Google Bard - GoogleのAIチャットボットの特徴とポテンシャルは?

Google Bard -  GoogleのAIチャットボットの特徴とポテンシャルは?

ChatGPTをはじめ生成型AIツールが台頭する中、Googleも行動を起こさざるを得ないと考えたのか、2023年3月21日にGoogle Bardという独自のLLM(大規模言語モデル)技術を用いたチャットボット「Google Bard」をリリースしました。当初は米国と英国に限定したテストとして開始されましたが、4月18日から日本のユーザーもアクセスできるようになりました。これをきっかけに、今回はGoogle Bardで何ができるのか、どのような強みや課題が目立つのかを見ていきたいと思います。


Google Bardとは?

Google Bardは、Googleの人工知能専門の部門であるGoogle AIが開発したLarge Language Model(LLM)チャットボットです。対話アプリケーション向けに特別に設計されており、テキストとコードの広範なデータセットで学習しているため、ChatGPTやBing Chatと同様に、様々なタイプのクリエイティブなコンテンツを自動的に書き、コードを生成し、ユーザーの質問に答えることができます。

Googleは年初に今後のAIへの取り組みの方針を題材にした弁論を行い、AIの危険性を指摘するなど、非常に冷静な姿勢を見せましたが、その直後に自社のAI対応チャットボットをリリースしたことに、驚きを隠せない人も一部いたのではないでしょうか。

参考:Why we focus on AI (and to what end) - Google

Bardは現在まだ実験段階ですが、Gmailアドレスでウェイティングリストに登録すれば、日本でもこのツールを試すことができるようになりました。

Google Bard はこちらから登録可能です。

公式サイトでは、アクセスが可能になるとメールでメッセージが送られるようになっていますが、アクセス付与が完了したにもかかわらず、その通知が届かないということがよくあるようです。経験上、この手続きにはそれほど時間はかからないので、ウェイトリスト登録後に定期的にページをチェックしてみてください。

それでは、まずはGoogle Bardの特徴を見ていきましょう。

速いレスポンスで回答3パターンを同時生成

Google Bardを使ってみてすぐにわかるのは、画面に回答が表示されるまでのスピードです。例えばChatGPTが、ほぼ人間のように一文字一文字書いていくのに比べ、Google Bardでは一度に数秒で回答文が表示されます。

また、ここで注目すべきは、1つだけでなく、3つの回答(いわゆるドラフト)が同時に表示されることです。

異なるニュアンス・構造(連続したテキスト、箇条書き、コードなど)でプロンプトに回答するバリエーションが出ていて、かなり興味深い機能です。特に、やや曖昧なトピックだとユーザーはどの回答バリエーションが最も適しているかを自分で判断でき、もし初回にAIが十分に意図を汲み取ってくれなかったり、見当違いな答えを出したりなどした場合、ユーザーが質問を再作成する時間を節約できる可能性もあります。

しかし、逆にBardがChatGPTと比較して非常に限られた範囲でしか会話の流れを遡ることができないという問題への一種の回避策であると解釈することもできます。

参考:Bard FAQ - Google

つまり前のプロンプトの内容がAIによって受け継がれていない可能性が高いため、システムは最初に3つの答えを提示し、その中からユーザーが自分の意図を最もよく反映する答えを自分で判断できるようにしていると考えられます。

「Google it」ボタン

Google Bardのもう一つの特徴は、出力の下に表示される「Google it」ボタンです。

ボタンをクリックすると、その下にプロンプトの文脈から取られたと思われるリンクがいくつか(通常1~3個)表示され、選択した方のGoogle検索結果画面にリダイレクトされる仕様です。特にAIが生成した回答の精度がまだ十分でない場合や、さらなる調査が必要な場合に役立ちそうな機能です。

また、「Google it」の下の検索リンクをクリック後に、Google Bardに入力されたプロンプトが、Googleによって検索意図のシグナルとしてどの程度解釈されるかということは不明ですが、加味される可能性は否めません。

