複雑なアニメーションも思い通りに!プロ向け動画編集ソフト「Adobe After Effects」とは?特徴や基本的な使い方まで徹底解説

複雑なアニメーションも思い通りに!プロ向け動画編集ソフト「Adobe After Effects」とは?特徴や基本的な使い方まで徹底解説

広告やWebサイトなど、ビジネスで動画を活用する機会が増えています。なかには「こんな複雑な動き、どうやって作っているんだろう」と驚くようなクオリティの高い動画もありますよね。

たとえばテキストや図形が複雑な動きをするアニメーションや、何もないところから光や炎が出る演出などは一部の動画編集ソフトでしか実現できません。

動画引用元:モーショングラフィックスソフトウェア | Adobe After Effects

Adobe社が提供する「After Effects」は、こちらのイメージ動画のような複雑な演出ができる機能が豊富にそろっており、CMや映画作成にも使われるプロ向けのソフトです。

動画編集ソフトの中では比較的操作が難しい方ですが、使いこなすことで動画のクオリティをグっと引き上げることができるでしょう。

今回はAfter Effectsをいちから覚えたい方に向けて、基本的な操作方法をわかりやすく解説していきます。


After Effectsとは?

After Effectsとは、Adobe社が提供する動画編集ソフトです。

高度なアニメーションやエフェクトをつけるのに適しており、映画、テレビ、広告など幅広い業界で使用されています。

画像引用元:Adobe After Effects公式サイト

Adobe社が提供する動画編集ソフトにはもう一つ「Premiere Pro」がありますが、それぞれ得意分野が異なります。

Premiere Proは映像のカットや繋ぎ合わせ、BGMやテロップの挿入など、動画のベースを制作するのが得意です。一方、After Effectsはある程度編集した動画にプラスαの演出を加えたり、複雑なアニメーション動画を制作するのに適しています。

例として、After Effectsでは以下のような動画が制作できます。

  • モーショングラフィックス
  • 3Dアニメーション
  • ビジュアルエフェクト

Adobe公式のAfter Effectsのページより引用

他にもAfter Effectsにはこのような特徴があります。

  • アニメーションやエフェクトのテンプレート(プリセット)が豊富に揃っている
  • 映像に映りこんでしまった人物や車など、不要な部分を削除できる
  • 人物の背景を別の映像に置き換えられる

たとえばPremiere Proでカット編集した人物の映像にAfter Effectsでレーザー光線を追加する……といったように、2つのソフトを併用することも可能です。

Premiere Proの概要や使い方について、詳しくはこちらの記事で紹介しています。

After Effectsの利用方法

After Effectsは、Adobeの公式サイトから購入することができます。

画像引用元:After Effectsプラン比較 - Adobe 

すでにコンプリートプランを購入済みの方は、追加で購入する必要はありません。

After Effectsのみを使う場合は単体で購入しても問題ありませんが、動画内で使う画像をPhotoshopやIllustratorで用意したり、Premiere Proを併用する可能性があれば、コンプリートプランを購入するのがおすすめです。

購入が完了したら、Adobe Creative Cloudにログインします。
https://www.adobe.com/apps/

ログインができたら、アプリ画面でAfter Effectsのインストールボタンを押下し、インストールします。

インストールが完了すると、After Effectsのショートカットアイコンがデスクトップに作成されるので、開いて確認してみましょう。

ログイン画面が出てきたらログインをして、以下の画面が表示されれば無事にインストール完了です。

After Effectsの操作画面の説明

操作画面は複数のパネルに分かれており、なかでも、以下の①〜④は必ず使用するパネルです。

1プロジェクトパネル作業している動画や音楽、画像などの素材を入れておくパネル
2コンポジションパネル編集中の動画を実際に見ることができるパネル
3ツールバーレイヤーの作成や編集を行うためのツールが集約されたパネル
4タイムラインパネルレイヤーの配置やエフェクトを時間軸に沿って設定するパネル

タイムラインパネルは複数機能がありますが、まずは以下の二つを覚えておけば問題ありません。

1キーフレーム指定した時間に、位置や大きさなどレイヤーの状態を記録しておくピン留めのようなもの
2インジケーター再生位置を示す縦線で、エフェクトを加えたい時間に正確にキーフレームを打つことができる

キーフレームの打ち方は、以下の通りです。

1.対象のレイヤーの矢印を選択し、アニメーションを加えたいプロパティを表示(例:位置、スケールなど)

2.インジケーターを変更を加えたい位置(時間)に移動

3.最初のキーフレームを打つ場合:プロパティの左にあるストップウォッチアイコンを選択
2つ目以降のキーフレームを打つ場合:プロパティの値を変更するか、ストップウォッチの左にあるひし形のアイコンを選択

