組織の魅力を伝える採用コピーのつくり方

組織の魅力を伝える採用コピーのつくり方

「良い人を採用できない」というお悩みを抱えていらっしゃる企業は多いかもしれません。

一方で、求職者側の視点にたって求人サイトを見たときに感じることは、「良い会社を見つけるのはむずかしい」ということです。

この双方の悩みを解決するのは、ときに人材エージェントかもしれないですし、求人サイトのスカウト機能かもしれません。

ただ、それらの活用を考える前にまず見直したいポイントが採用コピーです。

アナグラムは運用型広告に強みをもつ広告代理店として、必要な人と与える人、両者を「つなげる」ことをミッションとしています。

商品やサービスの魅力を深堀り、ユーザーの真のニーズを考え、広告文などでアプローチして「つなげる」。この一連の流れは、そのまま採用活動にも当てはまります。

今回は、運用型広告の代理店のノウハウをもとに、組織の魅力を伝える採用コピーの考え方をご紹介します。


検証サイクルを回そう

まず前提として、採用コピーも検証サイクルをしっかり回すことが重要です。一度求人を作ったら放っておくのではなく、応募データや面接のフィードバックを参考にしながら改善を続けましょう。

その際に注意したいのが「時間軸」の視点です。

見えるデータを重視すると、求人の閲覧数や応募数に目が向きがちですが、本来の目的は「自社で活躍してくれる人を採用すること」ですから、入社後のパフォーマンスこそ重要な指標です。

しかし、入社後のパフォーマンスが良いか悪いかは、採用コピーを変更してから少なくとも半年以上はフィードバックを得ることができません。そのため、検証サイクルを早く回すためには、閲覧数や応募数、面接のフィードバックなどの先行指標が必要となってくるのです。

つまり、求人の閲覧数や応募数は単に多ければよいものではなく、あくまで短期的な変化を見るための参考数値であり、長期的な視点を忘れずに検証しなければなりません。

※企業によっては、採用担当は採用した人数で評価されるため、定着までを追うインセンティブを感じにくいという側面があるかもしれません。しかし本来は継続的に追っていく指標であるという視点を忘れずにいることが大切だと感じます。

考え方のフレームワークは「誰に」「何を」「どのように」

ここからは、採用コピーを作るにあたって基本となるフレームワークである「誰に」「何を」「どのように」という3つの視点から考えていきます。

「誰に」

まず、会社としてどういう人と一緒に働きたいのかを明確にしないことには、採用コピーを考えることができません。

スキル面だけではなくマインド面も含めて、一緒に働くことで会社も求職者もWIN-WINになれるような人物像を描きましょう。

ここまで読んで「そんなこと、とっくにやっているよ!」と思った方もいらっしゃることでしょう。

その場合、今一度問い直してほしいことは「スキル面でターゲットを絞りすぎていないか?」ということです。

  • 4年制大学を卒業している
  • マーケティングに関わる業務経験3年以上
  • 3名以上の社員をマネジメントした経験がある

このような条件は本当に必須でしょうか?

4年制大学を卒業していなくても、高校卒業後に自分でビジネスをやっていたのであれば、そのスキルを存分に発揮できるかもしれません。マーケティングの業務経験がなくても、「物を売る」という観点では接客業や法人営業の経験を活かせるかもしれません。タスク管理だけを行っていた管理職よりも、高校の生徒会長として試行錯誤した経験を持つ人のほうが良いマネジメントができるかもしれません。

ゆずれないポイントは明確にすべきですが、採用後に自社で教育できるポイントは絞らない方がよいでしょう。特に、採用にかかるコストは成功報酬であることが多いので、入口で絞りすぎると機会損失を生んでしまう側面のほうが大きいと感じます。

アナグラムの運用型広告エキスパートの募集における必要なスキルは、以下の3つのみです。

  • Excelやスプレッドシートで基本的な集計ができる
  • PowerPointやWordで基本的な資料作成ができる
  • 半年程度パソコンを使った業務、もしくはご自身でのブログ運営などの経験がある

運用型広告の実務経験や、マーケティングに関わった経験などは一切問いません。

一方で、求める資質や人物像はかなり明確に言語化しています。

  • 素直、正直、誠実で嘘をつかない方
  • 好奇心と成長意欲がある方
  • 計画性を持って行動できる方
  • マーケティング全般に興味のある方
  • 協調性をもって明るく仕事のできる方
  • 強い責任感のある方
  • 過去の成功体験に縛られず、柔軟に物事を考えることができる方
  • 倫理と論理を兼ね備えている方

