広告運用者のみなさま、2023年もおつかれさまでした。今年も運用型広告周りを中心にさまざまな変化があり、飽きもせず広告運用に取り組めたかと思います。
今年あった主要なアップデートをピックアップしてみました。ぜひ年末年始の振り返りにご参考ください。
目次
Google広告のおもなアップデート
今年はとくに新しい機能の登場とともに、これまであった機能の断捨離が行われた1年ではないでしょうか。なぜその機能が廃止されたのか、新しい機能はどんな目的でリリースされているのか、その背景を含めてアップデートをチェックすればプラットフォーム側の方向性や考え方の一端が透けて見えてくると思います。
アトリビューションモデルの廃止
ラストクリックの効果測定によりそれ以外で接した広告の貢献度が考慮されず、縮小最適化に陥ってしまうという課題に対し、広告の貢献度をさまざまな視点で評価することを目的として用いられたアトリビューション。
ユーザーの行動パターンはますます複雑になり、柔軟に評価するのがこれらのモデルだけでは難しくなっていました。
その課題への次なる対策として用いられたのが「データドリブンアトリビューション(DDA)」というモデルです。2021年10月からはGoogle広告のアトリビューションモデルのデフォルトとなっており、利用の普及に伴いラストクリックモデルを残し、その他のモデルは2023年9月にその役目を終えることとなりました。
裏を返せば、その広告がどの時点でユーザーの行動に作用したかを定量的に測る方法は限られるため、広告運用側でユーザーにどのようなアクションをとって欲しいのかを明確にする必要性は高まったとも言えるのではないでしょうか。
P-MAXの機能がさらに拡充
2021年にベータ版がローンチされ、2021年11月から全ての広告主が利用可能となったP-MAXキャンペーン。複雑な設定や調整なしで、1つのキャンペーンからGoogle 広告の全ての広告枠に広告を配信できる一方で、すべての広告主の要望を満たすのが難しいケースも少なくなく、2023年にも継続的に次のようなさまざまな機能が実装されています。
- テスト機能
- アカウント単位の除外キーワード
- ブランド除外
- ページフィードが利用可能に
- 旅行目標キャンペーンが追加
- 動的検索広告とディスプレイキャンペーンからアップグレードが可能に
- ルールによるURL(ランディングページ)のコントロールが可能に
- 店舗集客向けの入札戦略・レポート機能
- 「検索テーマ」機能(ベータ)がリリース
- 生成AIクリエイティブ機能(ベータ・米国のみ)がリリース
リリースして早々に試したはいいものの、コントロール性の低さなどを理由にすぐに止めてしまったという方も少なくないでしょう。リリース当初からはできることが大幅に増えていますので、ぜひあらためてチェックしてみるのをおすすめします。(ただし、利用することが目的にならないようご注意を)
デマンドジェネレーションキャンペーンが正式リリース
2023年10月にはデマンドジェネレーションキャンペーンが正式にすべての広告主へ提供が開始されました。
3rd Party クッキーの制限に伴い、1st Party データが利用できるGoogleが提供するGmailやYouTube、Discoverといったサービスへの広告配信が可能なファインド広告に効果を感じていた広告主も少なくないでしょう。
デマンドジェネレーションキャンペーンは、ファインド広告のアップグレード版として、トラフィックを伸ばしている縦型動画のYouTubeショートなどを配信先に加え、動画クリエイティブへの対応や類似セグメントへの配信などが加えられています。
すでに手動でのアップグレードが可能となっていますが、2024年1月から3月にかけてすべてのファインド広告は自動的にアップグレードされていきます。これから対応という方も違いをチェックしておくのがおすすめです。
生成AIによるアセット自動作成機能の提供
2023年のGoogle広告を語る上で生成AIは避けて通れませんよね。すでに日本語においても生成AIを用いたアセットの自動作成機能の提供が開始されています。
参考:新しいツールで検索広告のパワーを引き出す - Google 広告 ヘルプ
設定しているキーワードや広告アセットランディングページなどの情報に基づいてアセットが自動的に作成されます。
以下は3年前、自動入札に関して広告運用者が自動化とどう付き合うかというテーマで書かれたコラムですが、クリエイティブ作成の自動化についても同様なことが言えるのではないでしょうか。
“そもそも自動入札を「人間 vs 機械」の目線で語ること自体に違和感があります。敵か味方かを決めるなら、断然味方なのです。日頃の運用に出番を与えるべき味方であるかどうかは「ケース・バイ・ケース」でしっかり吟味することが大事です。”
これ以外にもGA4の提供に伴いユニバーサルアナリティクス(UA)が終了、Googleオプティマイズのサポートも終了など提供が終了となったサービスもあります。
また、Google 検索では生成AIによる新しい検索体験であるSGE (Search Generative Experience)や3rd Party クッキーのサポートの廃止を目前に控え、これまで以上に変化が見込まれます。2024年初頭には1st Party データを接続できる新しい効果測定ツールである「Google広告データマネージャー(Google Ads Data Manager)」の提供も発表されています。
参考:Simplifying the management of your first-party data
後手に回らず手を打っていけるよう、引き続き情報収集を怠らずにいることが大切だと考えています。
Yahoo!広告のおもなアップデート
Yahoo!広告では着実に機能の実装が行われるなか、なんといっても2023年10月のLINEヤフー株式会社設立のインパクトが大きかったのではないでしょうか。
LINEとの合併
