Googleへの挑戦状?広告なし・サブスクリプションモデルの検索エンジンNeevaとは?

Googleへの挑戦状?広告なし・サブスクリプションモデルの検索エンジンNeevaとは?
この記事は最終更新日から約1年が経過しています。

世界規模で見ると、検索エンジンの市場でGoogleが支配的な存在として90%以上のマーケットシェアを占めていることは、広く知られていることでしょう。しかし、その影から新たに検索の世界に参入したプレイヤーが徐々に注目を集めています。Googleの元幹部が設立した、広告なしの検索エンジン、Neevaです。

Neevaは、ユーザーのプライバシーを保護しつつパーソナライズされた検索体験を提供することをミッションに掲げていて、最近ではBingがChatGPTの技術を検索エンジンに導入したと似たように、Neeva自社の生成型AIを検索に実装していることでも話題になっています。

では、Neevaのアプローチが検索エンジン業界の未来に何を意味するのかを探り、その可能性と課題を紹介していきます。


Neevaとは

Neevaは、元Googleの幹部であるSridhar RamaswamyとVivek Raghunathanによって2019年に設立された検索エンジンで、Google、Yahoo!やBingといった従来の検索エンジンとは一味異なり、広告を一切掲載せずユーザーデータを追跡することもないことが大きな特徴です。その代わりに、ユーザーが月額(または年額)の利用料を支払って検索エンジンにアクセスし、広告のない、パーソナライズされた検索結果を提供します。

(無料で使うこともできますが、検索できる回数に制限がかかる仕様です)

また、Neevaの検索結果は、アルゴリズムだけに頼るのではなく、人間によるキュレーションが施されたり、場合には生成型AIによって作られたりするなど、独自な形でユーザーのニーズに寄り添った検索体験が注目されています。

なぜ「広告なし」のビジネスモデルなのか

検索広告は、ユーザーが必要とする情報を的確に提供し、新しい製品やサービスを知る機会を多く作れる強力なツールだと言えます。しかしながら、当事者全員にとって必ずしもWin-Winの関係になるとは限りません。一定数のユーザーが、ネット広告のあり方に不満を抱いているのが現状です。

画像引用元:Which Types of Ads Annoy Consumers Most? - Insider Intelligence Trends, Forecasts & Statistics

例えば、市場調査会社Bizrate Insightsが行った調査を見てみると「どの広告が特に煩わしいと感じるか」という質問に対して回答者の42.4%が「Web検索に基づいて表示される広告」と答えています。この調査では、これが具体的に検索結果ページに掲載される広告なのか、それとも過去の検索行動に基づいて表示される広告なのかは特定されていませんが、この結果は、従来の検索エンジンのユーザー体験を改善の余地が潜在している可能性を示唆しています。

Neevaの広告なしのアプローチは、こういった検索広告に対する不満のあるユーザーを意識している一面もあるでしょう。

プライバシー保護への強いフォーカス

また、Neevaがユーザーに寄り添おうとするもう一つの点として、プライバシーやデータ保護に力を入れていることが挙げられます。

ユーザーが普段GoogleやYahoo! JAPANなどで検索を行う際、位置情報、検索履歴、興味などの個人情報を共有することになります。これらのデータは検索エンジンによって収集され、パーソナライズされた検索結果や広告の精度を上げるために使用されますが、ユーザーにとって便利な反面、個人情報が検索エンジンによって収集・保存されること自体への懸念を抱かせる可能性も高いです。

こうした懸念は、最終的にGDPRやCCPAといったプライバシー規制、あるいは近年ではChromeブラウザのサードパーティCookieの廃止やAppleのApp Tracking Transparencyといったプラットフォーム側の施策の展開に寄与してると考えられます。

上記のような文脈があってこそ、Neevaがデータ保護に注力しているのかもしれません。例えば、Neevaはユーザーデータを暗号化し、不正なアクセスから保護するようにしています。また、ユーザーがわざわざオプトインしない限り検索履歴が保存されないなど、ユーザーが自分のデータをコントロールできるようになっている仕様です。収集された個人情報を第三者に販売をしないため、データ管理に徹底しているようでプライバシーに関する高い安全性を期待できそうな検索エンジンです。

生成型AIを検索結果画面に導入

最近、Neevaは検索エンジンに生成AIを実装したことでも話題になりました。

参考:As ChatGPT hype hits fever pitch, Neeva launches its generative AI search engine internationally | TechCrunch

ChatGPTを筆頭とする生成型AIの登場以来、その技術が検索エンジンに与え得る影響や、秘めている可能性が最近議論されていることをご存知の方は多いかと思います。そして、ついにマイクロソフトがChatGPTを検索エンジンBingに統合し、Googleも独自のAI「Bard」のテストフェーズを開始したことを加味すると、Neevaが自社の生成型AI「Neeva AI」を搭載した機能を発表したことはさほど意外なことではありません。

