
YouTube や TikTok などのソーシャルメディアプラットフォームの台頭により、ビジネスでも動画の重要度は年々増しています。
動画制作の手段として、Canva のようなブラウザで操作できるツールや、CapCutのようなスマートフォンアプリなど、手軽に制作できるツール・アプリを活用している方も多いのではないでしょうか。
一方で、それらの扱いやすいツール・アプリは「動きをもっとリッチにしたい」「細かく調整したい」など、機能面で要望に応えられないケースもあります。
Adobe社が提供する「Premiere Pro(プレミア プロ)」 のようなプロフェッショナル向けツールを使用すると、よりクオリティの高い動画を制作可能です。
今回は、Premiere Proの概要から基礎的な操作方法まで、事例を交えながら詳しく解説します。


目次
Premiere Proとは?
Premiere Proは、Adobe 社が開発したプロフェッショナル向け動画編集ソフトウェアです。30年以上にわたって進化を続け、現在では動画制作業界の標準ツールとして広く認知されています。
画像引用元:Adobe Premiere Pro公式サイト
Premiere Proは、その高度な機能と柔軟性により、幅広い動画制作プロジェクトに適しています。
- 広告やSNS用の動画
- ミュージックビデオ
- テレビ番組
- 映画
実は映画『シン・ウルトラマン』でもPremiere Proが編集作業の中心として使われたそうです。映像のプロの現場でも活躍しているツールだということがわかりますね。
参考:映画『シン・ウルトラマン』 | VFXと連携し映画制作の中心的役割を果たしたAdobe Premiere Pro
一方で Premiere Proでは作成が難しいものもあります。
- モーショングラフィックス
- VFX(ビジュアルエフェクト)
- 複雑なアニメーション
- インフォグラフィックス
Premiere Proは編集ツールなので、要素の移動、回転、拡大縮小などの基礎的なアニメーションは表現できますが、上記のようなアニメーションを作成することができません。このような表現を実現したい場合は、高度なアニメーションやエフェクトの作成を得意とするAfter Effectsを選びましょう。
After Effectsの概要や使い方については、こちらの記事で紹介しています。
Premiere Proの特徴
Premiere Proは、プロの映像作家も使う本格的な動画編集ソフトですが、「広告やSNS投稿用の動画を作りたい」「これから動画編集を覚えたい」という方にもぴったりのツールです。まずはPremiere Proの特徴から見ていきましょう。
- 高度な編集機能
1秒以下の細かな単位で映像を切り取ったり、音声を調整したりできます。複数の映像や音声を重ねて使うこともできるので、自由な表現が可能です。 - 豊富なエフェクト
色味の調整や文字の動き、カットの間を繋ぐエフェクトなど、映像を華やかにする機能が数百種類も用意されています。 - 優れた出力品質と互換性
高画質の映像が作れます。YouTube やインスタグラムなど、見せたい媒体に合ったフォーマットで出力・保存できます。 - 拡張性と連携性
他のAdobe製品との円滑な連携や、追加の機能をインストールすることでより便利に、表現の幅を広げることができます。 - 充実したサポートとリソース
公式のサポートページがあり、使い方を学べる動画もたくさんあります。初心者の方でも安心して上達できます。
公式サポート
https://helpx.adobe.com/jp/support/premiere-pro.html
公式チュートリアル
https://creativecloud.adobe.com/cc/learn/premiere-pro/web/edit-videos?locale=ja
これらの特徴により、 Premiere Proは幅広い動画制作ニーズに応える強力なツールとなっています。
料金プラン
Premiere Proは、Adobe の公式サイトから購入することができます。
個人で動画編集してみたい方は「単体プラン」を選びましょう。もし動画以外のAdobeのツールも検討している方は、「コンプリートプラン」がおすすめです。