スキルで絞ることは、採用にかける時間や教育リソースの削減につながるかもしれません。しかし、「良い人からの応募がない」「採用した人が活躍しない」などの課題を抱えているのであれば、一度見直してみるのもよいでしょう。

ターゲットとする人物像が明確になったら、その人物像をとことん深堀りします。

たとえば、同じ運用型広告に携わっている人であっても、以下の4名では悩みや仕事に求めているものが微妙に違うと感じないでしょうか。

  • 事業会社のマーケティング部で運用型広告を担当している人。
    • 社内に運用型広告の知見を持っているメンバーがおらず、自分で調べながら試行錯誤しているが、やり方が合っているか分からない。知見が豊富な環境で運用型広告を極めたい。
  • 営業担当と運用担当が分かれている広告代理店で、運用担当として働いている人。
    • クライアントと直接話すことができないので、営業担当が決めた内容をただ実行するだけで本質的な課題解決をしている感覚がない。戦略から入って成果を伸ばせる仕事がしたい。
  • アフィリエイトを主とした広告を運用している人。
    • 媒体の仕様やクリエイティブのトレンドには人一倍敏感だが、成果報酬のためにグレーな表現を求められることがあり、倫理観的に長く続けられないと思っている。
  • 運用も営業も一気通貫で行える広告代理店に勤めている人。
    • 売上ノルマを達成できるかどうかで給料が決まるため、売上を優先して本質的ではない提案をすることがよしとされる環境。もっとクライアントの成果に貪欲な働き方をしたい。

現在どういう企業でどういう業務に携わっているのか。どういう悩みや希望をもって転職活動をしているのか。仕事や生活に期待することは?どういう言葉を使い、どういうフレーズに反応するのだろう?などなど、ターゲット層をどこまで深く理解できるかで、その後のアプローチの質がまったく変わってきます。

一番よいのは社内のメンバーやターゲット層に合致する人にヒアリングすることです。むずかしい場合は、SNSや企業の口コミサイトなどを見るのもよいでしょう。

「何を」

ターゲット層が明確になったら、次に自社の打ち出すポイントを洗い出します。求職者に響くポイントはさまざまなので、応募の質と量を担保できる、豊富な切り口を用意することが大切です。

切り口としては以下の4つが考えられ、下にいくにつれて重要度が高くなると考えています。

  • 条件(給与や福利厚生、リモートワーク可など)
  • 業務内容
  • 身に着くスキル
  • 世界観・文化

もちろん生きていくうえで条件は非常に重要なポイントです。しかし、ブランドの世界観に共感していれば長く商品やサービスを愛用する(Appleの世界観が好きな人はずっとApple製品を買い続ける)ように、採用であっても会社の世界観や文化に共感してくれる人のほうが、自社にマッチして長く活躍してくれる可能性が高いからです。

当然ですが、嘘や誇張はNGです。また、嘘や誇張がなかったとしても「嘘っぽく聞こえないか?」「誤解されないか?」という視点を持つことも必要です。

たとえば、アナグラムでは「売上ノルマなし」を標榜していますが、それだけだと「ノルマがないからゆるゆる働けるのかな?」という印象を与えるかもしれません。

そこで、「売上ノルマなし」を伝えるときは「売上ノルマという本質的には無関係な指標に左右されず、お客さまのためになる施策に時間と思考を徹底的に使うため」という説明をします。また、売上ノルマがない分、自分自身でマイルストーンを設定し自走しなくてはならないため、楽とは言えないという一見ネガティブな情報も正直に伝えています。

企業の誠実さは、必ず求職者に伝わります。

物事の良し悪しは状況によって大きく異なるということを念頭に置き、自分たちが良いと思っている切り口に対しても、「こういうことを求める人には合わないかもしれない」ということを考え、正直に伝えるように意識しましょう。

「どのように」

いよいよ採用コピーを…と言いたいところですが、具体的なコピーを考える前にリサーチしたいのが、媒体の特性です。

求人サイトを使っている企業、SNSのみで求人している企業など、状況はさまざまかと思いますが、媒体によって集まっている人・表示のされ方などは大きく異なります。まずは、求職者の視点に立って求人サイトやSNSを眺めてみましょう。

また、どういうことを重視する人が集まっているサイトかを判断するには、出している広告や求職者向けのサイトを見るとよいです。

たとえば「自分の市場価値をはかりませんか?」というような訴求をしている求人サイトであれば、すぐに転職をしたいと考えている人は少ないかもしれないですし、「年収アップ」を謳っているサイトであれば、年収を重視している求職者が多いかもしれません。媒体の特性を知れば、自社に適した求人サイトに注力することもできますね。

