YouTube動画広告で「機能訴求」をやめたらCPAが1/4になった話

YouTube動画広告で「機能訴求」をやめたらCPAが1/4になった話

YouTube動画広告、正直なところ不安でした。

僕には趣味として動画を作った経験こそあったものの、「広告として成果を出す動画」のノウハウはゼロ。加えてクライアント側にも過去のYouTube広告で苦戦した経験があり、「本当にいけるのか…?」と思いながらのスタートでした。

この記事では、ある健康関連の商材YouTube動画広告で、初ヒットからCPA悪化、2つの失敗を経て、最終的にCPAを約1/4にまで改善した過程をお話しします。うまくいった話というよりも、「どこで間違えて、何を変えたら当たったのか」。その泥臭い試行錯誤の記録です。

なぜYouTube動画広告の「顕在層狙い」は行き詰まるのか

初ヒット、そしてCPA悪化

このプロジェクトでは、健康関連の商材を扱っていました。健康診断の数値が気になる方に向けて「健康数値の改善」という機能訴求で動画を制作し、顕在層にターゲティングしたところ、初動はかなり好調でした。

広告費は約1.5倍に拡大し、YouTube広告が全体の約4割を占めるまでに成長。正直、「このまま回し続ければいいんじゃないか」と思っていました。

ところが数ヶ月後、CPAがじわじわと悪化し始めます。訴求もターゲティングも変えていない。何も悪いことをしていないのに、数字だけが静かに落ちていく。運用者なら一度は経験したことがある、あの嫌な感覚です。

顕在層狙いが行き詰まる構造的な理由

振り返ると、これは起こるべくして起こった現象でした。

YouTube広告はテレビCMに近い受動媒体です。検索広告と違って「今すぐ欲しい人」だけに届けることが構造的に難しい。にもかかわらず、顕在層に寄せた配信を続けた結果、同じユーザーへの広告表示回数(フリークエンシー)が増えすぎて見飽きられ、CTRが下がり、CPAが悪化するというサイクルに入っていたのです。

社内の先輩から言われた言葉が、今でも印象に残っています。「YouTube動画広告のヒット率は、良くて3割。10本作って3本当たるかどうか」。つまり1本目がたまたまヒットしただけであって、次のヒットを生むには試行錯誤し続ける必要がある。そこからが本当のスタートでした。

まず「型」に頼る。リサーチで勝負の8割が決まる

ここで少し時系列を戻して、初ヒットがどのように生まれたかをお話しします。

N1分析の4象限:商材理解・ユーザー理解・競合理解・コミュニケーション設計

最初は本当に手探りでした。だからこそ決めたのは、「社内で体系化されていたリサーチフレームワークを、自分流にアレンジせず、そのまま転用する」ということ。

フレームワークは以下のようにWHO・WHAT・HOWで構成されています。

要は、「誰の、どんな感情を、どんな言葉と構成で動かすか」を全部書き出す作業です。特にN1の情報収集は重要だと学んでいたので、アンケート収集やインタビューを丁寧に行い、ボードツール上にすべてまとめていきました。

「誰の、どんな感情を、どんな言葉で動かすか」を書き出す

N1分析から見えてきたのは、表の悩みと裏の欲求のギャップでした。

表の悩みは「健康数値を改善したい」。でも裏側には「辛い努力はしたくない」「薬やサプリに頼るのは怖い」「できれば自然な食品で何とかしたい」という感情が隠れていた。

一方、競合のサプリメーカーや機能性表示食品は価格勝負に走っている状態。価格訴求が中心の市場環境の中で、「薬やサプリ(異物)ではなく、野菜(食品)の力で数値を改善する」というポジションは、意外なほど空いていました。

この分析をもとに最初の動画を制作し、初ヒットに至ります。しかしここからが本番でした。前章でお話ししたCPA悪化が始まり、次のクリエイティブを模索するフェーズに入ったのです。

「媒体の空気に寄せる」は正解か? 2つの失敗から学んだこと

成果を戻そうとして、次に出した作戦は「YouTubeという媒体に馴染ませる」という方向性でした。N1が普段見ていそうな動画の文脈に寄せれば、自然に視聴してもらえるはずだ、と。

