これまで日本におけるリスティング広告(検索連動型広告)といえば、Google検索とYahoo!検索の検索結果に出せる広告というイメージでしたが、新しく注目するべきリスティング広告のサービスとして「Microsoft広告(マイクロソフト広告)」の名前を聞くことが増えた方も多いのではないでしょうか?
Microsoft広告にはどのような特徴やメリットがあるのでしょうか?すでにYahoo!やGoogleのリスティング広告を実施している場合にも取り組むべきか、などについてご紹介していきます。
目次
Microsoft広告とは
Microsoft広告は、マイクロソフト社が提供する広告プラットフォームです。Microsoft広告は、マイクロソフト社独自の検索エンジンであるBingへ検索広告、ブラウザのMicrosoft EdgeやMSN、Outlookなどのスタートページやタブページを中心にオーディエンスネットワーク広告(いわゆるディスプレイ広告・ネイティブ広告)を配信できます。
日本では2022年5月31日から「Microsoft広告」のサービス提供を開始しています。
参考:Microsoft Advertising 日本での展開について
Microsoft 広告は、すでに欧米圏を中心に提供されてきており、2021年度の広告収入は100億ドル、日本円で1.26兆円の規模に達しています。日本でも今後、成長していくことが予想されますね。
参考:広告主に新たな選択肢の提供を──Microsoft 広告の日本立ち上げを担うマネージャーに迫る :MarkeZine(マーケジン)
Microsoft広告の特徴やメリット
日本ではGoogle 広告やYahoo!広告に取り組んでいる広告主が多いなか、Microsoft広告に取り組むか迷っている方も少なくないでしょう。ここではまず、他の媒体にはないMicrosoft広告の特徴やメリットを紹介していきます。
Microsoft Edgeブラウザのデフォルト検索エンジン「Bing」に広告配信が可能
Microsoft広告は、Windows10以降に組み込まれているMicrosoft Edgeというブラウザのデフォルトの検索エンジンである「Bing」と連携しています。つまり、Windowsがインストールされているパソコンを購入した場合、他のブラウザをインストールしたりデフォルトの検索エンジンをGoogleなどへ変更しない限りは、利用する検索エンジンは「Bing」となります。
Bingの検索エンジンシェアは拡大傾向
読者のみなさんには「Bingは自分も周りでも使ってないなぁ……」という方も少なくないでしょう。しかしながらBingは検索エンジンのシェアを伸ばしてきています。
Source: StatCounter Global Stats - Search Engine Market Share
アクセス解析サービスを提供する「StatCounter」によれば、日本ではとくにデスクトップにおいて、2022年12月時点で16%を超えています。2021年12月には10%程度でしたが、ここ1年で6%ポイントのシェア拡大となっています。
グローバルにおいては、米国の37%のシェアに達しておりEU主要国でも20%を超えている状況です。
BtoBに大きな強み
Microsoft製品はビジネスシーンでの利用が多いため、BtoBの商材やサービスの広告でそのパフォーマンスが発揮されるケースが多いです。またWindowsをはじめ基本的には製品が有料であるため偽アカウントなどは存在しにくく個人に紐づくデータの信頼度も高いのも大きな特長です。
ビジネス用途にセグメントされている広告配信先であるため、ブラウザシェアなどの数字以上に、BtoBでは取り組みを検討するべき広告媒体だと考えています。
BtoCでも可能性が広がる「ワークデイコンシューマー」へのアプローチ
BtoBに大きな強みがあるのは間違いありませんが、BtoCでも検討する余地は十分にあります。
代表的なのが、仕事とプライベートのタスクが混在する行動を取るユーザーは「ワークデイ コンシューマー(Workday Consumer)」と呼ばれ、Microsoftの事業ポートフォリオの中心であるパソコンを仕事のみならず個人的な用途にも利用する消費者が増えていると言われていることです。
>2022 年 3 月の調査※によると、日本では 42% の消費者が、勤務時間の 1 日 1 時間以上を個人的な用途に費やしていることがわかりました。
引用元:Microsoft Advertising 日本での展開について
リモートワークも当たり前となり、いまやパソコンは仕事専用のデバイスではなく、利用用途は仕事とプライベートのものとが混在していると考えられますね。
このような傾向もあり、BtoBのビジネスは当然のこと、BtoCの商品やサービスにおいても活用できる可能性があります。
他の媒体からは出稿できないショッピング広告
現在、Bingの検索結果にはMicrosoft広告とYahoo!広告との両方からテキスト広告を配信できます。一方で、Yahoo!広告にはショッピング広告がなく、Bingの検索結果にショッピング広告を配信できるのはMicrosoft広告からのみとなっています。
Googleのショッピング広告を配信したことのある方であれば、検索結果に商品画像や金額などの情報を一緒に提示できるショッピング広告の効果の高さはお分かりでしょう。
