運用型広告の運用者なら押さえるべき、2019年に注目したい5つのトピックス

運用型広告の運用者なら押さえるべき、2019年に注目したい5つのトピックス

あけましておめでとうございます。本年もアナグラム及びにアナグラムブログをよろしくお願いいたしいます。

どうやら年初の記事は田中が書くというのがルールになっているようで、今年も担当は田中でお届けいたします。

さて、この記事のタイトルを見て非常に既視感が強いなと思った方もいるはず。昨年の2018年も「運用型広告の運用者に伝えたい、2018年に起きるであろう3つのこと」という記事を執筆しております。

そこでは、2018年に起きるであろう3つのことの記事では次のようなお話をさせていただきました。

  • ユーザーターゲティングvsプライバシー保護
  • 広告表現vs法令遵守
  • 広告クリエイティブvsデータベース

これを踏まえて2018年を振り返ってみると、プライバシー保護の強化としてハードの面ではITP 2.0の登場、ソフトの面(法令)では金融サービスに関する規制強化や欧州で施行されたGDPR、データベース面ではレスポンシブ検索広告を始めとする広告フォーマットにおける広告要素のアセット化や、ダイナミック広告のプロスペクティング配信の各社参入など、話題は豊富な1年だったと思います。GDPRなど施行が既定だったものもありますが、概ね予想したとおりの流れとなった年でもありました。

2019年の最初となる本記事でも、2018年までに起こったことを踏まえた上で、運用者が押さえておくべきと筆者が考える5つのポイントをご紹介していきたいと思います。


1. 広告運用者の価値は広告運用以外に比重が移る

これは2018年以前より囁かれていた事ですが、運用型広告の運用者の価値は広告の運用以外に比重が移ります。この流れは変わりません。

ここ数年の運用型広告プラットフォームのアップデートは、機械学習、自動化へ寄ってきているのは誰もが感じるところです。2018年にGoogle 広告においてレスポンシブ検索広告のロールアウトが始まったことにより、検索広告でも広告文が”固定されたセンテンス”から”複数フレーズの組み合わせ”のフォーマットになり、一昔前のように広告グループを細分化せずとも、検索語句に応じて適切な組み合わせの広告を表示できるようになりました。

広告文を考えて作るという重要な作業は当然残りますが、複雑な構造のアカウント構築や過剰なキーワードの登録をする必要がなくなって来ているので、作業という面では作業にかける時間は削減されます。当然、入札にかかる作業も然り…です。

つまり、作業だけをこなす運用者はすでに機械に置き換わっていることを意味します。

では、求められる広告運用者とはどのような人物でしょうか?筆者は下記だと考えます。

ビジネスを理解し、翻訳者として消費者にわかりやすく価値を伝えられる

これは広告に携わるものとして言わずもがなな点です。リスティング広告でいうターゲティング(キーワード、オーディエンス、コンテンツ、ユーザー属性など)は機会の選択、広告のクリエイティブはアクションの励起と考えれば、見込みのある消費者に適切なタイミングで適切な訴求を行うために、ビジネスの理解が何よりも必要であることは言うまでもありません。理解ない広告運用者の運用では広告費を適切に配分できるとは思えません。

また、検索語句から消費者のインサイトが見えるのもリスティング広告の特徴です。ビジネスの理解と消費者のインサイトが正しく分析できる運用者は、そこから新しいビジネスを生み出すことだってあるのです。

テクノロジーの手綱を取れる参謀になれること

自分の活動を振り返ってみると、2018年はテクノロジー領域の相談が社内外から最も多く寄せられた年になりました。

特にGoogle タグマネージャに代表されるタグマネジメントツールに関する相談は顕著で、データレイヤーやDOM要素を利用したものが上位を占めました。これまでは基礎的な知識でこと足りているケースが多かったのですが、トリガーがURLではなくなった途端に広告運用者が対応できなくなるというのが直近の傾向だと感じています。

その他、Google アナリティクスであればイベントトラッキングやペイメントサービスからの参照を除外して正しく計測する方法も求められてきていますし、Google オプティマイズによるA/Bテストや、Google データポータルを使ったレポートのビジュアライズ化をするスキルも求められるようになってきました。他にもデータフィード広告を配信するためにデジタルアセットを整えるといった能力も必要とされています。

