Google ショッピング広告の成果が「悪くない」ではダメな理由

Google ショッピング広告の成果が「悪くない」ではダメな理由

2017年6月中旬、Search Engine LandにてGoogleショッピング広告に関するAndreas Reiffen氏のコラムがポストされ、日本の特にネットショップの集客を担当する方には読んでいただきたいと思い、ご紹介いたします。

※以下は、Search Engine Land筆者Andreas Reiffen氏から承諾を得て和訳したものです。
(Reprinted with permission of Search Engine Land.)

Why ‘good’ isn’t good enough in Google Shopping
http://searchengineland.com/good-isnt-good-enough-google-shopping-274813


Google ショッピング広告の成果が「悪くない」ではダメな理由

Google ショッピング広告から高い成果を得ることが出来ましたか?それはあなただけではありません。コラムニストのAndreas Reiffen氏はショッピング広告の成長率を調べた上で、売上高が前年比89%の成長を遂げたとしていても、競合他社を上回るには十分ではない理由を説明しています。

ショッピング広告の収益が前年比80%伸びていると聞くと、かなり良さそうに思いますよね?しかし、その成長率では競合に負けてしまっているということが実際に起きていると言ったらどうしますか?

今日、ショッピング広告を利用している小売業者はその状況に陥っています。

オンラインの小売業者(特にアメリカの市場で営業している場合)で、ショッピング広告からのクリックとその収益が、2015年から2016年にかけて90%以上増加していない場合は問題が発生しています。

その理由は、過去1年間でショッピング広告が自然に驚異的な成長を見せているからです。我々のベンチマークデータによると、検索結果の広告枠におけるショッピング広告のクリックシェアは2015年の第4四半期から2016年の第4四半期にかけて51%から71%まで伸びました。また、Alphabet社(訳者注:Googleの親会社)の発表によると、広告クリックの総数は2015年の第4四半期から2016年の第4四半期にかけて36%の増加となりました。

2つの要因をあわせて考えると、ショッピング広告は自然に(クリック数で)89%の成長を2016年に遂げている事を示します。

何もしなくても89%の成長を遂げていることは良いことだと最初は思うかもしれません。それは同時に、競合も努力をせずに89%の成長を遂げることができるということです。競合他社と同じスピードで成長することは本当の意味での成長とはいえません。それは現状維持です。

この記事では、ショッピング広告における驚異的な成長がどこからきたのか?小売業者はその成長率を超えてビジネスを拡大するにはどのようにすれば良いか?について考えます。

ショッピング広告の自然な成長

ショッピング広告のクリックの大幅な増加は、主にGoogleがショッピング広告に費やした努力の大きさに起因します。

まず、検索結果ページに表示される広告の本数が増えました。また、ショッピング広告はここ数年の間にモバイルデスクトップの両方で大きく成長しています。さらに広告はオーガニックの検索結果をじわじわと外側に押し出してきています。

例えばこの2つのスクリーンショットを見ると、オーガニックの検索結果はファーストビューにすら表示されません。(オレンジ色の囲みはテキスト広告)

この広告クリープ(訳者注:これまで広告がなかったスペースに広告表示が増えていく傾向)の大部分(特にモバイルのように「ライトレイル(訳者注:検索結果の右側にあるスペース)」がない場合)は、従来のテキスト広告の代わりに商品のイメージが表示される視覚的なショッピング広告の成長によるものです。この広告フォーマットは、広告の数を増やすだけではなく、同時にページ上に占める広告スペースも広げました。

特にモバイルの検索結果に注意してください。ショッピング広告は従来のテキスト広告さえもファーストビューの外に押しやっています。Google検索の大多数がモバイルデバイスからのものであることを考慮すると、ショッピング広告の露出がそれに応じて増えたということが考えられます。

もしデスクトップの検索結果に5~9つのショッピング広告と2~4つのテキスト広告が含まれる場合、オーガニックの検索結果をクリックするためにページをかなり下にスクロールする必要があります。--携帯電話の小さな画面ではさらに大変です。

広告のクリックシェア デスクトップ vs モバイル (crealytics社内データ)

2つ目に、ショッピング広告の利用が進むに連れて全体の広告クリック数の増加が生じています。Alphabet社のレポートによれば、ショッピング広告と検索広告の区別をすることは出来ないものの、GoogleのWebプロパティ(検索、Gmail、YouTubeなど)での全体の有料広告クリック数は、2016年第1四半期から2017年第1四半期にかけて53%伸びています