Microsoft広告独自の広告フォーマット
おもにテキストで構成されるシンプルな検索広告ですが、他の検索広告にはない特長として、豊富な広告表示オプションが挙げられます。
豊富な広告表示オプション
Microsoft広告では、Google 広告で提供されている広告表示オプションはもちろんのこと、それ以外にもユニークな広告表示オプションも数多くが提供がされています。
広告表示オプション名 | 概要 |
---|---|
アクション(CTA)表示オプション | テキスト広告に「注文」や「メッセージ送信」をするためのボタンが追加できる |
アプリ リンク表示オプション | 顧客のデバイスとOSを自動的に検出し、顧客を適切なアプリストアへのリンクを表示できる |
電話番号表示オプション | 顧客が広告から直接電話ができるよう電話番号のリンクを表示できる |
コールアウト表示オプション | 広告本文には追加できない商品の特長などを、リンクのないテキスト形式で表示できる |
フィルター リンク表示オプション | たとえば、複数の価格帯や「新着」「売れ筋」など商品やサービスに対してフィルタリングされたテキストリンクを提示 |
チラシ表示オプション | 選択した製品やプロモーションの複数の画像 (チラシ) を表示し、より多くの情報を提供できる |
画像表示オプション | 商品やサービスの視覚に訴える画像を表示できる |
住所表示オプション | ユーザーの最寄りのビジネス拠点を、電話番号も含めて表示できる |
価格表示オプション | 製品またはサービスの価格情報を広告に表示できる |
プロモーション表示オプション | 休日や特別なイベント向けのお得情報を強調して表示できる |
レビュー表示オプション | 広告内のWebサイトに関する、評価が高い第三者ソースからの好意的なレビューを表示できる |
サイトリンク表示オプション | 特定の製品やサービス、セクションへのテキストリンクを追加できる |
構造化スニペット表示オプション | 商品とサービスの特定の機能に関するより多くの情報をリンクなしのテキスト表示できる |
動画表示オプション | 製品、サービス、ブランド メッセージなどを紹介する動画を追加できる |
日本ではまだ実装されていないものもありますが、ゆくゆくは設定可能となるものと思われます。
広告表示オプションは、通常のテキスト広告にユーザーにとって必要な情報を追加でき、パフォーマンスの向上も見込めますので、可能な限り導入しておきたいですね。
業界に特化した、データフィードによるバーティカル広告
現在、日本で提供されているものはほとんどありませんが、たとえば「自動車」に特化した広告フォーマットなどの「バーティカル広告」というものも用意されています。現状は以下のバーティカル広告の種類が提示されています。
- 自動車
- クレジット カード
- クルーズ
- 健康保険
- 専門サービス (医師と病院、保険、不動産、税金)
- おすすめスポット
いずれも専用のデータフィードを用いて、検索結果に動的に広告を配信する仕様です。なお、通常のテキスト広告とは別でオークションが行われるため、併用もできパフォーマンスの向上も見込めます。
自動車を除いては日本ではまだ利用ができません。しかしながら今後、さらに多くのバーティカル広告が見られるとのことで、日本でも導入される際には対象となる広告主ではぜひ利用を検討しておきたい広告フォーマットです。
参考:バーティカル広告
信頼度の高いサイトへ配信できるオーディエンス広告
Microsoft広告は検索広告だけではなく、オーディエンス広告(いわゆるディスプレイ広告)の配信も可能です。
オーディエンス広告はMicrosoft Audience Network(マイクロソフト オーディエンス ネットワーク) と呼ばれるMSN、Outlook.com、Microsoft Edge などのサイト上に配信されます。掲載先はMicrosoft社の提供サイトであるため、いずれも信頼性が高いですよね。
なお、パートナー は今後さらに増える予定とのことです。
特徴的な利用者属性
また、マイクロソフト社の製品を利用しているオーディエンスの傾向として、他のプラットフォームに比べて16~24歳のユーザーと45歳以上の購買力のあるユーザーが多い傾向が挙げられます。
高校生や大学生はICT環境の整備にともなってWindowsのデスクトップやマイクロソフト社製のタブレットPCであるSurfaceに触れるため利用が多いと思われます。また、多くのひとがPCを持つきっかけともなった「Windows 95」の発売から28年ですが、40代以上において根強い支持や信頼感から利用を続けていたり、勤めている企業で支給されるのがWindowsというケースだたったりするのではないでしょうか。
Windows搭載の製品であればEdgeをはじめでさまざまな統合されているBingをそのまま利用する方が多いのでしょう。
広告主のビジネスのユーザーが上記に当てはまる場合には、積極的に利用を検討するのがおすすめです。どのように媒体を選ぶのがいいかについては以下の記事で詳しく取り上げていますので参考にしてみてください。
- ユーザー数から優先度を把握する
- 商材に合ったユーザーに絞ってリーチできるか?
