Google Cloud が提供する Retail Search は、Googleのリテールメディア化支援の布石なのか

Google Cloud が提供する Retail Search は、Googleのリテールメディア化支援の布石なのか

2022年3月末の話になりますが、Googleは小売業種向けに Retail Search の提供を開始しました。

参考:How retailers build Google-quality search into their sites | Google Cloud Blog




Retail Search は Google アナリティクス や Google タグマネージャーなどが含まれている  Google マーケティングプラットフォームではなく、それとは別の Google Cloud Platform にて提供されていたということもあり、筆者もその存在に気づけていませんでした。

Retail Search は、ECサイトに Google 品質の検索機能を提供するソリューションです。この機能が一般の小売業向けに対して提供された背景としては、前述のGoogleの投稿でも触れられている「検索放棄」による離脱を防ぐ事を目的としていることが分かります。

Harris PollとGoogle Cloudが2021年に行った調査によると、米国の消費者の約94%が、無関係な検索結果を受け取ったためにショッピングセッションを放棄しています。”検索放棄 “と呼ばれる現象です。実際、商品発見の体験が悪いと、購入が途中で止まってしまい、買い物客は不満を抱いたままになってしまいます。米国だけでも、検索放棄によって小売業者は毎年3,000億ドルもの損失を被っています。

How retailers build Google-quality search into their sites | Google Cloud Blog

※日本語訳はDeepLによるもの

これまでも、商品検索は各ECサイトで提供されていますが、その検索結果の質が低いことによって引き起こされる機会損失が、かなりの大きさであることは衝撃的です。

図:ECサイトにおける検索放棄に関するインフォグラフィック

・悪いオンライン検索体験から毎年失われる金額、3,000億ドル(米国のみ)
・世界のオンライン消費者の85%が、検索に失敗した後、ブランドに対する見方が変わっている
 ・米国のECサイト管理者の64%が明確な改善策を持っていない

How retailers build Google-quality search into their sites | Google Cloud Blog

※翻訳はDeepLと筆者によるもの

各ECサイトの機能としてバンドルされた「商品検索」の機能を、パッケージ提供者が常に改良を加えていけば良いという話ではありますが、これは極論です。実際はそれよりも優先度が高い項目に対してリソースが割かれるというのは想像に難くありません。

そこで登場したのが Retail Search です。Retail Search によってECサイトの商品検索機能に次のような機能を持たせることができるようになります。

  • 商品以外の検索を含む幅広いクエリからより良い結果を生み出す高度なクエリ理解
  • 製品属性とウェブサイトコンテンツを効果的にマッチングさせるセマンティック検索により、関連性の高い製品を迅速に発見することができます
  • 特定のビジネス目標を達成するために、ユーザーとのインタラクションやランキングモデルを活用した最適化結果
  • 小売企業のデータを強力なアクセス制御で隔離し、自社のプロパティで関連性の高い検索結果を提供するためにのみ使用する、最先端のセキュリティとプライバシー保護対策

Retail Search を先行しているECサイトの中には、クリックスルーと検索コンバージョンが増加し、「No Results Found」の割合が低下していたり、ユーザーあたりの検索回数が20%減少(少ない検索回数で目的にたどり着く割合が増えた)していることが確認されているとのことです。

Retail Search の利用は1,000クエリ当たり$2.5の料金で利用可能ですが、Google Cloud Platform の設定とRetail API を用いた開発が必要なので、利用の難易度は比較的高いといえます。

また、Retail Search は Google アナリティクス 360、タグ マネージャー、Merchant Center、Cloud Storage、BigQuery などの既存のツールにデータを速やかに接続する事も可能とされているとのこと。

つまり、Retail Search は Google Cloud Platform のプロダクトに限らず、Google Merchant Center や Google マーケティングプラットフォームとの連携も柔軟にできるように設計されている事を意味します。

もしも、Retail Search とあのプロダクトが連携できるようになったら……?

ドリフ大爆笑の「もしも……〇〇が××だったら …… 」シリーズ(たぶん40代以下の人には伝わらないネタ)よろしく、Retail Search と他のGoogleプロダクトを組み合わせる事ができたら・・・を考えてみました。

(ここからはあくまでも筆者の妄想なので、実現可能性は度外視していることをご了承ください……)

Retail Search との組み合わせで面白い化学反応が起こせそうだなと思っているのは、「Google アドマネージャー」です。

Google アドマネージャーとは、端的にいえばメディア向けにGoogleが提供しているアドサーバーで、自社サイト内に持つ広告枠を管理し、広告収入を最大化させるためのプロダクトです。

Retail Search によって、商品検索にGoogle 検索並みの品質が担保できるというのであれば、その商品検索に関連した商品広告を掲載することも技術的には可能なはずです。

何が言いたいかというと、Retail Search と Google アドマネージャー が組み合わされば、Googleのプロダクトだけでリテールメディアができてしまう可能性があるのではないか?ということです。

※リテールメディアについては次のブログ記事を参考にしてみてください。

参考:リテールメディアはECサイトの次の収益源になりうるのか? 〜CriteoのMabaya買収から考える | REWIRED 
参考:海外市場から見る、リテールメディアの「今」と「これから」|アナグラム株式会社 

つまり、Retail Search によってもたらされた各ECサイト内の検索結果にアドマネージャーによる広告枠をつけることで、Amazonのスポンサープロダクト広告と同様の機能を持たせることができるのでは?という妄想ですね。

メディア側であるECサイトとメーカー間でのPMP(Private Market Place)の構築も技術的な観点だけ見ると可能そうです。

これが実現すると、入り口から出口まで Google のテクノロジーで囲い込むということが可能になるわけですが、全てGoogleのプロダクトを利用できるので、目には見えない様々なシグナルを使って各プロダクトの効果最大化が狙えます。(一方で、Googleがルールチェンジした場合はそれに従わざるを得ないというデメリットも想定できますが。。。)

Walmartの例を見るだけでも、リテールメディアは間違いなく広告業界にとって大きなフロンティアの一つです。Google はおそらくこの分野への投資を進めていくだろうことは容易に想像できます。

本記事の妄想は、Google のプロダクトのみでリテールメディアが構築できるという、EC事業者にとっては夢のある話である一方で、Google依存をどうリスクヘッジするかという課題も同時に提示することにはなりますが、もしこれが本当に実現できるような未来になると、EC界隈はこれまでとはまた違った賑わいを見せてくれるはずなので、個人的には実現を期待したいです。

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Hiroki Tanaka

Hiroki Tanaka

アナグラム株式会社 シニア テクニカルアカウントマネージャー。元公共放送の放送エンジニアからのキャリアチェンジで、前職の広告代理店にリスティング広告の運用コンサルタントとしてこの世界に飛び込む。その後、2012年1月にアナグラム第1号社員として入社。広告運用、クルーのブログの編集と自社Webサイトの管理、Googleアナリティクス・タグマネージャー・データフィードなどに関する技術支援、セミナー登壇、社内整備など経営以外の領域をだいたいカバー。お酒が飲めないのにワイナリーの収穫祭に参加する人。書籍「いちばんやさしい[新版]リスティング広告の教本」の著者。

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