リスティング広告運用者の「自動化」との付き合い方について

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「いつか近いうちに完全自動化の時代が来るのでは?」
「あれもこれも機械に譲ってしまったら、もうやることがなくなる!」

AIや機械学習の技術が進歩すればするほど、かなり高い確率で自動化というテーマが俎上に載せられることがありますね。Web広告界隈も例外ではなく、まだまだ浸透はしていないものの自動化が大きなのテーマの1つであると言えます。そして自動化を歓迎する人もいれば、すこし怯えている人もいます。様々な形で登場する「自動化」ですが、リスティング広告における「自動化」を語る上で、なんといっても「自動入札ツール」がその代表格とではないでしょうか。

さて、結局自動入札を利用するか否か、或いは利用する前提でどこまでどんな形で導入すれば良いかという問いに対して、正解というものはあるのでしょうか?いえ、正解が1つしかないと考えた時点で間違いかなと思っています。あえてそのような答えが存在するものなら「ケース・バイ・ケース」としか言いようがありません。多少ずるいかもしれませんが、変数が多すぎるから仕方がないのです。

意見も多様化しており、自動入札が日本よりも一般化している海外においてさえも、みんなが口を揃えて「自動入札なしの運用なんて時代遅れだ」と主張しているわけでもなく、冒頭のような懸念をする声を耳にすることもたくさんあります。しかし、機械に負けたくないという気持ちは共感できるものの、そもそも自動入札を「人間 vs 機械」の目線で語ること自体に違和感があります。敵か味方かを決めるなら、断然味方なのです。日頃の運用に出番を与えるべき味方であるかどうかは「ケース・バイ・ケース」でしっかり吟味することが大事です。

では、リスティング広告運用者としていかにして自動化と付き合えばよいのかを、いくつかの側面から考えていきたいと思います。

人間と機械それぞれの得意分野から考える

最初にそもそも、どうして入札はよくツールに任せられるタスクの一つになったのか、といったところから整理していきましょう。そのためにまずは人間と機械の得意分野をざっくり見れば分かりやすいかと思います。

人間の得意分野はといえば、やはり「直観、感受性、独創性、分析能力、反省能力」、だと言えます。そして意志・意図をもって行動することも特徴ですね。それらに対して機械が得意とする領域は、「計算や処理の速さ、正確さ、精密さ、効率性」に優れているあたりでしょうか。その上に、疲れないのは人間との大きな相違点です。つまり、故障などしない限り何の文句も言わずに、量も質も落とさずに毎日24時間を通して働いてくれますので、反復的かつ再現可能な作業を大量にこなすことに非常に向いています。

入札というタスクも法則性の高い部類に入ります。そういったアルゴリズム化・パターン化にしやすいものはツールで行うのに理論上問題が少ないはずです。特に大量のキーワードが設定されたアカウントでは、手動の入札だとすべての対応を行うには非常に多くの手間のかかるため、機械にそれを任せることが無駄な時間を省けることにつながると考えられます。そうやって浮かせた時間を別のタスクに割くことが可能になれば、仕事の効率も向上しやすくなります。

しかし、だからといってアルゴリズムなどを設定さえすれば、その後ツールが勝手に理想な方向に最適化してくれるというわけでもありません。機械がゆえに、もちろん意識も反省能力もないですから、人間の判断に依存しているのです。極端に言い換えれば、設定をひどく誤ってしまえば、機械は処理の速さが人間に勝る分、成果につながらないキーワードをあっという間に大量に生み出してしまうような暴走のリスクをはらんでいます。つまり、機械だけではカバーできない領域があることを常にリスティング広告運用者が意識しなければならないのです。基本、ツールで入札を行うとしてもプロの人間によるチェックと調整を怠ってはいけません。

自動入札ツールの仕組みから考える

簡単に自動入札ツールと一括りに言っても、実際にはそれぞれ仕組みが少し違います。まず、どのように入札を行うかに関しては大きく分けて3つあります。

① ルールベース型(個々のキーワードでCPAが許容値を超えたら入札価格を引き下げる。掲載順位が2位よりも下がった場合、入札単価を10%上げるなど。)

② ポートフォリオ型(キーワード単位などの評価よりは、マクロな視点からの貢献度を加味した入札。マルチチャンネルのタッチポイントを加味したアプローチなど)

③ 上記①と②を必要に応じて流動するハイブリッド型

そしてさらに別の軸でも分けてみると、サードパーティが提供する自動入札ツールと、GoogleアドワーズやYahoo!プロモーション広告の管理画面から利用できる自動入札機能があります。前者には様々なものが存在するのですが、多くの場合チャネルをまたいだ広告のパフォーマンスに基づく入札が可能なのはメリットです。

ただし、それを実現するために、各広告に専用パラメータを付与することが必要になることもしばしばあります。そうなると、かえって自動入札で削減できたであろう作業量が皮肉にも入稿時のパラメータ付与によって消費されてしまわないように注意が不可欠です。

