユーザーへの広告配信は高い成果が得られることが多くあります。
アプリのリマーケティング
広告主が所有しているAndroidやiOSアプリ内の行動履歴を基に作成したユーザーリストを使用して広告を表示する機能です。
たとえば、ゲームアプリで一定期間アプリを起動していないユーザーへアプリの起動を促すなど、休眠顧客の呼び起こしに活用できます。なおこの機能は、各広告媒体と連携可能なSDK(※)をアプリに実装し、Google 広告またはYahoo!広告に連携することで、アプリのインストールや起動回数、購入などのアクションごとにリスト化したユーザーに広告を配信できます。
※SDK(Software Development Kit)とは、ソフトウェアを開発するために必要なプログラムや技術文書などをひとまとめにしたものです。SDKをアプリに実装することで、アプリ内の行動履歴が測定可能になります。また、各広告媒体と連携可能なSDKを実装することで、広告配信に必要な設定もできるようになります。
動画リマーケティング
広告主所有のYouTube チャンネルや動画を過去に視聴したことのあるユーザーに広告を表示する機能で、対象のYouTube アカウントとGoogle 広告を連携することで利用できます。
Google アナリティクスのリマーケティング
Google アナリティクスの計測データを基にGoogle 広告のユーザーリストを作成できる機能です。Google 広告とGoogle アナリティクスとを連携することで、「滞在時間」や「セッション数」などのGoogle 広告のユーザリスト設定画面(オーディエンス マネージャー)では指定できないセグメントを基にユーザーリストを作成できます。
顧客の連絡先情報にもとづくリマーケティング
カスタマーマッチと呼ばれ、広告主のもつ顧客の連絡先情報(メールアドレスや電話番号、住所など)を暗号化された状態でGoogleと共有することで、顧客情報に基づいたユーザーリストを作成できる機能です。既存顧客への再アプローチはもちろん、そのユーザーリストを基に類似ユーザー リストを作成することもできます。
検索広告向けリマーケティング リスト(RLSA)
検索広告用キャンペーンまたは広告グループにユーザーリストを紐付ける機能です。たとえば、サイト訪問済みのユーザーか否かで、キーワードの入札に強弱をつけたり、広告文を出し分けるといった利用方法があります。
参考:「どのキーワードに出す?」から「誰に出す?」で大きく成果が変わる、検索広告向けリマーケティング(RLSA)の解説と設定方法
動的リマーケティング
動的リマーケティングとは、広告主のウェブサイトやアプリの閲覧状況などのユーザー行動に合わせて、最適な広告クリエイティブを自動的に生成して表示する機能です。ユーザーごとに実際に閲覧した商品やサービスを広告のクリエイティブとして配信できます。たとえば、人材や不動産賃貸など、人の好みやこだわりが強く作用するサービスで効果的です。
参考:動的リマーケティングを利用してサイト訪問者ごとにカスタマイズされた広告を表示する - Google 広告 ヘルプ
リマーケティングの配信戦術
リマーケティングはただ設定をして広告を配信すればいいだけではありません。どのようにユーザーリストを設計し、どのように運用コントロールを行うかというしっかりした戦術が必要不可欠です。
訪問者の購入モチベーションを加味したり、広告主のウェブサイトが複数ドメインある場合に活用したり、ロイヤリティの高い訪問者へのアプローチなどやれることはさまざまです。次より、売り上げを伸ばすための参考となる配信戦術の一例をご紹介いたします。
追跡期間に応じた段階的な配信を検討
リマーケティングはユーザーのモチベーション毎に適切に配信の強弱を行うことで、より成果を上げることが可能になります。
Google アナリティクスでコンバージョン>マルチチャネル>所要期間(Google アナリティクスでeコマースの設定をしている場合は、コンバージョン>eコマース>購入までの間隔)を見て追跡期間ごとにリストを分け、それぞれの段階に応じた入札を行うというやり方です。
なお、細分化しすぎると十分な広告配信ができなかったり、データが細切れとなり最適化や分析が行いづらかったりとデメリットも出てきます。どの程度までリストを分けるかはリストのボリュームと相談して検討をオススメします。
またスマート自動入札を用いる際にも、ユーザーがそのリストに登録されてからの経過時間も考慮されるため、必要以上に期間を区切るのは避けるのがよいでしょう。
参考:スマート自動入札について - Google 広告 ヘルプ
異なるドメインへ訪問するユーザーへの配信
リマーケティングは異なるドメインに訪問したユーザーへも広告を配信することが可能です。
広告主が保持しているメディアサイト(例:http://A.jp/)などにリマーケティング用のタグを貼り付け、そのメディアサイトに訪問したユーザーに広告主のサービスサイト(例:http://B.jp/)の広告を配信する、などといったことが出来ます。
購入者への配信
プロダクト提供当初のリマーケティングは、原則的に未購入者への初回購入を促すための代表的な施策の1つでした。しかし、今ではこのリマーケティングを顧客に向けて配信することで多くのアプローチを可能にしています。たとえば、過去に商品を購入したことのあるユーザーに広告を配信して商品の再購入を促したり、Gmail 広告のリマーケティング配信でメルマガの役割を補完することもできます。
