長年担当しているサービスの広告運用で心掛けている4つのこと

長年担当しているサービスの広告運用で心掛けている4つのこと

広告代理店や事業会社で、長年同じ広告アカウントの運用を続けている人から、「過去やったけど効果がなかった経験にとらわれて新しいチャレンジができない」「成果の伸び悩みを感じるが打ち手が思いつかない」という声を聞くことがあります。

年単位で同じ広告アカウントの運用をするということは、超えなければならないライバルが去年の自分になることと同義で、ある意味、他の代理店や他の担当者のアカウントを引き継ぐより難易度が高くなることも。

私は、同じクライアントと長いお付き合いをさせていただくことが多く、ほとんどの場合3年以上――長いものだと入社以来、8年以上のお付き合いをしているクライアントもいます。

今回は、「長年担当しているサービスの広告運用で心掛けている4つのこと」と銘打ち、年数を重ねても信頼され、成果を更新し続けていくコツをつづっていきます。長年同じ広告アカウントの運用を続けている方や、これから長期的に任せてもらいたいと思っている方の一助になると幸いです。



同じ広告運用者が長年担当しているメリット/デメリット

同じ広告運用者が同じサービスの広告運用を長く担当することには良いことも悪いこともあり、どちらのほうが良いとは一概に言えませんが、ざっと挙げると以下のようなメリット・デメリットがあると考えられます。

<メリット>
  • 市場理解、商材理解が深まる

  • トレンドを把握し、先手を打てるようになる

  • 代理店の場合はクライアント、事業会社の場合は上司の信頼を得て動きやすくなる


<デメリット>
  • 実施済みの施策が増え打ち手が減る

  • ルーチンワークに終始し新しい取り組みや施策に及び腰になる

  • もうあまりやれることはない、成長することはないという思い込みが増える

メリットにしろデメリットにしろ、カギとなるのは「慣れ」とどう向き合うかです。

慣れとどう向き合うか

「繁忙期の2週間前からインプレッションとコンバージョン率が上がり始める」「エモーショナルな訴求より割引訴求が強い」「〇〇は向いていない媒体・機能」など、過去の動向や施策テストの知見が溜まっていくことで自信がつく一方、慣れが悪い方に向いてしまって「もうあまりやれることはない」とマンネリを感じてしまう人もいます。

たしかに、最適化の行きつく先は収れんですが、やれることがなくなることはありません。どんな業務でも、競合やユーザーがずっと同じということはあり得ず、常に動いていくからです。

例えば広告訴求ひとつとっても、ステージや外部環境で刺さる訴求は変わってきます。

運用しているサービスの知名度がほぼない状況では、サービス名よりも具体的なメリットや享受できる生活を想起させるコピーの方が興味を持ってもらいやすいでしょう。しかし、口コミやCMなどで認知が進んできた段階だと、メリットを訴求するより、どどんとサービス名を前面に打ち出した方が反応が良くなることもあります。

料金の安さをウリにしていても、より安い料金でサービスを打ち出してきた競合がいれば、料金以外の強みを訴求していかないと競争力は落ちていきます。

一度実施した施策でも、ダメだったという固定観念にとらわれず、環境が変わった際は再度トライしてみる勇気をもちましょう。

広告媒体にしても、例えばこれまではGoogle 広告、Yahoo!広告、Facebook広告をメインとしていたところから、時代の流れ、人の動き、年代層の移り変わりに応じて、Twitter広告、Instagram広告、LINE広告、TikTok広告、Pinterest アドなどなどを検討し、勝機が見いだせればトライしていくことも必要です。

長年持続し成果を出し続ける価値の高い仕事をするためには、市場と比較して自分の仕事を見直し、心地よい停滞を打破して、その時々にあった挑戦をしていく必要があります。

見直しの大切さ

マンネリの打破に欠かせないのが「見直し」です。最低でも半年に一度、そもそもに立ち返って、なぜこれをやっているのか、もっといい方法はないかを見直し変革することで、自分の仕事をアップデートしていくことができます。

レポート一つ取っても、なぜこの作業をしているのか、誰に対して価値を提供しているのか、満足いく価値は提供できているか、もっと見やすく分かりやすくはできないか、売上の向上に寄与しているか、時流にあっているか、そもそも必要なのか――などなど、考えることはたくさんあります。

自問自答して、違和感を感じる部分があれば、クライアントや上長と、定例の打ち合わせ以外で話し合いの場を持つことも一つの手段。実体験として、慣習で出していたいくつかのレポートが本当に必要か聞いてみたところ、社内状況が変わって不要になっていたケースや、実は誰も見ていなかったケースは枚挙にいとまがありません。

