広告配信に動画、活用していますか?
流行に敏感な広告運用者ならば、実施を検討したことは何度もあるはず。とはいえ、いざ媒体資料やヘルプページを開いてみると複雑な入稿規定に圧倒され、資料やヘルプをそっと閉じ、「動画広告やりましょう!」とクライアントに言い出せないままの方、いませんか?
日本では2020年春から5Gネットワークの本格稼働が予定されており*1、これに呼応するように、オンラインの動画広告市場規模がさらに拡大していくことが予想されています*2。また運用型広告プラットフォーム側も、従来型のブランディング向け動画広告フォーマットだけでなく、よりダイレクトレスポンス狙いにフィットする動画広告フォーマットを投入してきており*3、活用の幅も広がっています。
すなわち運用型広告を通じて広告主の利益を最大化するためには、もはや動画アセットを食わず嫌いしているのは時代遅れ、という情勢になりつつあるのです。(もちろん、クライアントの業態やビジネスのフェイズによっては、動画広告を投入すべきでないということは有りえます。)
本記事では、皆様が少しでも動画広告実施に前向きになれるよう、まずは動画素材は入稿規定が複雑なのかを確認した後、運用型広告の主要プラットフォームにおける動画素材の入稿規定をまとめます。いわゆるカンニングペーパー的な使い方をしていただければ幸いです。
参考1:20年春5G開始 ドコモ・KDDI、5年内で全国9割に
参考2:サイバーエージェント、2018年国内動画広告の市場調査を実施
参考3:Google、ユーザーにアクションを促す動画広告「TrueView アクション(TrueView for action)」
参考: アウトストリーム動画広告のクリエイティブフォーマットを提供-Yahoo! JAPANが提唱する「Video for Action」
目次
動画素材の入稿規定はなぜ雑多なのか?
静止画ファイルの広告素材であれば、大まかには解像度・容量・ファイル形式・文字領域の占有率などを守っていれば、あとは枠線を足すなどの微調整で入稿自体はできます。一方、動画ファイルは「動画+音声」の構成になっているため、規定項目そのものが多く、静止画よりも複雑な見た目になっています。まずは、これらの規定項目や関連する用語をかんたんにまとめます。
用語 | 意味 |
---|---|
コーデック | ファイル圧縮・展開の形式。動画と音声それぞれに設定が必要。 |
コンテナ | 動画と音声の格納形式。拡張子で判別可能。 |
動画容量(動画サイズ) | 動画のデータサイズ。〇〇MB、▲▲KBなど。 |
解像度 | 動画の画素数。入稿規定では横×縦のピクセル数(例:1080×1080)や縦横比(例:16:9。アスペクト比とも) または縦横比と縦のピクセル数の組み合わせ(例:16:9の1080p)で指定される。 |
動画長 | 動画再生時間。秒や分、時間で指定される。 |
フレームレート | 単位fps(フレーム・パー・セカンズ)。動画(アニメーション)に含まれる1秒あたりのコマ数。 |
ビットレート | 単位bps(ビット・パー・セカンズ)1秒あたりに音声データ・動画データがどれくらい詰め込まれているかの指標。 |
エンコード | 動画データと音声データを1つのファイル(コンテナ)にまとめること。 |
【媒体別】動画広告入稿規定 [随時更新]
それではおもな運用型広告の媒体ごとに動画広告の入稿規定をみていきましょう。
Google 広告(YouTube動画広告含む)
Google 広告で使用する動画の指定は、大きく分けて2つのやり方があり、主に用いられるのはYouTubeの動画URLを入力して指定する方法です。(もう1つは、広告管理画面にGIFアニメーションをアップロードする方法ですが、矩形や配信面が限定されることや音声が載せられないという事情もあり、本記事では取り上げません。)
なお、アップロードした動画は、YouTube上で動画のプライバシー設定を非公開設定ではなく「公開」または「限定公開」にしておく必要があります。
媒体側での推奨規格は以下のとおりです。YouTubeではアップロードされた動画は、媒体の仕様に合わせて変換されるため、動画の規格面はかなり柔軟性があり、いずれもあくまで推奨の設定という位置づけです。
【共通】
コンテナ | 推奨:MP4 | |
---|---|---|
音声コーデック | 推奨:AAC-LC | |
動画コーデック | 推奨:H.264 | |
フレームレート | 推奨:30fps | |
映像ビットレート | 推奨:5Mbps | (720pの場合) |
音声ビットレート | モノラル128 kbps | ステレオ384 kbps |
解像度 | 推奨:720p以上 |
コーデックなどの細かい規定は、YouTubeにアップロードできた時点でクリアできているため、あとは動画長や解像度・アスペクト比が各フォーマットに対応しているかをチェックすればOKです。各フォーマットの推奨動画長および推奨アスペクト比・解像度は下表を参照してください。