運用者の皆さんへ筆者からお伝えしたいのは、これらのプロダクトを徹底的に使いこなす事を意識して欲しいということです。よくテスト環境が欲しい…と聞こえてくるのですが、テストできる環境が無いから…は言い訳にしかなりません。

テスト環境が欲しければ作ってしまえばよいのです。テスト環境を構築するためにドメインを取得し、レンタルサーバを借りても年間の維持費は1万円もしないことがほとんどです。さらにWordPressなどCMSを導入して、自分の好きなテーマでブログを書けば文章の練習にもなりますし、Google AdSenseも導入できれば収益化やGoogle 広告が配信されるメディアの気持ちにもなれます。

Google AdSenseの管理画面を触ったことのない人がGoogle ディスプレイネットワーク(GDN)の仕組みを根本から理解しているとも到底思えませんよね。

デメリットは1つもありません。

2. アセットデータの送信はプッシュ型からプル型へ

2018年12月に登壇させていただいたフィードフォースさん主催のFeedtech2018でもお話させていただいたのですが、Google for Jobs をはじめ構造化データのマークアップを推奨し始めてきています。Google for Jobs については、いよいよ日本でも2019年に参入と報じられており、楽しみにしている方もいれば、初めて知った方もいらっしゃるかと思います。

構造化データのマークアップなんて広告は関係ない、どちらかというとSEOの領域では?と思われがちですが、Google Merchant Center では以前より構造化データを利用して商品情報の更新が行えるような仕組みが提供されています。これが2018年の秋には構造化データからスプレッドシート形式の商品フィードを直接生成することができるようになり、CSVやXMLといったファイルを生成してアップロードする必要もなくなりました(おそらくこれがAutomated feedだと思われます)。

構造化データの活用範囲が広がってきていることで、これまではWebサイト所有者や広告主がGoogleにデジタルアセットをプッシュ(送信)するという行為から、GoogleがWebサイトから構造化データをプル(取得)して活用するという流れにシフトが始まっていくことでしょう。

構造化データはschema.orgの仕様に沿い、MicrodataやJSON-LD形式でマークアップすることで、Googleがその内容を認識することができるようになります。schema.orgもMicrodataもJSON-LDもグローバルで標準化された仕様なので、時間があるときにぜひ触れてみてください。

もしAutomated feedの仕組みが小売以外にも適用できるようになるならば、構造化データのマークアップによってSEOと広告の両方に活用できるようになったりするかもしれませんね。

3. インターネット広告によるコミュニケーションに限界が見え始めてくる

モバイルの普及によってマルチスクリーン化が進み、消費者とつながるためには複数の接点を持つことが必要な時代になりました。故に、必然と広告だけではアプローチができない接点というのも出てきます。

例えば、知らない土地でレストランを探すときはどうやって情報を探しますか?地元の方やタクシーの運転手など直接情報を手に入れるケースもあると思いますが、検索をするという方も少なくないはず。

検索する人の中には口コミサイトを利用する方もいると思いますが、筆者はGoogle マップに投稿された生の利用者レビューを参考にすることが多くなりました。Google マップに投稿されたレビューの平均点と、筆者の体感にズレが生じることがあまりないと感じたからなんですよね。

つまり、ローカルビジネスの領域では広告を出すよりも、Google マイビジネスに登録してGoogle マップに表示させるほうがインパクトが大きこともあるわけです。強い言い方をすれば、Google マイビジネスに登録していない、適切に管理していないとなれば、Google マップの利用者の選択肢にも入ってこないとも言えます。これは大きな機会損失です。

Google マイビジネスに登録しておけば、Webサイトがなくても集客できるのでは?と思われがちですが、消費者から信頼を勝ち得るためにはWebサイトもきっちり整備し、ユーザーが必要とするであろう情報は発信しておくべきという点も付け加えておきます。

若年層では、検索エンジンではなくSNSのハッシュタグで検索したり、クリックしたりすることで目的の情報を探すということが一般的になっています。

Instagramであれば「#パン屋」とか「#寿司」といったハッシュタグを辿り、投稿された写真を見て気に入ったお店があれば、Google マップで検索して食べに行くといったように、起点がSNSのハッシュタグ検索であることが増えています。