また、月1回で出していた重めのレポートを見直し、内容を軽くして隔週に変更することで意志決定速度、ひいては事業スピードが上がり、売上が伸びてクライアントが喜んだケースもありました。

他には、第三者の目を借りるという手もあります。あなたが広告代理店の立場で、長年顧客と1対1のコミュニケーションをしている場合、定期的に上長を同席させてフィードバックをもらうのです。

その提案やコミュニケーションはクライアントのためになっているのか、ストレスを与えていないか、売上や利益を伸ばす本質的な施策ができているかなど、第三者の目から見てフィードバックをもらうことで、得られることは山のようにあります。

あとは、広告アカウントを他の人に見てもらうのも大事ですね。アナグラムでは創業期から、各担当の広告アカウントを、他のコンサルタントが見て改善案を出すグロースハックという取り組みを行っていて、こうした取り組みも見直しに大きく寄与しています。

事業会社でインハウス運用をしている場合、なかなか他の人に広告アカウントを見てもらう機会はないかもしれませんが、セミナーに参加して疑問を解消したり、他社のマーケターと繋がることで新たな施策の案が見つかる可能性はあります。広告アカウントの分析・改善サービスをしている広告代理店もありますので、そういった会社から定期的に意見をもらうのも一手です。

引き継ぎ書のススメ

自分自身は長年従事していても、支援・報告をしているクライアントの担当者や上長は変わることもあります。これまでの信頼がリセットされるタイミングですが、新たなチャレンジや信頼を勝ち取るチャンスでもあります。

私は、クライアントの担当が変わるタイミングで、引き継ぎ書なるものを用意し、1-2時間ほどすり合わせの機会をもうけています。以下はそのコンテンツの一例です。

  • 自社の紹介→特色や得意なこと、できないこと

  • これまでの歴史→実績の推移、行った施策と結果、得られた知見の共有

  • 体制→担当者、担当領域、レポートライン

  • 現在の与件→目的、目標、予算、ターゲティング、取り決め、コンプライアンス

  • 現在の運用状況→配信媒体とクリエイティブ、LPなど

  • テスト方針→数値の見方や判断方針など

急な転職や部署移動などで、満足に引継ぎがされないままに次の担当に変わることも珍しくありません。相手に引き継ぎを任せるのではなく、こちらから現状の共有をすることで、意志疎通をスムーズにすることができます。

わざわざ引き継ぎ書を作るのが大変なようにも思えるかもしれませんが、最初に認識を合わせておいた方が、のちのち細々としたすれ違いが多発するより、お互いのストレスを減らせてみんな幸せになれます。

無理をしない

意外と軽視されがちかもしれませんが、個人的にこれ、長いお付き合いにおいて、めちゃめちゃ肝だと思っています。

例えば無茶なスケジュール。頼りにされたくて、毎回ギリギリのスケジュールで対応していると、いつの間にかそれが当たり前になってきて、メンタル・体力を削られ、疲れて終了してしまうことも。

相手に良く思われたい気持ちはとても良く分かりますが、長い付き合いの中で何が起こるかは読めません。あなたが昇進し、マネジメントでやることが増えたり、どうしても外したくない家族のイベントが入ってくることもあるかもしれません。

そんな時、ギリギリの対応が常態化しているとパンクしてしまいます。

解決策として、最初にしっかり「余白」を取って伝えることが大事です。

2時間かかる仕事を、何も言わず2時間で返すコミュニケーションをしていると、ある日他の予定が重なって返すのが5時間後になったとき、相手は不満に思います。しかし、最初に「2営業日以内にお戻ししますね!」と伝えて5時間後に返せば、アウトプットのタイミングは一緒でも、受ける印象は全く違ったものになります。

それでも回らなければ、それはもう一人で対応できる範囲を超えているので、人を増やすなど、体制強化の話になってきますね。

最後に

長年同じサービスを運用していくことは、一人の人と長く付き合っていく、人間関係と似ています。友人、同僚、家族、パートナー、何でもいいです。

つい甘えてしまうことや暗黙の了解で済ませてしまいがちなところを一歩踏み込んで、より心地よく過ごしていくために対話し、歩み寄り、一つ一つ改善していく。

今年はどんなプレゼントをあげようか、去年と被らないものがいいかな、そういえば欲しがっていたものがあったな、と相手が喜ぶことを想像する。

体力が落ちたり、転職したり、家を買ったり。ライフステージや心境・体調の変化に応じて、変わっていくこともありますが、お互いが腰を据えて長く付き合い、アップデートを繰り返していくなかで得られるものは、多くあると思っています。

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