2023年に注目していきたい、運用型広告周りの重要なトピックは?

2023年に注目していきたい、運用型広告周りの重要なトピックは?
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みなさん、明けましておめでとうございます。本年も、アナグラムおよびアナグラムブログをどうぞよろしくお願いいたします。

昨年はみなさんにとってどのような年だったのでしょうか?個人的には、運用型広告に関連する分野に様々な変化があったなと感じました。コロナによる規制が緩くなって、一見少し「普通」を取り戻したように思われつつも、その「普通」が過去のものとはまた異なる意味になるなど、とりあえず色々と考えさせられる年でした。

ということで、例年通りに今回も2023年に向けて特に重要になりそうなトピックをいくつか取り上げていきたいと思いますが、その前に去年占ったポイントを振り返りたいと思います!



2022年の振り返り

さて、まずは前回に2022年に占ったテーマを振り返っていきましょう。この1年、それぞれはどのような動向だったのでしょうか。

  • ポスト・コロナ=オムニチャネルの世界?
  • ファーストパーティデータの重要性の高まり 
  • 広告の効果計測の新しい技術が出現
  • コンプレックスなどを助長する広告表現の規制がより厳格化へ

ポスト・コロナ=オムニチャネルの世界?

近年、新型コロナウイルスほどマーケティング界を占拠しているトピックはほとんどないと言っても過言ではないでしょう。パンデミックはまだ完全に収束したとは言えませんが、2022年には多くの規制が緩和され、実店舗を抱えている小売企業や旅行などパンデミックの影響を大きく受けた分野でも、2022年はある程度回復の兆しを見せておりました。

しかし、それは必ずしもコロナ以前の時代へのキレイな巻き戻しを意味するものではなく、パンデミックの最初の2年によって確立した、オンラインとオフラインのハイブリッドとも言える新たな購買行動が主流になった状況と言った方が良いのではないでしょうか。

参考:アフターコロナに向けて、リテールで意識したい5つのこと

そのため、実店舗の客足が増えると同時に、オンラインでの購入しオフラインで受け取る購入パターン、非接触の決済、試着などAR/VRの導入など、オフラインでの行動をオンラインで再現するようなかたちで、2022年にはオンラインとオフラインの世界の連動はさらに強まりました。この傾向は、新しい年も続く可能性が高いと思われます。なぜなら、ここにはまだ多くのイノベーションの可能性が残されているからですね。

ファーストパーティデータの重要性の高まり

Googleは、ChromeブラウザにおけるサードパーティーCookieの廃止を2024年まで延期しました。「サードパーティーCookieに頼らないターゲティングをどうしたらよいのか」「ポストCookie時代になっても計測の精度をどう担保できそうか」という課題に対して一種のモラトリアム期間とも捉えられますが、これによってファーストパーティーデータというトピックの重要性自体は変わらないと思います。

例えば、世界最大級の会計事務所であるDeloitteとGoogleが2022年に共同で行ったファーストパーティーデーに関連する調査では、APAC(アジア太平洋)諸国の回答者の65%がファーストパーティデータへの注力を高めるつもりだと回答しています。

参考:First Party Data Report Study Deloitte-Google 2022

興味深いことに、上記の調査では、回答者の約4分の3が「ファーストパーティーデータは将来的にほぼ十分なソリューションである」と答えているものの、ここでの納得の度合いは国によって大きく異なることも示されています。特に日本や韓国は、インドなどと比べると、ここではやや控えめな立ち位置です。

言い換えれば、ファーストパーティデータを扱うことは必須とも言えますが、それを補完する、あるいは代替する技術も確実に求められている、という風にも読み取れます。

広告の効果計測の新しい技術が出現

前項と密接な関係にありますが、広告の成果を計測する技術への注目も相変わらず高かったです。この分野で先駆者のようなポジションのGoogleやMeta以外のプラットフォームにも注目が集まり、サードパーティのクッキーや広告識別子がなくても可能な限り信頼できるトラッキングを保証するためのソリューションが2022年にいくつか確認されました。

