TikTok広告のインフィード広告に、オーガニック動画を広告として利用できるSpark Ads(旧名称:Boosted TikToks)という広告フォーマットがあります。
通常の広告(Diversion Ads)とは異なり、第三者配信※(クリエイターの動画)や自社のオーガニック投稿を広告として利用が可能です。
※非公式な名称です。第三者ポストのプロモーション利用と表現されているケースもありますが、この記事では便宜上「第三者配信」という比較的よく用いられるフレーズを利用しています
今回は、Spark Adsの概要と設定手順を紹介します。
目次
Spark Adsとは?
Spark Adsとは、インフィード広告の広告素材としてオーガニック動画を活用できる広告フォーマットです。自社が投稿したものだけではなく、たとえば承諾を得た一般ユーザーを含むTikTokクリエイター(第三者)が投稿した動画も広告として活用できます。
Spark Adsのメリット
Spark Adsには通常の配信方法にはないメリットがあります。ここではおもに3つをご紹介します
リーチするボリューム・対象をコントロールできる
オーガニック投稿ではリーチするボリュームや対象をコントロールすることは困難です。うまくおすすめフィードでリーチが伸びれば良いですが、精魂込めて制作した動画が全然再生されなかったり、広告費をかけPRをお願いしたクリエイターさんの動画が期待したほど伸びないこともあるでしょう。
一定の配信ボリュームが欲しい場合、Spark Adsを利用して投稿のリーチ拡大が可能です。またTikTok広告で使えるターゲティング機能を使い、動画を届けたいユーザー層へリーチが広がるのも期待できるでしょう。
CTAボタンが設定できる
通常、オーガニック動画にはCTAボタン(Call to Action)をつけられません。そのため、ウェブサイトにアクセスしてもらうにはプロフィールの情報、または動画視聴後に検索してアクセスしてもらう必要があります。
しかしSpark Adsを使えば、オーガニック動画にCTAボタンを追加して広告として配信できます。そのため、動画からシームレスにウェブサイトやアプリストアに誘導、アクションにつなげることが可能です。
TikTokアカウントを伸ばせる
通常の広告(Diversion Ads)は、TikTokアカウントと紐づけずに配信するため、広告からTikTokアカウントへのフォローなどのアクションができません。
一方Spark Adsでは、広告に使用した動画から直接TikTokアカウントのフォローを促したり、広告からプロフィールに遷移が可能なため、連携しているTikTokアカウントが投稿している他の動画を見てもらうことも期待できます。
そのためダイレクトレスポンス目的だけではなく、TikTokアカウントのフォロワー獲得の配信目的としても活用できるでしょう。
Spark Adsで利用できるプロモーション目的
Spark Adsは「オークション」と「リーチ&フリークエンシー」の2つのオーダータイプに対応しており、特にオークションタイプでは多くの広告の目的に対応しています。
オークション | リーチ&フリークエンシー | |
---|---|---|
リーチ | ○ | ○ |
トラフィック | ○ | ○ |
アプリインストール | ○ | × |
動画視聴数 | ○ | ○ |
リード作成 | ○ | × |
コミュニティインタラクション | ○ | × |
コンバージョン | ○ | × |
ショップ購入(アルファ版) | ○ | × |
参考:Spark Ads Overview - TikTok ビジネスヘルプセンター
Spark Adsのユーザーインタラクションとデータ指標の種類
ユーザーインタラクションとは、アプリケーション内でのユーザー行動、例えばCTAのクリックなどを指します。データ指標は、これらのユーザーインタラクションを定量的な値にしたものです。
Spark Adsのユーザーインタラクションやデータ指標には通常の広告(Diversion Ads)と共通のものもありますが、独自のものも多いです。通常の広告(Diversion Ads)と同じ仕様だと思っていたら違っていた、ということにならないように、通常の広告(Diversion Ads)と比較しながら紹介します。
ユーザーインタラクション
ユーザーインタラクション | Spark Ads | Diversion Ads |
---|---|---|
CTAのクリック | 広告のランディングページに移動 | ランディングページ・アプリインストールページに移動 |
広告キャプションのクリック | ||
プロフィール画像のクリック | 動画所有者のプロフィールページに移動 | |
ニックネームのクリック | ||
左にスワイプ | ||
プロフィール画像の「+」マークをクリック | アカウントのフォロー | - |
楽曲・歌手名・音楽ディスクのアイコンをクリック | 音楽ページに移動 | - |
参考:Spark Ads - TikTok ビジネスヘルプセンター
データ指標
データ指標 | Spark Ads | Diversion Ads |
---|---|---|
