新規案件のリスティング広告やFacebook広告などを筆頭とする運用型広告アカウント構築を実施する際、果たしてどこから手をつけたらよいか……。早速キーワード洗い出しや、広告グループ作成、ターゲティングの設定からスタートしてもいいのか?日頃から悩んでいる方も多いのではないでしょうか。
弊社ではアカウント構築に入る前に、まず必ず自社(クライアント)のビジネス・競合・顧客の分析を行い市況を整理しています。本記事では、ビジネスや強みの分析・競合分析のやり方とポイントを運用型広告のマーケティングに即した形で書いています。
ではいきます。
目次
基本的な2つのフレームワークの理解があると便利
「3C分析」を怠らなければ致命傷は防げる
3C分析では、ビジネスに関係するプレイヤーを(顧客:Customer)、(競合:Competitor)、(自社:Company)と3つに分類し、それぞれを分析します。文字だけ見れば分析するのは当たり前のことのように思いますが、意外と陥りがちなのが特定競合の企業の特定の要素に固執して消耗戦に持ち込まれるという状況です。最も理解すべき要素の一つとして顧客のペルソナやニーズがありますし、分析対象の競合も後述するファイブフォース分析からヒントを得て新規参入の企業・代替品までマークできると新しい発見もあるものです。
「ファイブフォース分析」の考え方理解により視野・視点・視座を柔軟に変える思考をプラスする
ファイブフォース分析とは、マイケル・ポーターの著書「競争の戦略」で広く知れた手法で、業界・ビジネスの収益性を決める5つの競争要因から、業界の構造分析を行います。具体的には下記の要素に着目します。
- 「買い手の交渉力」
顧客の値引き交渉など、様々な買わない理由を作られる脅威
- 「売り手の交渉力」
原材料の高騰、寡占、独占、スイッチングコストが高いなど、自社商品やサービスの原価コストが上がってしまう(下がらない)要因による脅威
- 「新規参入の脅威(競合)」
市場シェアを獲りにくるため低価格路線・全く新たなキャッシュフロー・ビジネスモデルの競合出現による脅威
- 「類似品の脅威(競合)」
同じ業界同士の競争、一般的に語られる「競合」の脅威
- 「代替品の脅威(競合)」
代わりとなる商品やサービスの価格、差別化、手軽さ、ブランド、よりコスパの良い結果がもたらされる可能性による脅威
※5つの要素については参考文献によっては前述のものと異なる表現で説明されますが、意味の大枠がブレないと思われる範囲で少し工夫して記載しています。
この2つの基本的なフレームワークの理解があると自社分析・競合調査をよりスムーズかつ効果的に行うことができます。
競合調査の主な目的は検索連動型広告訴求で「言わないこと」を決めること
目的の前に基本的な2つの考え方を先にお伝えしましたが、運用型広告のプレイヤーという立場においてはほとんど「検索連動型広告で比較されたときに競合に劣る訴求をしないよう、言わないことを決めるため」に市況・競合調査を行っていると言っても過言ではありません。
不要な広告訴求を削るための競合調査
Google検索などを利用するユーザーは、具体的な目的があり検索行動をとります。そこで広告がいくつか並んでいると、自分の目的を満たしてくれなさそうな広告や明らかに訴求内容が劣っている広告は(例えば同じ商品なのにA社は5,000円で、B社は1,000円だとしたら?)スルーしてしまいますよね。みなさんも日々、無意識レベルに検索行動とスクリーニングを行っていると思います。
競合よりも優位な要素がたくさんあるのに、あえて少ない文字数の中に競合に劣る訴求を入れ、結果として「選ばれない広告」を作ってしまうのは非常に勿体無いことです。
ビジネスモデル・集客方法が近い競合を多めに、代替品となりうる競合も洗い出しておく
弊社では多くのクライアント周辺で7社前後を分析しています。メインの競合となりそうな企業を5社以上・ファイブフォースの考え方で代替品となりうる競合も混ぜておくと良いでしょう。
