今年もAmazonは恒例の自社の広告ビジネスに関するカンファレンス「unBoxed」を開催し、広告プロダクトの現状から将来の展望まで様々なインサイトを発表しました。
参考:unBoxed 2023でのプロダクトイノベーションの発表 | Amazon Ads
イベント開始時に行われたキーノートでは、Amazonの広告プラットフォームに関する最新の機能、ベータ版、トレンドにスポットを当てていました。その中で特に興味深かったのは、Amazon広告のセルフサービス・ソリューションである「スポンサー広告 」に関する新発表でした。そこで、Amazonスポンサー広告のイノベーションについて詳しく見ていきましょう。
目次
スポンサーブランド広告向けの画像生成(ベータ版)
今回のunBoxedカンファレンスで発表されたもので特に注目を集めたのは、スポンサーブランド広告のAIによる画像生成機能でしょう。
これまでは、スポンサーブランド広告のクリエイティブ作成において、ショップ内の商品画像や別途でアップロードされた画像を利用する形でしたが、今後はAIによる自動画像生成という選択肢も使えるようになるようです。
AIによる画像生成では、プロンプトの入力や既成テーマの選択によって、既存の商品画像に新しい文脈を与えることが可能です。例えば、白い背景に写っている商品の画像に、季節性(クリスマス、夏など)やライフスタイルをモチーフにしたテーマを加えて、画像を自動生成できます。
これは競合するGoogleが今年のMarketing Live Keynoteで発表したMerchant Center Nextの Product Studioという機能と非常に似ており、Amazonが独自のアプローチで対抗しているとも捉えられますね。
現在この機能はまだベータテスト段階であり、米国でのみ利用できますが、グローバルな展開の可能性はかなり高いと考えられています。
スポンサープロダクト広告が第三者ドメインやアプリにも配信可能に
この機能は今年の8月にすでに発表されていましたが、今回のカンファレンスではより詳細なプレビューが行われました。
まとめれば、今後はスポンサープロダクト広告経由でPinterestなどの第三者ドメインやアプリにも広告掲載が可能になる見通しです。本来Amazon DSPでなければ利用できなかった広告在庫が、Amazon広告のセルフサービスからもアクセスできるようになるという内容で、特にスポンサー広告以外のプロダクトを導入していない(またはリソース面では導入が難しい)広告主にとっては嬉しいアップデートと言えるでしょう。
また、プレースメントレポートを通じて、広告がどのアプリやドメインに表示されたかも確認できるようです。
当初の予想どおり、この機能はまず米国でのみ展開されますが、今後はより多くの地域やサイト、アプリに拡大される可能性も十分に考えられます。
スポンサーTV広告(ベータ版)
もうひとつの大きな発表は、スポンサーTV広告の開始です。
従来の「スポンサー広告」といえば、「スポンサープロダクト広告」「スポンサーブランド広告」「スポンサーディスプレイ広告」という3種類でしたが、今回のアップデートではベータ版ながらも「スポンサーTV広告」という新たなプロダクトが登場しました。これにより、ストリーミングTV(Amazon Freevee、Twitch Live Streams、Fire TVアプリ経由のサードパーティ・サービスなど)の広告在庫に広告を掲載できるようになりました。
キャンペーン予算を自由に設定・調整できるだけでなく、TV向けのクリエイティブの準備が難しい場合でも、Amazon Creative Servicesを利用して簡単にクリエイティブを作成できます。
※Amazon Creative Services: クリエイティブサービス - 広告コンテンツの制作と編集 | Amazon Ads
多くの広告主(特に中小企業)にとって、テレビ広告への展開は最低予算が比較的高いことやテレビ広告制作のリソース不足など、常に大きなハードルが存在している点を考慮すると、このアップデートは非常に魅力的でしょう。
さらに、スポンサードTV広告の配信は、Amazonのショッピングやエンターテインメントから得られるファーストパーティデータを基に、機械学習による最適化が行われます。購買行動やメディア視聴行動に応じた精度の高いターゲティングが期待できそうです。
参考:スポンサーTV広告(ベータ版)についての発表の詳細 | Amazon Ads
このプロダクトも当初は米国のみでアクセス可能です。
Amazon非出品者でもスポンサーディスプレイ広告が利用可能に
unBoxedではまた、小売業者やAmazonへの出品者でない広告主に向けても、スポンサーディスプレイ広告の提供の開始を発表しました。これにより、建設や旅行、飲食などとの業界も、Amazon広告を経由して認知施策から自社ウェブサイトへの流入を促進する施策が簡単に行えるようになります。
参考:新規顧客にリーチして中小企業の成長をサポートする | Amazon Ads
キーノートでは興味深いユースケースが多く紹介されました。そのひとつは、ある飲食店チェーンがスポンサーディスプレイ広告を通じて、対象地域のAmazon Fresh(Amazonのネットスーパー)利用者から作成したオーディエンスを用いて、実店舗の新規顧客を増やすことに成功した、という内容でした。この機能も現在は米国限定で利用可能ですが、今後のより詳細な発表に期待しましょう。
スポンサー広告がついにフルファネルの施策に?
Amazonを通じて広告を出稿するブランドがスポンサー広告を利用しているケースが多いのは、(Amazon DSPのようなプロダクトと比べて)比較的少ない予算でも広告ポートフォリオに統合しやすく、迅速かつ効率的に結果を出せるからだと思います。
以前はコンバージョンファネルの下部にあるAmazonショップ内の顧客へのアプローチに重点を置いていたが、今回のカンファレンスの発表を受けて、スポンサー広告が徐々にAmazonのプロパティ内外に拡大しているフルファネルソリューションの形態を取るようになってきていることが明らかで、より多くの広告主にとってますます魅力的な選択肢となるのではないでしょうか。
例えば、幅広いリーチを確保できるスポンサーTV広告はブランド認知キャンペーンとしてのポテンシャルが高く、また非出品者向けのスポンサーディスプレイ広告は、オムニチャネル戦略における地位を確保する可能性さえ持っています。
とにかく今年のunBoxedカンファレンスで発表されたAmazonのスポンサー広告の進化は、広告主にとってもユーザーにとってもさらに高い価値の提供が期待できますね。