
※2020年3月18日:最新の情報をもとに更新
検索広告向けリマーケティング(RLSA:Remarketing Lists for Search Ads)とは、たとえばサイト訪問済みのユーザーか否かで、キーワードの入札に強弱をつけたり、広告文やランディングページを出し分ける機能です。
また、Google 広告は検索広告向けリマーケティング、Yahoo!広告の検索広告(旧:Yahoo!スポンサードサーチ)はサイトリターゲティング機能という名称で提供されていますが、名称は違えど配信の仕組み自体は同じです。
今回は、検索広告向けリマーケティングの仕組みや活用シーン、設定方法などをご紹介します。
※Google 広告では「検索広告向けリマーケティング」、Yahoo!広告では「検索広告のサイトリターゲティング機能」が正式名称ですが、本記事では『検索広告向けリマーケティング』に統一します。


目次
検索広告向けリマーケティングの仕組み
検索広告向けリマーケティングは、広告主が所有しているウェブサイトやアプリ、YouTube動画にアクセスしたユーザーの行動履歴や、顧客の連絡先情報をもとにユーザーをリスト化して配信対象として検索キャンペーンに設定することで利用可能です。
検索広告向けリマーケティングで利用可能なユーザーリスト
基本的にリマーケティングやサイトリターゲティングで使用可能なユーザーリストは検索広告向けリマーケティングでも利用できます。利用可能なリストはつぎの通りです。
ユーザーリストの種類 | Google 広告 | Yahoo!広告 |
---|---|---|
標準のリマーケティング リスト | ◯ | ◯ |
アプリのリマーケティング リスト | ◯ | ◯ |
YouTube動画のリマーケティング リスト | ◯ | ✕ |
Google アナリティクスのリマーケティング リスト | ◯ | ✕ |
顧客の連絡先情報にもとづくリマーケティング リスト | ◯ | ✕ |
AdWords optimized list (Google 広告の最適化リスト) |
◯ | ✕ |
検索広告向けリマーケティングに使用できるユーザーリストは、全6種類です。
それぞれどのようなユーザーリストなのかは次で説明していきます。
標準のリマーケティング リスト
広告主所有のウェブサイトでのユーザーの行動履歴をもとに作成するユーザーリストです。ウェブサイトにGoogle 広告ならリマーケティング用のタグ、Yahoo!広告ならサイトリターゲティング用のタグを設置することで、そのタグを読み込んだユーザーをリストとして作成できます。
サイトの閲覧履歴によってセグメントを容易に作成できるのが大きなメリットです。たとえば「商品をカートに入れたけれど離脱したユーザー」など購買意向が比較的高いユーザーか否かでキーワードの入札価格に強弱をつけるなどの利用ができます。
アプリのリマーケティング リスト
広告主が所有しているAndroidやiOSアプリ内の行動履歴をもとに作成するユーザーリストです。各広告媒体と連携可能なSDK(※)をアプリに実装し、Google 広告またはYahoo!広告に連携することで利用できます。
アプリのインストールや会員登録など、ユーザーのアプリ内での行動別に検索広告を出し分けたい場合に活用できます。
※SDK(Software Development Kit)とは、ソフトウェアを開発するために必要なプログラムや技術文書などをひとまとめにしたものです。SDKをアプリに実装することで、アプリ内の行動履歴が測定可能になります。また、各広告媒体と連携可能なSDKを実装することで、広告配信に必要な設定もできるようになります。
動画リマーケティング リスト
広告主所有のYouTube チャンネルや動画を過去に視聴したことのあるユーザーなど、YouTube チャンネル内での行動履歴にもとづいて作成するユーザーリストです。対象のYouTube アカウントとGoogle 広告とを連携することで作成可能です。
たとえば「広告主所有のYouTube チャンネル内の動画を高く評価した人」など自社の商品やサービスに関心が深いユーザーか否かで検索広告を出し分けたい場合に活用できます。
Google アナリティクスのリマーケティング リスト
Google アナリティクスの計測データをもとに作成するユーザーリストです。Google 広告とGoogle アナリティクスとを連携することで利用できます。