失敗①「夫婦YouTuber風」。文脈に寄せすぎて"偽物感"が出た

「質問コーナーやっていきたいと思います!」という、YouTubeでよく見る夫婦チャンネルのフォーマットを採用してみました。

しかしターゲット層である40〜50代にとって、夫婦YouTuberという形式自体が馴染みの薄いもの。共感ではなく「演技っぽさ」「わざとらしさ」が先に立ってしまい、結果は振るいませんでした。

失敗②「ニュース番組風」。期待値を裏切ったら"不快感"になった

次に試したのが「速報です!」で始まるニュース番組風の構成。冒頭で注目を集めることには成功したものの、中身が広告だとわかった瞬間に「騙された」という感情が発生しました。

加えて、「健康診断の数値が気になる方へ」と冒頭でターゲットを絞り込みすぎた問題も重なり、スキップ率は高止まり。数字だけ見れば厳しい結果でしたが、この失敗があったからこそ、次の一手が見えてきました。

「文脈マッチング」が失敗する3つのパターン

2つの失敗を振り返って気づいたのは、YouTube広告で「文脈に寄せる」アプローチが失敗するパターンには共通構造がある、ということです。

1つ目は、演者のリアリティ不足。ターゲット層に馴染みのないフォーマットを無理に使うと、「あるある」ではなく「わざとらしさ」になります。

2つ目は、期待値と中身のギャップが不快方向に倒れること。「重大ニュースかと思ったら広告だった」は怒りにつながる。

3つ目は、尺の長さと情報量のバランス崩壊。6〜7分の動画に「商品の良さを全部伝えたい」と情報を詰め込みすぎて、肝心のオファーに辿り着く前に離脱されてしまう。冒頭10秒で約半数が離脱していました。

この3つのパターンは、YouTubeに限らずTikTokやInstagramのリール広告でも同様に起こり得るものです。

「機能」ではなく「素材」で惹きつける

失敗を重ねる中で、他商材の成功事例やトレンド動画を改めて分析しました。そこで気づいたのが「成果が出ている動画ほど、冒頭のターゲットの幅が広い」というパターン。要は、特定の誰かに呼びかけるのではなく、誰でも「え、どういうこと?」と引っかかる入り口になっている動画が強かったのです。

転機になったのは、クライアントが共有してくれた過去の高成果バナーでした。

それを最初に見たとき、僕の脳が「?」になりました。

なぜなら、そこに打ち出されていたのは「機能訴求」や「数値改善の訴求」でもなく、商品に使われている意外な原材料だったからです。その原材料をジュースにするという発想自体が珍しく、競合を見ても世界的に見てもほとんど無い。すごく珍しい商品なので、これこそが一番の差別化要因なのではないか?と考えました。

「え、これ飲むの?」「どんな味?…まずそう」。正直、みんなそう思います。でも、これこそが冒頭のフックになる。「野菜ジュース」と聞くと、脳内で「あぁ、健康にいいやつね」と処理されてスルーされますが、意外な原材料の名前をぶつけると、脳が処理しきれずに引っかかる。これがフックになるんです。

期待値の裏切り方がすべてを分ける

ここで、ニュース番組風との決定的な違いが浮き彫りになります。

実は「ニュース風」も「意外な素材訴求」も、どちらも冒頭に違和感をつくる設計です。しかし、決定的に異なっていたのは期待値の裏切り方でした。

新しい動画の企画を考えるときに、「この違和感は視聴者を不快にさせないか? 好奇心を刺激する方向か?」と事前にチェックする癖をつけるだけで、失敗の確率はかなり下げられるはずです。

ターゲットは「絞る」のではなく「広げる」

過去の失敗で「〇〇が気になる方へ」と冒頭で呼びかけた瞬間に、大多数がスキップした経験がありました。ここから得た結論は、入口は広く取るべきだ、ということです。

YouTube広告は受動媒体。動画を見に来た人の横に差し込まれるものであり、検索広告のように「探している人」に表示されるわけではない。だからこそ、意外な素材名を冒頭に出すことで、健康に関心がない層の指も止められる。入口を広げた上で、動画の中盤以降に「実はこういう悩みに効くんです」と徐々に絞り込んでいく設計が効果的でした。