出典の表示はあるも非常に不正確

Bing ChatやNeeva AIと同様に、質問によっては回答の末尾にWebリンク付きの出典情報を表示することがあります。基本的には、自動生成された回答も信憑性があるかどうかを確認できるようになるため、歓迎すべき機能ではあります。

しかし、Bardの場合、この機能は主に2つの点でまだ非常に不正確であることに注意しなければなりません。第一に、答えのどの部分を指しているのかが明確でないこと。そして第二に、確認したところ、その出典のリンク先にはトピックに対する言及がないことが多かったり、時折404エラーを起こしたりしていて、お世辞にも安定しているとは言い難い状況です。

例えば、コーヒーの定義に関する簡単なクエリでは8つのソースが表示されましたが、そのうちの5つはソフトウェア開発プラットフォームGitHubへのリンクで、このトピックとは実質的に何の関係もなく、せいぜいページやリンクに「コーヒー」の文字がある程度でした。

現在は日本語を処理できない状態

Bardは現在、テスト版として日本からもアクセス可能ですが、基本は英語で使うことになっており、実質的に日本語のプロンプトを処理できていないことが国内のユーザーにとって大きなデメリットとなりそうです。

例えば、渋谷の天気予報を日本語で聞いても、「現在、特定の言語での出力は限られた範囲でしかできない」という答えが返ってきますが、同じ質問を英語ですると問題なく答えが返ってきます。

興味深いことに(少なくともこの例では)、温度情報がアメリカの標準である華氏で表示されています。これは、テスト版がアメリカ市場が中心になっていることが垣間見えます。

画像引用元:Google Bard AI - What Sites Were Used To Train It? - Search Engine Journal

また、Bardのベースとなった言語学習モデルLaMDAも、約12.5%の非英語ソースを含むデータセットで学習していることと、学習に使用されたTOP25のトップレベルドメインに".jp "が含まれていないことから、現時点では日本語ソースの比率はまだ比較的低いと推測されます。

したがって、しっかり日本語で書いたプロンプトに対応できるまでしばらくお時間はかかりそうですね。

スタートが遅れたBard、逆転のチャンスはあるか?

現状から言えることは、ChatGPTやBing Chatと比べてGoogle Bardはまだまだ発展途上である印象が強いです。

何より、OpenAI(やBing)などの競合を前に、実行可能なAIチャットボットをいち早く世に送り出す一方で、自ら掲げた「Responsible AI」(=責任感のあるAI)の理想を追求しようとするジレンマが見て取れます。そうした妥協点から、すべてのユーザーの要求をすぐに満たすことは確かに難しいでしょう。

しかし、Googleにとってプラスに転じることを意味するような兆候もあると考えられます。

まず、検索エンジンだけでなく、YouTube、Google翻訳、Googleマップなど、Googleのエコシステムの大きさを考慮し、既存のアセットとBardのような生成型AIを融合させる可能性を考えれば、中期的にはBardのポテンシャルは非常に高いと評価すべきでしょう。

画像引用元:Google is developing an all new, AI-powered search engine - Insider Intelligence Trends, Forecasts & Statistics

米国の市場調査会社Morning Consult社の調査が示すように、消費者が望むAIアプリケーションの一部は、少なくともGoogleの製品群と比較的よく一致するので、Bardの完成形またはその延長線上にある技術に期待できそうです。

また、既にブームとなった生成型AIの分野では研究開発やインフラ整備などのコストが極めて高い水準で上昇していますが、こうした状況に対してGoogleは、豊富な研究開発リソースのみならず、広告収益のモデルに頼ることができ、優位性を持つことになる可能性があります。

参考:ChatGPT and generative AI are booming, but the costs can be extraordinary - CNBC

このような側面を考慮して、Google Bardでもスタートダッシュは遅れたものの、実験フェーズ終了後に生成型AIの世界で逆転勝ちするポテンシャルさえあると言えます。

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