「滞在時間」や「セッション数」など、Google 広告のユーザリスト設定画面(オーディエンス マネージャー)では指定できないセグメントを利用して検索広告を出し分けることができます。
顧客の連絡先情報にもとづくリマーケティング リスト
カスタマーマッチと呼ばれ、広告主のもつ顧客の連絡先情報(メールアドレスや電話番号、住所など)にもとづいて作成するユーザーリストです。顧客情報を暗号化された状態でGoogleに共有してリストを作成します。
たとえば消耗品などのリピート性の高い商品を取り扱うサービスで、既存顧客がその商品が属するジャンル名(ビッグワード)を検索した際に入札を強めるなど、リピート促進に活用できます。
Google Ads optimized list(Google 広告の最適化リスト)
Google 広告のタグやGoogle アナリティクス、YouTubeなど、複数のデータソースを組み合わせて1つに統合されたユーザーリストです。このリストの作成には、少なくとも1つのデータソースを選択する必要があります。Google 広告と連携可能な広告主所有のすべてのサービスに接触したユーザーか否かで検索広告を出し分けをしたい場合に活用できます。
検索広告向けリマーケティングでは、購買意向が比較的高いユーザーや既存顧客など様々なユーザーリストを使ったターゲティングが可能です。しかしそれゆえに、どういったシーンで活用できるのかイメージできないという方も少なくないのではないでしょうか。そこで次より、参考となる活用シーンをご紹介していきます。
検索広告向けリマーケティングの活用シーン
検索広告向けリマーケティングは、ユーザーの検索語句とユーザーリストの組み合わせにより、活用シーンを大きく3つに分けることができます。
1. 入札単価を上げて、見込みが高いユーザーへのアプローチを強化する
たとえば、浴衣を販売しているECを運営していたとします。ウェブサイトに1度は訪問したことがるものの、訪問時には商品を購入せずに離脱したユーザーがあらためて「浴衣 通販」などビジネスに直結する検索語句で検索した場合は通常よりも入札価格を20%引き上げるといった使い方をします。また、リピート性の高い商材の場合であれば、過去にコンバージョンをしたユーザーに対しては入札価格を50%引き上げるなどをすることで、成果の見込みが高いユーザーへ強くアプローチを行えます。
2. 今まで検索広告では入札できなかったようなキーワードでアプローチをする
1と同じ、浴衣を販売するECを例にしてみます。活用法をご紹介する前にちょっと思考を変えてみます。浴衣を着るのはどんなときでしょうか?浴衣を着るシーンとして、花火大会に行きたい、夏祭りに行きたいということが多いのではないかと考えることができますね。
浴衣の通販のプロモーションを行う場合、「花火大会」「夏祭り」のような一般的なキーワードに入札を行っても、これらの検索語句で検索するユーザーは、浴衣の情報よりも、花火大会や夏祭りが、いつ・どこで行われるか?といった情報を欲しているため、通常は広告投資に対する効果は得られにくいです。しかしながら、1度ウェブサイトに訪問したことのあるユーザーに対してであれば、「隅田川花火大会」のように浴衣を着用するシーンに関連する検索語句からでもコンバージョンが期待できます。
3. 新規顧客と既存顧客で広告訴求やランディングページを変える
コスメやサプリなどでは、新規顧客獲得の手法として、少量のサンプルを販売し、その後、通常の商品を購入してもらうアップセルが一般的です。新規顧客にはサンプル販売の広告訴求、既存顧客には通常商品の購入や定期購入を促す広告訴求をするなど、新規顧客と既存顧客で広告訴求やランディングページを変えることが可能です。
このように、検索広告向けリマーケティングでは、ユーザーリストによる詳細なセグメントができるためターゲティングが可能になります。少し思考を変えるだけでビジネスチャンスが大きく広がります。
検索広告向けリマーケティングの設定方法
ここからは、検索広告向けリマーケティングの設定方法を解説していきます。
今回は例として、Google 広告またはYahoo!の検索広告で作成したユーザーリストを広告グループに「ターゲティング」または「ターゲットリストのユーザー」として設定する手順をご紹介します。
Google 広告
まずはじめに、Google 広告から解説します。

