アナグラムの勉強会「グロースハック」が10年以上続いている理由

アナグラムの勉強会「グロースハック」が10年以上続いている理由

アナグラムには「グロースハック」と呼ばれる勉強会があります。

実施の仕方にマイナーチェンジは加えつつも、根本となる思想や方針は変わらず、創業当初から10年以上続く文化となっています。

取り組みの概要は以下の通りです。

  • 毎週木曜13:00~15:00に開催
  • コンサルタント・デザイナー全員が参加
  • お題となる案件の担当者が最初の20分ほどで与件を説明
  • その後各自が1時間ほどかけて、案件を実際の運用者とは異なる視点で分析
  • 分析終了後、通常業務ではあまり関わることがない5,6人のグループ(フォーラム)で各自のアウトプットをプレゼンしあう
  • プレゼンに対してフォーラムのメンバー同士でコメントや意見を出しあう
  • お題となる案件の担当者はアウトプットを案件の改善に活かす
  • 各自、グロースハック後に他フォーラムのメンバーのアウトプットを見て、アイディアや知見を盗む

社内勉強会というのは、始めるのは簡単ですが継続的に実施するのは難しいものだと感じます。「人数が集まらない」「手ごたえがない」「準備が大変」などの理由から、立ち消えてしまった勉強会に心当たりがある方もいらっしゃるのではないでしょうか。

今回は、アナグラムの勉強会「グロースハック」がなぜ10年以上も続く文化となったのか考えてみます。


アナグラムの仕組みや体制と対をなすものだから

まず考えられる大きな理由は、アナグラムの仕組みや体制と対をなすものだからです。

案件の成果におけるブレやマンネリを防ぐ

アナグラムでは「戦略担当」「運用担当」「営業担当」というように役割を分けることなく、1人の担当者がすべての業務を行う一気通貫の体制をとっています。また、組織は通常のヒエラルキー構造を逆にした逆ピラミッドの形をとっており、マネジメント側がサポートしつつも、最終的には案件の担当者がすべての意思決定を行います。

この体制や仕組みには、無駄な伝言ゲームを発生させずにスピーディーな対応を可能にするといったメリットがある一方で、デメリットも存在します。

1つは、成果が担当者の経験や力量に左右されてしまうということ。そしてもう1つは長期間にわたって同じ担当者が運用していると施策がマンネリ化することです。

1人の担当者に大きな裁量が与えられている以上、チームや会社でサポートする仕組みがあるとはいっても、案件の成果は担当者の力量にかかってくる部分が大きくなります。

また、どんなメンバーがアサインされていたとしても、同じ担当者が長く運用していれば、どうしてもアイディアは枯渇しやすくなりますし、フレッシュな視点から案件を見つめなおし根本的な問題点を発見することは難しくなっていきます。

グロースハックは、これらのデメリットに対処する取り組みです。

配信を開始する前や、成果を伸ばしたいタイミングなど、節目節目にアナグラムの全コンサルタント・デザイナーが案件を分析することで、担当者の経験や力量に依存しない運用を行うことができます

また、施策の打ち手が尽きたとき、成果の伸びが鈍化してきたときにグロースハックを行えば、担当者の視点では思いつかなかった斬新なアイディアが飛び出すこともあります。

このように、案件をグロースハックで取り上げることが、成果のブレやマンネリを防ぐ役割を果たしているのです。

メンバーの成長に寄与する

一気通貫の体制で支援するということもあり、1人の担当者が数十社を担当してしまうと、すべてのクライアントに時間を割くことが難しくなっていきます。

そのため、アナグラムでは1人あたりの担当社数を3~5社に制限し、十分に時間を割いて支援できる体制を整えています。

これは、サービスをしっかり理解し、状況に応じたきめ細かな支援や提案を行えるというメリットがある一方で、多くの商材を経験しにくくなってしまうというデメリットもあります。

運用型広告には、商材ごとに適したポートフォリオや運用方法が存在するため、1つの商材の勝ちパターンを極めるだけではなく、数多くの商材を経験することも大切です。

そのため、グロースハックで他の案件に触れることがメンバーの成長に大きく寄与します。

グロースハックは週に1回行っているため、単純計算で1年に50案件以上のアカウントを分析することになります。すでに構築されたアカウントを見て、どうしたらもっとよくなるか頭を絞り、さらに他の人のアウトプットを見たり聞いたりすることで、多くの業界・商材における手法を学ぶことができるのです。

