2016年度消費者白書から読み解く、広告運用者・Web担当者がチェックしておきたいポイント

2016年度消費者白書から読み解く、広告運用者・Web担当者がチェックしておきたいポイント

2017年6月6日、消費者庁より2016年度の消費者白書がリリースされました。消費者白書について、消費者庁のWebサイトでは次のように説明がされています。

消費者白書は、消費者基本法の規定に基づく消費者政策実施の状況と、消費者費者安全法の規定に基づく消費者事故等に関する情報の集約及び分析の取りまとめ結果の報告書として発行しているものです。

引用元:消費者調査|消費者庁 : http://www.caa.go.jp/information/

ざっくり言うと、1年間を通して消費者庁が行った消費者政策の状況と消費者庁に寄せられた事故やトラブルの集約分析をした報告書です。また同時に消費者に関する次の4つの調査結果も掲載されています。

  • 消費者意識基本調査
  • 地方消費者行政の現況調査
  • 風評被害に関する消費者意識の実態調査
  • 消費生活に関する意識調査

報告書の内容は実店舗でのトラブルからウェブ上のサービスの利用に関する相談、様々な角度から調査した消費者動向まで多岐に渡りますので、詳しくは元資料をご覧いただくとして、今回はリリースされた消費者白書の中でも、マーケティングに関わる運用型広告運用者やWeb担当者としてぜひ知っておきたい次の3つのトピックをピックアップし、 内容をご紹介します。

  • インターネットに関するトラブルの傾向
  • 消費者のインターネット通販の利用動向について
  • 若者の消費に対する意識

調査結果全体は以下より確認できます。

参考:消費者白書|消費者庁

1. 消費生活相談件数の推移

報告によると、全国の消費生活センター等に寄せられた消費生活相談の総件数は2015年度の93.5万件から2016年度には88.7万件と前年度を下回りました。架空請求に関係する相談が急増した2004年前後と比較すると全体の件数は減少しましたが、未だに毎年80万件以上の相談が寄せられています。依然として相談件数が高水準である理由として、消費者白書では次のように報告されています。

そのほか、2016年の消費生活相談件数が、この数年と同様に依然として高水準である要因として、消費生活にこれまで以上に情報化が浸透していることが挙げられます。

第1部第2章でも紹介するように、携帯電話が普及する中、特にスマートフォンへの移行により、従来に比べ消費者一人一人がウェブサイトにアクセスする機会が増えています。それにより、インターネット通販で商品やサービスを購入する機会が増えたり、ウェブサイトを利用して様々な情報を簡単に入手できるようになったりする等、便利になった反面、トラブルに巻き込まれるケースも比例的に増加しています。また、ソーシャルメディアを通じてコミュニケーションの在り方も多様化し、メリットもある一方、そこからトラブルへとつながっている相談も目立つようになってきています。

さらに、65歳以上の高齢者の生活にもこれまで以上に情報化が浸透していることも大きな要素の一つです。

引用元:平成29年版 消費者白書 P.23、P.24より

 

図表I-2-1-20と図表I-2-1-21を見ると、多くの年代でスマートフォンの保有率が年々高まり、インターネットを利用する割合も同様に伸びてきているということは、単純にインターネットの利用者数が増えているとも言えますので、それに応じてトラブルに巻き込まれるケースが増え、相談件数も高水準で推移しているというのは納得できますね。

2. インターネット通販に関するトラブルの傾向

P.33/販売購入形態別の相談数では「通信販売」の割合が増加

2016年度にトラブルが発生した購入形態として全体では「店舗購入」の割合が減少し、「通信販売(インターネット、それ以外を含む)」 が増加していることが確認できます。

「インターネット通販」に分類される相談内容の内訳で最も多い約6割を占めるものは、アダルト情報サイト、オンラインゲームなどのデジタルコンテンツの販売で、次いで健康食品、化粧品、パソコンソフトなどの商品の販売が約3割、最後に興信所、アフィリエイト等の副業、モバイルデータ通信などのサービスの申込みに関わるものが1割です。

