ブランド要素(ブランド識別記号)と運用型広告

ブランド要素(ブランド識別記号)と運用型広告

運用型広告は検索広告やディスプレイ広告などターゲティングを絞りアクションを促すようなダイレクトレスポンス目的で多く利用されておりますが、昨今ではYouTubeやTikTokなど幅広いリーチが期待でき、動画といったフォーマットで認知目的のキャンペーンタイプが用意されており、運用型広告はダイレクトレスポンス目的だけではなく、ブランド認知のようなブランディング目的の広告を実施する上でも重要な広告チャネルとなってきています。

ブランディングとは消費者にブランドネームやロゴなどといった記号(ブランド要素・ブランド識別記号)にある種の知覚価値を抱いてもらうための諸活動と言えるかもしれません。今回はそうしたブランド要素の紹介と、ブランド要素を新しく考えている方に向けて運用型広告で展開する上での注意点を考察していきたいと思います。


ブランド要素とは

ブランド要素とは、自社の商品・サービスを他社のものと識別するための要素(識別記号)です。まずはブランド要素にはどういったものがあるか紹介していきます。

ブランドネーム

ブランドの名前です。アナグラムは「アナグラム」「Anagrams」がブランドネームにあたります。

ロゴ

ロゴタイプ(ブランドをデザインされた文字で表現したもの)、ロゴマーク(ブランドをデザインされた図形で表現したもの)の総称がロゴです。アナグラムのロゴ・ロゴマーク・ロゴタイプは以下です。

スローガン(キャッチフレーズ)

ブランドのコンセプトや世界観、提供価値、伝えたいメッセージなどを表現したコピーがスローガン(キャッチフレーズ)です。ブランドスローガンで有名なものはナイキの「JUST DO IT.」、インテルの「インテル入ってる(Intel inside)」などが挙げられます。

キャラクター

ブランドの象徴となるような実在もしくは架空の人物や動物などがキャラクターです。アナグラムではこの謎の生物たちがブランドのキャラクターとなりそうです。

ジングル(サウンドロゴ)

音や短い楽曲もブランド要素の一つです。ブランドを象徴する音や楽曲はジングル(サウンドロゴ)と呼ばれ、インテルのCMやNetflixの動画が始まる冒頭のジングルなどが有名かと思います。

ブランドカラー

ブランドを表す色や色の組み合わせがブランドカラーです。街中のATMを見ても、特にブランドネームやロゴの表示がなくても、赤や青などのブランドカラーでどの銀行かある程度、判別可能かと思います。ブランドカラーで有名なものはTiffany & Coの”ティファニー ブルー”などが挙げられます。

デザイン・パッケージ

有形商材であれば、プロダクト自体のデザインや形状、パッケージなどもブランド要素の一つです。アディダスのスリーストライプス(3本線)やKIKKOMANの特徴的な醤油瓶の形状などが有名かと思います。

ブランド要素を運用型広告で扱う際の注意点

運用型広告を実施する上で、ブランド要素で注意しておきたいポイントを本章では紹介していきます。もしこれから各ブランド要素を策定するフェーズであれば、運用型広告はブランディングにおいても重要なチャネルであるため、各ブランド要素が運用型広告でしっかり機能するかどうか一考したいところです。

ブランドネームは文字数に注意

運用型広告の各種広告フォーマットでは広告表現に「文字数」といった大きな制限があります。検索広告におけるテキスト広告はもちろんのこと、ディスプレイ広告ではバナーのような静止画フォーマットだけではなく画像とテキストを組み合わせたレスポンシブフォーマットが主流になり、そちらでも主体者表記に文字数制限があります。そのためブランドネームを考える際には、それらの文字制限を超えてしまわぬよう留意したいです。

具体的な文字数は検索の見出し(半角30文字/全角15文字)よりもレスポンシブディスプレイ広告の主体者表記(半角25文字/全角12文字)のほうが少ないため、半角25文字/全角12文字(Googleレスポンシブディスプレイ広告)におさまるかはしっかり考慮すると良いでしょう。

ブランドネームは記号に注意

広告表現において文字数と同様に、使用できる記号の制限も考慮しておきたいです。掲載ポリシーで広告表現のテキスト部分に使えなかったり、ソーシャルメディア上でハッシュタグがうまく機能しなかったりします。ブランドネームに記号を含める際は一定の制約があることを予め認識しておきましょう。

