アプリマーケティングに携わる方なら耳にしたことのあるApple Search Ads。Apple Search Adsの出稿先であるApp Storeの「検索」タブでは、訪問者の約70%がアプリを探すために検索を行っており、検索後にアプリがダウンロードされる割合は65%と言われており、アプリのインストール数を伸ばしていきたい場合には、比較的成果の出しやすい媒体です。
参考:「検索」タブ - ヘルプ - Apple Search Ads
そのため、アプリマーケティングにおいて、Apple Search Adsは今後も配信メニューの中心になっていくでしょう。
Apple Search Adsで成果を上げていくためには、目的にあったキャンペーン構造で運用することが必要不可欠です。しかし、具体的にどのようにキャンペーンを組み立てるのかなど広告運用に関する情報が少なく、実施まで至らなかった、あるいは実施したものの思うような結果が得られなかったという担当者も少なくないのではないでしょうか?
この記事では、Apple Search Adsの運用経験がない方はもちろん、今以上に成果を伸ばしていきたい運用者向けに基本的なキャンペーンの組み立て方と成果を伸ばす時のポイントを紹介します。
目次
まずはキャンペーンの構成を知ろう
Apple Search Adsとは?という方はまずはこちらの記事をチェックしてみてください。
Apple Search AdsはApp Storeの検索結果画面に掲載される「Search resultsキャンペーン」とあなたにおすすめの枠に掲載される「Search tabキャンペーン」の2種類があります。
「Search resultsキャンペーン」は検索連動型広告と同様にキーワードを設定して広告の配信を行います。 一方で「Search tabキャンペーン」では配信にキーワードを必要とせず、認知拡大を行いたい場合におすすめのキャンペーンです。
ここでは、配信の目的やキーワードで広告運用のコントロールが効き、キャンペーン構成によって成果が大きく変わるSearch resultsキャンペーンに絞って解説していきます。
Apple Search AdsのクリエイティブはApp Storeへの登録内容から自動的に生成されます。そのためキャンペーン構成は他の運用型広告と比較するとシンプルな構成が特徴です。キャンペーンと広告グループで設定できる項目は以下のとおりです。
- キャンペーン:対象アプリ・予算・国/地域
- 広告グループ:入札額/CPA目標・配信期間/スケジュール・デバイス・ターゲティング(キーワード/デモグラ)
パフォーマンスに影響する調整可能な要素は広告グループに集中しており、キャンペーンと広告グループをどのように分けるかが重要です。
成果を伸ばすキャンペーン構築の3ステップ
具体的にキャンペーンと広告グループをどのように分けていくか考えていきましょう。
1.キーワード選定
まずは、App Storeでターゲットユーザーが検索しそうなキーワードを考えましょう。
キーワードの洗い出しでは具体的なアプリ名やどんなアプリのカテゴリ(ゲームや占いなど)や用途(写真 加工、英語 辞書など)などアプリの目的から考えてみるのがいいでしょう。
Apple Search Adsは、キーワードのマッチタイプが完全一致と部分一致のみで、フレーズ一致がありません。そのため、完全一致のみだと語順が異なる場合や前後に関連語句が含まれる場合に表示がされないため、選定したキーワードは完全一致・部分一致の両方で配信するのが望ましいです。
2.キーワードのグルーピング
しかし、部分一致は関連する用語などのキーワードへも広がりを持って配信がされるため、完全一致にくらべて成果が安定しないケースも少なくありません。完全一致よりも入札単価を抑えるなどの目標CPIに合わせた運用コントロールが必要になります。
そのため、入札額や目標を設定できる広告グループを、アプリのダウンロードに繫がる確率に応じて分けるのがおすすめです。多くの場合、キーワードの種類によって費用対効果が変わってきます。
キーワードタイプ別に3つに分類
たとえば「インストールの獲得数を増やす」ことを目的に運用する場合、まずは配信したいキーワードの種類を下記3つのタイプに分類に整理してみましょう。