P.49/インターネット通販等で「お試し」のつもりが定期購入に

健康食品に関しては相談の多かった内容の具体例として、定期購入契約に関するトラブル事例が紹介されています。

2016年にインターネット通販で目立ったトラブルとして挙げられているのが、ダイエットサプリメント等の健康食品を「お試し」で購入するつもりが、知らず知らずのうちに定期購入契約となってしまう、というもの。2015年も前年度比2倍以上の相談件数でしたが、2016年には更に前年度の3倍以上の相談件数となり、全国の消費生活センター等へ寄せられる相談が急増しています。

具体的には、スマートフォンで「ダイエット効果や美容効果がある」、「初回お試し価格○円」、「送料のみ」等の広告をSNS等で見た消費者が健康食品を注文した際のトラブルが報告されており、例えば「5ヶ月以上の購入が条件」等の定期購入が条件であることが他の情報より小さい文字で表示されていたり、注文画面とは別のページに表示されていたりする場合があるとのことです。

消費者は商品を無料や数百円程度の低価格で購入できると考え、定期購入とは認識しておらず1回限りの購入だと思って申し込みをしており、翌月以降(2回目以降)
も商品が届いて初めて定期購入であると気付くケースが多くみられます。

また、解約を申し出ようとしたところ、「事業者へ電話がつながらない」、「初回価格だけ支払えばよいと思っていたのに事業者から通常価格を請求された」という相談もみられます。

消費者を欺くような施策は企業側にとってリスクにしか成り得ず、本来は検討にあがることすらないかと思いますが、機器の扱いやインターネットとの関わり方に不慣れなユーザーがそこに気付かずに定期購入してしまい、そのまま継続してしまうケースが存在することも事実です。

インターネットを利用したビジネスに携わる私たちとしては、トラブルの原因となり得る懸念は極力事前に排除、もしくは自発的に注意書きを明記するなど徹底し、消費者が不安なくサービスが利用できるよう、少しでもリスクとなり得る可能性には事前に対処したいものですね。

最低限の対策として、以下の点はサイト上の分かりやすい部分にしっかりと記載をしておきましょう。

  • 初回お試し価格と通常価格の違いを記載
  • 明確な送料表記
  • 定期購入システムの有無、ある場合には条件を明記
  • 薬機法、景品表示法を遵守した表現方法
  • 返品ポリシー、万が一トラブルの際の連絡先の明示 など

3. 消費者のインターネット通販の利用動向について

ここからは消費者意識・行動の状況の調査結果より一部内容を抜粋してご紹介します。

P.87/品質、機能を意識し、信頼性を重視して商品を選択する消費者が多数

図表I-2-2-1によれば、商品やサービスを利用する際に十分にその商品やサービスを理解してから選択する人は全体の約7割に上り、また図表I-2-2-2では買う前に機能・品質・価格等を十分に調べてから選択する人は全体の約6割に上るという結果が示されています。消費社は商品やサービスを利用する際、この商品・サービスは安心して購入できるかどうか?販売する店舗や販売元の事業者は信頼できるかどうか?を重視する傾向があるようですね。

更に、「多少高くても品質の良いものを選ぶ」項目で「ある程度当てはまる」以上を選択した消費者が55.5%と半数以上に登り、「衝動買いをする」「強くすすめられると断れない」項目を「ある程度あてはまる」以上を選択した消費者がそれぞれ3割以下という点も興味深い結果です。このことから「未だ衝動買いをする消費者は少数派」といえます。

P.90/インターネット通販の利用理由は「時間を気にせず買物ができる」が最多

「インターネット通販」を利用したと回答した人に対し、利用理由を聞いたところ、「営業時間を気にせず買物ができるから」 67.1%と最も高く、次いで「品ぞろえが豊富、インターネット通販でしか買えない商品があるから」(63.5%)、「安いから」(54.3%)、「様々な商品の価格や品質を比較しやすいから」(47.0%)、「店舗までの移動時間・交通費が掛からないから」(44.4%)となりました(図表I-2-2-6)。