この場合はお店側がSNSのアカウントを運用していたり、UGCなどによって投稿が広まっていないと選択肢に入ってきません。ハッシュタグ検索から始まるユーザーは、そこから改めてGoogle 検索に進むということも考えにくいので、ユーザーとの接点を持つ機会は失ってしまうのです。

Google マイビジネスやInstagramを始めとするSNSの活用はビジネスを選ぶ場合もありますが、ビジネスによっては集客の手段がインターネット広告ではないケースも増えてきているということを頭の中に置いておくべきです。むしろ駅前のチラシ配りやポスティングが有効であるケースだってあります。ビジネスに応じて適切なコミュニケーション方法を考えるということが大切です。

4. 法改正などは引き続き注視が必要:消費税増税・軽減税率など

2019年は法改正については引き続き注視をしていきましょう。

一番大きいトピックスとしては、2019年10月に消費税率が8%から10%にアップすることが決まっています。特に、今回の消費税率の改正はこれまでの税率アップと異なり、一部のジャンルで軽減税率が設定されるということです。これは広告にとっても大きな影響があります。

特に軽減税率の対象となる商品は、消費税率がこれまで同様の8%のままになるので、(今のところ)税込み表記が必須なショッピング広告を実施している場合は、適用する税率にミスが無いようにしなければなりません。

また、消費税率のアップによる消費低迷を防ぐため、増税分の値引きを行う企業が出てくると思いますが、広告の表現にも注意が必要です。例えば「消費税還元セール」といった表現は従来どおり禁止される一方で、「2%値下げ」のように消費税の増税が直接結びつかないような表現は問題とならないなど、表現のルールは知っておくべきです。

5. ブランドセーフティ問題は継続。信頼性に乏しいメディアや法的にグレーゾーンなメディアに表示される広告も注視される

これは2019年に始まったことではありませんが、ブランドセーフティに関する話題は今後も引き続き取り上げられることでしょう。

2016年から2017年にかけてのWELQ問題、2018年初頭には海賊版サイト、2018年の後半にはフェイクニュースを発信するメディアが話題となりました。あわせてこれらのWebサイトに表示される広告枠に広告が表示されることで、ブランドの毀損にも繋がりかねないケースも散見されました。

2019年も引き続き、フェイクニュースを取り上げる信頼性に乏しいメディアやトレンドブログ、違法コンテンツに誘導するリーチサイトが話題に上がることは間違いありません。これらのWebサイトで表示されるのは、アドネットワークを利用したディスプレイ広告が主であるため、”運用しているアカウントのディスプレイ広告が、いつの間にか表示されてしまっていた”という事態にもつながりやすいです。特にユーザーをターゲティングする場合は、Webサイトのコンテンツ内容に関係なく広告表示の機会が与えられてしまうので特に注意をしましょう。

ディスプレイ広告を配信する場合は、ブランドセーフティという観点からも、定期的に配信先(プレースメント)レポートを確認するようにしましょう。

話は脱線しますが、SNSなどでバズっている話題も、拡散されるうちに尾ひれや背びれがついてしまうことで、結果的にフェイクニュースとなってしまうこともよくあります。みなさん自身もフェイクニュースを拡散する一人とならないように、気になる話題は拡散する前に話題の出処や信憑性を確認する”ファクトチェック”を行ってみてください。”ニュースは疑え”です。

2019年も各種業界に対するアンテナを張って動きに敏感になろう

ここまでに紹介した5つのトピックスの他にも、きっと様々なトピックスが2019年に駆け巡るでしょう。テクノロジーの進化も激しいです。昨日までできなかったことが今日できるようになる、昨日までできていたことが今日から突然できなくなるといったことも多く起こるでしょう。

そんな突然な変化にも対応できるよう、僕ら運用型広告の運用者は流れの最先端を見られるようにしたり、何が起こっても動じることがないように備えておくべきです。

管理画面だけ見て広告の運用する時代の終わりはすぐそこまで迫ってます。これは昨年もお伝えしておりますが、広告運用以外で価値を出せるプレイヤーになるため、なにか1つでも良いので没頭できる何かに取り組んでみてはいかがでしょうか。

2019年も自身のスキルを磨けるように頑張っていきましょう!

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