Amazon Payや楽天ペイなどの外部決済サービスは、自社あるいは広告主のウェブサイト上でユーザーに決済情報を入力をすることなく、Amazonなどの外部サービスにログインすることでAmazonに登録している支払い方法や住所などを使って簡単に決済を行えるため、ユーザーの利便性が高く、多くのサイトで導入されています。
ただし、Googleアナリティクス4(以下、GA4)を利用している場合には注意が必要です。通常ではどの参照元から売上に繋がったかを確認できますが、外部決済サービスを利用している場合、自社サイトから外部決済サービスへいったん遷移して戻ってくると、キーイベントが外部決済サービスに紐づいてしまいます。しかし、多くの場合、外部決済サービスを集客元としては考えないでしょう。
そこで今回は、外部決済サービスを利用している場合でも本来の参照元に紐づけるために、導入前にあらかじめやっておきたい、GA4の「除外する参照のリスト」の設定方法をご紹介します。
目次
なぜ参照元が外部決済サービスにひもづいてしまうのか?
※厳密に言うと、GA4ではセッションの途中で参照元が変わっても「セッションの参照元」はそのままです。ただし、イベントが発生したときに記録される「イベントの参照元」は変わります。キーイベントはイベントデータです。「イベントの参照元」を使用して参照元を判別するため、参照元が変わります。また、30分経過してセッションが切れた場合はセッションの参照元も変わります。
参考:[GA4] トラフィック ソースのディメンションのスコープ - アナリティクス ヘルプ
Amazon Payや楽天ペイなどの外部決済サービスを利用すると、自社サイトから外部の決済ページに移動し、再び戻ってきた際に、自社サイトは一度離脱したとみなされます。その結果、同じユーザーの連続した行動にもかかわらず、異なるユーザーの行動として認識され、参照元が外部決済サービスに関連付けられてしまいます。
サイトに同じGA4のトラッキングコードが設置可能であれば、クロスドメイントラッキング(※)の設定を行い、同じユーザーの行動として認識させることができます。しかし、Amazonや楽天にはGA4のトラッキングコードを埋め込めないため、同じユーザーの行動としてつなぐことができません。
※GA4において、複数のドメインをまたぐユーザー行動を一連の行動として計測するための設定を、クロスドメイントラッキングといいます。
「除外する参照のリスト」を利用し、コンバージョンを本来の参照元にひもづける
GA4の「除外する参照のリスト」の設定を行えば、本来の参照元にキーイベントを紐づけることができます。
「除外する参照のリスト」に設定されたドメインは、参照元として計測されません。これにより、決済後に再訪問した場合、セッション開始時の(参照元/メディア)が引き継がれ、本来の流入元や購入完了が正しく計測されます。
ただし、セッションは30分間操作がないと切れるため、(参照元/メディア)を引き継げるのは、30分以内にウェブサイトに戻る場合に限られます。30分以上経過すると、新しいセッションとしてカウントされるため注意しておきましょう。
「除外する参照のリスト」の設定手順
ここからは、「除外する参照のリスト」の設定手順を解説します。
GA4の「管理」から、「データストリーム」を選択します。
設定したいデータストリームを選択してください。
Googleタグの中にある「タグ設定を行う」を選択します。
「もっと見る」をクリックし、「除外する参照のリスト」を選択しましょう。
マッチタイプの項目を「参照ドメインが次と完全に一致」にし、ドメインの項目に除外したいドメインを入力します。
ドメインは、外部決済サービスのページに遷移した際、アドレスバーより確認できます。
例えば、Amazon Payの場合は「payment.amazon.co.jp」、楽天ペイの場合は「my.checkout.rakuten.co.jp」設定します(※2024年9月時点)。
最後に、「保存」を選択すれば、設定完了です。
除外設定したあとも除外した参照元からの流入がある理由
「除外する参照のリスト」設定後も、「あれ?除外設定した参照元でイベントが計測されているぞ?」というような場合は、次のような要因が考えられます。
「除外する参照のリスト」の設定前に、外部決済ページを利用したユーザーが、ブックマークやお気に入りなどの(direct/none)として流入すると、最終的な参照元として、除外したはずの外部決済サービスが参照元として扱われてしまいます。
参考:Googleアナリティクスの「参照元」は過去にさかのぼる。GA独自の定義を正しく理解する[第25回] | 衣袋教授の新・Googleアナリティクス入門講座 - Web担当者Forum
なお、これらについては解消方法がありません。GA4では、キャンペーンのタイムアウト期間(※)が経過するまでは参照元が保持されるため、時間の経過とともに減少していくのを待ちましょう。
※GA4では、特定のユーザーの参照元情報をどれだけの期間保持するのかを1分から24ヶ月の間を1分単位で設定でき、デフォルトでは6ヶ月に設定されています
「除外する参照のリスト」の設定が必要なケースは外部決済サービスだけではない
ここまでAmazon Payや楽天ペイなどの外部決済サービスを利用する場合は、「除外する参照のリスト」の設定が必要とお話してきましたが、設定が必要なケースは他にもあります。
例えば、会員情報のパスワードの再設定のためにユーザーにメールが送信され、そのメールのドメインから自社のサイトに戻る場合などです。このように、外部サイトであっても自社のビジネスのプロセスの一部とみなされるドメインは「除外する参照のリスト」に設定しておく方が良いでしょう。
他にも、例えばサードパーティのプラグインや広告ブロッカーなどが、GA4のスクリプトの実行を妨げてクロスドメインの設定がうまく働かないことがあります。この場合も、「除外する参照のリスト」設定を行っておくことで、別ドメインが参照元に出てくるのを防げます。
また、「自社サイトのサブドメインも除外設定した方が良いの?」と不安に思われる方もいるかもしれませんが、サブドメインは除外設定の必要はありません。GA4には自己参照(※1)を自動検出する機能があり、自社サイトのサブドメインは参照元として認識されないようになっていますのでご安心ください。
なお、知らないうちに決済方法が増えていることもよくあります。定期的にGA4の「トラフィック獲得レポート(※2)」を確認し、見たことがない(参照元/メディア)は調べて必要あれば除外設定することをおすすめします。
※1:自社サイトのドメインが参照元となるトラフィックのことです
※2:ウェブサイトまたはアプリにアクセスしたユーザーの参照元(どのチャネルやメディアを経由してアクセスしたか)を把握できるGA4の詳細レポート
参考:[GA4] トラフィック獲得レポート - アナリティクス ヘルプ
便利な外部サービスでも影響範囲を考え計画的な導入を
外部決済サービスのウェブサイトへの導入は運営者側、ユーザー側ともにメリットがあります。しかし、効果計測周りの設定を的確にしておかなければ、正しい参照元なのかがわからず、実施した施策が効果的だったのかどうかなどの判断を誤ってしまう恐れがあります。
貴重なデータを最大限活用できるよう、アクセス解析ツールの設定にも気をつけておきたいですね。