広告運用者がT型人材として飛躍するために習得するべき14のスキル

広告運用者がT型人材として飛躍するために習得するべき14のスキル
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はじめに

私たち運用型広告の運用者(以下、広告運用者)は、広告運用者と言うぐらいですから広告運用ができることは当然なのですが、広告運用以外の周辺業務も対応したり適切なアドバイスができればよりビジネスの勝率を上げられるのではないでしょうか?昨今はT型人材(特定の分野に深い専門性を持って軸を持ちつつ、かつそれ以外のジャンルについても幅広い知見を持っている人材)が活躍する、と言われていますよね。私もその通りだと、広告運用者として様々な会社さんをお手伝いする中で、ひしひしと感じています。

それでは、広告運用者においては、T型のIの部分が広告運用だとすると、T型の ̄の横棒の部分には何が合った方が良いのでしょうか?今回は、事業主や広告代理店で広告運用に携わっている方で、「広告運用以外のもう一つはこれ!というスキルが欲しいが、何をすればいいのか分からない」という方に向けて、広告運用と特にシナジーのありそうなスキルをご紹介できればと思います。


目次

大局観を持つ

1.担当のビジネスについて理解するスキル

担当のビジネスについて市場や競合の状況を鑑みてどういう価値を提供していて、どうやって利益を残すつもりなのかを理解できることは大切だと考えます。せっかく良いサービスや商品であっても、マーケティングの担当者がビジネスの強みを理解してそれが生きる売り方をしないと、苦戦することになります。

特に運用型広告は配信する限り広告費を利用し続けます。広告費を掛けたうえで利益を残すためには、以下の2つが一本の軸で繋がっていないと、広告費に見合うリターンを得ることは難しいです。(もちろんビジネスによっては、一成約で大きい利益が残せるビジネス等だと、当てはまらない場合もあります)

  • ユーザーにとって魅力的であること
  • ユーザーのサービス利用や購入後の収益が上がる仕組み(継続やリピートが期待できてLTVが高かったり、バックエンド商品が準備してあったり…)

ビジネスの強みを理解していないと何が起こるのかと言うと、サービス利用や購入後に継続やリピートしない人や上手くバックエンド商品の購入に引きあがらない人を呼び込んでしまって、広告費を投じても上手く利益が上がらない…ということになります。ビジネスについて理解を深めるためには、まずは担当しているビジネスについて、3C分析や5F分析等のフレームワークに当てはめてみることは一つ有効なやり方です。3C分析、5F分析のやり方については以下のブログにもまとまっているのでご参考になさってください。

参考:自社分析・競合調査のやり方とポイント、運用型広告ではどこに着目すべきか?

2.担当のビジネスの対象となりうる人が何人ぐらいいるのか?ビジネスのシェア拡大を狙っている市場の規模はどのぐらいか?把握するリサーチスキル

担当のビジネスの対象となりうる人が何人ぐらいいるのか?ビジネスのシェア拡大を狙っている市場の規模はどのぐらいか?(どのぐらいお金を投じられているのか?)をマクロ的に把握しておくと、施策の精度が上がります。ビジネスが現実的に年商何億円まで狙えてどこまで成長できるのか?どのような層を重点的に狙っていき拡大していくべきなのか?道筋が明らかになり配信のプランを組むうえでも参考になります。

リサーチするうえでは、官公庁やシンクタンク等の報告書が参考になります。主要なソースは以下の記事にまとまっているので参考にしてみてください。ニッチなビジネスであれば出来合いの報告書から適したデータをすぐに入手できるとは限りませんが、予算と時間・リソースの許す限りまずはリサーチしてみることをおすすめします。