Apple社が推奨しているキーワードの分類は以下の3つのタイプです。
分類 | 概要 | 例 |
---|---|---|
ブランドタイプ | アプリや企業名に関するキーワード | 自社アプリ名、自社名(ブランド名、サイト名を含む) |
カテゴリタイプ | アプリのカテゴリやジャンル、機能(ブランド名は含まない) | パズル、ゲーム、音楽、絵、占い |
競合タイプ | 関連するアプリのカテゴリの類似のアプリ名 | 競合アプリ名、競合社名(競合ブランド名、競合サイト名を含む) |
新たなキーワードを開拓するためのキャンペーン
上記3つに加えて、想定していなかった検索語句から獲得が得られる場合もあります。そのため、「インストールの獲得数を目的」とする広告グループで配信している完全一致のキーワードを「獲得数を増やすキーワードの開拓」を目的とした調査タイプのキャンペーンに部分一致で同様に設定し、並行して配信することをおすすめします。
キーワードのマッチタイプについては次の項で説明していきます。
マッチタイプの考え方
キャンペーンの目的に応じて、マッチタイプを使い分けることもポイントの1つです。
インストールの獲得数を増加を目的とする「ブランドタイプ」「カテゴリタイプ」「競合タイプ」では、ある程度検索されるキーワードが明確な場合、キーワード単位で入札をコントロールできるように完全一致で設定します。
一方、キーワードの開拓を目的とした「調査タイプ」では登録したキーワードから広がりを持たせて配信が可能な部分一致。もしくは、キーワードを登録しなくても広告に使用するアプリ情報や検索データを用いて関連性の高い検索語句に広告を表示させる検索マッチの機能を利用するのをおすすめします。
英語の学習アプリを例に見ていきましょう。
「英語 勉強」というキーワードを登録した場合のマッチタイプごとのキーワードの拡張例は下記の通りです。
※あくまで想定される検索語句であるため、実際の掲載状況とは異なる可能性があります
除外キーワードのマッチタイプに注意
上記の通り、「英語 勉強」の部分一致の拡張では「英語 翻訳」など提供しているサービス外の語句でも表示がされる可能性があります。そのため、「英語 翻訳」を完全一致で除外キーワードとして登録することもお忘れなく。
なお、Apple Search Adsは配信するキーワードと除外キーワードでマッチタイプの拡張の定義が異なるので注意しましょう。
3.キーワード開拓をする
次は、キーワード開拓を目的とした調査タイプのキャンペーンを作成しましょう。調査タイプのキャンペーンには2つの広告グループを作成することをおすすめします。
部分一致を使用する
ブランドタイプ/カテゴリタイプ/競合タイプのキーワードを部分一致で追加、検索マッチをオフに
検索マッチを使用する
キーワードを含めず検索マッチをオン、他のキャンペーンで使用しているすべてのキーワードを除外キーワードとして追加
例えば、英語学習アプリのインストール獲得を目的に「英語 アプリ」でApple Search Adsを配信していたとします。カテゴリーキャンペーンと平行して、調査タイプのキャンペーンで登録していた「英語 アプリ」の部分一致で拡張した「英単語 アプリ」のキーワードでも獲得に繋がるのを発見できたりします。
アプリストアでは確かにアプリ名で検索する方が多くを占めていますが、アプリのジャンル名やアプリでやりたいこと(「画像加工」など)といった抽象的なフレーズでの検索も少なくありません。Googleのプロダクトマネージャーもアプリストア内での検索について次のように語っています。
Googleのプロダクトマネージャー、Relly Brandman氏によると、検索には「探したいアプリが決まっている状態での検索」と「まだDLしたいアプリは決まっておらず、「パズル」や「小人」など抽象的なキーワードでの検索」の2種類があると言われています。
Google Play ストアでは、毎月600万種類ものキーワードが検索されていると言われており、抽象度の高いキーワードや長いキーワードはその傾向がわからずアプリ開発者たちがそれぞれインストール目的の検索を分析・解明していく必要があると言われています。
引用元:ユーザーはアプリストアで、アプリをどう検索しているのか?