キーフレームを打つことで基本的なアニメーションをつけることができる機能のことを、トランスフォームといいます。

トランスフォームには、以下の機能が用意されていて、頻繁に使うので覚えておくと良いでしょう。

アンカーポイントレイヤーの回転やスケールの中心店を決める基準の位置です。アンカーポイントを移動することで、回転や拡大縮小の中心が変わります。
位置レイヤーの配置場所を指定します。X軸(左右)とY軸(上下)で位置を決定します。
スケールレイヤーのサイズを調節します。パーセンテージで設定し、0%で完全に消え、100%以上で拡大されます。縦横の比率を固定したり、個別に調節することも可能です。
回転レイヤーを回転させる設定です。度数(角度)と回転回数を指定し、プラスで時計回り、マイナスで反時計回りに回転します。
不透明度レイヤーの透明度を調節します。0%で完全に透明、100%で完全に不透明になります

制作フロー

ここからは、以下の動画を例に、After Effectsを使った基本的な制作フローを10のステップに分けて解説します。

<動画制作フロー>

STEP1:編集データや素材を入れるフォルダを用意
STEP2:シーケンス設定
STEP3:素材のインポートと配置
STEP4:長方形ツールで背景を作る
STEP5:テキストを入力
STEP6:キーフレームを追加
STEP7:エフェクトを追加
STEP8:トランジションを追加
STEP9:オーディオの調整
STEP10:書き出し

説明の中に動画制作ならではの基本用語が出てきますので、こちらの記事も合わせてご覧いただくとスムーズです。

STEP1:編集データや素材を入れるフォルダを用意

まずは編集データや素材を入れておくフォルダを用意しておきましょう。

フォルダ分けをしておくことで、必要な素材をすぐに見つけられたり、他のメンバーに共有する際に連携がしやすくなります。

私は以下のようにフォルダを分けています。

01_Projectプロジェクトファイルを入れるフォルダ
02_Assets使用素材を入れるフォルダ(STEP1で用意した素材はここに入れる)
03_Render他の編集ソフトと連携するために書き出した動画を入れるフォルダ
04_Export書き出した完成動画を入れるフォルダ

「02_Assets」については、数が多いとほしい素材を探しづらくなってしまうことがあります。

その場合は、「02_Assets」内で、静止画なら「img」、効果音なら「se」というように、フォルダを分けることが多いです。

STEP2:作業スペース(コンポジション)の作成

After Effectsを開き、動画を作る編集場所となる、コンポジションを作成しましょう。

ヘッダーメニューから「新規コンポジション」を選択します。

縦横比や解像度など、制作する動画に合わせてコンポジションの設定しましょう。今回は上図のように設定しました。

OKボタンを押下すると、コンポジションが作られます。

STEP2:素材の挿入

次にイラストやBGM、効果音といった動画に必要な素材を読み込んでいきます。

素材が入っているフォルダを開き、プロジェクトパネルにドラッグ&ドロップすることでAfter Effects上での使用が可能になります。

STEP3:背景(平面)の追加

背景の役割を果たす、平面と呼ばれるレイヤーを追加します。

ヘッダーメニューから「平面」を選択しましょう。

色やサイズなどを設定し、「OK」を選択して完了です。

STEP4:トランジションを追加

トランジションとは、シーンやカットが切り替わる際に、滑らかにつなげるために用いるエフェクトのことです。

今回のように、動画の冒頭に持ってきて目を引く要素として使うこともあります。

1.ツールバーから楕円形ツールを選択し、任意の色で丸を作成し、コンポジションパネルの中央に配置します。

2.アンカーポイント(アニメーションを使う時に中心となる軸)が丸の中心に配置されていることを確認します。
中心にない場合は、ツールバーにある「アンカーポイントツール」を選択し、位置を調節しましょう。

3.スケールのキーフレームを2つ打ち、下記の値に設定します。

  • 1つ目:(横)0.0, (縦)0.0 %
  • 2つ目:(横)229.0, (縦)229.0 %(動画の縦横幅よりも直径が大きくなるようにする)

4.手順3で打ったキーフレームを選択した状態で、右クリックし、「イージーイーズ」を選択します。イージーイーズにすることで、動きを滑らかにすることができます。

5.手順3で打ったキーフレームを右クリックし、「キーフレームの速度」を選択。下記の値に設定します。
値が大きいほど緩急がつきます。

  • 1つ目:出る速度の影響を80%
  • 2つ目:入る速度の影響を80%

6.作成した丸を3つ複製し、それぞれ色を変えます。時間軸をずらし、次々に出てくるように調節しましょう。

7.下の3つの丸のトラックマットに一番上の丸を指定し、マットを反転にします。
トラックマットとは、上のレイヤーを使って下のレイヤーを表示または非表示にする機能です。反転にすることで、一番上の丸がそれ以外の丸を非表示にする動きができます。

下の動画のようになっていれば、STEP4までは完成です!