この成長は、Googleの既存の広告スペースでクリック率が上がっていることで説明できるかもしれません。1つのテキスト広告のスペースに3つの商品広告を配置することによって、消費者はテキストベースの広告よりもイメージベースの広告をクリックする可能性がより高まるからです。我々が行った小売業界の調査によると、ショッピング広告はGoogleでクリックされたすべての広告の約74%を占めています。

広告クリックシェア ショッピング広告 vs 従来のテキスト広告 (crealytics社の内部データ)

この成長はGoogleがより一般的な検索語句にもショッピング広告の表示を拡大したことによるものであるとも言えます。例えば、「Nike Air Max」だけではなく「Nike」と言った検索語句でも広告を表示するなどです。(内部データに基づくグラフ)

我々の調査によれば、ショッピング広告はテキスト広告よりも販売に繋がる可能性が高く、収益性の高い広告媒体であることが分かっているため、小売業者にとってこの流れは一般的に良いことです。

ショッピングキャンペーンを自然な成長よりも伸ばす方法

ショッピングキャンペーンの成果を自然な成長よりも伸ばすためのさまざまな方法をGoogleは提供しています。重要なのは数字に恐れることではありません。90%の成長と聞くと大変であるように聞こえますが、それを自然な成長よりも3%伸ばすことだと考えると、はるかに管理しやすくなります。

ショッピングキャンペーンを強化する方法を3つ紹介します。

キャンペーンのセグメンテーション

ショッピング広告の主な課題の1つに、従来のテキスト広告と違ってキーワードによるターゲット設定がないことが挙げられます。キーワードの設定が不要で、検索語句と最も関連性の高い商品とのマッチングはGoogleに依存しているため、検索語句ごとに異なる入札単価を設定することが難しくなります。

運用型広告の運用者はアカウントをできるだけコントロールしたいと思っています。しかし、一見してショッピング広告では商品や商品グループレベルの入札単価調整しか出来ないため、コントロールは難しそうです。その結果、意図が異なる検索語句に対しても同じ入札単価が設定されてしまいます。同時に、コンバージョンに結びつきにくいものに対しても予算を割くことになります。

解決策として、Generic(一般)、Designer(デザイナーやブランド名)、Fallback(その他 ※任意)の3つの異なるショッピングキャンペーンを作成し、共有予算でまとめます。そして、キャンペーンの優先度、入札単価、除外キーワードを組み合わせることで、検索語句ごとに適切なキャンペーンにトラフィックを振り分けることが出来るようになります。

この戦略は、キャンペーンの優先度を使用して、コンバージョンに繋がりにくい検索語句をGenericキャンペーン(高優先度)に集め、低い入札単価を設定できるようなファネルとして考えてください。デザイナー名をGenericキャンペーンに除外キーワードとして追加することで、よりコンバージョン率の高い検索語句を別のキャンペーンに集めることができ、入札単価もより高く設定することができるようになります。

これは、コンバージョンに繋がる可能性の高い検索語句に対してはより高い入札単価を設定し、コンバージョンに繋がる可能性が低い検索語句に対してはより低い入札単価を設定する事で、ショッピングキャンペーンの効率を大幅に向上させる手法です。この手法は、非常に成功した長期戦略としての実績があります。

訳者補足

キャンペーンを分けることで検索語句を振り分けると言う手法ですが、実はこれだけでは不十分なケースがあると訳者は考えています。例えば「液晶テレビ 通販」と言うような一般的な検索語句の場合は、どの画面サイズを探しているのか?ブランドの好みはあるのか?と言った意図が捉えきれません。そういったユーザーに対してすべてのバリエーションで同じ入札単価のままで果たして良いのでしょうか?商品のバリエーションごとに異なる入札単価を設定したほうが良いケースもあります。

詳説は割愛いたしますが、商品のバリエーションごとに入札単価の差をもたせたい場合は、商品フィード側の商品カテゴリ属性を活用し、任意に商品のグルーピングが出来るようにしましょう。