ブランドネームを商標登録しているなら

ブランドネームを商標登録しているならば、いくつかの広告媒体で第三者が広告で商標を利用する際に制限をかけることが可能です。メーカーとして各ストアで取り扱って売ってもらう場合は制限をかける必要性は薄いですが、D2C企業など自社だけの使用に制限したい場合はこちらの機能を活用してみるのもよいでしょう。

ロゴの形式について(広告のアイコンとしての活用)

Google のレスポンシブディスプレイ広告やファインドキャンペーンの広告フォーマットでは、ロゴ画像の表示があります(主にスクエアの形式)。またMeta広告やTwitter広告などのSNS広告では、広告はそのプラットフォーム内でのアカウント(InstagramアカウントやTwitterアカウント)のアイコン画像とともに表示されます。

それらは丸型の形式が多いため広告表示された際に、使用しているロゴやアイコンの視認性がしっかり確保できているか注意しておくと良いでしょう。もし横長のロゴしか用意がない場合、かなり小さく表示されてしまうため視認性が悪く、どこのブランドであるか判別するのが難しいです。そのためレスポンシブディスプレイ広告などのロゴ画像やソーシャルメディアのアイコン画像として使えるスクエアや丸く切り取られても問題なさそうなロゴマークを用意しておくと良いでしょう。

画像表示オプションに使用できるか

Google 広告の検索キャンペーンでは画像表示オプションの登場により、かつてはテキストのみの表示であったのが、昨今ではイメージも表示することが可能になっています。ここで注意したいのは画像表示オプションではロゴ単体の画像は掲載ポリシー上、使えないことです。
そのためブランドを代表するような商品(デザイン・パッケージ)があればその画像を使ったり、有形のプロダクトを持たない無形商材の場合は、利用想起させるような写真やキャラクターを活用するなどが有効でしょう。

広告フォーマットにのせられるブランド要素は何か

広告フォーマットによってクリエイティブに盛り込めるブランド要素も変わってきます。検索広告は基本的にテキスト表現になるため(画像表示オプションが表示されることもある)ブランド要素としてはブランドネームやスローガンの活用がメインとなります。
一方、画像や動画のフォーマットではより多くのブランド要素を広告表現に盛り込むことが可能です。このことからも認知目的の配信をする際はやはり動画が主体のYouTubeは有効な広告チャネルと言えそうです(広告フォーマットだけではなく、リーチやターゲティングの観点もあります)。

運用型広告とブランディング

ブランディングといえばブランドネームなどのブランド要素をおぼえてもらうような認知目的の広告をイメージされるかもしれません。しかしそれだけがブランディングではありません。ここでブランディングの要諦をおさえる上でインサイトフォース・山口氏の書籍の一節を借りたいと思います。

ブランド戦略の本質を一言で表現するならば「ターゲット顧客にこう思われたら選ばれるだろうという価値を決めたら、そのような印象が残るようにすべての顧客体験や施策に一貫性を持たせるよう整える」ということ。

デジタル時代の基礎知識『ブランディング』~「顧客体験」で差がつく時代の新しいルール~(MarkeZine Books) 山口義宏 著

あらゆる顧客接点で与える影響がブランディングに関係します。認知目的だけではなくダイレクトレスポンス目的の広告もすべてブランディングに寄与するのです。

たとえばダイレクトレスポンス目的の広告でも、購入後それが顧客にとってよい体験であれば、そのブランドに対してよい印象を抱くため(ブランド識別記号に対してよい知覚価値が紐づく)、立派なブランディングといえます。一方、ダイレクトレスポンス目的の広告ではコンバージョンに最適化するあまり、ブランドと一貫性のないような広告表現を使ってしまったり、時にこれまで築いてきたブランド資産(ブランド・エクイティ)を切り崩すようなコミュニケーションをとってしまったりして、ブランディングに対してマイナスの効果をおよぼしてしまうこともあるでしょう。認知目的ではないからといってダイレクトレスポンス目的の広告でもブランディングの観点がおろそかになってしまわぬよう注意が必要です。

デジタル時代、運用型広告は大きな顧客接点となりうるためブランディングにおいても重要なチャネルです。ブランド要素の取り扱いをはじめとして、発信するメッセージや与える顧客体験など、ブランディングにどう寄与するか意識して広告をしていきたいですね。

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