STEP5:ロゴにアニメーションを追加

ロゴを表示する動きは、スケールにアニメーションを追加するだけで表現ができます。

1.ロゴの画像を、プロジェクトパネルからコンポジションパネルにドラッグ&ドロップして挿入。
配置とアンカーポイントの位置がそれぞれ中央になるように調節する。

2.スケールのキーフレームを3つ打ち、下記の通りに値を設定しましょう。※画像の大きさにより値は変わるため、あくまで目安として参考にしてください。

  • 1つ目:(横)120.0, (縦)120.0 %(一番小さい状態)
  • 2つ目:(横)300.0, (縦)300.0 %(一番大きい状態)
  • 3つ目:(横)168.0, (縦)168.0 %(アニメーション後の状態、本来表示したい大きさにする)

3.キーフレームを選択した状態で右クリックし、「イージーイーズ」を選択します。

STEP5までの完成イメージ

STEP6:ボタンを表示してクリックする動きをつける

1.STEP5で触ったロゴに対し、一連のアニメーションが終わった後に、位置のキーフレームを2つ打ちます。上に位置を移動させる動きをつけ、ボタンを表示するスペースを確保します。

  • 1つ目:(X軸)960.0, (Y軸)540.0(移動前)
  • 2つ目:(X軸)960.0, (Y軸)417.0(移動後)

※画像により値は変わるため、あくまで目安として参考にしてください。

2.ツールバーから長方形ツールを選択し、任意の色で長方形を描きます。STEP5のロゴの下に配置します。

3.ツールバーから横書き文字ツールを選択し、ボタンのテキストを追加します。手順2の長方形に対して中央に配置されるように調節しましょう。

4.手順2と3の長方形とテキストに対し、不透明度のキーフレームを2つ打ち、下記の通りに値を設定しましょう。不透明度を上げてボタンを表示するようにします。キーフレームはイージーイーズに変更しておきます。

  • 1つ目:0%(透明の状態)
  • 2つ目:100%(不透明の状態)

5.クリックする動きを再現するため、ヘッダーメニューから「ヌルオブジェクト」を選択し、ヌルオブジェクトを追加します。手順2の長方形に対して中央に配置されるように調節し、アンカーポイントも中央にしておきます。
ヌルオブジェクトは何も表示されない制御用のレイヤーです。他のレイヤーの親として設定することで、複数レイヤーをまとめて動かすときに使います。

6.手順2と3の長方形とテキストの「親とリンク」に、手順5で追加したヌルオブジェクトを選択します。

7.手順5で追加したヌルオブジェクトに対し、スケールのキーフレームを3つ打ちます。キーフレームはイージーイーズに変更しておきましょう。

  • 1つ目:(横)100.0, (縦)120.0 %(本来表示したい大きさ、クリック前)
  • 2つ目:(横)90.0, (縦)90.0 %(クリックした時の大きさ)
  • 3つ目:(横)100.0, (縦)100.0 %((本来表示したい大きさ、クリック後)

8.手順7の2つ目のキーフレームに合わせて、クリック音を追加します。

STEP6までの完成イメージ

STEP7:BGMを挿入する

完成した映像にBGMを挿入します。

1.BGMを、プロジェクトパネルからタイムラインパネルにドラッグ&ドロップして挿入。

2.必要に応じて、音の大きさをオーディオプロパティで調節する。

編集は以上でおわりです!最後に、STEP8で制作した動画を書き出していきます。

STEP8:制作した動画を書き出す

1.After Effectsのヘッダーメニューから「Adobe Media Encoder キューに追加」を選択します。

2.手順1により、Media Encoderが開きます。プリセットを選択し、形式をH.264、プロセットを「ソースの一致-高速ビットレートに設定し、OKボタンを選択します。

3.出力ファイルは出力先の場所を指定できるので、必要に応じて設定してください。全て終わったら、右上の矢印ボタンを選択し、書き出しをスタートします。

指定した出力場所に動画が書き出されるので、期待通りの動画になっているか確認してください。

以下のような動画になっていれば完成です!お疲れさまでした。

まとめ

After Effectsは専門用語も操作するパネルも多く、最初は慣れるまでに時間がかかるかもしれません。

しかし、アニメーション動画など高度な技術を要する動画を作れるようになると、表現の幅が広がり、印象に残る動画を制作することができるようになります。

広告や会社のPR動画など、さまざまなシーンで活用できるので、この記事を読んで少しでも興味を持っていただけた方は、ぜひチャレンジしていただけると嬉しいです。

モーショングラフィックスの表現パターンについてはこちらの記事でまとめています。

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