有料クリック数 | CTAボタンおよび広告キャプションのクリック数 | CTAボタン・広告キャプション・ニックネーム・プロフィール画像のクリック数および左にスワイプされた回数 |
有料いいね数 | ユーザーが広告を見てから1日以内に、動画クリエイティブにいいねした数 | |
有料シェア数 | ユーザーが広告を見てから1日以内に、動画クリエイティブをシェアした回数 | |
有料コメント数 | ユーザーが広告を視聴してから1日以内に、動画クリエイティブに追加したコメントの数 | |
音楽クリック数 | 音楽ディスクのアイコンと音楽タイトルのクリック数 | - |
有料フォロワー数 | ユーザーが広告を見てから1日以内に、フォロワーした数 | |
有料プロフィール訪問数 | キャンペーン期間中、広告経由でプロフィールに訪問した数 | |
アンカークリック数 | おすすめページ内のSpark Ads動画のアンカーがクリックされた回数 | |
アンカークリック率 | アンカークリック数÷アンカーインプレッション |
参考:Spark Ads - TikTok ビジネスヘルプセンター
Spark Adsの配信要件
Spark Adsの配信にあたり、以下の要件を確認してください。
分類 | 詳細 |
---|---|
広告クリエイティブ | 任意のTikTokのオーガニック動画 |
動画のアスペクト比 | 制限なし |
動画解像度 | |
ファイルタイプ | |
ビットレート | |
ファイルサイズ | |
動画の長さ | 最大10分間 |
広告キャプション | 空欄可 |
表示名とテキスト | 広告利用するオーガニック動画の内容が反映される(広告マネージャー上での編集は不可) |
Spark Adsで利用可能な動画数の上限 | 10,000件 |
注意点 | ・禁止されたオーガニック投稿は広告マネージャーでも利用できない ・紐づけた動画を削除したい場合は、Spark Adsの承認を解除する必要あり |
参考:Spark Ads - TikTok ビジネスヘルプセンター
広告の承認後は、元のオーガニック動画は編集できません。表示名やテキストが広告使用に足る内容になっているか、事前に確認しておくと安心ですね。
参考:Spark Ads作成ガイド - TikTok ビジネスヘルプセンター
Spark Adsの設定方法
通常の広告(Diversion Ads)では、TikTokアカウントを作成しなくても、広告アカウントにデータをアップロードすれば広告を配信できます。一方、Spark Adsでは、TikTokアカウントで投稿した動画が必要です。Spark Adsに利用したい動画は、事前にTikTokアカウントで投稿しておきましょう。
動画の投稿ができたら、広告マネージャでSpark Adsの配信設定を行います。
なお、Spark Ads設定方法は次の2種類です。
- TikTokビジネスアカウントと連携させて配信する
- 承認された投稿を配信する
また、TikTokアカウントは個人アカウントとビジネスアカウントの2種類あります。ビジネスアカウントにすると、投稿した動画やフォロワーに関する数値を確認できたり、プロフィールにWebサイトのURLを設定できたり、TikTokを個人で楽しむのではなく目的を持って運用していく場合は、ビジネスアカウントに切り替えることをおすすめします。
ビジネスアカウントへの切り替えは無料です。こちらを参考にしてください。
まずは、TikTokビジネスアカウントと連携させて配信する方法から紹介します。
TikTokビジネスアカウントを連携させて配信する方法
広告主所有のTikTokビジネスアカウントの動画をSpark Adsで配信したい場合は、この方法がおすすめです。紐づけたTikTokビジネスアカウントの既存の投稿がすべて利用可能になり、動画ごとに承認作業がいりません。
TikTokビジネスアカウントとの連携方法
TikTokビジネスアカウントとの連携方法は、以下の3つです。
- TikTokビジネスセンターと連携する方法
- TikTok For Businessアカウントと連携する方法
- 広告マネージャーから連携する方法
では、それぞれの方法を見ていきましょう。
①TikTokビジネスセンターと連携する方法
TikTokビジネスセンターをすでに開設しており、広告運用に関わる人が複数いる場合はこの方法がスムーズです。TikTokビジネスセンターを介して、TikTokビジネスアカウントの動画へのアクセス権限を付与できるため、関係者が増えても簡単に権限を付与できます。
TikTokビジネスセンターにログインし、[アセット]を開き[TikTokアカウント]を選択し、[TikTokアカウントを追加]をクリックします。
広告配信権限の選択画面が表示されるので、Spark Adsに必要な「動画権限」のトグルをオンにして[QRコードを生成]をクリックしてください。
TikTokビジネスアカウントの友だち追加から表示されたQRコードを読み込んでもらえば、TikTokビジネスセンターとTikTokビジネスアカウントの連携は完了です。
なお、TikTokビジネスセンターと連携しただけでは、TikTokビジネスアカウントの投稿を広告に利用できません。TikTokビジネスセンターでTikTokビジネスアカウントへのアクセス権限を付与することで、広告での利用が可能になります。