- その広告媒体でしか出稿できない配信面か?
- 商材に合ったクリエイティブの表示フォーマットか?
- 競合他社がやっているか?
- 工数やコストに対して成果が見合うか?
さて、ここからはより具体的なMicrosoft広告の仕様についてみていきましょう。
Microsoft広告の種類
Microsoft広告では「検索広告」と「オーディエンス広告」の2種類の広告が提供されています。
各広告の種類で、さまざまなキャンペーンの目標が用意されており、目的にあった広告配信の設定を行えます。
Microsoft広告で配信できる広告の種類
Microsoft広告で配信できる広告の種類は、以下のようなものがあります。
検索広告
通常のテキスト形式に加え、動的検索広告やショッピング広告といった広告の種類を利用できます。
- レスポンシブ検索広告
- 動的検索広告
- ショッピング広告
- 拡張テキスト広告(※2023年2月1日にサポート終了)
- マルチメディア広告(※一部の広告主にのみ提供)
- Bing スマート検索での Microsoft 広告(※日本は未対応)
参考:Microsoft Advertisingで作成可能な広告タイプ
参考:マルチメディア広告
オーディエンス広告
テキストと画像が組み合わされ、配信先に合ったネイティブフォーマットで調整された広告配信がなされます。
参考:Microsoft Advertisingで作成可能な広告タイプ
広告作成画面で広告プレビューが確認できますので、意図しないトリミングがなされていないかなどの確認を行えます。
その他の画像の仕様についてはこちらをあらかじめご覧ください。
Microsoft広告で注意するべきポイント
Microsoft広告を使用する際によくある間違いを紹介し、それらを避けるためのヒントを紹介します。
検索広告はオーディエンス広告としても配信される
ショッピング広告などを含む検索広告は、オーディエンスネットワークへも広告配信が行われます。基本的には、関連性が高かったり成果が見込める場合に配信される仕様です。オーディエンスネットワークへの配信可否は選択できない仕様となっています。
なお、パフォーマンスの実績が伴わなかったりしてどうしても除外したい場合は、配信されるWebサイトを除外するよう設定が可能です。
便利なインポート機能は注意して使おう
Microsoft広告には、Google 広告やMeta広告といった他の広告配信サービスで設定したキャンペーンをインポートする機能が提供されています。インポート機能を使うことで手軽にMicrosoft広告を始められます。
一方で、注意して利用しないと意図しない設定や変更がなされてしまうケースもあります。
インポートのスケジュール設定
スケジュールを設定することで、定期的に他の広告プラットフォームの設定内容を取り込んで更新できます。
一方で、定期的に取り込まれてしまうことに注意が必要な場合も少なくありません。たとえば、ある媒体ではパフォーマンスが低く停止したキャンペーンの内容が反映され、Microsoft側でのパフォーマンスが良い場合でも気がつかないうちに停止されてしまったということがありえます。
便利な機能ではありますが、自動的にインポートさせたくない場合にはスケジュール機能をオフにするなどの注意が必要です。
対応しない機能や設定項目がある
未対応のキャンペーンタイプであったり設定項目もあるため、利用にあたっては注意が必要です。以下の公式ヘルプページにGoogle 広告からインポートできるものがまとめられていますが、これらをすべてチェックするのはかなり大変です。
インポート機能を使って入稿を行った際も、まずはひとつのキャンペーンで意図した設定となっているかをチェックして、残りの入稿も進めていくなど必ず確認をするようにしましょう。
なかでも、自動適用レコメンデーションの設定は要注意です。意図せず、広告が作成されてしまったり、除外キーワードが削除されてしまったりというケースに繋がる可能性があります。必ず確認しておくことをおすすめします。
広告パラメータの自動変換は要確認
Google アナリティクスなどアクセス解析ツールを利用している場合に必要なURLトラッキング用のパラメータにも注意が必要です。