入札管理

以前にもSearch Engine Landで述べたように、Googleの入札アルゴリズムは、従来のテキスト広告とショッピング広告とでは異なる働き方をします。ショッピング広告では、オークションの資格を得るための最低入札単価が存在するようで、これを超えると少額の入札単価引き上げで急激にトラフィックが増えるポイントが続き、最終的には入札単価の上昇に対してトラフィック量に与える影響がごく僅かになるという動きをします。この減少を我々は「Sカーブ」と呼んでいます。

入札単価を上げるとコンバージョン率は下がったものの、売上は同じままである場合、入札単価が高すぎます。クリック率の低下または入札単価と平均クリック単価の差が大きい場合は、関連性の低いものに拡張していると言えるので、入札単価を引き下げる必要があることのサインでもあります。

このような入札単価の調整をすべて人の手で行うことは複雑ではありませんが、非常に時間がかかります(そしてそれに終わりはありません)。しかし今日の入札管理のアルゴリズムと提供されているツールを活用することで、人の手をあまり加えることなく、かつ自動的にアカウントのパフォーマンスを最適なものへと近づけることができます。

訳者補足

最後のパラグラフでも自動入札に触れていますが、Google アドワーズの自動入札機能は非常に優秀です。現在、ショッピングキャンペーンでは、コンバージョン最適化に関連する目標として「目標広告費用対効果(ROAS)」しか設定できませんので、ROASで目標を設定できる場合はぜひ活用してみてください。この自動入札が上手く働けば、前述で紹介されたキャンペーンを優先度で分けることも必要がなくなると思います。

参考:もっと知りたい、ネットショップを中心としたビジネスにおけるリスティング広告のROAS運用のこと

フィードのタイトルの最適化

商品タイトルは、その商品広告がユーザーの検索語句に関連しているとGoogleが判断するための重要な要素の1つです。それだけではなく、良い商品タイトルはより多くの買い物客が広告をクリックするように誘惑するでしょう。

これまでの実験では、商品のタイトルが掲載結果に大きな影響を与える一方、商品説明やGoogleの商品カテゴリなどの他のフィールドはほとんど影響を及ぼさないことが判明しました。

このトピックについては、以前の投稿で詳しく解説しています。本質的にフィードのタイトルの最適化では一般的な検索語句を商品タイトルに追加します。どのような語句を追加すればよいか特定するには、検索語句に含まれていて商品フィードのタイトルに含まれていない単語や単語の組み合わせを洗い出す必要があります。

訳者補足

フィードのtitle属性はクリック率を左右する要素(≒広告の品質に影響)なので、この変更はぜひ施策の中に採り入れてみてください。その際には、広告表示がなされたときにtitle属性で設定したテキストがどこまで表示されるかを気にしておくと良いですね。

また、この手法の中で商品説明やGoogleの商品カテゴリなど他のフィールドはほとんど影響が無いとしていますが、設定した値が適当なものでもさほど影響がなかったという意味ですので、未入力で良いという意味では決してありません。言わずもがな高い品質の商品フィードとは、適切な項目にすべて適切な値を入力された状態のものを指します。参考までにお伝えしておきますと、訳者の経験上では100円を超えた入札単価を設定しているにも関わらず、広告のインプレッションがなかなか獲得できないケースにおいて、商品フィードに未入力項目が多い事によるものが大多数でした。

手遅れになる前にGoogleショッピングに投資する

Googleショッピングでは、Alphabet社が複数のレベルで動作する広告メディアを作成しました。消費者にとっては探している商品を簡単に見つけることができるし、小売業者にとっては従来のテキスト広告よりも優れたコンバージョン率とROIを得られるので、双方にとって良いことです。さらに、モバイルとは相性が良い広告メディアです。モバイルがオンライントラフィックの半数以上を得ている事を考えると、ショッピング広告による影響は非常に大きいと言えます。

本当の勝者はいつものようにGoogleです。Alphabet社は最近2017年第1四半期の決算を発表しました。アルファベット社の収益は、2016年第1四半期から2017年第1四半期の間に17%増加しました。その多くは有料広告からのクリックの増加で、53%の伸びがあったためです。

ショッピング広告が従来のテキスト広告から市場シェアを引き続き奪うと仮定(恐らくそのシェアは2017年末までに80%まで到達)すると、既に全体のクリック数が53%増加したことと合わせて、2017年末までにはショッピング広告のクリック数がさらに72%増加すると予測しています。

