「ビジネス全体を気に掛ける」からこそ、専門性がより輝く

「ビジネス全体を気に掛ける」からこそ、専門性がより輝く

新年あけましておめでとうございます。

2025年はAIがさらに進化し、マーケティングを取り巻く状況も大きく変化しそうな予感があります。こうした時代だからこそ、“運用型広告のスペシャリスト”として活動してきた私たちアナグラムは、あらためてこのように問いたいと思っています。

「私たちは本当にお客様のビジネスが市場で勝つことに貢献できているのだろうか?」

アナグラムは、Google広告、Yahoo!広告、Meta広告などの運用型広告を中心に、長年にわたって多くの企業のプロモーションを支援してきました。


ただ、広告運用の「専門性」を期待される私たちが、あえてビジネス全体を理解する姿勢を大切にしているのには理由があります。それは、専門性を本来の形で最大限に発揮するためには、自分の領域外にも気を配り、事業全体を見渡す視点が欠かせないと考えているからです。

なぜアナグラムが「専門外も気に掛ける目線」を重視しているのか、そしてそれを実現するためにどんな仕組みを用意しているのかをお話しします。


なぜ「ビジネス全体を見渡す視点」が必要なのか

専門性は、私たちの強みの核となるものです。しかし、専門性だけに頼るアプローチでは、ビジネスの変化やクライアントのニーズに十分応えることができません。ビジネス全体を見渡す視点が必要な理由を考えていきましょう。

変化や新しい仕事に対応するため

クライアントの事業フェーズや市場環境は、常に変化しています。例えば、広告運用で成功したクライアントの次なる課題は、ウェブサイトの改善や問い合わせ後の対応といった広告以外の領域に移ることがよくあります。ここで「自分の担当はここまで」と線を引いてしまうと、新しいニーズに応えられなくなり、結果としてクライアントとの関係性や成果を維持できなくなるリスクがあるでしょう。専門性は経年劣化していくのです。

さらに、競合他社もサービスレベルを高め、より包括的な支援を提供するようになっています。専門性に閉じこもっていると、競争優位性を失うだけでなく、新しい仕事の機会を逃してしまう可能性があります。このような環境で成果を出し続けるためには、自身の専門分野を超えた視野を持つことが重要です。

専門性を事業の成果に直結させるため

専門性がビジネス全体の成果に貢献するためには、それがどのように機能するのかを正しく理解し、活かす必要があります。例えば、広告運用で短期的なコンバージョン数を増やすために値引き施策に頼りすぎると、ブランド価値を損ない、長期的な収益の伸びが阻害されかねません。同様に、エンジニアが顧客ニーズや収益モデルを理解せずに機能を開発すると、優れた技術が使われないまま終わる可能性が高まるでしょう。

事例として、以下のような不幸なギャップが生じることもあります。

  • 短期的にCPAを下げても、リターゲティング広告の依存が増え、実売数が減少
  • 資料請求数は増加したが、フォローの遅れにより商談化率が低迷
  • 短期キャンペーンで一時的な売上は増えたが、リピーターを獲得できず赤字に

このような状況を回避し、専門性を最大限活かすには、KPIに囚われずビジネス全体を俯瞰する視点が欠かせません。

「ビジネス全体を見渡す視点」を持つことで、専門性を活かしながら変化に対応し、より大きな成果を生み出すことが可能になります。これこそが、私たちが専門領域を超えた視野を重視する理由です。

専門領域を超えた視点には“ボトムアップ”の仕組みが重要

以前は専門領域を超えるには高いハードルが存在していましたが、いまや生成AIの進化によりそのハードルは大きく下がっています。例えば、広告運用者がクリエイティブ案をAIで迅速に作成したり、データからインサイトを自動で抽出するといった活用法が現実化しています。未知の領域であっても、生成AIを上手く活用できれば、最低限の知識を得たり解決の糸口を掴んだりは比較的容易になってきているのではないでしょうか。

しかしながら、生成AIの持つポテンシャルを十分に引き出し、ビジネス全体で成果を上げるには、現場が主体的に動ける“ボトムアップ”の仕組みが不可欠です。生成AIに限りませんが、トップダウン型の意思決定だけでは、現場の独自性や迅速な試行錯誤、想定外の新しいアイデアや解決策を生む力を阻害してしまうと考えています。

ここでは私たちが取り組んでいるボトムアップの仕組みをいくつかご紹介します。

役割の垣根を最小限にする(一気通貫)

アナグラムでは、「一気通貫」の体制を採用することで、現場が迅速に対応できる環境を整えています。一人のコンサルタントがクライアントの提案から実行までを一貫して担当し、課題解決に必要な打ち手を即座に提示します。この体制であれば、コンサルタントが直接クライアントの目標や課題を聴き、課題に対して適切な打ち手を提示可能です。

クライアントとの間に介在する人が多ければ多いほど「本当の課題はなんなのか」とピントがずれてしまうこともありますが、一貫して担当することで回避しやすくなります。

なお、広告運用者とデザイナーがペアとなり、提案から実行、次の施策までを一緒に進めるケースもあります。この場合も、デザイナーはデザインだけといった分業は行わず、提案・企画から関わりレポーティング、次のアクションまで全ての工程に関わります。