制作フロー
ここからは、以下のサービス紹介動画を例に、Premiere Proを使った基本的な制作フローを10のステップに分けて解説します。
大まかな構成案は以下の通りです。
<動画制作フロー>
STEP1:新規プロジェクト作成
STEP2:シーケンス設定
STEP3:素材のインポートと配置
STEP4:長方形ツールで背景を作る
STEP5:テキストを入力
STEP6:キーフレームを追加
STEP7:エフェクトを追加
STEP8:トランジションを追加
STEP9:オーディオの調整
STEP10:書き出し
説明の中に動画制作ならではの基本用語が出てきますので、こちらの記事も合わせてご覧いただくとスムーズです。
はじめに:操作画面の説明
Premiere Proの操作画面は、基本的に4つのパネルで構成されています。
①プロジェクトパネル: インポートした素材を管理します
②プログラムモニター: 編集中の映像をプレビューします
③タイムライン: 実際の編集作業を行う場所です
④エフェクトコントロールパネル: 適用したエフェクトの調整を行います
STEP1:新規プロジェクト作成
まずは「新規プロジェクト」を作成します。
1.左上の「新規プロジェクト」ボタンを選択します。
(「ファイル」→「新規」→「プロジェクト」でも可能です)
2.プロジェクト名を入力後、保存先を指定し、右下の「作成」ボタンを選択します。
STEP2:シーケンス設定
次にシーケンスを設定していきます。シーケンスとは、動画や音声などの素材が並んだ編集データのことで、いわゆる設計図のようなものです。
各媒体の入稿規定をよく確認し、正しく設定しましょう。異なったまま作成した場合、作成後に入稿・投稿できない可能性もあるので要注意です。
今回の事例では正方形サイズで作成しているので以下の設定にします。
1.「ファイル」→「新規」→「シーケンス」を選択します。
または「プロジェクトパネル」のを押し「シーケンス」を選択します。
2.「設定」タブを選択します。
3.以下の設定を行います:
- 編集モード:カスタム
- タイムベース:30.00フレーム/秒(一般的なウェブ動画の場合)
- フレームサイズ:1080x1080(1:1)
- ピクセル縦横比:正方形ピクセル(1.0)
- シーケンス名:TEST(任意に名前を付けましょう)
するとタイムラインパネルに「シーケンス」が表示されます。ここが動画素材やオーディオ素材を配置する場所です。
左側の「V1〜3」とかかれたトラックが動画素材用、「A1〜4」と書かれたトラックはオーディオ用トラックで、追加削除も簡単にできます。
STEP3:素材のインポートと配置
次に用意したイラストやBGM、効果音といった動画に必要な素材を読み込んでいきます。
1つ1つプロジェクトパネルにインポート(読み込み)する方法もありますが、特定の「フォルダ」を指定して一括でインポートすることもできます。ここではフォルダを指定する場合のインポート方法を解説します。
フォルダを指定するインポート方法
1.「ファイル」→「読み込み」、もしくはプロジェクトパネルの「メディアを読み込み」ボタンを選択します。
2.素材が格納されたフォルダを指定し、を選択します。
3.プロジェクトパネルに素材があることを確認。
4.プロジェクトパネルから必要な素材をドラッグし、以下のようにタイムライン上にに配置します。
上記は素材を1つのフォルダに格納し、それをPremierePro上で指定するやり方です。なぜそのやり方をしたかと言うと、PremiereProは、それぞれの素材の保存場所を覚えているため、以下のような状態になった場合にリンク切れの原因になり、あとから編集できなくなる可能性があるためです。
- 素材データを消してしまった
- 素材データの保存場所を変えてしまった(外付けHDDで保存して忘れてきた)
- 素材データ名、または保存していたフォルダ名を変えてしまった
個人で作成している場合、復旧も可能かもしれませんが、共同作業をしている場合、これらを全て把握することが困難になりトラブルの原因になります。
そのため、あらかじめプロジェクトを作成した保存先に素材専用のフォルダを作成しておき、そこで素材を管理する上記のやり方を推奨します。