参考:Webマーケティング・運用型広告のターゲティングやペルソナの参考になる統計資料サイトまとめ

3.経営のお金に関する概念を理解して会話するスキル

運用型広告に割くコストはビジネスによっては大きな比重を占めることも少なくありません。広告費の配分を間違えてしまうと、最悪資金繰りが悪化したりします。

そのため、広告運用者としても、最低限の経営に関するお金の知識は学んでおくことをおすすめします。特に事業主側だと、変動費(原価・物流コスト等)がどのぐらいかかっているのか?固定費(広告費、人件費、家賃、雑費等)分以上の利益を出して損益分岐を超えるためにどのぐらいの広告費が必要なのか?ビジネスの成長フェーズを鑑みてCPAをどのぐらいに設定して、どのぐらいの利益を残すべきなのか?等について考える機会は出てくるでしょう。最終的には経営者や事業責任者が判断するべき事柄ですが、広告運用者も少なくとも意味が分かって会話はできた方が良いと考えます。(代理店だとなかなか内部の細かい数値までは見せてもらえないことも多いかとは思いますが)

クリエイティブを磨く

4.どのような人が何を考えてサービス利用や購入に至るのかを把握するリサーチスキル

ビジネスの対象となる人が、何を考えてサービス利用や購入に至るのか?どういう言葉遣いを普段しているのか?について知ることは、ターゲティングや広告文・LPを準備するうえで大変重要です。できるだけビジネスの対象となる人の典型的な商品を利用するに至る経緯や、言葉遣いを意識した広告を準備することで、成果が大きく改善するケースも少なくありません。

具体的なやり方は、以下の記事にまとまっているので参考にしてみてください。十分にリサーチをしてみたうえで、広告やLPの言葉遣いやデザインに、対象となる方から見て違和感が無いかを改めて確認してみることをおすすめします。

参考:センスだけに頼らない、ビジネスを加速させる広告文の5つの作り方とは?

5.薬機法・景品表示法をさわりだけでも把握して簡易的なリーガルチェックを行うスキル

東京都や消費者庁から、薬機法・景品表示法への違反を指摘される事例が後を絶ちません。アディーレ法律事務所が景品表示法違反のため消費者庁から措置命令を受け、東京弁護士会から業務停止2カ月の懲戒処分となった件は記憶に新しいかと思います。

参考:アディーレ法律事務所に業務停止2カ月「極めて悪質 組織的な非行」

広告やLPについて、リーガルリスクの少ない売り方をしているかどうか?については広告運用者側でも気を付けるべきでしょう。なぜなら、広告を考える立場だからです。詳しい条文や判例をすべて把握する必要はありませんが、薬機法に典型的に違反している広告はどういうものか?他社がどういう理由で景品表示法違反とされて措置命令を受けたのか?等はチェックしておくことをおすすめします。

もちろん行政から注意されるギリギリの訴求や売り方をした方が売上は上がりやすいのです。ただ、直近数ヶ月で措置命令が出たような売り方を未だに続けているようなら、一時的な売上は上がるかもしれませんが、ビジネスの持続性が損なわれてしまうでしょう。政府の規制の基準は時を経るごとに刻々と変わっていくので、どういう売り方で措置命令が出たのか等をニュースでチェックして、その時々でリーガルリスクを最小にしてかつ売れる方法を考えていく必要があります。

なお、景品表示法に違反した場合、消費者庁からの「措置命令」を経ても改善が見られない場合は、行政処分により課徴金を課せられる可能性がある他、最悪の場合刑事罰により懲役や罰金となります。薬機法に違反した場合も、最悪の場合刑事罰により懲役や罰金となります。

参考:消費者庁:景品表示法違反行為を行った場合はどうなるのでしょうか?

