
去年まで Google Marketing Next 名義で行われてきたイベントが今年改称とアップデートされ、Google Marketing Live として2018年7月9日~11日の間 米サンノゼで開催されました。そこで行われたキーノートセッションはおそらく世界中の広告運用者、Web広告担当者の注目の的だったはずです。今回の Google Marketing Live にアナグラムからも参加することができましたので、その概要と参加しての所感を織り交ぜてお伝えいたします。


目次
このキーノートでは主に以下の2つのテーマにフォーカスがされていました。
- Google のプラットフォームやツールの更新、及び既存プロダクトの一部を改称
- 新しいプロダクトと機能のご紹介
次よりそれぞれについて紹介していきます。
1. Google のプラットフォームやツールの更新、及び既存プロダクトの一部を改称
Google AdWords が Google Ads に改称
当イベントの開催前にすでに公表はありましたが、お馴染みの Google AdWords から Google Ads(Google 広告)への改称があらためて発表されました。このリブランディングは、数年前からキーワードによらないターゲティングの多様化が進む中で、ロジカルな決断だったと言えます。
Google Marketing Platform として複数のプロダクトが集約される
Analytics Suite 360 と DoubleClick のプロダクトを一部アップデートしつつ Google Marketing Platform というサービスに統合することもアナウンスされました。これによって広告のプランニング及び出稿からデータの解析までのワークフローがより速やかにこなせることが期待されています。1996年に誕生した DoubleClick ブランドはこれをもって終了となります。
- Google Analytics 360
- Optimize 360
- Data Studio
- Surveys 360
- Tag Manager 360
DoubleClickのプロダクトは下記のように改称・集約された形で統合されます
- Search Ads 360 (旧 DoubleClick Search)
- Display & Video 360 (旧 DoubleClick Bid Manager, Campaign Manager, Studio と Audience Center )
パブリッシャー向けのプロダクトは Google Ad Manager として統合へ
事前のブログポストで発表がありましたが、パブリッシャー向けのツールである DoubleClick for Publishers と DoubleClick Ad Exchange が統合され、Google Ad Manager として提供されるようになります。
- DoubleClick for Publishers
- DoubleClick Ad Exchange
2. 新しいプロダクトと機能について
Google の広告およびコマース担当上級副社長 Sridhar Ramaswamy 氏の冒頭スピーチに、ユーザーが広告に期待していることの変化を強調した箇所がありました。
昔のように検索ボックスに入力した内容に対する「単なる答え」でユーザーがもう満足できなくなり、その都度の意図を瞬時に理解してもらい、弊害のないアシスタンスを期待している
この言葉の意味合いは、次項で紹介するキーノートで紹介された数々プロダクトと機能からも垣間見ることができました。
機械学習でユーザーの意図に寄り添って最適化したり、一定の商材に特化したり、ランディングページのユーザー体験を重視したりするなど、多様化・細分化する用途に合ったツールを提供することで、「単なる答え」ではなく意図に沿った広告を届けることができるようになってきていると言えます。
キーノートで発表された新しいプロダクトに関する内容は次のとおりです。
YouTube
- TrueView for Reach
- TrueView for Action(リードジェネレーションに特化したフォーマットの導入についても言及)
- スマート自動入札の戦略に Maximize Lift(ブランドリフトの最大化)が追加
19億人もの月間ユーザーがいるYouTubeは、ブランディング以外のポテンシャルを発揮できそうな方法をたくさんの広告運用者が待ち望んでいたでしょう。
TrueView for Actionは厳密には新しいプロダクトとは言えないものの、アナウンスされたリード用の広告タイプとともにパフォーマンス重視の広告ポートフォリオにもより検討しやすくなるかと思います。
参考:Google アドワーズ、ユーザーにアクションを促す動画広告「TrueView アクション(TrueView for action)」の提供を開始
Google Ads & Analytics
- レスポンシブ検索広告 (Responsive Search Ads) が年内にロールアウト
- モバイル速度スコアが管理画面のランディングページタブに登場
- Google Ads のランディングページがAMP (Accelerated Mobile Page) に対応
- Google Analytics クロスデバイスレポートとリマーケティング
複数タイトルと説明から動的に生成されるレスポンシブ検索広告を始め、1~10の段階でランディングページ速度を確認できるモバイル速度スコアまで、広告パフォーマンス改善のツールに強いフォーカスがあるプロダクトが揃いました。
中小企業向けプロダクト