次より、TikTokビジネスセンターでTikTokビジネスアカウントへのアクセス権限を付与する方法を説明します。
TikTokビジネスセンターを開きます。[アセット]の[TikTokアカウント]をクリックし、メンバーを割り当てたいTikTokアカウントを選択後、[新しいメンバーを割り当てる]をクリックします。
アクセス権限を付与したいユーザーにチェックを入れ、「動画権限」のスクロールバーを右にドラッグして[割り当て]をクリックしてください。TikTokアカウントへのアクセス権限の付与が完了し、これでTikTokビジネスアカウントの投稿の広告利用が可能になりました。
②TikTok For Businessアカウントと連携する方法
TikTokビジネスセンターを持っておらず、インハウス運用など、TikTokビジネスアカウントと広告アカウントの所有者が同じ場合は、この方法が速くて簡単です。
なお、TikTok For Businessのログインページ、ユーザー設定ページのどちらからでも設定可能です。まずは、ログインページより設定する方法を紹介します。
【TikTok For Businessのログインページより連携する方法】
TikTok For Businessのログインペーページを開きます。[TikTokでログイン]をクリックして、TikTokビジネスアカウントでログインしてください。
TikTokビジネスアカウントへの[アクセス許可]を求められるのでクリックします。
[既存のTikTok For Businessアカウントに連携]を選択し、TikTok For Businessアカウントのメールアドレスとパスワードを入力し、[確認]をクリックで連携は完了です。【TikTok For Businessのユーザー設定より連携する方法】
TikTokビジネスセンターにログインし、画面右上のアイコンから[ユーザー設定]をクリックします。
プロフィールの[TikTokアカウントを連携] をクリックします。
任意の方法で、TikTokビジネスアカウントにログインします。
TikTokビジネスアカウントへの[アクセス許可]を求められるのでクリックで、TikTok For BusinessアカウントとTikTokビジネスアカウントの連携ができました。
③広告マネージャーから連携する方法
広告マネージャーから連携する方法もあります。こちらの設定も途中でTikTokビジネスアカウントのログインが求められるため、TikTokビジネスアカウントの所有者と広告運用者が同じ場合に利用したい方法です。
広告設定画面のIDの[TikTokアカウントを使用してSpark Adsを配信]のトグルをオンにし、[承認済アカウント]を選択し、[アカウントを連携]をクリックします。
任意の方法で、TikTokビジネスアカウントにログインします。
TikTokビジネスアカウントへの[アクセス許可]を求められるのでクリックで、広告マネージャーとTikTokビジネスアカウントの連携は完了です。
広告の作成
TikTokビジネスアカウントの連携が完了したら、広告マネージャーで配信設定をします。
キャンペーンと広告セットを作成し、広告設定に進みます。
1.IDの「TikTokアカウントを使用してSpark Adsを配信」のトグルをオン
2.[承認済アカウント]をクリックし、連携したTikTokビジネスアカウントを選択
3.広告クリエイティブの[+TikTok上の投稿動画]をクリック
4.対象の動画を選択
5.[確認]をクリック
6.[誘導アクション]と[誘導先]を設定したら設定完了です。
承認された投稿を配信する方法
一般ユーザーを含むクリエイターが投稿した動画をSpark Adsに利用したい場合は、この方法で設定してください。
オーガニック投稿を利用したいクリエイターのTikTokアカウントでの広告設定の許可
クリエイターが投稿した動画をSpark Adsに利用するには事前に許可を得る必要があります。もし、使用するTikTokアカウントで広告利用が初めての場合は、まずはアカウント設定で「広告設定の許可」をしてもらいましょう。
広告設定の許可の手順は、次のとおりです。
1.TikTokアカウントのプロフィールページの右上にあるハンバーガーメニューをタップ
2.[クリエイターツール]をタップ
3.右上にある歯車マークをタップ
4.[広告設定]のトグルをオン
コードの取得
次に、使用する動画の広告利用を承認し、コードを取得してもらいます。
1.広告に利用する動画を選択し、3つのドットをタップ
2.[広告設定]を選択
3.広告使用承諾のトグルをタップ(この時点ではトグルオンにならない)
4.[有効期間の選択]のポップアップが立ち上がるため、広告利用の有効期間7日間・30日間・60日間・365日間から選択し[承諾]をタップ(期間は承諾確認後からカウントされます)
5.[動画コード保留中]になっていることを確認
6.一度、[保存]をタップ
7.[動画コード:付与済]を確認して[管理]をタップ
8.[コードをコピー]をタップ
フィードには表示させずに広告としてのみ表示するには?