画像引用元:Introducing NeevaAI - Neeva

また、Neeva AIによる回答には出典が記載されており、結果を検証することが可能なのも興味深いです。しかも、生成されたコンテンツの信憑性をできるかぎり担保するために、そもそもAIによる回答が登場する条件として、対象なクエリが検証可能な質問に限定され、非現実な質問や誘導尋問などは除外されているようです。

しかし、これはAIの出番がほとんどないことを意味するものではないようで、2023年2月にSearch Engine Journalのポッドキャストで行われたインタビューによると、Neevaのクエリの40%にすでにAIが介入していおり、CEOのRamaswamy氏によると、この傾向は今後近いうちに増加すると予想されています。

参考:ChatGPT & Search? NeevaAI's Real-Time AI Search Is Already Here [Podcast] - Search Engine Journal

課題も目立つ検索エンジン

Neevaは非常に有望な機能を備えている印象がありつつも、新しい検索エンジンだけに乗り越えるべきハードルはまだいくつかある、とも言わざるを得ません。

網羅性が限られている

Neevaはすでに全世界でサービスとしてアクセスできるにもかかわらず、現在のところ、ユーザーインターフェース全体が英語、スペイン語、ドイツ語、フランス語にしか対応していません。その上に例えば、ローカルな検索クエリに対する精度がまだ低いという声があるなど、検索結果を限定的に感じる場面はまだあるようです。

参考:Goodbye Google: Why I Now Use Neeva Search - Atomic Object

また、画像検索など特定の領域は、まだBingの検索エンジンのサポートに依存している状態でもあります。

ただし、ウェブサイトは常にNeeva自社のボットによってクロールされ、網羅できる検索インデックスを徐々に拡大していくはずなので、時間の経過とともにこの問題は解決されるでしょうが、現時点では検索エンジンとしてのポテンシャルを発揮しきれていないと言えます。

AI結果の出典が間違っている可能性も

NeevaはAIが生成した結果に出典としてリンクを表示していますが、その正確性、信頼性、適時性を保証するものではありません。もちろん、これはNeeva AIに限った問題ではなく、理論上、結果にソース情報を付加できるすべての生成型AIの問題であると言えます。

ここで危険なのは、AIが生成した結果に出典があるだけで「この結果はきちんとチェックされた、正しい情報」とユーザーが内容をそのまま鵜呑みにしてしまうことです。もちろん、クリックすれば自分で確認はできますが、そうしない場合は最悪、重大な誤解を招きかねません。

(このように、生成型AIの登場によってアウトプットの信頼性を評価するために、新らたなるメディアリテラシーを求められていることを肝に銘じておく必要があります。)

バックエンドからのインサイトはまだ得られない

また、サイト運営者がバックエンドに接続して検索クエリに関するインサイトを得る方法もまだないようです。これは現在の開発段階では多少理解できますが、Google Search Consoleのようなツールが利用できるようになれば、多くの企業にとって検索エンジンとより深く取り組むことができるポイントになるでしょう。

もちろん、このような機能は、もしNeevaがこれからもっと普及したときに追加される可能性も大いにあると思われるので、今の段階ではさほど大きな懸念点ではありませんが、今後に関しては大事な課題にはなりそうです。

パラダイムシフトではないが、検索エンジンの新しい視点か

包み隠さずに言いますと、Neevaのユーザー数は200万人程度と、まだまだニッチな存在であることを考えると、圧倒的な市場シェアだけでなく、研究開発のリソースも非常に豊富なGoogleなどが作った既存の検索エンジンの概念を覆すことは(多分)ないでしょう。また定額制のモデルは、特に無料で広告ありの検索エンジンへの抵抗がないユーザーにとってそれほど魅力的な選択肢ではないかもしれまん。

とはいえ、例えばNeevaの生成型AI搭載の検索機能がさらに進化したらもっと注目される可能性も十分にあり、それなりに検索市場に影響を与える可能性があると考えられます。似たように、現在のBingのようにシェアをある程度伸ばすことが期待されます。

参考:The new Bing making (small) gains on Google Search - Search Engine Land

また、Neevaがデータ保護というテーマを強く打ち出している方向性も、もしデータの取り扱いに関する規制の枠組みがさらに厳しい方向にシフトしていった場合、「今後検索エンジンをどう考えるべきか」という問いへの興味深い提案になりうるでしょう。

関連記事

Google 広告エディタ バージョン 2.1がリリース
Google 広告エディタ バージョン 2.1がリリース
続きを見る
運用型広告のレポーティングで「いい考察」ができない6つの理由
運用型広告のレポーティングで「いい考察」ができない6つの理由
続きを見る
運用型広告で陥りがちな100個のミス(2/3)
運用型広告で陥りがちな100個のミス(2/3)
続きを見る