もし、別々の場所から素材をインポートした場合にも、PremiereProには最終的に1つのフォルダにまとめる機能もあるのでご紹介します。とくに、他の方へ業務を引き渡す際には必須になるのでぜひ覚えておきましょう。
素材をあとからフォルダにまとめる方法
1.「ファイル」→「プロジェクトマネージャー(M)」を選択します。
2.以下の設定をし、「OK」を選択します。
- 処理後のプロジェクト:「ファイルをコピーして収集」
- オプション:任意
- 保存先パス:分かりやすい場所に設定
最後に保存先を確認し、プロジェクトファイルや素材が全て格納されていることを確認してみてください。
STEP4:長方形ツールで背景を作る
タイトルの背景となる青い部分(外側の枠のように見える要素)を、長方形ツールを使って作成していきます。
1.①長方形ツールを選択します
2.②プログラムパネル上で四角を作ります。
3.③選択ツールをクリックし、プログラムパネル上の作成した四角を選択します。
4.右メニューの④エッセンシャルグラフィックスを選択します。
※エッセンシャルグラフィックス・・・画像やテキスト、図形といった要素のサイズ・位置・塗り・境界線などを簡単に調整できる機能
5.⑤サイズ調整、⑥整列、⑦塗りを以下の設定にします。
- WとH:1080
- 塗り:#0E97F7
- 整列:左右垂直中央揃え
続いて内側の背景も作成しますが方法は上記と同じなので割愛します。
- WとH:980
- 塗り:#BBDCF2
- 角丸の半径:10
- 整列:左右垂直中央揃え
以上で冒頭部分の背景は完成です。
2カット目以降の背景も同様の作成方法なので割愛します。
STEP5:テキストを入力
文字ツールを使ってテキストを入力していきます。
1.①文字ツールを選択します。
2.②プログラムパネル上にテキストを入力します。
3.③エッセンシャルグラフィックスを選択し、文字の細かな設定を④テキストと⑤整列で調整します。今回は上記の図の設定で作成していますが、好みや顧客の要望に沿って適宜調整してください。
STEP6:キーフレームを追加
ここでは動画編集をするうえで絶対覚えておいた方がいい「キーフレーム」の追加方法を解説します。
キーフレームとは、動画に変化を与えるための始点と終点を指します。例えば徐々にテキストが表示される3秒のアニメーションを作成する場合、0秒地点と3秒地点にキーフレームをうち、それぞれの不透明度を0%、100%と設定します。するとツール内部で自動的に計算され、0秒から3秒の間に徐々に表示されるアニメーションが完成します。
今回はテキスト部分をフワッと表示させる表現なので、不透明度をキーフレームで調整していきます。
※キーフレーム設定できるものはのアイコンが目印です。
1.アニメーションを付けたい要素を選択、今回はテキストを選択します。
2.エフェクトコントロールパネルで、アニメーションを適用したいプロパティ(例:不透明度)の横にある①アニメーションのOn/Offをクリックしキーフレームの設定ができるようにします。
3.②タイムラインパネルに移動し、始点と終点にしたい位置で③キーフレームを追加します。設定すると始点と終点に
がついているのが確認できます。
始点の不透明度を0%
終点の不透明度を100%
以下のような動きになると思いますので、他のテキストにも同様に設定してみましょう。
STEP7:エフェクトを追加
次に強調したい文字の後ろに黄色い線が伸びるエフェクト(効果)を追加したいと思います。ここで使っているエフェクトは「クロップ」です。
「クロップ」は要素の一部を削る効果がありますが、今回はそれを利用して切り抜いた状態から徐々に表示させるようにしたいと思います。
1.エフェクトの検索から「クロップ」と入力します。または、「エフェクト」→「ビデオエフェクト」→「トランスフォーム」→「クロップ」を選択する方法でも可能です。
2.効果を適用させたい要素にドラッグ&ドロップします。今回は長方形ツールで作成した黄色い線の要素に適用します。
3.エフェクトコントロールパネルで、クロップのプロパティを「右:100%→0%」に設定し、キーフレームを打っていきます。
始点:
終点:
このような動きになっていれば完成です!