質の高いユーザーリストの作り方
リマーケティングの質を左右するのは「ユーザーリスト」に蓄積されたユーザーの質であることは紛れも無い事実です。極端ですが、1,000人蓄積されたユーザーリストがあるとして、コンバージョンに近い100人が含まれたユーザーリストと、コンバージョンに近いユーザーが10人しか含まれていないユーザーリストであれば断然前者ですよね。
では、質の高いユーザーを作るにはどうしたらよろしいでしょうか。
たとえば、トップページのみ訪問し、商品やサービスの詳細を見ずに離脱した人は購入にながりにくいと考えられます。また、マイページのログイン画面に到達したユーザーは、リターゲティング広告を配信しなくても継続購入する可能性があるため、新規ユーザーの獲得施策などの既存ユーザーを対象外としたい場合は除外を検討してもよいでしょう。このほか、年齢や性別、地域なども同様に除外を検討する材料となります。
このようにターゲット以外のユーザーの除外ユーザーリストを作成して除外することで、より質の高いユーザーリストを作成できます。
ユーザーリスト作成時の注意点
ユーザーリストの作り方の詳細は省略いたしますが、どのURLへ訪問した人をどのようにまとめたいか?というのが基本的な設定方法の仕組みとなります。しかし、設定方法によっては意図しないユーザーリストが生成されかねませんので、ユーザーリスト作成時は次の点に注意しましょう。
URL指定時に「http://」と「https://」は含めない
「http://exsample-site.com/items/」と指定してしまうと、「https://exsample-site.com/items/」を訪問したユーザーは含まれなくなってしまいますので、意図的に「http://」と「https://」を分けたい場合でない限りは、これらをURL指定時には含めないようにしましょう。
過去の訪問者を含めるか含めないか
Google 広告
Yahoo!広告
Google 広告では「過去30日間にルールに一致したユーザーをリストに事前入力する」、Yahoo!広告では過去の訪問者の設定で「設定する」にチェックを入れると、指定したルールに応じて蓄積された訪問者を含めた状態でユーザーリストを作成できます。新規にリマーケティングをはじめる場合、リマーケティング用のタグを設置してから広告配信の開始までの期間のデータが蓄積されているわけですから、新たなデータ蓄積を待たずに広告配信を行える状態になれる場合が多いのでチェックを入れておきましょう。
対してなんらかの影響によってユーザーリストの質が悪くなった場合など、これらの原因を取り除いた上で新たに同条件でリフレッシュしたユーザーリストを作成したい場合などはGoogle 広告では「ユーザーを含まない状態で開始する」、Yahoo!広告では過去の訪問者の設定で「設定しない」にチェックを入れてユーザーリスト作成後にユーザー蓄積を行います。
動的リマーケティング固有の注意点
動的リマーケティングの効果を高める方法は従来のリマーケティングとは異なる部分があり、次の点において注意が必要です。
- ユーザーリストはページの役割ごとに作成する
- 表示されるクリエイティブはデータフィードに依存する
それぞれ説明していきます。
ユーザーリストはページの役割ごとに作成する
動的リマーケティング実施の際にはページの種類ごとにカスタムパラメータを付与でき、Google 広告はこのカスタムパラメータによってページの重要度を判断しています。
とくにこのカスタムパラメータの中でも「xxx_pagetype(xxxはビジネスタイプによって異なる)」は、そのページの役割がどういったものか判断する要素となっていますので、必ずすべてのページに設定してページタイプごとにユーザーリストを作成しましょう。
カスタムパラメータの内容に応じたユーザーリストで作成する方法ですが、従来のユーザーリストを作成する過程で、ルールを「URL」ではなく「ecomm_pagetypeといったカスタムパラメータ」を指定して、「searchresults」などといったリスト化したい値を指定します。
表示されるクリエイティブはデータフィードに依存する
動的リマーケティングはデータフィードを元にして動的にクリエイティブが生成されます。
タイトル表記をどうするか、商品画像をどうするかで成果が変わってきますので、色々変更するなどチャレンジしてみましょう。
参考:データフィードを使った商品リスト広告、動的リマーケティングの成果を上げるために行いたい3つの習慣
まとめ
リマーケティングはサイト訪問者へ再度アプローチするための広告というだけではなく、ユーザーリストの質、訪問者のモチベーション、訪問者の意向と商品サービスのマッチングなど、実はとても奥が深いプロダクトでもあることは間違いありません。
しかしながらユーザーリストを細かく分けすぎると、誰に何を配信しているかがわからない、そもそも配信に必要なユーザー数がユーザーリストの分散によって確保できないなどの弊害が発生します。度がすぎると追跡期間が長くていつも表示されるこの広告ウザい、サービスを利用しているのにいつも会員登録を迫られてウザいと言った事態も発生しかねません。
追跡型広告は悪!みたいに過度な風潮とならないよう、仕組みとルール、そして節度を守ってリマーケティングは配信したいですね。