- Smart Campaigns(Googleマイビジネスアカウント連携でキャンペーンを自動生成し、自動入札で運用)
- Auto-optimized Landing Pages(広告用に最適化されたランディングページの自動生成)
- Grow with Google の教育プラットフォームの紹介
何より特徴的だったのは、設定項目の簡略化と運用の自動化に重点が置かれたところです。Google 広告が未着手のビジネスのみならず、Webサイト、ランディングページがない場合においても、Google 広告を利用することへのハードルを大きく下げたとみられます。これは Google にとってみてもさらに広く利用されるチャンスでもあります。
Google ショッピング
- Automated Feeds(サイトをクロールし、自動的に商品データフィードを生成)
- Smart Shopping Campaigns(管理を簡易化した、機械学習ベースでGoogleの複数ネットワークに対応しているショッピングキャンペーン)
Shopifyなどのショッピングプラットフォームとの連携 - 新しい目標設定(実店舗への来店と新規顧客の獲得)
前述の中小企業向けプロダクトと同様に、導入をより一層簡単にしようとしている印象です。
これまでショッピング広告の設定が困難だと感じた広告主のためにハードルを下げているという捉え方ができる一方で、世界規模で考えますと、Google ショッピングがまだそれほど普及していない国や市場を開拓する動きとして解釈もできますね。
参考:Google アドワーズ、「自動最適化」ショッピングキャンペーンの提供を開始
その他
- ローカルキャンペーン(実店舗への来店に特化したキャンペーンタイプ)
- ホテルキャンペーン(ホテルのブッキングなどに特化したキャンペーンタイプ)
- Google Measurement Partners (23社のデータ計測サービスとのパートナープログラム)
既に存在しているアプリインストールや電話の問い合わせ専用の広告フォーマットなどのように、ローカルキャンペーンとホテルキャンペーンの発表で、今後もなお、用途別、業種やバーティカル別のプロダクトに注力し、ビジネスとそのコアとなるユーザーのニーズに応える方向性も示されました。
参考:Marketing Live 2018: Marketing Innovations Keynote(英語)
参考:すべての広告主の手に機械学習を:Google Marketing Live 2018 で紹介される 4 つの新広告機能
参考:Google Marketing Live 2018 キーノートスピーチで発表された機能まとめ | Unyoo.jp
Google のエコシステムはますます自動化へ
Google のこれからの方針やプロダクトロードマップのご紹介の中で、何といっても「機械学習」という単語の出現率の高さが目立ちました。
勿論「機械学習」や広告における「自動化」などは今にはじまった動向ではないのですが、当イベントでは普段よりも色濃く出ている印象が強く、Smart Campaigns や Responsive Search Ads、Automated Feeds などという機械学習や自動化が中心部である新プロダクトからも読み取れるように、Google が益々この方向に突き進んでいくことを身をもって実感できる機会でした。
言い換えてみれば、もし現在も主に手動で運用されているアカウントの場合、今後自動化に任せそうなタスクはないかを(再)検討するきっかけとして捉えても良さそうですし、果ては、この動きの延長線上の話ではありますが、広告運用者の従来の仕事の概念や付加価値を覆すパラダイムシフトとして捉えてもいいかもしれません。
とにかく入札単価を手動で細かくチューニングするよりも、将来はコピーライティング、広告のデザインや広告ポートフォリオの設計などといった上流工程への比重が大きくなり、その辺に関して広告運用者としての価値を求められるようになるでしょう。
世界中の広告運用者との交流の機会
Google 社からの数々の発表や、プロダクト担当者との質疑応答によって最新情報を直接得られる他に、世界各国から来た広告運用者と交流できる機会も多くありました。
出身国はアメリカであれ、カナダであれ、ヨーロッパ諸国からニュージーランドまで、Web広告に携わる各自が抱えている課題は意外と似ていることを会話の中で感じられました。特に今後の広告施策に機械学習の進展が秘めるポテンシャルへの期待の高さは、話をしていたたくさんの方々に共通しているテーマの一つでした。
一方、広告運用の中で自動化できる部分が増えていく分、ある施策が結局どうしてうまくいったのか、あるいはどうして失敗に至ったのかというインサイトや、データの透明性が減少していく可能性、いわゆる「ブラックボックス化」を懸念する声も珍しくなかったです。
自動化であっても、運用について得られる見解の量と質は、例えば運用代行の立場からして、クライアントにできる提案の価値、またはインハウス運用の場合でも、上司やマネージメントとのコミュニケーションの確度を大きく左右すると言えます。Google 広告のエコシステムと機械学習が進化している中、Google Marketing Platform や Google Measurement Partners はそういったデータの可視化及び取得をよりスムーズに実現できる手段としての意味合いもあると考えられます。
今回の Google Marketing Live は、運用型広告の運用者がテクノロジーといかにして付き合い、キャンペーンのベストを引き出していくべきか、たくさん考えさせる貴重な機会でした。