【フォーマット別】
フォーマット | 推奨:動画長 | アスペクト比または解像度 |
---|---|---|
スキップ可能なインストリーム広告 | 12秒~3分 | 16:9~9:16に収まるサイズ |
スキップ不可のインストリーム広告 | 6~15秒 | 16:9~9:16に収まるサイズ |
インフィード動画広告(旧:TrueView ディスカバリー広告) | 任意 | 推奨:640×360(16:9) または 480×360(4:3) |
アウトストリーム広告 | 6~15秒 | 16:9~9:16に収まるサイズ |
バンパー広告 | 6秒以下 | 16:9~9:16に収まるサイズ |
レスポンシブディスプレイ広告 (動画アセット) |
30秒以下 | 推奨: 16:09 1:01 4:03 9:16 |
参考:動画のアップロード
参考:動画広告フォーマットの概要
参考:レスポンシブディスプレイ広告を作成する
Yahoo!ディスプレイアドネットワーク(YDN)
YouTube広告とは異なり、動画素材を直接、広告配信管理画面からアップロードする必要があります。
フォーマット | レスポンシブ動画 | PCブランパネル動画 |
---|---|---|
コンテナ | MP4 | |
音声コーデック | AAC-LC | |
動画コーデック | H.264 | ※インターレース不可 |
フレームレート | 最大30fps | |
映像ビットレート | 1Mbps以上 | |
音声ビットレート | 128kbps以上 | |
アスペクト比と解像度 | 16:9(640×360以上) | 1:1(600×600以上) |
動画長 | 5秒以上 | 60秒以下 |
動画容量 | 最大200MB |
※ファイルは入稿時に配信用サイズに圧縮されます。また、ピクセルサイズが最小ピクセルサイズを超える場合は、圧縮と同時にリサイズされます。
参考:動画 広告仕様
Facebook / Instagram広告
Facebook、Instagram広告でも、動画素材は広告配信管理画面に直接アップロードが必要です。また、Facebook 、Instagram広告は配信面が多岐にわたり、フォーマットも多彩なため、動画のアスペクト比や動画長について、複雑な仕様になっています。一方でフレームレートや映像ビットレートの規定は公式ヘルプに記載がなく、規格面における素材の準備しづらさは緩和されています。
【共通】
コンテナ | 推奨:MP4 |
---|---|
音声コーデック | 推奨:ステレオAAC |
動画コーデック | 推奨:H.264 |
フレームレート | 規定なし |
映像ビットレート | 規定なし |
音声ビットレート | 推奨:128 kbps以上 |
【配信面別】
※横へスクロールしてご覧ください
Audience Network | ||||||||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|
配信面 | フィード・インスタント記事・ Marketplace・Video Feeds |
インストリーム動画・ プレイアブル広告 |
ストーリーズ | 検索結果 | フィード・発見タブ | ストーリーズ | ネイティブ・バナー・ インタースティシャル |
インストリーム |
推奨アスペクト比 | 16:9 1:1 4:5 2:3 9:16 |
16:9 1:1 4:5 2:3 9:16 |
16:9 1:1 4:5 2:3 9:16 |
1:1 | 16:9 1:1 4:5 |
16:9 1:1 4:5 9:16 |
16:9 1:1 4:5 2:3 9:16 |
16:9 1:1 |
動画長 | 1秒~ 240分 |
5秒~ 15秒 |
1秒~ 120秒 |
1秒~ 240分 |
1秒~ 120秒 |
1秒~ 120秒 |
1秒~ 120秒 |
10~120秒 |
動画容量 | 最大4GB | 最大4GB | 最大4GB | 最大4GB | 最大30MB | 最大30MB | 最大4GB | 最大4GB |
最小の縦幅 | 120px | 120px | 500px | - | - | - | - | - |
最小の横幅 | 120px | 120px | 500px | - | 500px | 500px | - | - |
※動画サムネイル画像の20%以上をテキストが占めると配信量が制限されるため注意が必要
参考: 動画広告要件
参考: Facebook広告ガイド 動画
Twitter広告
Twitter広告でも動画素材は広告配信管理画面またはツイート作成画面に直接アップロードが必要です。
フォーマット | コンテナ | 音声コーデック | 動画コーデック | フレームレート | 映像ビットレート | 音声ビットレート | アスペクト比と解像度 | 動画長 | 動画容量 |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