例えば2022年9月、LINE Adsは(Metaとは似た形の)コンバージョンAPI機能を導入しました。ここでは、ページ訪問時にユーザー情報やイベント情報を広告主のサーバーからAPI経由でLINEに転送することで、タグだけでは計測できないようなコンバージョンと広告クリックをマッチングさせることができるようになっています。

参考:LINE広告でできるCookieレス対策(効果計測編)Advanced matchingとLINE Conversion API

また、GoogleやMeta、Pinterestなどに続いて、Amazonも独自のコンバージョンモデリングの機能を発表しました。※現在はAmazon DSP専用で、米国のみ対応

参考:Amazon DSPキャンペーンでモデル化されたコンバージョンが報告されるようになりました | Amazon Ads

コンプレックスなどを助長する広告表現の規制がより厳格化へ

広告コンテンツは、依然として批判の対象となることがありますね。例えば、製品やサービスを打ち出すために、ユーザーのコンプレックスを意図的に暗示していることがよく問題視されます。2021年、この問題をきっかけにPinterestは「ダイエット」をテーマにした広告をプラットフォームから完全に禁止しました。

特に注目すべきは、この動きが2022年にもたらしたと思われる効果で、ダイエット広告禁止以降、前年比で「減量」「ダイエット」を含む検索が20%減少し、「手軽で健康的な食事」「健康的な食事を作るモチベーション」といったフレーズが同じ年に何倍にも増加しています。

参考:Pinterest Body Neutrality Report Shows Searches containing “weight loss” have decreased 20% since introducing Weight Loss Ad Ban

また、Metaでは2022年に住宅広告をめぐる差別訴訟の判決で注目を集めました。広告が特定の民族の人々を差別しているという苦情があり、当初は住宅分野を対象にターゲティング機能の調整が行われました。今後は求人広告やクレジットカードの広告にも拡大する計画があるようです。

参考:Expanding Our Work on Ads Fairness | Meta

あくまでもいくつかの事例ではありますが、SNSのプラットフォーム上では、コンプレックスを煽る内容や差別的と捉えられかねない広告といった問題がいかに深刻に受け止められているかうかがわれます。

2023年には何が注目されそう?

さて、2023年はどんな年になるのか、水晶玉を覗いてみましょう。今回は、5つのトレンドを確認しました。

成長を続ける縦型ショート動画

Photo by Souvik Banerjee onUnsplash

TikTokをはじめ、YouTubeのショート、InstagramのリールやストーリーズやLINEのVoomまで、ここ数年、縦型ショート動画が非常に注目されており、中でもZ世代(1997年~ 2012年生まれの世代)への絶大なリーチやよいレスポンスが特徴的で、2023年もこのトレンドが続く確率が比較的高いと思われます。

例えばYouTubeでは去年、縦型ショート動画「ショート」の視聴数が前年比135%の増加を記録しました。

参考:Short-Form Videos Continue to Grow Viewership on YouTube, According to Tubular Labs

また、2022年にYouTubeでは動画広告を縦型として表示しやすくなるようにAIで補正する仕組みを取り入れたことを加味すると、Google/YouTubeでは今後もこのフォーマットに非常に強いこだわりを持っていると推測されます。

参考:New ways to make vertical video ads on YouTube

一方、Twitter社は昨年9月に「Immersive Video」という縦型・短尺の動画フォーマットを発表し、他社に比べて動き出したのがやや遅いものの同社も競争の激しい縦型動画市場に参入する意向を示しました。

参考:New video products make it easier to watch what’s happening on Twitter

現在、さまざまなプラットフォームが縦型ショート動画フォーマットに大きな投資をしているという動きは、各チャネルにとってZ世代への注目がいかに重要であるかを物語っています。モバイルの視聴習慣は、多くの若いユーザーにとって「縦型ファースト」であり、従来の横長動画コンテンツとは異なるアプローチが必要かもしれません。