- 広告管理画面を開き、ユーザーリストを設定したい広告グループを選択のうえ、「オーディエンス」をクリック
- 左上のペンマークをクリック
- 広告グループが選択されているかを念のため確認
- 「ターゲティング」を選択
- 「閲覧」タブをクリック
- 「ユーザーがお客様のビジネスを利用した方法」を選択
- 「ウェブサイトを訪れたユーザー」よりユーザーリストを探してチェック
- 青枠の箇所に選択済みのユーザーリストが表示されます。ユーザーリストが選択されていることを確認してから「保存」をクリック



Google 広告で作成したユーザーリストを広告グループに「ターゲティング」として設定する方法は以上です。
次は、Yahoo!の検索広告で作成したユーザーリストを設定する方法を解説します。
Yahoo!の検索広告

- 広告管理画面の「ツール」タブをクリック
- 「ターゲットリスト管理」をクリック
- 広告グループに設定したいユーザーリストにチェックを入れて、「関連付けの設定」をクリック
- プルダウン内「広告グループに設定(配信)」を選択
- 「対象のターゲットリストを選択」でユーザーリストが選択されているのを確認
- 「関連付ける広告グループを選択」でキャンペーン、広告グループの順で広告グループを設定
- 広告グループが選択されているのを確認して「保存」をクリック
- ユーザーリストを設定した広告グループの「ターゲティング」タブをクリック
- 配信対象ユーザーのデフォルト値は「全ユーザー」のため、該当のユーザーリストの「全ユーザー」をクリックして開いたプルダウンで「ターゲットリストのユーザー」を選択



Yahoo!の検索広告で作成したユーザーリストを広告グループに「ターゲットリストのユーザー」として設定する手順は以上になります。
検索広告向けリマーケティングの注意点
ターゲティングとモニタリングの違い
キャンペーンまたは広告グループにユーザーリストを設定する方法は、「ターゲティング」と「モニタリング」の2種類あります(※)。各機能の違いを知らずに設定をすると意図しないセグメントにターゲット配信してしまう恐れがありますので、2つの機能の違いをしっかり把握することが重要です。
※Yahoo!広告の場合は「ターゲットリストのユーザー」と「全ユーザー」になります。各機能はGoogle 広告とほぼ同じなため、ここでは『ターゲティング』と『モニタリング』で表記を統一します。

モニタリング:検索キャンペーンまたは広告グループに設定したユーザーリストのユーザーか否かで、キーワードの入札に強弱をつける機能
上の表も参考に各機能でできることをしっかり頭に入れて、誤って意図しないターゲットへの配信をしないよう気をつけたいですね。
リストサイズが小さいユーザーリストは利用できない
Google 広告ではユーザーのプライバシー保護の観点から、そもそもユーザーリストのサイズが小さいと配信対象として設定できません。また、ユーザーリストのサイズに関わる配信要件は配信先によって異なるため注意が必要です。
リマーケティングで利用可能なユーザーリストは過去30日間でアクティブなユーザーが100人以上なのに対し、検索広告向けリマーケティングでは過去30日間でアクティブなユーザーが1,000人以上いないと配信対象として設定できません。Yahoo!の検索広告のサイトリターゲティング機能もユーザーリストのリーチ数が1,000件以上必要です。
Google 広告

Yahoo!の検索広告

ちなみにリストのサイズは、Google 広告は「ツールと設定」より「オーディエンス マネージャー」をクリック、Yahoo!広告は「ツール」タブで「ターゲットリスト管理」をクリックで確認できます。
また、Google 広告ではリストのサイズが配信要件を満たないユーザーリストをキャンペーンまたは広告グループに配信対象として設定した場合、対象のユーザーリストの下部に「Google サービスでのターゲット ユーザーが少なすぎます」というエラーが表示されるため、配信対象か否かはキャンペーンまたは広告グループ画面でも確認できます。しかし、Yahoo!広告の場合はGoogle 広告のようにエラーが表示されないため、リストサイズが足りないことにより、意図的な配信ができない状態を予防するためにも定期的にユーザーリストのサイズを確認するのをおすすめします。
ターゲティングの精度はユーザーリストの質で決まる
ターゲティング精度はリマーケティングやサイトリターゲティング同様、ユーザーリストの質で決まります。
たとえばポイント獲得目的でポイントサイトから来たユーザーや、コンテンツターゲット経由でサイトを訪問したユーザーなどはコンバージョン率が低くなる傾向があります。これらのユーザーがユーザーリスト内に多く含まれるとリストの質が悪くなるため、除外ユーザーリストを作成して除外することで、より質の高いユーザーリストを作成できます。
参考:リマーケティング、リターゲティングの仕組みと考え方 質の高いユーザーリストの作り方
まとめ
検索広告向けリマーケティングは、成果の見込みが高いユーザーへの検索広告の表示機会を増やすことができ、効果を落とさずにビジネスの幅を大きく広げられる可能性を秘めた機能です。
しかしながら、ディスプレイ広告のリマーケティングと同様、ユーザーリストを細かくし過ぎると、複数リストに含まれたユーザーの場合、どちらのリストを優先するか?という問題であったり、Cookie登録数が1,000まで到達しないなどの弊害が出る可能性がでてきます。配信を開始する時点では、ユーザーリストの質は確保しつつも、新規顧客と既存顧客の2つのリストでテストを行うなどし、徐々に細かくセグメントをすることでさらなる成果向上を目指すといった流れで進めるのが良いでしょう。