参考:厚生労働省:医薬品等の広告規制について

加えて、違反広告でニュース等に取り上げられてしまうと、悪評が立ってしまい売上が下がる社会的制裁もあると考えられます。

6.これまで築き上げてきたブランドを理解して棄損しないように広告文・LPを調整するスキル

何気なしに出稿した広告一本でも、何十年もかけて築き上げたブランドは棄損してしまうものです。例えば、高級ブランド路線で何十年もブランディングをやってきたアパレルブランドが、インフルエンサーに商品をバラまき、「安売り激安セール実施中」のような訴求で何度も広告が出てきたら、これまで好きだったブランドでも白けてしまわないでしょうか?運用型広告に期待されている役割は、ブランディングでは無く、売上や費用対効果に責任を追っているケースも多いと思います。その際、売上を上げることとブランドを守るということとが相反するケースも少なくありません。そういう難しい状況であっても、ブランドイメージを守りつつ売れる方法を考えていける広告運用者が望ましいと考えます。

7.一般的な倫理観等と照らし合わせて炎上リスクを回避するスキル

広告は炎上リスクが常に伴います。センシティブな話題にずけずけと踏み込むような広告を出していると、キャプチャを1枚撮られてSNSに上がって批判的に拡散してしまう可能性がいつでもあります。防ぐためには、まずは炎上しやすい話題(格差・政治・宗教・人種・ジェンダー・災害・戦争など)は、経営者の意志と覚悟のもと意図的に配信したいケースを除いては、避けるべきだと考えます。何が炎上しやすい広告なのかを見抜くセンスを養うためには、ふだんからTwitter等のSNSを利用し炎上していく人々を観察して、炎上リスクがあるかどうかを判断できる感覚を養うといいのかなと考えます。

オペレーションを効率化する

8.アクセス解析ツール(Google Analytics, アドエビス, ウェブアンテナ等)の設定・分析スキル

広告配信のパラメータ設定をして、データを取得・分析して目標達成のために役立つ教訓を得ることができるケースがあります。特に利用している媒体が多いビジネスだと、媒体管理画面上のコンバージョンと合わせてアクセス解析ツール上のコンバージョンも合わせて集計することで、実際のビジネスへの貢献度をより正確に測ることができ広告費の配分をより精密に設計することができます。

9.Googleタグマネージャ、Yahoo!タグマネージャの設定スキル

利用する広告媒体も複数あるケースがほとんどですし、動的リマーケティングなどタグのカスタムが必要な局面も多いため、今やタグマネージャはほとんど必須だと感じます。広告運用者が自分で編集や設定が出来た方がスムーズに進む局面が多いように感じます。もしタグマネージャを利用する機会があったら積極的に設定などやってみて慣れてみることをおすすめします。以下の記事も参考にしていただければ幸いです。

参考:ゼロから始めるGoogle タグマネージャ
参考:今日から始めるYahoo!タグマネージャー

また、タグマネージャやアクセス解析ツール等で利用することも多い正規表現も抑えておいた方がよいかと考えます。

参考:運用型広告の運用者がおさえておきたい正規表現、基本の「き」

10.データフィードの仕組み・仕様を理解して設定のディレクションを行うスキル

運用型広告では、Google アドワーズの商品がリコメンドされる動的広告、ショッピング広告、Facebookの動的広告、Criteo、Indeed等さまざまな広告媒体でデータフィードを利用します。データフィードを利用した配信メニューの導入を提案する機会は体感ですがかなり多いです。そのため、まずはデータフィードとは何なのか?どのように利用するのか?仕組みや導入方法について理解しておくことをおすすめします。(とはいえ、なかなか実際に利用するビジネスに携わらないと細かい設定面など覚えられないと思うので、仕組みや仕様だけでもチェックしておくことをおすすめします)

以下の記事でもおさらいができるので、ぜひ参考にしてみてください。

参考:今日から始めるGoogle アドワーズ ショッピング広告、スタートアップガイド
参考:データフィードを使った商品リスト広告、動的リマーケティングの成果を上げるために行いたい3つの習慣

11.Google アドワーズと連携できるGoogleの各サービスの概要と連携して何ができるのかを説明できるスキル

Googleにはさまざまなサービスがあり、Google アドワーズと連携して広告配信に生かすことが可能です。Google Analytics, Search Console, Google Merchant Center , YouTube, Googleマイビジネス, Google Firebase, Google Playなど様々なサービスと連携することが出来ます。実際にビジネスとして担当して触る機会が無いとなかなか細かい設定方法までは身に付きませんが、それぞれのサービスが、どういうサービスでどのようにGoogle アドワーズと連携することが出来るのかだけでも把握しておきましょう。