つまり、今ショッピング広告は一番おいしい施策だということです。凄まじい成長率にもかかわらず、そこにかかるコストは過去最低(広告在庫の供給が継続的であるため)でコンバージョン率は高いままです。

この状況が永遠につづくことはありません!より多くの小売業者がモバイルトラフィックからのコンバージョン獲得、ROIを向上させる施策と認識しているので、今後は広告費の投資が増え、クリック単価が上昇するでしょう。

今がショッピング広告に投資するベストな時期です。コストは比較的少なく、リターンは高く、競争は最小限です。ショッピング広告の戦略をすぐに実行出来るのであれば、残りの企業がこの戦略に気づく頃にはあなたのビジネスは絶好調です。

ただし、ショッピング広告は「設定したら後はおまかせで良い」広告メディアではない事を覚えておいてください。それよりむしろ、自然な成長率を上回っているかを確認するために、定期的なメンテナンス、テスト、最適化が必要です。成長率は予算の拡大に支えられています。成長を維持するためには引き続きの投資が必要です。ショッピング広告のコンバージョン率は安定しており、デバイスを問わず、とても高い値を示しています。つまり、最適化は低下している限界収益の対策にもなります。

前述した最適化手法と、高度な最適化手法を用いることで、小売業者はショッピング広告のクリックの伸び率をGoogleの平均値よりも大幅に上回らせることが容易にできます。当社のクライアントと、当社のテクノロジーを活用したクライアントでは、クリックの伸び率が前年比を100%超える割合で増加することがよくあります。

最後に:訳者談

本記事で特に筆者の印象に残ったのは次の3つの事でした。

市場全体の成長と自社の成長はイコールではない

ショッピング広告は、アカウントで獲得した全体のコンバージョン数の6~7割がショッピング広告で占めるというケースもあるくらい強力な配信です。しかし、そこに市場全体の成長という下支えが含まれているということを忘れてはなりません。

日本で考えるとモバイルシフトによる検索エンジンシェアの変化や、運用型広告費の伸び率を考慮すると、ショッピング広告の自然な成長率は100%を超えてくるのではないかという筆者の概算です。ですので、ショッピング広告の成長率が昨年比で100%未満である場合は市場に遅れを取っていると言えそうです。

日本だけではなく海外でも未だに「今がGoogleショッピングに投資するベストな時期」

海外において「ショッピング広告は最優先で取り組むべき」という意識が定着しているものだと認識していたため、Andreas Reiffen氏から「今がショッピング広告に投資するベストな時期」であると言う言葉が出てきたことには驚きました。

日本におけるGoogleショッピングの利用社数は2016年末で2,000社以上と発表されています。楽天市場の出店社数が2017年6月1日現在で約45,000社であることを考えると、今から取り組んでも十分に先行者利益が享受できますね。

ショッピング広告は「設定したら後はおまかせで良い」広告メディアではない

ショッピング広告は出稿すればインプレッションが増え、クリックが増え、コンバージョンが増えることは明白です。ただし、「とりあえず出しておく」と「ショッピング広告のチューニングに投資する」ではその後の成長率が大きく異なるということだけ覚えておきましょう。これには3つの段階があると訳者は考えています。

  1. ショッピング広告用のデータフィードをきちんと作成し、商品画像やテキストなどを工夫している段階。今後も成長が期待できる
  2. 商品データを、そのまま広告に活用している段階。競合が少ないため、現時点では成果が出ているが、工夫しないと今後の伸びは期待できない。
  3. まだショッピング広告に着手していない。競合が活用した時点で、シェアを奪われてしまう可能性がある

2は市場の成長を自社の成長と勘違いしてしまう可能性がありますし、3は広告のクリック数がショッピング広告に奪われていることに気づかずに縮小傾向に陥る可能性があります。自社がこの3つのうちどのフェーズにいて、市場はどのようになっているのかと言うのは今後も定期的に確認する必要がありますね。

最後になりますが、アナグラムのブログでは過去の記事でも商品フィードの最適化について触れていますので、ぜひ参考にしてみてくださいね!

参考:Googleショッピングキャンペーンの高度な最適化

参考:FeedTech2016:いま取り組むべきショッピング広告&動的リマーケティング、成果を出し続けるために必要なポイントとは? セミナーレビュー

参考:誰もが悩む!ショッピング広告(旧、商品リスト広告)に関するQ&A(一問一答) | アナグラム株式会社

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