(中略)

子育て期に当たることが多い20歳代及び30歳代の女性は「外出が困難だから」を選択した割合が他の年齢層より高いなど、ライフスタイルによる理由の違いもみられました。

引用元:平成29年版 消費者白書 P.90より

消費者がインターネットで買い物をする・サービスを利用する理由は当然ながら千差万別ですが、やはり「思い立った瞬間に」「自分の意思で」「可能な限り知りたい情報を調べられる」という点が、多様な生活スタイルを持つ現代の消費者のニーズにマッチしている点が大きいようですね。つまり、自社ウェブサイトやインターネット広告も、24時間常に誰かが見ている、という意識を持つことが大切です。

また、「持ち帰るのが大変」「外出が面倒だから」などに見られるように、一時的または継続的に特殊な生活サイクルを送る消費者への対応ができるかどうかも、大きなポイントになりそうです。手前味噌で恐縮ですが、弊社でも今年3月より個人宅配物の会社受取奨励制度を開始し職場で荷物を受け取れるようになりました。サービスを利用する側の環境を整備することも今後、重要となってきそうです。

P.134/商品やサービスの購入・予約等を 若者はスマートフォンで行う

図表I-3-1-19によれば、40歳代を境目に商品やサービスを購入・予約を行う際に利用するデバイスは大きく異なってくるようです。ただし、図表I-3-1-17スマートフォンの利用用途のグラフを見ると40-50歳代の「インターネットサイトでの検索」の割合も50.1~70.6%と決して低い数値ではなく、また、40-50歳代の消費者はスマートフォンよりもパソコン操作に慣れている人が少なくない世代であることも加味すると、最終的な購入や申込の段階にはパソコンを利用するものの、商品やサービスを知ることの入口としてはスマートフォンで検索をする消費者も多いのではないかと考えられます。

運用型広告でもここ最近ではGoogle アドワーズ、Yahoo!プロモーション広告共にクロスデバイス計測の導入が相次いでいることもあり、モバイル・パソコンを包括した戦略が更に重要度を増してきそうですね。

参考:Google アナリティクス リマーケティングリストがクロスデバイス対応へ

参考:Yahoo!ディスプレイアドネットワーク(YDN)コンバージョン測定機能が刷新

P.135/インターネットは50歳代以下のユーザーが商品やサービスを選ぶときに最も使う情報入手先

インターネットは情報入手先として15-50歳代までの幅広い年齢層の中で最も利用されている状況が読み取れます。そして15-50歳代が商品やサービスを選ぶ際、インターネットの次に参照している情報源は家族・友人・知人からであるという点、さらにはレビューにより購入決定をしたことがある消費者が20-50歳代の約9割に上るという点を踏まえると、商品やサービスの利用後に消費者の声を拾う仕組み造りは今後、避けては通れないポイントになりそうですね。

本記事の前半「P.87/品質、機能を意識し、信頼性を重視して商品を選択する消費者が多数」でも多くの消費者が商品・サービス購入の際に品質や信頼性を重要視する傾向があるという点に触れましたが、ここで言う信頼性には近しい人物のレビュー、インターネット上のレビューの影響も多く含まれるのではないかと考えられます。

また、年代を問わず多くの消費者がインターネットで情報を入手しているこの状況を考えてみると、もし現時点にてウェブサイトにおいて自社の商品・サービスの情報を十分に発信することができていない場合、現時点で既に致命的な機会損失が起こっている可能性もあります。

