検索エンジンマーケティングをテーマにした大規模なイベント「SMX(Search Marketing EXPO)East」が2018年10月24・25日の2日間にわたり、米国のニューヨーク市で開催され、筆者も両日に参加してきました。
参考:SEO & SEM Agenda | Sessions & Workshops | SMX® East 2018
SMX East会場でのランチ中の会話の中では「時差ボケ(Jet lag)だ」という言葉がよく聞かれ、ニューヨーク以外や私たちのように海外からも多くのマーケターが集結しているようでした。
また、個人的に印象的だったのがインハウスで業務に携わる方の多さです。セッションによっては7割がインハウスの広告運用者という光景も珍しくなく、隣に座っている方が実はNIKEやLGといった大手企業のマーケティング担当者の方だったなんてこともあり、ミーハーな私はセッションを聞く姿勢が3倍は前のめりになっていたことと思います。
目次
注目を集める Amazon 広告
今回のSMX Eastでは、Amazon 広告をメインとしたセッションも複数あり、これらのセッションを問わず「Amazon Advertising」、つまりAmazon 広告に関するフレーズをよく耳にしました。他のセッションに比べてもオーディエンスの人数も多く立ち見が出るなど、Amazon広告への注目が高まっていることが伺えますね。
この記事では、本イベント主催のThird Door Media社チーフエディターでもあり、Search Engine Landにも頻繁に登場するGinny Marvin氏がスピーカーを務めた、「New Research: The State Of Amazon Advertising - Search Engine Land」の内容をもとに、Amazon 広告とそれを取り巻く広告運用の米国の現状をご紹介します。
セッションで発表されたのは、Third Door Media社が中心となって2018年8月下旬から2018年9月初めに、681社のデジタルマーケティング担当者と広告主を対象に行われた調査結果のレポートによる、米国におけるAmazon 広告の現状と今後の展望でした。
なお、本記事の資料はSMX Eastのイベントページで公開されている実際にセッションで使用された資料より抜粋しております。
本セッションのスライドはこちら。
参考:Making Room for Amazon: Investment Flowing in Media, Staff, Tech
その他の資料もこちらにアップされています。
参考:SMX East Speaker Presentations - Marketing Land Events
回答者のおよそ5割がAmazon広告を運用
まず、注目を集めるAmazon広告の売上の経過や市場規模の解説からです。
Amazonの広告事業の第2四半期の売上は、前年同期比で129%増のおよそ22億ドルになる見込みです。
これは、2大広告プラットフォームのGoogleやFacebookと比べれば、直近四半期の広告売上のシェアは4%程度に留まりますが、それでもその成長率からは三番手の広告媒体として着実に存在感を増している様子が伺えます。
今回の調査では、回答者のおよそ半数がAmazon広告を運用していることがわかりました。これだけ導入が進んでいる一方で、レポートからは広告費用の割合からすると過剰に投資されている、採用や開発などのコストの多さにスポットが当てられていました。
1割は広告費の半分をAmazon広告へ投下
先ほど、Amazon広告の売上は広告費全体における4%程度に留まるとのデータがありましたが、回答者の10%はなんと半分以上をAmazon広告に費やしていると言います。
eMarketerが発表した2018年の米国全体のオンライン小売売上の49.1%をAmazonが占める状況を考えると、比較検討をすることの少ない日用品などのジャンルでは、多くの広告予算を透過してAmazonという強大なスーパーの商品棚のよい場所を押さえないことには収益を得るのが難しい状況であると思われます。日本のEC売上高ランキングでも首位を走るAmazonだが、現状はまだ2割り程度のシェアであるとの調査もあります。今後、どれだけAmazon広告が伸びていくかは、AmazonのECにおける売上規模と比例していくのではないでしょうか。
8割は2019年にAmazonでの広告費を増やす予定
また、回答者の8割は2019年にAmazon広告の広告費を増やす予定だという。
そのうちの2割はなんと、50%以上増やすというから、その費用対効果の高さが伺えます。では、この増額予算はいったいいままでどこに掛けられていた予算なのかが続けて示されました。
半数以上は追加予算は純粋な増加分となると述べているそうです。しかしながら、既存の検索広告からのシフトが約3割、ついでディスプレイ広告やソーシャルの予算も、Amazon広告への増額予算に充てられる予定のようです。
オンライン購入に直接つながるAmazonでの検索
Googleの検索広告では、2018年の第3四半期にはブランド名検索を除く検索広告のクリックのうち87%もがショッピング広告経由です。
参考:【ネット広告最新事情】モバイルの検索流入で圧倒的なグーグル、アマゾンはスポンサーブランド広告が過去最大の成長 | 海外のEC事情・戦略・マーケティング情報ウォッチ | ネットショップ担当者フォーラム
※記事内、Merkle社のレポートによる
では、同じショッピング行動に関わる検索広告ですが、GoogleとAmazonとの違いはどこにあるのでしょうか。
「The Rise of e-commerce Search Advertising」というセッションの中で、Amazonのデジタルマーケティング部のTim Natividad氏は、Amazon内でのユーザーの購買行動がGoogeなどと、どう異なるのかについてこう述べています。
通常のユーザー行動であれば、「検索」と「購買」は必ずしもイコールにはならない。なぜなら、検索をした結果、オンラインで買うこともあればオフライン(実店舗など)での購買に繋がることもある。しかしAmazonでの検索行動は多くの場合、オンラインでの購入につながることが多いという。これが、Amazon広告の最大の魅力であり、新しい流れの1つと考えます
同じ検索広告ということで、2者択一のように比べれがちなGoogleとAmazonの検索広告ですが、Tim Natividad氏がいうように使われるシーンは異なるケースが多くあります。自身の買い物の仕方を振り返ってみても、購入するものがすでに決まっていればAmazonでどの商品がよいか検索しますし、悩みを解決するのに何が必要かがわからない場合、まずはGoogleで解決方法を探す、というように無意識に使い分けています。
広告を運用する側としては、近視眼的に目先の売上や費用対効果だけを追って予算を右から左へ移動させるのは、非常に危険だと感じました。それぞれの検索機能が自身の顧客にどのように使われているかを想像することがまずは必要ではないでしょうか。
最後に
広告運用のプラットフォームとしては、先行する他社に比べまだまだ発展途中であるため、
多くの企業が積極的にサードパーティの自動化ツールの導入検討もされているようですが、他の運用型広告プラットフォーム同様にさまざまな機能が追加され、自動化の機能にも力を入れてくるのは想像に難くありません。
管理画面の機能も当初はかゆいところに手が届かなく、運用に苦労する場面が多かった印象ですが、管理画面を開くと「あれ?これいままであったっけ」とアップデートに驚くことも少なくありません。いち広告運用者としては、今後の広告運用のプラットフォームとしての成長スピードも引き続き注目していきたいポイントです。日本ではまだまだ事例も少ない状況かと思いますので、豊富な海外事例も引き続き追っていきたいと思います!