ユーザー属性が特殊な新しい広告媒体の成長

Photo by Campaign Creators on Unsplash

昨年は、ピンタレストとマイクロソフトが自社広告プラットフォームを日本市場に展開したことが注目を集めましたね。

両プラットフォームのユーザー数は、GoogleやFacebookなどには及びませんが、両者ともユーザー属性が非常に特殊であり、これらのユーザータイプに的確にリーチしようとする広告主にとっては興味深い媒体になると言えるでしょう。

Pinterestアドは、ベータテストを経て、2022年6月に日本へも正式に開放されました。

特にコロナ禍以降、このピンタレストのユーザー数が増え、現在約870万人のMAUを抱えています。このうち、ファッションやインテリア、デザインに関心のある20〜30代がかなりの割合を占めており、このターゲット層に関連する広告主にとっては、特に認知目的のアッパーファネルの施策では確かに可能性があると言えるでしょう。

参考:2022年11月更新!性別・年齢別 SNSユーザー数(Twitter、Instagram、TikTokなど13媒体)

Microsoft広告に関しては日本で2022年5月末とPinterestアドとほぼ同時期に一般公開されました。

この媒体のトラフィックの多くは、Windows OSの内部検索から来るため、Windows PCユーザーが大半(通常は90%以上)を占めています。特にBtoBの分野では、業務でWindows PCを使うケースが多いことを考えると、大きな可能性を秘めているはずです。また、既存のGoogle 広告やMeta広告のキャンペーンを直接インポートできる機能もあるため、導入自体も比較的簡単に行えます。

どちらかの媒体のユーザー属性に近しい顧客を持つ広告主にとっては、新年度のポートフォリオに加える良い機会になるかもしれません。

また、どちらも現状では広告が大きく乱立せず競争があまり激しいわけではないようなので、少なくとも一時的にはCPC/CPMが比較的低く済む可能性が高く、まずは試験的に始めてみたいという場合には魅力的でしょう。

広告運用者は徐々にAIの通訳者になる?

Photo by Eric Krull on Unsplash

ここ数年、運用型広告はAIや機械学習と切り離せないようなテーマになっていますよね。

今年からは、さらにAIとのコミュニケーションをとる能力というものが、広告運用者のスキルとして益々重要視されると予想しています。要するに、広告運用者がAIから欲しいアウトプットを、いかにスムーズに引き出せるかということです。

例えば、「P-MAXキャンペーンはどのような初期設定でうまく成果が出せそうか」や、「どのようなアカウント構造で機械学習が上手くいきそうか」などはイメージしやすいかもしれません。ただ、このスキルが今後もっと重要になってくると思わせたのは実は広告以外の分野でAIが最近飛躍的な進歩を成し遂げていることがきっかけです。

特にAIによるテキストの自動生成(AIチャットボットのChatGPTなど)や画像の自動生成(DALL・EMidjourneyStable Diffusionなど)が大きな話題を呼んだことを覚えている方も多いでしょう。

この技術をクリエイティブ制作や広告・LPコピーの作成などに使えるようになるまではさすがに時間がかかりそうですが、ChatGPTが将来的に検索エンジンに取って代わるのではないかといわれている中、GoogleもAI技術の開発を強化する方針を示しました。

参考:グーグルが方針変更、ChatGPTに対抗へ…ピチャイCEOが新しいAI製品の開発を指示 | Business Insider Japan

これを加味すると、今後の広告プロダクトにAIの出番が増えることは簡単に予測が付きます。機械学習で長い動画を6秒間にトリムするツールの発表もその一環として捉えられますし、このようなプロダクトを扱うことが徐々に増えている中で、今後もっとAIとうまく付き合える広告運用者が重宝されるでしょう。

リテールメディアのシェアが伸びる

Photo by LumenSoft Technologies on Unsplash

リテールメディアは、今年も大きな可能性を秘めた分野です。ネット広告業界団体IABは、2023年のデジタル広告のメディア予算総額の伸びを前年比5.9%増としか予想していませんが、リテールメディアに関しては28.4%と大きく伸びると予測しています。この調査によると、意思決定者の約61%が2023年にリテールメディアへの投資を増やす予定であることがわかりました。

参考:Ad spend projected to grow 5.9% in 2023

そうなっている要因の一つは、特に購買意欲の高いユーザーがAmazonなどのECプラットフォームから検索を始めることが多く、2022年のそれぞれのチャネルの予算のシェアを見ていくと少なくとも一部はGoogleなどの検索エンジンからECプラットフォームへの予算されていく傾向があると示されています。

参考:Retail Media is Here in a Big Way: Should Search be Worried?

