限られた予算・期限で結果を出すために、「広告媒体選定」は非常に大切です。
肌感覚だけで選定してしまうケースも見受けられます。例えば、「Instagramのユーザー層に合っていそう」、「Twitterには合わなさそう」など。
しかし、肌感覚だけでジャッジしてしまうと、判断を誤ることがあります。媒体資料等で数値が開示されていることも多く、ファクトも踏まえて判断したい事柄です。例えば、「Instagramは若い女性層が中心だから、うちの商材には合わない」と思い込んでいると、機会損失になっているかもしれません。なぜなら、30代、40代以上の方も多く利用していますし、男性もたくさんいます。
今回は媒体選定にあたり筆者が重視しているポイントをいくつか解説していきます。
※本記事で言う広告媒体とは、「Google 広告」「Facebook広告」「Twitter広告」のような運用型広告プラットフォームを指すこととします。例えば、Facebook広告からは、Facebook / Instagram / オーディエンスネットワーク、とさまざまなウェブ・アプリ配信面に広告を出すことができます。
目次
① ユーザー数から優先度を把握する
世の中のメディアの利用状況を頭に入れておくと、広告媒体の優先度をつかみやすくなります。
『令和2年度情報通信メディアの利用時間と情報行動に関する調査 報告書』令和3年8月 総務省情報通信政策研究所に、インターネット関連のメディアの利用状況がよくまとまっています。
ネット利用項目別の平均利用時間は以下のようになっています。
利用項目のすべてに、広告でリーチできる訳ではありませんが、運用型広告を通じて以下出稿が可能です。
- メールを読む・書く…Google 広告(ファインドキャンペーン)でGmailへ広告出稿可能
- ブログやウェブサイトを見る・書く…Google 広告(ディスプレイキャンペーン)で出稿可能
- 動画投稿・共有サービスを見る…Google 広告(動画キャンペーン)で出稿可能
- ソーシャルメディアを見る・書く…Facebook / Instagram / Twitter等へ広告出稿可能
Google 広告は、調査内容から漏れていますが、上記に加え「検索面」にも出稿可能です。 となると、最も優先度が高い広告媒体の一つかなと思います。
また、ソーシャルメディア系サービス/アプリ等の利用率は以下のようになっています。
LINEの利用率が全年代で90.3%と圧倒的です。トーク欄上部の掲載枠は、特に圧倒的なユーザー数にリーチ可能でしょう。YouTubeの全年代で85.2%と非常に高い利用率も目を引きます。
また、Facebook / Instagramは、同じFacebook広告のプラットフォームから出稿可能で、利用率は合計すると74.2%になります。また、Twitterも全年代利用率が42.3%とかなりのシェアを誇っており、決して無視できないプラットフォームだと思います。
参考:令和2年度情報通信メディアの利用時間と情報行動に関する調査 報告書 令和3年8月 総務省
各媒体側からも、MAU(月間アクティブユーザー数)や、年代別などでデータを開示していることもあるため、参考にしてみるといいかもしれません。
YouTubeのMAUが6,500万人(日本で18~64歳の月間YouTubeユーザー数)
参考:月間 6,500 万ユーザーを超えた YouTube、2020 年の国内利用実態──テレビでの利用も 2 倍に
LINE広告のMAUは8,900万人。※2021年6月末時点
参考:【公式】LINE広告|LINE for Business
Smartnews広告のMAUは2,000万人。※2019年8月 日米合算
参考:SmartNews Ads Media Guide
② 商材に合ったユーザーに絞ってリーチできるか?
①で優先度を整理すると、リーチ数の大きい広告媒体を上から順番にやっていくことが正解のように思えます。しかし、必ずしもそうではなく、「商材に合ったユーザーに絞ってリーチできるか?」も加味した方がいいでしょう。
いくつか例を上げながら説明します。
例1|特定職業や役職にリーチする
職業や友だち関係でターゲティングが効くFacebook広告が有効だと思います。Facebookには、所属会社・役職・職種などを記載している方がたくさんいます。また、経営者の友だちは、経営者の可能性が高いので、そういったコミュニティを拾ってターゲティングすることも可能です。
一方で、LINE広告は、リーチ数が非常に大きく、一般的には優先度の高い広告媒体です。しかし、職業に紐づくシグナルがFacebook広告ほど強くはありません。(LINEに職業を入力したりは、Facebookほどはしないと思います)となると、コンバージョン率が付いてきづらい可能性があります。
例2|子育て世帯にリーチする
「子供の有無」がターゲティングのシグナルに利用されている、LINE広告やFacebook広告、Google 広告だと、より正確に絞り込めて相性がいいと思います。
例3|水漏れしたタイミングにリーチする
Google 広告など検索連動型広告がピッタリでしょう。一方で、Facebook広告は、水漏れした瞬間に絞り込んでリーチすることはできません。ユーザーの属性を絞るのに長けていても、タイミング勝負はちょっと苦手です。
例4|40歳以上の女性にリーチする
年齢・性別のターゲティングは運用型広告であればほとんどすべての媒体で可能なので、ターゲティング要因で媒体を選ぶことは無さそうです。
※上記の例は仮説にすぎません。商材によって変わりますし、私自身が偏見にとらわれ思考をロックしている可能性もあります。一概に言い切れる話ではないです。
もちろん、すべての商材でターゲティングが必要ではありません。「ターゲティングを設定しない」「とにかくリーチを広げる」は有力な戦術です。「BtoBで、部長以上の役職にだけリーチしたい」ぐらいニッチであれば、ターゲティングに慎重になった方がいいと思いますが、一方、「子育て世帯にリーチしたい」「40歳以上の女性にリーチしたい」ぐらいの幅広さであれば、ターゲティングを気にしすぎずに「とにかくリーチを広げる」が有効になることもあると思います。
③ その広告媒体でしか出稿できない配信面か?
