重要性が高まっている?広告運用におけるクリエイティブの現在地について考えてみた

重要性が高まっている?広告運用におけるクリエイティブの現在地について考えてみた

運用型広告ではターゲティングや入札設定の自動化が進み、広告運用者が手動で行う設定によって成果を上げる余地が以前よりも少なくなってきました。

みんなが同じ技術を使っている中で「どうやって競合と差をつければ良いのだろう?」と一度は考えたことがあるのではないでしょうか。

この記事では運用型広告における重要な要素のひとつである「クリエイティブ」から考えていきたいと思います。そして、今後も効果的なクリエイティブを作るために、何を意識すべきなのかをまとめてみました。

※もちろんクリエイティブが広告運用における効果改善の唯一の方法ではなく、たとえば自動化一つ取ってもその使い方にまだまだ工夫の余地はあります。自動化については以下の記事が参考になりますので、ぜひご覧ください。


広告運用において、クリエイティブがより重要になってきている理由とは?

運用型広告のクリエイティブの重要性が高まった要因はいくつか考えられますが、特に以下の3つが重要なポイントになっていると考えます。

媒体のターゲティング機能の高度化

数年前までは、年齢や性別、購買意向の強いオーディエンスなど、媒体が準備したセグメントを選択する形でターゲティングを行うのが主流でした。現在は広告配信のシステムが進化し、ターゲティングの自動化も進んでいます。

例を挙げると、Google 広告の「最適化されたターゲティング」では、ランディングページやクリエイティブ アセットのキーワードなどの情報を確認し、キャンペーンの目標に基づいて関連性の高い新規ユーザーにリーチできます。つまり、クリエイティブの内容もがターゲティングに影響を与えています。

例えば、以下のコピーのクリエイティブを配信するとします。

①「CICA成分配合のファンデ。初回980円。こだわりの国産・医薬部外品」
②「季節の変わり目もメイクしたい敏感肌に。カバー&肌荒れ防止を叶えるファンデ」

①は、ある程度比較検討が進んだ購入意欲の高いユーザーへアプローチするのに適しています。しかし、このコピーで魅力を理解できるユーザーは限られるため、新規ユーザーへリーチが広がっても反応率は低そうです。

②は顕在層と同じ悩みを持っているものの、具体的な解決策を知らない潜在層にアプローチするのに適しています。このコピーなら、①よりも新規ユーザーの反応率が高く、リーチも広がりそうです。

自動化によってより多くの見込み客へリーチしやすくなりましたが、商品やサービスに興味を持ち、購入してもらえなければ意味がありません。そのため、リーチできた見込み客に振り向いてもらえるようなクリエイティブを考えることが重要です。

クリエイティブがターゲティングに対する影響力を増しているため、見込み顧客に振り向いてもらえるようなクリエイティブでないと、無用な広告配信が増えてしまいます。

逆に、振り向いてもらいたいユーザーが明確で適切なクリエイティブであれば機械学習によるターゲティングの自動化の恩恵を受けることができると考えられます。

従来の設定項目としてのターゲティングが形式を変え、よりクリエイティブを通して「誰に」広告を届けるかを考えるかたちになっていると、捉えるのが適切かもしれません。

クリエイティブは自動化がまだ難しい

運用型広告で運用者が操作できる要素はおもに「入札」「ターゲティング」「クリエイティブ」の3つに分けられます。

このうち「入札」「ターゲティング」は、広告プラットフォームの技術の向上によって、人の手の管理ではおおよそ実現できない様々なシグナルを考慮した自動化により最適化が可能となりつつあります。(もちろん、すべての広告主にとって自動化がベストな選択肢になるのは、まだ先だと考えています)

参考:

では、残る要素の「クリエイティブ」はどうでしょうか?

「レスポンシブ」と呼ばれる広告フォーマットにより、アセットと呼ばれる「広告見出し、説明文、画像、動画、ロゴなどの広告を構成する要素」を機械学習により組み合わせて、ユーザーの状況に合わせて最適なパターンの広告を表示することはできています。

しかしながら、とくに画像や動画などのアセット自体は自動的に生成されず、人間のサポートが必要です。広告運用者が選定したいくつかのアセットを、結果の数字に基づいて組み合わせるのは得意ですが、数字の背景や意味をも理解できているかと言えば、広告管理画面のデータを見る限りではまだ難しいと思わざるを得ません。

また、現時点の自動化は、商品の特徴や強み、他社との差別要素や誰のための広告かなど、広告運用者が行っている深い分析を行うことはできませんよね。

少なくとも現時点で「クリエイティブ」は広告運用者が力を割くべき要素のひとつであると考えています。

消費者の行動変化

インターネットが一般化するまで、消費者は企業によるテレビCMや新聞・雑誌などのマス広告から受動的に情報を受け取ることが多かったため、「より多くの注意を引くこと」が重視されていました。

しかしインターネットやスマートフォンが普及した現在は、目にする情報量が増え、消費者が能動的に情報を探すようになり、単に目立って注意を引くだけでは購買促進が難しくなっています。

また「リアルタイムで情報が欲しい時にはTwitter」「ある程度まとまった情報を視覚的に得たい時はInstagram」など、消費者が目的ごとにメディアを使い分けるシーンが増えました。そのため、同じ商材・同じクリエイティブでもメディアごとにクリック率やコンバージョン率が変わることは珍しくありません。

つまり、成果を最大化するには、やみくもに配信面を広げるのではなく、メディアを利用しているユーザーのモチベーションや表示面のフォーマットに合わせてクリエイティブを考えなければ、成果が出しにくくなっているということです。

各媒体が出しているクリエイティブのベストプラクティスを参考にするのはもちろん大切ですが、表面的なTipsを追いかけているだけではユーザーの心に訴えかけるクリエイティブは作れません。ターゲットから反響が得られる見せ方やフォーマットは日々変化するからです。

実際にメディアを利用し、他社の広告クリエイティブや一般ユーザーのオーガニック投稿をチェックしてターゲット理解を深めることで、長期的に成果が出せるクリエイティブを作ったり、本質的な改善が行いやすくなると考えます。

成果に繋がるクリエイティブを作るために

インターネット広告が有効な集客手段として広まるにつれ、広告配信の仕組みに対する理解も深まって来ました。ただし一方で、たとえばコンプレックスを煽ったり、見た人が不快になるような表現を用いた過激な表現を用いることで、広告の表面的なパフォーマンス(高いクリック率など)だけを追い求めているクリエイティブが多く出回るようになりました。

もちろん一部ではありますが、行き過ぎた表現が増えたことにより、2021年8月に薬機法で課徴金のペナルティが開始されたり、2022年6月に消費者庁がアフィリエイト広告の新たな指針を示されたりなど、インターネット広告関連の法規制や媒体審査も年々厳しくなっています。一方通行のハック的な思考で作られたクリエイティブは、さらに淘汰されていくでしょう。

広告配信の仕組みを理解しパフォーマンスの向上を目指すことは広告運用に携わるひとにとっては至極当然です。ただ、向き合うべきはプラットフォームではなく、広告主のサービスを利用してくれるユーザーです。

ターゲットに合わせた適切なクリエイティブを作ることで、広告プラットフォームの機械学習を十分に活用することができ、その結果ターゲットとなるユーザーに向けて広告配信の最適化が期待できます。もちろん気にするべきは広告クリエイティブだけではなく、「誰に何を届けるか」をあらゆる面から考えることが重要なことに変わりないと考えています。

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