もちろん、現在の日本のリテールメディアは欧米ほど大きなエコシステムを成しているわけではないのですが、少しずつフォーカスが強くなっていることを確認できています。最近、セブン‐イレブン・ジャパンを筆頭に数社の国内の小売事業がリテールメディアをロードマップに載せていることが注目されており、今後の展開が楽しみです。

参考:セブンもイオンも参入 広告新市場「リテールメディア」の衝撃

もちろん、Amazonや、最近「コマースメディア」というリテールメディアの上位カテゴリーを掲げて新しい広告の議論をはじめたCriteoも、既に日本国内の広告運用者にとって親和性があるプレイヤーも、十分に草分け的な存在になり得るので、遅かれ早かれ、国内のECクライアントの広告ポートフォリオにおいて、リテールメディアのプラットフォームもより強いウェイトを占めるようにないりそうだと推測されます。

ユニバーサルアナリティクス(UA) のサポート終了がもたらす課題

Photo by Jason Coudriet on Unsplash

Google Analyticsを定期的に使用しているほとんどの人にとって、これはニュースではないはずですが、無料版のユニバーサルアナリティクス(UA)は2023年7月にサポートが終了し、エンタープライズ向けのUA 360のユーザーも2024年7月から新しいデータをとれなくなります。

GA4がまもなくGoogle Analyticsの新しい標準となるわけですが、単なるアップデート版ではなく完全に別物であることを加味すると、これまでUAを使い続けてきた企業にとっても、GA4への移行は不慣れなことが場合によって少なくない、と予想されます。

GA4の導入率については、残念ながらあまり大規模なデータが公開されていないようですが、なかなかスムーズにいかない可能性があると示唆されています。例えば、Cloudace社の調査では、84%の回答者がUAからGA4への移行が必要だと認識していると答えた一方で、約3分の1の回答者が移行スケジュールが未定だとも答えています。

参考:GA4への移行の課題、「機能を正しく理解しないと使いこなせない」が最多

UAのサポート終了後にアクセス解析環境が全く整えられていない最悪のケースは避けたいところなので、GA4の導入が困難な場合は、2023年に別のツールを検討するのもありかもしれません。

参考:【コラム】GA4ありきでない発想を あなたの分析環境を見直すチャンス - コラムバックナンバー - アナリティクス アソシエーション

いずれにせよ、今後のアクセス解析環境は広告運用にもインパクトをもたらす可能性が高そうです。

計測が正しければ、より正確な媒体評価もでき、広告プランニングもよりスムーズに行える上に、アクセス解析ツールから広告媒体にインポートしている指標やオーディエンスを利用するケースも多いので、UA終了後の分析環境の設定が2023年の大きな課題と言えます。

「ベストプラクティス」の棚卸しのチャンス?

2023年は、デジタル広告との付き合い方の習慣を様々なところでアップデートしていかなければならない、ある意味の転換期と捉えられるかもしれませんね。

まだ1月で早いのですが、今年はすでに運用型広告の既存の「当たり前」を揺さぶるイベントがいくつか起こると思われます。

コロナ禍・ポストコロナの購買習慣の変容から、従来Google Analytics(UA)の終焉、AIと機械学習で見られる大きな進歩まで、我々広告運用者が今まで当然のことと考えてきた多数のベストプラクティスを再考し、必要に応じて更新するよう促す重要なポイントとなり得るわけです。

そのため、2023年はやるべきことも学ぶべきこともたくさんある年になりそうです。

そんな思いで、新年も楽しくやっていきましょう^^

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