Google 広告からのインポート機能を利用する際に、"google"、"googleads"、または "googleshopping"などのutm_source パラメーターは自動的に"bing" に置き換えられる仕様となっています。
これら以外にも意図しない設定となってしまったり、設定が不十分となってしまうケースも散見されます。このような場合、無理してインポート機能の利用にこだわりすぎず、少々面倒でも広告管理画面などからひとつずつ確認しながら設定を行うのがおすすめです。
Microsoft広告について、よくある質問
新しい媒体だけに、さまざまな疑問や不安も出てきますよね。ここではよく聞かれる質問について回答していきます。
Microsoft広告に取り組んだほうがいいか分からない
広告主のビジネスにおいて、Microsoft広告を実施したほうがいいのかわからない場合には、次のような方法であらかじめ期待できる効果を予想できます。
- アクセス解析ツールなどで、サイト訪問者のBingやEdgeの利用状況を確認する
- キーワードプランナー(ベータ)を使い配信ボリュームを見積もる
たとえば、Bingからサイトに訪問してコンバージョンしているユーザーは他に比べて訪問者数は少なくとも、コンバージョン率が高かったり、購買単価が高かったりというケースもよくあります。
Yahoo!検索広告を実施していたら実施しなくてもいいのでは?
Yahoo!検索広告からもパートナーサイトとしてBingの検索結果へ広告を配信できることから、Yahoo!検索広告を実施していたら実施しなくてもいいのでは?という声も多く伺います。
しかしながら、プラットフォームが違えば広告配信の最適化に利用されるユーザーのシグナルも異なります。たとえば、Microsoftならではのシグナルにより、他の媒体に比べ費用対効果が良いという可能性もあります。(もちろん逆も)
そのため、Microsoftなら取得できていそうなシグナルと、ビジネスの相性がよさそうであればMicrosoft経由での広告はぜひ検討するのをおすすめします。
Bingの検索結果ではYahoo!検索広告と競合してCPCが引き上がるのでは?
まず前提として、両者は全く別の広告配信のネットワークです。そのため、Microsoft広告とYahoo!広告との両方を実施していたとしても、オークションが競合しあいクリック単価(CPC)が上がってしまうという懸念はありません。
Microsoft広告の今後の伸びしろにも期待
現状でも、他の広告プラットフォームに比べてもかなり機能が充実しているMicrosoft広告ですが、さまざまな動きがあり今後も機能の充実だけでなく、独自の変化を遂げていく可能性があります。
たとえば、Google 広告やその他の広告を一括管理するマルチプラットフォーム機能の開発も発表されていたりと、ソフトウェア開発企業としての強みを発揮しており、今後もさまざまな機能の開発が行われていくことが期待できます。
参考:なぜ「Microsoft 広告」が話題? AIを活用して他の広告も一元管理、マイクロソフトの狙いとは? | Web担当者Forum
今後の利用が期待できる多くの機能
欧米諸国で先立って配信が可能となっているMicrosoft広告ですが、現状は日本でもそのすべての機能を利用できるわけではありません。
LinkedIn プロフィール ターゲティング
※2024年6月には日本でも利用可能になった旨を、マイクロソフト社よりいただいており、広告管理画面でも設定可能です
たとえば、2016年に買収したビジネス向けSNS「LinkedIn(リンクトイン)」に登録されているプロファイルの情報を利用したユーザー属性によるセグメントです。現在は米国のPCでのみ利用が可能です。
- 会社名
- 業界
- 職種
Microsoft広告自体もプラットフォームとしてさまざまな機能が追加されており、日本では未実装な機能に留まらず、今後もより活用の幅が拡がっていくことが期待されます。
この他にも、Google 広告などには実装されているけれども、いまはまだMicrosoft広告では対応していない機能も、ここまでの導入スピードを考えると遠くないうちにいずれも利用可能となるのではないかと考えています。
また、シェアを伸ばしているBingの利用状況なども相まって、今後の伸びしろに注目して取り組んでいきたい広告媒体のひとつですね。