※もちろんニッチなビジネスモデルでは直接の競合がいなかったり、寡占業界だったりでピックアップすべき社数は変わってきます。
時間がなければ主要な検索キーワードでの競合の広告文訴求から、肌感をつかむのも手段
競合調査をする際メインキーワードで検索連動型広告を出稿している会社は実際の競合になりやすく、比較対象としてピックアップされてきます。時間がとれない場合は実際の検索画面を見て、競合の広告文を見て負けない訴求を設定するという手段は急場凌ぎであってもやっておきたいところです。
※ただし競合の広告訴求に引っ張られ特定の要素の比較に気を取られ、ユーザーの本当のニーズを見失う危険性もありますのでご注意を。
競合分析の結果をどのようにアウトプットするか
ここまで記事をお読みいただいた皆さんはきっと、実際にどのようなアウトプットを作成しているか気になってることと思います。今回は特別に弊社の「競合分析シート」のサンプルをいくつかのポイントとともに公開します。
「競合分析シート」作成時に気をつけているポイント
- 一覧表にまとめて可視化する・誰が見ても理解できる成果物に落としこむ
- ○×や数字を中心とした「定量的データ」で大部分の項目が埋まるようにする
- 各項目について、明らかに1社優位なデータがある場合は、自社(クライアント)以外であってもハイライトしておく
- 「買ってよかった人」の口コミや備考など「定性的データ」フリーテキストは終盤に持ってくる
- 慣れるまでは、細か過ぎるくらい項目を分けて調べてみる。慣れてきたら、「訴求のために比較したい項目だけ取り出して」調べてみるのもOK
完成した表のサンプルが下記です。
弊社ではこのようなシートに落とし込んでいることが多いです。参考までにご覧ください。数字やテキストの左右揃え、センタリングなどは見やすくなるのであれば基本に従いつつもある程度自由でいいと思います。
※上記はあくまでサンプルで、実際には弊社はもっと比較項目・比較対象社数を増やして、場合によってはこの調査に1営業日かけるようなケースも多いです。
※余談ですが、支払手段は意外にも大きなインパクトを感じるケースが多いですね。代引き・後払い・クレカ「AMEX」での支払未対応によりCVRが落ちていることも!?上記には記載していませんが、Amazonログイン&ペイメントなど新しい決済手段も今後要チェックです。
※ファイブフォース分析の考え方を活かして、競合には検索のメインキーワードでバッティングしやすく近いビジネスとして比較される商品だけでなく、新規参入の企業や代替品などもいくつかピックアップするとキーワードや配信先、広告訴求がより柔軟に発想できるようになります。
「買ってよかった人」の口コミを各社分析しておくとペルソナ設計・売り方のヒントになる
広告代理店の立場だとなかなか時間もリソースもなく具体的な調査が実施できなかったりしますが、Yahoo!知恵袋や教えて!gooなどを筆頭とした口コミサイトでの検索やクラウドソーシングを活用することにより「対象の商品を買って使ってみて良い体験をした方」のペルソナ情報も集めておくことをオススメします。
さらには実際にクライアントの商品・サービスを使って体感してみる、コールセンターなど商品・サービスのお客様に近いポジションにいる方の声を拾えると有用な定性的なデータも集まりやすいです。(主に顧客分析)
※前述の通り、定性的データは表の終盤行にまとめてしまうとスッキリします。
まとめ:自社競合分析が可視化できているとPDCAが的確かつ早くなる
オンラインでもオフラインでもまっとうにマーケティングを実施する上では避けては通れない競合分析について書きました。特に検索など能動的な行動から引き起こされる購買では競合商品・サービスとの差を比較されやすく、この競合分析が中長期的にも施策立案と運用に活きてきます。実際に弊社でも競合分析表をしっかり作っていたために救われたケースにいくつも対峙してきました。
広告主・運用プレイヤーの時間は有限ですので分析を100%緻密に実施する必要はないと思いますが、施策を洗練するための下ごしらえとしてオススメします。