社内のセミナーで学んだ「ターゲット(WHO)は狭めるのではなく、できるだけ広げるべきだ」という考え方を、ここで実践した形です。

細部が成果を分ける。クリエイティブの「How」を詰める

切り口が決まっても、そこで終わりではありません。「どう見せるか(How)」をクライアントと二人三脚で徹底的に詰めました。

「説得」ではなく「共有」のトーン

それまでのクリエイティブでは、きれいに語るアナウンサー型のナレーションを採用していました。しかし今回は「友達に発見を教える」トーンに変更。「ねえ聞いて、これ知ってる?」と横から話しかけるような距離感を意識しました。

広告臭を消すためには、「商品を説明する」のではなく「面白い発見を共有する」という態度が必要だった。この切り替えが、高い視聴維持率につながったと考えています。

衣装・小道具・尺。言葉以外の情報設計

ノンバーバルな要素にもかなり手を加えました。

衣装は、その素材をモチーフにした柄のTシャツに変更。クライアントの担当者が「ピッタリの衣装見つけたので当日持っていっていいですか?」と持参してくれたものです。こうした遊び心が、違和感の視覚的な強調になりました。冒頭では本物の素材そのものをモデルに持たせて、「え、なにこれ?」という引きを強めています。

尺もそれまでの7分超から大幅に短縮。難しい説明を省いたり要約したりして、誰が見てもわかりやすい内容に整理しました。

結果。失敗パターンとの比較

配信を開始した結果、これまでの訴求とはまったく異なる数字が出ました。

ヒット訴求のCPAは失敗パターンの約1/4〜1/6。CV数では最大で約90倍もの差がつきました。

特に驚いたのは視聴維持率です。動画の最後まで(100%)視聴した割合が15%に到達。YouTube広告で「広告なのに、気づいたら最後まで見てしまっていた」という状態を作ることができました。

あなたの商材の"違和感の種"を見つけるために

今回の取り組みを通じて、改めて感じたことをまとめます。

1つ目。成果は、ほぼ制作前のリサーチで決まる。N1分析なしにヒットは生まれません。

2つ目。「型」は守るためではなく、疑うためにある。最初は型で守り、慣れたら壊す。王道が効かなくなったら、視点を「機能」から「素材」や「体験」にズラしてみる。

3つ目。冒頭でターゲットを絞りすぎない。「あなたへ」と言う前に「なにこれ?」を作る。主語を相手にする前に、対象物(オブジェクト)で惹きつける。

4つ目。ノンバーバル(衣装・小道具・話し方)は想像以上に効く。何を言うかより、誰がどう言うか。そして「どう聞こえるか」を意識する。

5つ目。外した仮説も、ちゃんと次の武器になる。失敗した動画の経験があったからこそ、ターゲットへの向き合い方や台本の作り方、テロップの勘所がわかりました。

「うちの商材に違和感なんて無い」と思った方へ

「この商材、特に差別化ポイント無いしな…」。そう感じている方ほど、ちょっと立ち止まって考えてみてほしいです。

原材料や素材の中に、「え、そうなの?」と思わせるものはないでしょうか。製造プロセスや産地に、意外性のあるストーリーは眠っていないでしょうか。ユーザーの使い方で、開発者が想定しなかったものはないでしょうか。そして、競合が絶対に言わない(あるいは言えない)ことは何でしょうか。

差別化ポイントは「機能」の中ではなく、機能の裏側に隠れていることが多いものです。

意外な切り口は、センスやひらめきで突然生まれるものではありません。社内外にあるたくさんのナレッジを読み込み、それを組み合わせて、外して、考えて、また試す。この地味な繰り返しの中で、結果的に「当たり」に化ける表現が生まれているだけだと思います。

あなたの商材にも、きっと"違和感の種"があるはずです。

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