また、利用が有料になっていることもほとんどですので、利用料を加味してでも付加価値があるかを導入前に確かめることも大切です。

一方、広告管理画面から利用できる自動入札機能は利用が無料ですが、個々のプラットフォームに固有の機能である以上、そのチャネルのデータしか扱えないのです。しかし、管理画面で確認できる以上の精度で数多いシグナル(所在地や時間、デバイス、使用OSなど)をオークションごとに秤にかけて、それぞれの影響力を加味した入札を行う仕組みになっている点が、入札単価を1日に数回のペースで調整をするサードパーティの自動入札ツールとの大きな違いです。

アカウント構造と商材から考える

リスティング広告のアカウントの規模が大きくなるほど作業量が増え、自動入札ツールがよく利用されているのは事実です。ただ、キャンペーンとキーワードの数さえ多ければ自動入札が正解になるとは限りません。そもそも煩雑すぎる構造を直すところまでは自動化ツールは担えません。しかも、筆者の経験上の話ですが、規模が大きいアカウントは広告グループが非常に細かく仕分けされているケースも多くあります。そのような場合、自動入札を有効に動かすために必要なデータの量が十分でないこともあります。つまり、自動入札ツールを活用する際に(データの量と質を確保する意味合いでも)、アカウント内の整理整頓が必須です。

合わせて、ツールが見てくれない部分を広告運用者が把握しなければいけません。例えば、キーワードのモチベーションやマッチタイプに基づく入札バランスにまでなると、さすがに自動入札ツールの圏外領域です。その辺を慎重にモニタリングしなければ、意図せず部分一致のキーワードがありとあらゆるクエリに広がってしまい、無駄なコストだけを生み出す危険性さえあります。

入札戦略を検討する際に、アカウント構造の他に商材も目を配るに値します。向いている商材もあれば、あまり向いていない商材も存在します。それは仕様上しかたのないことですが、どの自動入札ツールも結局過去の配信データを頼りにこれからの入札単価を決めていきますので、時事性や季節性が強い、セールやキャンペーンなどによりパフォーマンスの変動が激しい場合などはすぐに対応ができません。

例えば、花屋が集客にリスティング広告を活用するとどうでしょうか?特にB2Cに限ってみると、繁忙期(母の日)と閑散期(母の日以外)の温度差が高い商材であるため、母の日に臨んで「いざ、勝負!」となった時に、入札単価を過去の配信結果だけで判断してしまったら、繁忙期に間に合わず機械損失を喫するリスクは低くはありません。その他、弁護士や探偵など平均クリック単価が元から極めて高い商材は、完全にツールに舵を握らせてしまってはコストの高騰や予期せぬ掲載順位の下落によって掲載機会の損失なども起こりやすいため、手動で入札を行った方がよいケースもあります。

まとめ

手動にしろ、自動にしろ、リスティング広告を運用する・最適化する上で入札単価の調整は欠かせないタスクの一つであることは間違いないです。ただ、そこで勘違しては困ることは「運用・最適化=入札単価調整だけ」という方程式で考えることです。

例えば、「CPAが高騰した時に原因もわからないまま、とりあえず条件反射のように入札単価を下げたことがある人?」とリスティング広告運用者100人に聞いてみるなら、多分ほとんどは(少なくとも心の中で)手を上げると思います。

完全に関係ないとは言わないものの、やはり多くのケースにはパフォーマンスが悪いのはただ入札単価があっていないからではなく、そもそもキーワードのチョイスを誤っていたり、ランディングページが適切でなかったりだという入札以前の問題が主要因であることも珍しくありません。その場合は上限クリック単価の上げ下げだけでは根本的な解決にはなりません。

自動入札ツールは使い方次第で非常に役に立ちますが、万能薬でも魔法の杖でもありません。ただし、かなりの速さで進化し続けているため、常に何ができるか、目標に対して意味をなしているかなど問いかけることが付き合う上でもっとも大切です。例えば、1年前に自動入札を導入する意味を見いだせなかったからといって、それはたとえその当時に理由がもっともであったとしても、今や今後に使わない理由にはならないのです。無反省になりすぎることが「機械丸投げ」、あるいは運用に疎かな姿勢を助長してしまうからです。

飛行機にオートパイロットという自動的に操縦をする優秀な装置があることを皆さまはきっとご存知でしょう。ただその場に操縦士が居合わせていない飛行機なら乗りますか?よっぽどの冒険家じゃなければ、100%がNOと答えますよね。それと同じように、リスティング広告を完全に機械に置き換えることなどは、無責任な事だといえます。もちろん、未来のAIがどこまで進歩するかは知るすべもありませんが、自動化がうたわれるこのご時世においても、機械はあくまでもプロの人間の優秀な助っ人に過ぎないといのも現状です。

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Jan Hugendick

Jan Hugendick

アナグラム株式会社 運用型広告エキスパート(海外・国内部門)。 ドイツの出版社で マーケティングやSEOに携わることをきっかけにリスティング広告に興味を持ち、 ドイツの某メディア大企業直属のWeb広告代理店に転職。そこで5年間、多国・多業界 のアカウントを担当することを経て、2016年にアナグラムに参画。広告の運用の他 にコンテンツの翻訳を担当しています。