他のチームのメンバーとの交流を生む

アナグラムではチーム制を採用しており、上長とメンバーを合わせて2~5人程度のチームで案件の相談をしたり、日々の疑問を解決したりしています。

この「チーム」とは別に、交流が少ない他チームのメンバー5~6人で組まれたグループが「フォーラム」と呼ばれるもので、グロースハックのアウトプットはこのフォーラムのメンバーで議論します。

わかりやすく例えるならば、学校でいうクラスが「チーム」で部活が「フォーラム」というイメージでしょうか。

アナグラムもメンバーが100名を超え、リモートワークメインで働いているメンバーもいるため、なかなか全員と話す機会が少なくなってきました。

しかし、他のチームの固定されたメンバーと定期的に関わることで、自チームでは持っていなかった視点からの気付きを得たり、困ったときに頼れる場所が増えたりと、さまざまな良い影響があると考えています。そのため、交流の場としての側面も意識したフォーラムという体制でグロースハックを行っています。

建設的な議論を行うための前提を共有しているから

2つ目の理由は、建設的な議論を行うことができているという点です。

得られるものが少ない勉強会というのは、だんだんと参加者の熱量が落ちていってしまうものです。そのため、他の人を気にしてなあなあな議論しかできない、という状況は避けなければなりません。逆に議論がヒートアップしすぎて遺恨を残すような状況も、もちろんよくないですよね。

アナグラムのグロースハックでは「君は君の作ったアカウントではない」という前提が常に共有されています。

これはTeam Geekに出てくる以下のやりとりを運用型広告に置き換えたものです。

君は君の書いたコードではない。大事なことだから何度でも言うが、君は君の書いたコードではない。

Team Geek ―Googleのギークたちはいかにしてチームを作るのか

自分が精一杯運用しているアカウントに対して、80名を超えるコンサルタントから意見が寄せられるわけですから、自分自身への批判と感じてしまい「自分はなんてダメなんだろう」と落ち込むことがあるかもしれません。

しかし、「君は君の作ったアカウントではない」のです。

寄せられたアウトプットは、よりよい方向へと向かうためのアイディアであり、アナグラムのメンバーは建設的に議論し、成果を伸ばすための同志です。

この前提が共有されているからこそ、意見を出す側は担当者へのリスペクトは最大限に持ったうえで建設的な意見を出すことができますし、意見を受け取る側も寄せられたアイディアを案件を成功に導くためのポジティブなものとして捉えることができます。

参加者全員が本音を言う・聞く覚悟ができているからこそ、グロースハックは建設的な議論を行える勉強会として機能し続けているのです。

業務時間内に組み込んでいるから

最後は単純なことですが、グロースハックを業務時間内に行っていることが挙げられます。

アナグラムにおけるグロースハックの取り組みは、重要度と緊急度のマトリクスで考えると「緊急度は高くないが重要なこと」です。

業務に追われていると後回しにしてしまいがちな領域だからこそ、グロースハックは木曜の13:00~15:00の間、強制的に時間をとって行われます。

会社として長期的に重要なことであるという共通認識をもっていること、そしてその共通認識を「業務時間内に組み込む」という仕組みに落としていることで、長く続く文化となっているのでしょう。

まとめ

アナグラムの勉強会であるグロースハックが10年以上続いている理由を考えた結果、「必然性」「建設的な議論を生むための仕組み」「強制力」の3つが重要な点だとわかりました。

誰もが必要だと感じている勉強会を、より議論が活発に起こるように工夫しながら、強制力をもって開催する。当たり前のような結論ではありますが、「なぜこの勉強会が必要なのか」「議論が活発にならない原因は何なのか」など突き詰めて言語化する必要があるため、実行するのは一苦労です。

しかし、グロースハックで学び、吸収し、積極的にアウトプットしているメンバーがぐんぐん成長していくのを見ると、継続的に開催されるこのような勉強会は会社の資産になると感じます。

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