[広告としてのみ表示]のトグルをオンに設定すると、おすすめやフォロー中のフィード、検索結果などに表示されず、該当の広告は広告表示にのみ表示されるようになります(TikTok広告オンリーモード)。デフォルトではオフになっていますが、クリエイターなどアカウントの世界観を表現する動画と広告で使用する動画を分けたい(広告に使う動画をプロフィールに表示させたくない)場合はオンにするとよいでしょう。
アセットへ追加
TikTokアカウントの広告利用に関する設定を終えたら、広告マネージャーのクリエイティブライブラリに動画を追加します。
1.広告マネージャーを開き、[ツール]を選択
2.[クリエイティブライブラリ]を選択
3.[Spark Ads投稿]を選択
4.[権限申請]をクリック
5.手順「コードの取得」で取得したコードを入力し[検索]をクリック
6.対象の動画の表示名・テキストが問題ないかを確認
7.問題なければ[確認]をクリック
8.「投稿が許可されました」の表示が出たら動画の追加が完了
広告の作成
次に、クリエイティブライブラリに追加した動画を使って広告を作成します。キャンペーン、広告セットを設定し、広告設定に進んでください。
1.広告設定をIDの「TikTokアカウントを使用してSpark Adsを配信」のトグルをオン
2.[アカウントが承認した投稿]から、対象のTikTokアカウントを選択
3.広告クリエイティブの[+TikTok上の投稿動画]をクリック
4.対象の動画を選択
5.[確認]をクリック
6.[誘導アクション]と[誘導先]を設定したら設定完了です。
Spark Adsの注意点
Spark AdsはTikTokアカウント内の動画をそのまま流用できるため、入稿の手間が少なくなるなどメリットがある一方で、注意点もあります。
広告主側でコントロールできるクリエイティブ要素は限られる
通常の広告(Diversion Ads)であれば、任意の広告文を設定し、広告運用者の意図した広告文でLPに誘導することができます。
しかしSpark Adsではオーガニック投稿の内容をそのまま使用するため、広告主側で広告文の編集はできません。
ひとりのクリエイターで伝えたいことをすべて伝えようとするのではなく、クリエイターごとに訴求ポイントを変えたり、エンゲージメントを増やすことを目的とした拡張機能「インタラクティブアドオン」を用いて訴求を補うなども検討しましょう。
LP以外の遷移導線が増え離脱リスクが上がる
通常の広告(Diversion Ads)であれば、広告のどこをクリックしてもLP(ランディングページ)に遷移する広告UIとなっています。
一方、Spark Adsの場合、プロフィール画像やアカウント名、左スワイプでアカウントページに遷移する挙動です。
LPに遷移することを目的に据える場合、本来LPに来るはずだったユーザーが来ずに広告から離脱する可能性があります。
確実にLP流入を狙う場合は、Spark Adsを用いないという判断も必要です。
広告もコンテンツだ
オーガニック動画の間に表示されるTikTokのインフィード広告は、広告としてお金をかけて表示機会を得られたとしてもコンテンツとして魅力的でなければ他のオーガニック動画と同様スキップされ、本来の目的を達成することはできません。
そのため広告も視聴してくれるだろう前提で広告主の伝えたいメッセージをただ盛り込めばいいわけではなく、「どうしたら視聴してくれるだろうか」「どうしたらスキになってもらえるか」といったオーガニック動画でも同様の思考が必要となります。”広告然とした動画”よりも、オーガニック動画で一定の数値が出ている動画のほうが、広告クリエイティブとしても良いパフォーマンスが出るだろうことは想像に難くないでしょう。
Spark Adsではオーガニック動画を広告として使え、またオーガニック動画では叶えられないCTAボタンの付与や、動画のリーチ・ターゲティングもコントロール可能となるため、TikTokでのプロモーションにおいてとても重宝する機能と言えそうです。Spark Adsをうまく活用し、成果もスパークさせていきたいですね!