広告媒体が違っても、広告枠は被ることがあります。
例えば、同じ記事の同じ広告枠を、Google 広告でも、他DSPでも出稿できる場合があります。(アドセンスと各種SSPのうち最も収益が高い広告を自動で表示する仕組みになっています)メディアによっては純広告の余った在庫をGoogle 広告で出稿できるケースもあります。
実際に提携先のウェブメディアをいくつか見にいけば、どういった広告が表示されているか確認できます。広告枠が既存の広告媒体と被りそうなときは、多少優先度を割り引いて見た方がいいかもしれません。
逆に優先度が高いのは、その媒体ならではの魅力的な配信先を多く持つ広告媒体です。例えば、Google 検索も、Gmailも、YouTubeも、Google 広告からしか出稿ができません。また、FacebookやInstagramは、Facebook広告からしか出稿できません。
④ 商材に合ったクリエイティブの表示フォーマットか?
テキスト情報だけだとなかなか売りづらい商材、というのがあります。例えば、
- マンガをカルーセル形式で見せたい
- 複雑な社会課題を1分スピーチで伝えたい
- シズル感をしっかり伝えたい
- そもそも動画がウリのサービス
こういった場合、大きめの画像やカルーセル、動画を使えるのが、媒体選定上の必須条件になります。Facebook広告のInstagramフィード面向けの広告、YouTube 広告などは、画像は大きめに表示され、カルーセル形式や動画も交えて情報量を格段に増やせるので、相性がいいかもしれません。
一方で、Googleのディスプレイ広告のように、掲載枠が小さい、15文字程度の端的なテキストだけで情報を伝える必要がある媒体は、成果が出づらかったりします。
また、Criteoのように、ダイナミック広告に強みがある広告媒体もあります。多品目ECや、不動産のような、多数の商品を取り扱うサービスに合うはずです。逆に商品点数が少ないのであれば、選択肢に挙がってきづらいかなと思います。
このように、商材に合ったクリエイティブの表示フォーマットか?は媒体選定で論点となるところです。
※逆に言うと、画像に頼らず15文字程度の端的なテキストだけで集客できれば、媒体をほぼ選ばずに出稿拡大が見込めます。サービスの分かりやすさ・ランディングページの工夫が必要になりますが。
⑤ 競合他社がやっているか?
競合他社の動きをマネするのは、あんまりかっこいいことには感じられないかもしれません。しかし「同質化」は、戦略の教科書に書かれるような、立派な戦略です。
Facebook広告の広告ライブラリを見て、競合他社がクリエイティブを毎月どんどん追加して継続しているようでしたら、投資利益率(ROI)が見合っている可能性が高いでしょう。自社でもFacebook広告ができないか?は検討してみた方がいいと思います。
競合他社の出稿状況の調べ方は以下ブログも参考にしてみてください。
⑥ 工数やコストに対して成果が見合うか?
広告媒体を広げるのは、新しいユーザーにリーチできて成果を伸ばせる可能性があり、ぜひチャレンジしていきたいところですが、しかし、いたずらに広告媒体を広げるのが、時には足かせになることもあります。
広告媒体を増やすということは、単に広告予算が増えるだけでなく、もろもろ
- 媒体社や代理店などとのやり取り
- 予算調整
- 請求・入金
- タグの設定・管理
- 入稿
- クリエイティブ制作
- メンテナンス、レポートの確認
- 思考・意思決定のリソース
……など、「目に見えないコスト」も増えることになります。
しかも、これらのコストは、仮に出稿費用が少額だとしても、そう軽くはなりません。いわば固定費的に掛かってきます。そのため、あまりに少額でインパクトが少ないと損益分岐点を越えられないので、一定のボリュームが出せるか?は出稿前に考えたいところです。
もしかすると、ランディングページを作り直したり、フォームを改善したり、YouTube 広告用の動画を作ったりする方が、ビジネスインパクトとしては大きいかもしれませんよね。
まとめ
以上、運用型広告の媒体選定で見るべき6つのポイントでした。
- ユーザー数から優先度を把握する
- 商材に合ったユーザーに絞ってリーチできるか?
- その広告媒体でしか出稿できない配信面か?
- 商材に合ったクリエイティブの表示フォーマットか?
- 競合他社がやっているか?
- 工数やコストに対して成果が見合うか?
本当に考えるべきことはシンプルで、「誰に」「何を」「どのように」伝えるかということです。そこさえ明確なら、出稿媒体に求める条件も、自ずと見えてくるのではないでしょうか。
みなさまの広告配信の見直しのお役に立てばうれしいです!