デザイナーも加わり直接クライアントと提案・議論をすることで、チームとして2馬力・3馬力になり、よりよいアイディア・成果を出しやすくなります。

必要以上に役割を細分化せず、仕事に余白を設ける

役割を細かく分けすぎて柔軟性を失うと、担当者が課題を認識していても、自分の領域外だと対応が難しくなります。その結果、クライアントの事業フェーズやニーズに即した柔軟な提案ができなくなり、担当者自身にとっても新しい仕事や成長の機会を逃すというもどかしい状況が生まれがちです。

クライアントの事業が進化したり、担当者のスキルや視野が広がるにつれて、次第にその枠組みが窮屈さを増し、結果として成果を高める妨げになってしまうのです。そのため、仕事に一定の余白を生み出せるよう、必要以上に役割を細分化するのは避けています。

一気通貫の体制については、以下の記事もぜひご覧ください。

多様な視点を取り入れる(グロースハック)

現場での柔軟な意思決定をさらに支える仕組みが、アナグラムの「グロースハック」です。

アナグラムでは、担当外の案件を分析し合う定期的な時間を設けることで、専門領域に閉じがちな視点を広げ、多様なアイデアを生み出す環境を整えています。

例えば、以下のような具体例があります。

  • 「確度の高い方は本当はすぐに商談をしたい気持ちがあるため、サンクスページに商談予約フォームを置くと商談化率が改善するのでは?」⇒商談化率が大きく改善
  • 「初見だとLPが分かりにくく感じたけど、サービス紹介動画を見たら納得だったので、サービス紹介動画をLPの最初に載せるのが有効では?」⇒コンバージョン率が大きく改善
  • 「既存顧客は女性中心だが、このブランドを推せば男性の関心を引くクリエイティブを作れるのでは?」⇒手薄だった男性からの獲得を増やせている
  • 「コンバージョンの母数が非常に少ないので、広告媒体推奨の目標コンバージョン単価ではなくて固定CPCの方が費用対効果が上がりやすいかも」⇒CPAが改善

ちなみに、これまでは週に1回だったものを、2024年からは週9コマ(9社)分に拡大しています。これによりすべてのクライアントが4,5か月に少なくとも一度は多様な視点に触れられるようになりました。

デザイナー、広告運用者が、いち消費者としての個人的な経験も踏まえつつ、1つのアカウントを見れば、専門領域はもちろん、「専門領域の盲点」を突くようなアイデアや指摘も生まれやすくなります。

グロースハックについては、以下の記事もぜひご覧ください。

組織体制で現場主導を実現する(逆ピラミッド・170度評価)

さらに、逆ピラミッド構造という考え方を採用し、経営層・管理職が現場を支援する体制を整えています。これにより、上位の判断を仰いでスピードが遅れるといった事態を回避し、現場が即時に動けることを優先しています。

その一環として、広告運用者(クルー)には売上ノルマを置かず、顧客満足度や「お客様にとってベストな提案をできたか」を評価の基準としています。

これを可能にするために導入しているのが170度評価です。

170度評価とは、被評価者よりも上の役職者全員が評価に関与する仕組みです。被評価者と同等あるいは下のメンバーは評価に関与しないため、360度や180度ではなく170度としています。

例えば次のような、定量的な数字は上がらないけれどファインプレーという場面は数多くあります。

  • SNS運用の知見を持つメンバーがクライアントの課題解決をサポート
  • 生成AIによるクリエイティブ案を活用して提案の質を高める

このような数字に表れない定性的な実績を、チームリーダー以上の全員で議論することで、直属の上司だけでは見えていなかった部分を保管しながら評価の正当性・納得性を高めることも目的としています。

評価制度については、以下の記事もぜひご覧ください。

このように、現場主導を実現するための組織体制や評価制度を設けることも、専門領域を超えた視点をもつには大切だと考えています。

2025年は「専門性 × ビジネス全体視点」をさらに強化していく

2025年はAIや自動化がさらに進み、広告業界に限らず多くのビジネスが大きく変化するでしょう。こうした時代だからこそ、私たちは運用型広告の枠内だけを最適化するのではなく、ビジネス全体における課題や価値を見据えて支援を行いたいと考えています。

「なぜ広告の専門家が、そこまで事業全体を気に掛けるのか?」


それは、専門性を最大限に活かすためには、専門領域の外で起きていることにも目を向けないといけないからです。結果的に、ビジネス全体を理解しているからこそ、広告運用という専門領域でより大きな成果を出すことができます。これは「専門性を薄める」のではなく、かえって「専門性を濃くする」ための取り組みでもあるのです。

変化の多い時代です。個々の施策や、専門スキルだけを切り取って見ると、すぐに陳腐化してしまうものも少なくありません。しかし日々の試行錯誤の積み重ねとして、「クライアントと二人三脚で事業に向き合い、短期・長期の両軸で考えながら、成果を高めていく仕事」ができると、それは長い時間軸で見ると突出した成果を生みますし、どんな環境下でも頼りにされる真の強みになるはずです。

実際に取り組んできた事例について、詳しくは当社の口コミ・事例ページもぜひご覧ください。多種多様な業界・規模の企業と一緒に走るなかで、ひとつずつ課題をクリアしてきた足跡をご覧いただけると思います。

新たな一年が、皆さんにとって飛躍の年となりますように。2025年もアナグラムをどうぞよろしくお願いします!

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