STEP8:トランジションを追加
トランジションとは、動画ではカットとカットの間を自然に繋ぐために用いられる効果を表します。今回使うトランジションは「押し出し」と「ホワイトアウト」です。
今回の動画でトランジションを追加している箇所は以下の通りです。
通常トランジションを適用する場合、要素と要素の間をまたぐように適用しますが、以下のような複数トラックに要素がある場合、すべてに効果が反映されないことがあります。
こうした場合は「ネスト(複数の要素を1つにまとめられる機能)」を使います。
1つにまとめたい要素をマウスで全選択し、右クリックのメニューから「ネスト」を選択し、「ネストされたシーケンス名」を任意で入力します。
「ネスト」を使い、各シーンを以下の様にまとめることができます。
いよいよシーンの切り替わりを演出する「トランジション」をかけていきたいと思います。
今回の構成では「タイトル〜 シーン3」までを「押し出し」によるスライドショー風に。シーン3からCTAは「ホワイトアウト」による演出となっているのでそれぞれ適用させていきます。
「押し出し」を適用する場合
1.「ビデオトランジション」→「スライド」→「押し出し」を選択します。
2.適用したい要素と要素の間にドラッグ&ドロップで適用します。
3.スライドする順番が逆だった場合、赤枠の ◀ を選択します。
4.今回は移り変わりのデュレーション(速度)を00:00:00:10としています。
ホワイトアウトを適用する場合
1.「ビデオトランジション」→「ディゾルブ」→「ホワイトアウト」を選択します。
2.適用したい要素との間にドラッグ&ドロップで適用します。
3.今回は移り変わりのデュレーション(速度)を00:00:00:20としています。
以上で、動きに関する編集作業は完了です。
STEP9:オーディオの調整
動画にBGMや効果音を入れていきます。
用意しておいた素材を、オーディオトラックにドラッグ&ドロップしていきます。
1.音素材のボリュームをそれぞれ調整していきます。上記図「ボリューム調整」の赤枠内の線をドラッグすると全体のボリュームを調整できます。
2.次に音の開始と終了の位置にフェードイン(徐々に大きく)、フェードアウト(徐々に小さく)の処理を、上記図「フェードイン・フェードアウト処理」の様にキーフレームを打って調整します。これを行うことで期待感の演出や、急な音の途切れを除去することができ、動画に自然と馴染みます。
「BGMや効果音はどこでダウンロードできるの?」とお悩みの方はこちらの記事をご参照ください。
STEP10:書き出し
最後に動画を書き出します。
(※書き出し・・・編集したデータを動画ファイルに変更して保存すること)
1.「ファイル」→「書き出し」→「メディア」を選択します。
もしくは左上の「書き出し」タブを選択します。
2.次に設定ですが、今回はmp4形式の動画を作っているので以下となります。
- ファイル名:任意の名前
- 場所:任意の保存先
- プリセット:そのまま
- 形式:H.264(最も広く使われている動画圧縮規格)※
3.全て設定したら右下の「書き出し」ボタンをクリックして、レンダリングを開始します。
「〇〇〇.mp4」というファイルが指定の保存先にあることを確認してください。
※PremiereProでは、出力のファイル形式を「jpeg」「アニメーションGIF」など自由に選べるので、目的に応じて変更してください。SNSの投稿や広告で使う場合、あらかじめ入稿規定をチェックしておきましょう。
まとめ
Premiere Proは、初心者にとっては少し敷居が高く感じるかもしれません。しかし、基本的な操作を覚えてしまえば、創造性を存分に発揮できる強力なツールとなります。
オンラインのチュートリアルやコミュニティを活用しながら、少しずつスキルを磨いていきましょう。
最後に、動画編集は伝えたいメッセージや感情を視聴者に届けることが最も重要です。テクニックを磨きつつも、手段と目的を混同しないよう制作に臨んでいただければ嬉しく思います。
以下の記事も合わせて読んでいただくことで、動画制作に対しての理解が深まりますのでぜひご参照ください。