プロモビデオ | MP4 または MOV |
AAC-LC ステレオ |
4:2:0の色空間に対応する H.264 ベースラインプロファイル メインプロファイル ハイプロファイル |
30fps |
推奨:1080pで6Mbps 720pで5Mbps |
記載なし | 720x1280 (9:16) 1280x720 (16:9) 720x 720 (1:1) |
最140秒 | 最大1GB |
ビデオアプリカード | 29.97fps または 30fps | 16:9または1:1(360p以上) | 最140秒 | ||||||
ビデオウェブサイトカード | 記載なし | 4:2:0の色空間に対応する H.264 ベースラインプロファイル |
推奨:1200×1200(1:1) 最小:600×600 入稿自体は2:1~1:1なら可能だが、トリミングされる可能性有り |
記載なし |
LINE広告(LINE Ads Platform)
LINE広告においても、動画素材は広告配信管理画面に直接アップロードが必要です。
コンテナ | MP4 |
---|---|
音声コーデック | AAC |
動画コーデック | H.264メイン/ハイプロファイル |
フレームレート | 最大:30fps |
映像ビットレート | 最大:8Mbps |
音声ビットレート | 128kbps以上 モノラルまたはステレオ |
アスペクト比と解像度 | 16:9 (240×135~1920×1080) 1:1 (600×600~1280×1280) 9:16 (125×240~1080×1920) |
動画長 | 5秒以上 120秒 以下 |
動画容量 | 最大:100MB |
参考:【LINE広告】入稿規定
まずどのような規格の動画を準備すればいい?
以上、5媒体での規定を羅列してきましたが、眺めているだけで頭が痛くなってきたのではないでしょうか。各プラットフォームごとにそれぞれの思惑があり、規定があるのはわかります。しかしこれらを利用する運用者の立場からすれば、大変困った状況であるのはおわかりいただけたかと思います。
結局の所、私たちが知りたいのは「どのような規格の動画を準備すればよいのか?」という1点です。そこで各媒体の最大公約数的な規定を抽出しました。
コンテナ | MP4 | |
---|---|---|
音声コーデック | AAC | |
動画コーデック | H.264 | |
フレームレート | 30fps | |
映像ビットレート | 5Mbps | |
音声ビットレート | 128kbps | |
アスペクト比と解像度 | 16:9(1280×720) | 1:1(720×720) |
動画長 | 15秒 | |
動画容量 | 30MB以内 |
アスペクト比に関しては、可能ならば1:1もあわせて準備するのがベターだと考えていますが、難しければ16:9のみでも問題ありません。まだ動画素材の用意もなく、どういった規格の動画がよいのか分からないという方は、まずはここから始めてみるのがおすすめです。
配信先や目的が明確ならそれに合わせた規格を優先しよう
ただし、プラットフォームや配信面ごとに適切なクリエイティブの傾向は異なるため、あくまで上記は規格面の最大公約数です。一歩先へいくためには、広告投入の目的や狙いを反映し、かつ配信面に合う規格の動画を準備する必要があります。
たとえば若年層女性へのリーチを狙ってInstagramストーリーズ面への動画配信をするのであれば、縦向きの画面いっぱいに表示されるよう縦横比が9:16の動画は最優先で準備すべきです。一方、法人向けの商材であればPCへの広告配信の重要性が高いため、横長の16:9をまずは準備するべきでしょう。
商品やサービスを認知してもらうのが目的なら短い動画も効果的ですが、深く理解してもらいユーザーに行動を起こしてもらうのが目的なのであれば、長尺の動画でベネフィットを強く印象づけるような動画を投入すると効果が高い可能性があります。
このように、対象となるビジネスや広告配信の目的に応じて、どのような規格の動画を優先して準備すべきかの前提は異なってきますよね。動画制作のリソースはほどんどの局面で有限なため、取捨選択の選球眼も、運用者の腕の見せどころになってくると筆者は考えています。
まとめ
静止画広告で可能なターゲティングは動画広告にもほぼ転用可能ですし、最近はFacebookの動画作成キットや、静止画の組み合わせで容易に動画を作成できるRICHIKAといった、手軽な動画作成ツールも充実してきています。また、動画は1広告あたりの情報量が静止画のそれと比較しても高密度に搭載できるフォーマットですから、うまく活用すれば届けるべき人に適切なメッセージを、より印象に残る形で伝えることもできます。
この記事を参考に、これからさらなる成果を上げていくための動画広告投入をご検討いただければ幸いです。