このように、Apple Search Adsの成果を拡大していくためには、新たなキーワードを開拓していくことも重要な要素となっています。
成果を大きく伸ばすために確認したい2つのポイント
基本的なキャンペーン設計ができた後は、さらに成果を伸ばすためのポイントを2つ紹介します。
部分一致・検索マッチで新しいキーワードを見つけながらPDCAをまわす
完全一致のキーワードは、そのキーワードの検索のボリュームを外的要因に左右されやすい側面を有します。つまり、運用調整のみではコントロールしにくいとも言い換えられます。そのため、パフォーマンスを継続的に高めていくためには、外的要因に左右されにくく運用でコントロール可能な範囲をどの程度握ることができるかが運用のコツです。
具体的には、調査タイプキャンペーンで配信しているキーワードで獲得につながる検索語句を見つけたら、「ブランドタイプ/カテゴリタイプ/競合タイプ」に完全一致のキーワードで移行し獲得できるキーワードの数を増やしていきましょう。
検索語句から新たに獲得できるキーワードを発見して完全一致で追加した後は、調査タイプキャンペーンで除外キーワードとしての登録を忘れずに行いましょう。そうすることで、調査タイプキャンペーンでも同様に部分一致で設定したキーワードのさらなる広がりを期待できます。
まとめると、獲得確度の高いキーワードはインストール目的のキャンペーンに移行して入札調整を行い獲得効率を高めましょう。一方、調査タイプキャンペーンでは新たな獲得キーワードを開拓できるようにキャンペーン構造の棲み分けを行うことがポイントです。
目標CPIからキャンペーン毎の予算や入札額を逆算して考える
Apple Search Adsの場合、キャンペーンの目的が異なるタイプそれぞれに目標CPI(1インストール当たりの単価)を設定するのではなく、Apple Search Ads全体で目標CPIを設定し目標CPIからキャンペーン毎の予算や入札額を逆算して入札額を設定する考え方もできます。
下記の表のように、推定コンバージョン率(CVR)から逆算して各広告グループごとの入札額を決めることができます。
例)目標CPI300円の場合
※横へスクロールしてご覧ください
予算 | 目標CPI | 目標インストール数 | 入札額 | (推定)CVR | |
---|---|---|---|---|---|
合計 |
150,000円 |
300円 |
500 |
ブランドタイプキャンペーン |
30,000円 | 150円 | 200 | 105円 | 70.0% | カテゴリタイプキャンペーン |
50,000円 | 400円 | 125 | 200円 | 50.0% | 競合タイプキャンペーン |
40,000円 | 300円 | 133 | 150円 | 50.0% | 調査タイプキャンペーン |
30,000円 | 700円 | 42 | 70円 | 10.0% |
また、Apple Search Adsでは他の広告主の入札履歴やユーザーの反応に基づいて推奨入札範囲という指標も入札額を決める際の参考にすることができます。
推奨入札範囲の確認手順
推奨入札範囲は以下の手順で確認できます。
- 対象のアカウントとキャンペーングループを選択
- 該当のキャンペーンを選択
- タブから「すべてのキーワード」を選択
推定コンバージョン率から逆算した入札額と推奨入札範囲を参考に現状の入札額を見直してみてください。
まとめ
Apple Search Adsはアプリを探す目的をもったユーザーに対して直接アプローチができる魅力的な媒体です。
Apple Search Adsの配信をするまでは、特定のアプリ名のみでしか検索がされにくい印象が強かった筆者ですが、当初は想定していなかった検索語句からのアプリインストールに繋がったことで、そのアプリに関心をもつユーザー像の解像度が上がったように感じました。ユーザーは意外と自分の隠れたニーズに気づいていないこともあるのではないでしょうか。
例えば、「家計簿アプリ」を調べていたとしても、家計の管理をしたい目的が「貯金をすること」であれば貯金アプリはもちろん、ポイ活アプリのダウンロードにつながる可能性もありますよね。このようにユーザーが最終的に達成したい目的と検索しているキーワードが異なっている場合も考えられます。
目的に沿ったキャンペーン構成を行うことで、アプリが持つ新たなニーズを発見できるところもApple Search Adsの魅力のひとつと考えます。まだ試したことが無い方もぜひ、チャレンジしてみてください。