前半でご紹介した誤認を招くようなトラブル防止策と合わせて、いま一度確認いただくと良いかもしれません。

4.若者の消費に対する意識

最後に、若者の消費行動についての興味深い調査結果をご紹介します。

P.89/「コト消費」に関心が高い若者

図表I-2-2-3より、10~20歳代が現在お金を掛けているものは「食べること」「ファッション」に次いで、「スポーツ観戦・映画・コンサート鑑賞」「交際」が上位にランクインしており、今後お金を掛けたいものに関しては20歳代に「旅行」がランクインしています。また、図表I-2-2-14より「スポーツ観戦・映画・コンサート鑑賞」にお金を掛けていると回答した人の割合は、24歳までの年齢で高くなっている傾向が読み取れます。また、「今後節約したいもの」への回答では全ての年代で「車」が上位にランクインしている点も、最近の消費者心理を如実に表していると言えそうです。

ニュースやメディアなどでは若者の消費離れの深刻さがフォーカスされることが多い昨今ですが、若者はモノへの投資は控えめなものの、自身の経験や体験に繋がることへの投資には積極的、という見方もできそうです。

P.138/若者はSNSをきっかけに商品購入

図表I-3-1-25を見ると、若年層になるほどSNSの利用率が高く、若者の間ではもはやSNSの利用は日常生活の一部になっているとも言えそうですね。消費者白書の報告内では特に若者のSNS利用率の高さについて言及されていましたが、一方で30-50代のSNS利用率も30%以上となっており、決して低い数字ではないかと思います。50代に関しては僅かですが男性が女性の利用率を上回る結果となっていることも読み取れます。

また、図表I-3-1-26で示されるように、25~29歳女性において、公式アカウントからの情報をきっかけに購入やサービスを利用したユーザーの割合が著名人や有名人からの情報がきっかけになった割合よりも多いことも興味深く、お店やメーカーによるSNSの活用が今後のプロモーションやマーケティングの成果を大きく左右する可能性もありそうです。

最後に:運用型広告運用者・Web担当者として今後意識したいことは?

スマートフォンの普及と共にさらなるモバイルシフトが進み、加えて、今現在SNSを使うことが当たり前となっている10~20歳代のユーザーが今後の5~10年後に更に存在感を増してくることは、まず間違いないかと思います。

また、そのころには当然ながらインターネットの世界や各プラットフォームのシステムも更なる変化を遂げていることでしょう。運用型広告業界の動きとしても最近では各媒体がより一層パーソナライズ化されたターゲティングを可能とする仕組みづくりを進めていることもあり、特定のライフスタイルを持つ消費者に合わせたプロモーション方法も可能となってくるかと思います。

一方で消費者側の立場で考えてみると、配信によるリスクも存在します。具体的には、既に購入済にも関わらず延々と追いかけてくるバナー広告を気持ち悪く感じたり、購入の意思なく誤ってサイトを訪れてしまい、すぐに離脱したにも関わらずバナー広告が延々と表示されたり…などという可能性も考えられます。パーソナライズド広告配信の際には、明らかに対象外となるユーザーをできるだけ予め除外することも同時に心がけたいですね。

参考:「広告に接触すると買わなくなってしまう人をきれいに配信対象から外すこと」を可能にするリスティング広告のリターゲティングテクニック5選

今回の消費者白書の発表や調査内容を参考に、今一度、自社のサービス・広告は「適切な人」に「適切なメッセージ」を届けることができているか?を改めて見直してみる良いきっかけとなるかもしれません。世界のデジタル広告費がテレビ広告費を抜き、更にはモバイル広告費がデスクトップの広告費を抜くと予想され、歴史上にも過去前例のない規模の大きな変化の最中にあるインターネット広告ですが、誰もが未知の領域の中、日々手探りで様々な検証を行っているかと思います。誤解を恐れずに言えば1年前の情報が今日時点では化石のような情報になってしまうほどに変化の速い業界ですが、幸運にもその変化にいち早く触れることができる運用型広告運用者・Web担当者としてはこれから先の5年後、10年後を見据えながら活動していきたいですね。

参考:電通イージス・ネットワークが「世界の広告費成長率予測」を発表

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