LINEとの合併前からYahoo!広告とLINE広告での相互配信の取り組みが進められていましたが、LINEヤフー株式会社となったことでより一層、広告プラットフォームとしての環境変化が起こっていくのではないでしょうか。
- LINEとヤフーID連携
- Yahoo!広告、LINE広告の広告掲載基準(審査ガイドライン)の統合
- LINE側への配信拡大
2つの広告プラットフォームがどのように変化していくかは今後も注目です。
YDAの機能アップグレード
今年はとくにYDA(Yahoo!ディスプレイ広告)での新機能の実装や仕様の変更が多かったですよね。おもに以下のようなアップデートがありました。
- 「オーディエンスリスト(条件)」提供が終了へ、新形式への移行
- サーチキーワードターゲティングの移行と提供終了
- 動画視聴経由のコンバージョンを広告配信などで活用へ
- 推定コンバージョンの導入
- アドパーソナライズセンターの公開
- 拡張クリック単価をリリース
- コンバージョンのインポート機能をリリース
- コンテンツキーワードターゲティング対象掲載面の拡大
- Yahoo!広告 スクリプトの提供開始(検索広告でも)
オーディエンスリストの新システムへの移行も長い期間をかけて着実に進行され、コンバージョン計測においても、より多くの情報を加味するように変更がなされています。
多くの変更や機能追加がされた背景には「技術負債の返済」という、大きな対応があったからではないかと思っています。
参考:10年以上の技術負債を返済してわかったこと 〜 ヤフーのディスプレイ広告におけるレスポンス生成刷新事例 - Yahoo! JAPAN Tech Blog
つい当たり前のように新しい機能が実装されるのを目にしていますが、その裏にはサービスを作っている方々のたゆまぬ努力があることを再認識できました。いつもありがとうございます!
Yahoo!タグマネージャー、2024年6月にサービス提供終了へ
Yahoo!が提供するタグマネジメントツール「Yahoo!タグマネージャー」の2024年6月30日でのサービス終了が発表されました。
運用コストと利用者数の兼ね合いで、今回の判断に至ったのかと思いますが、新しいことを始めるには、何かをやめるという判断も大切になりますよね。
「今は使っていないが、以前Yahoo!タグマネージャーを利用していた」という方も、サイトにユニバーサルタグが残ったままだと表示速度に影響する可能性があるとのことで、注意が必要ですので、いま一度確認しておくのをおすすめします。
検索連動型ショッピング広告(SSA)の提供へ
年末のリリースに驚いた方も多かったのではないでしょうか?Yahoo!広告にてショッピング広告が提供開始となります。
現状では正規代理店など、売掛取引のアカウントでの利用に限られたり、「Yahoo! JAPAN商品情報掲載」と呼ばれる成果報酬型への掲載も必須であったりと、やや取り組める広告主が限られる印象ですが、どのような効果が得られるかは注目ですね。
SNS広告に関連するニュース
各種SNSでは広告単体での機能よりも、サービス自体に関する変化が多くありました。とくに気になったものをいくつか紹介していきます。
X広告(旧:Twitter広告)
Twitterというフレーズがなくなることを誰が想像できていたでしょうか。この急なリブランディングに驚いた方も多いのではないでしょうか。有料プランの導入やリンクの見出し非表示(復活の予告あり)
参考:ツイッターが「X」に名称変更、青い鳥のロゴも廃止に - BBCニュース
しかしながら足元では、広告関連のリリースもあり、私も引き続きXを使い続けています。今後もあらゆる意味で目を離せない広告メディアのひとつには違いありませんね。
キーワード広告の提供を開始
A/Bテスト機能の提供を開始
Meta広告
Meta広告も広告というよりは、サービス関連のニュースが多かったように思います。
新しいアプリ「Threads(スレッズ)」をリリース
現状は広告には関連がありませんが、Metaが新たにアプリをリリースし、瞬く間に多くのユーザーを集めたのは記憶にあたらしいですよね。
参考:テキストでつながる新しいアプリ、「Threads(スレッズ)」をローンチ | Metaについて
好調な滑り出しからユーザー離れへと揶揄されてもいますが、機能追加も進んでおり、今後どのようなSNSになっていくか注目です。
なお、Facebookでは複数の個人プロフィールを持てるようになるなど、ビジネスの場として利用されることも多いFacebookの使い方がこれらによってどのように変わっていくのか、非常に興味深くみています。
参考:Meta、「Facebook」に最大4つのプロフィール機能--数カ月以内に各国で順次開始 - CNET Japan
Instagramの検索結果での広告表示が可能に
広告面ではInstagramにて検索結果での広告配信が可能になるなど、X広告の検索キーワード広告と合わせてみると、あらためて検索という行動の価値があらためて見直されているのかなと感じます。
参考:Instagramの新しい広告で発売予定の商品を宣伝して、より多くの人にリーチする | Instagram for Business
参考:検索結果のRPMは高いのだと、Twitterのキーワードターゲティング(の発表)が証明している | LIFT合同会社(LIFT, LLC.)
まとめ
ここに挙げてはいませんが、Microsoft広告も日本での広告サービス展開は後発ながらも、すでにGoogleのP-MAXキャンペーン同様の「Performance Max」をリリースしていたりと、速いサービス展開は注目ですね。
生成AIや3rd Party クッキーの廃止など、広告にも大きく関わる世の中の変化が来年に控えています。これにあわせて広告プラットフォームでもさまざまなアップデートが続くことでしょう。
来年も引き続き、アップデート情報を広告運用に関わるみなさんがキャッチアップできるよう、まとめてまいりますので、来年もどうぞよろしくお願いいたします。