私たちのブログでもいくつかはピックして解説しています。

参考:広告運用者のためのGoogle アナリティクス活用:Google アドワーズと連携すると使える3つの便利機能
参考:Googleマイビジネスとアドワーズの連携方法とよくある3つの質問

12.Javascriptを読んで修正ができるスキル

広告運用をするうえではjavascriptが最も重要なプログラミング言語なのかなと考えています。多くの広告媒体の広告計測用のコードはjavascriptで記述されています。動的リマーケティングなどリコメンド型の配信のタグを設定する際には、javascriptのカスタムが必要なケースがあります。そのような局面で、自分で1から書けなくてもいいのですが、簡単に編集ができると進めやすいと考えます。

Google アドワーズのAPIもJavascriptベースで利用することができるので、レポートの自動化等まで自分で進められれば大きな武器になります。また、Googleスプレッドシート等Googleのツールの活躍が多いので、Google Apps Script(内容はほとんどJavascript)が読み書きできるようになれば業務の効率化が図れます。

13.バナーやLP等の制作スキル

簡単なバナーが作れたり、LPの簡単な修正ができたり、工数を正確に見積もりつつ的確なアドバイスができたり、もしある程度の知見があれば役に立つスキルです。

ただ、とても奥が深いスキルなので、何でも自分でやるのではなくて、得意な人に任せた方が良い結果が出やすいとは思います。なお、直接自分が制作等できなくても、良いクリエイターさんへのコネクション等ももしあれば、有益だと考えます。以下の記事にもバナーについてはまとまっているので参考にしてみてください。

参考:運用型広告で利用するバナー作成の依頼時に役立つトンマナについて

14.統計学をさわりだけでも理解してデータを読み解くスキル

運用型広告はデータが可視化されるため、レポートには膨大な数値が並びます。しかし、それらのデータのほとんどに意味はありません。なぜなら、レポートの膨大な数値の中に、統計的に有意な差が生じていて何かしらの教訓を読み取れるケースは実は少ないからです。統計的に有意な差が出ていないと、今後も現行のデータ通りに推移する見込みは低いと考えられます。

統計学の難しいモデルを理解する必要はありません。統計学の入門書のさわりだけでもいいので、正規分布などの統計の基本的な考え方だけでもチェックすることをおすすめします。統計に接する心得が全く無いと、無意味な数値を見て喜んだり不安になったりして、それを元に次のアクションを取ってしまいます。無意味な数値を元にアクションを取ると、以下のように工数をかけて頑張っているのに堂々巡りで一向に改善しない…という事態になります。

  • 本当は良い成果を出せたはずの広告文が少ないデータ量で停止される
  • 本当は悪い成果の広告が初動で成果が上振れたため過大に評価されて過剰にコストを投じらる

これは、何もしないより悪いです。なぜならアクションのための工数が掛かっていて、無駄にリソースを浪費しているからです。

データから有意義な教訓を得て先に進むためには、そもそも意味のあるデータを得られるように配信を設計する(データの母数を取れるようにする、リサーチ等もとにそもそも勝算の高い広告のみを追加する、傾向に違いの出そうな広告から優先的にテストする等)ことも重要です。A/Bテストのための心構えは以下にまとまっているので、参考にしてみてください。

参考:失敗しないA/Bテストのための心構え

最後に

以上さまざまなスキルを見てきました。広告運用者に求められるスキルの範囲はかなり広いと思います。全てをいっぺんに極めるというのは不可能なので、まずは目下担当しているビジネスにとって重要そうなスキルや、ご自身に合っていそうなスキルについて少しずつ勉強してみると、広告運用者としてひいてはビジネスに携わる人間としてステップアップできるのかなと思います。

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