Metaの広告ライブラリは、Meta広告を出稿している求人サイトであれば、どういう訴求で求職者にアプローチしているかを知ることができるツールです。一度見てみると発見があると思います。

では、媒体の特性を頭に入れたところで、満を持して採用コピーを作っていきましょう。

意識すべきは以下の通りです。

  • ターゲット層や媒体のコンテクストに合っているか
  • 自社の特徴や独自性が伝わるか
  • なるべく短い言葉で多くの情報を与えられるか
  • パッと目に入り、すんなり頭に入るか

ターゲット層や媒体のコンテクストに合っているか

深堀りしたターゲット層や、求人媒体の特性を考慮しながら採用コピーを作ります。

このとき注意したいのは、複数のターゲット層に対する情報を盛り込もうとしないことです。採用できる人数には限りがある以上、多くの人にぼんやりと伝わるコピーよりも、特定の人にピンポイントで響くコピーのほうが価値があります。

複数の求人を同時に出すことができる求人サイトも多いので、1つの採用コピーに対しては1つのターゲット層を思い浮かべるようにしましょう。

自社の特徴や独自性が伝わるか

特徴や独自性が、ありきたりな表現になってしまうともったいないです。

うまく表現に落とし込めない場合は以下の方法を試してみてください。

  • ターゲット層がもつ一般的な価値観に対するアンチテーゼとして示せないか
  • 簡単な単語の組み合わせでニュアンスを表現できないか

たとえば、先に挙げた例のように、売上ノルマが当たり前の環境にいる人にとっては「売上ノルマなし」というキーワードが響くかもしれないですし、会社のために働くものだと考えている人にとっては「自分のために働ける」と言われたらハッとするかもしれません。

このように、一般的な価値観に対するアンチテーゼを意識すれば、新鮮な驚きをもって独自性を伝えやすくなります。

また、アナグラムではよく「粋な商売人」という表現を使いますが、2つの簡単な言葉を組み合わせることで、「マーケター」と言われるよりも微妙なニュアンスが伝わらないでしょうか?

「粋な」という言葉でエンドユーザーや社会のためになるようなビジネスをしているということを、「商売人」という言葉で手段にとらわれずにビジネスを伸ばすための取り組みをすることを示しています。

よく使われる単語に違和感がある場合は、別の単語の組み合わせで表現できないかを考えてみるとよいでしょう。

なるべく短い言葉で多くの情報を与えられるか

採用コピーには字数制限があることが多いため、短く多くの情報を伝えられることが重要です。

「クライアントに寄り添いながら成果をあげる」というよりも「ビジネスを伸ばす伴走者」と言われたほうが、端的で明確に伝わる印象はないでしょうか?

伝えたいことを明確に示す端的な単語を探すには、ChatGPTを活用するのもおすすめです。

「~~という文章を〇文字以内で10パターン表現してください」というようなプロンプトを書けば、これだ!という単語が出てくるかもしれません。

パッと目に入り、すんなり頭に入るか

多くの場合、求職者は採用コピーを1つ1つじっくり見ているわけではないでしょう。テレビを見ながらぼんやりと求人サイトをスワイプしているかもしれません。

そんな中でも求人を印象づけるためには、パッと目に入り、かつ、すんなり頭に入ることが重要です。

完成したコピーは一度読み返してみましょう。少しでも引っかかる部分があれば、以下のポイントを意識しながら修正できないか考えましょう。

  • 漢字とひらがな・カタカナをバランスよく使い、目に入りやすくする
  • 頭で読んだときのリズム感を意識する(句点や韻など)

最後に

ここまで採用コピーの考え方をご紹介してきましたが、採用はコピーだけで成り立つわけではありません。

採用コピーで興味をもったら求人票を詳しく見るでしょうし、会社サイトを検索するかもしれません。会社のSNSを探す人もいるでしょう。

また、面接で話す内容と乖離があれば選考辞退につながるかもしれないですし、採用で話していた内容と実際の職場環境に乖離があれば早期離職となってしまうかもしれません。

その後のフローとの整合性をとったり、採用フロー全体で会社の魅力を伝えられるように意識することも非常に重要です。

求人票に盛り込めない内容は、自社サイトや会社紹介資料に記載する。面接では、応募者の話を聞くだけではなく企業側への質問も積極的に受け付ける。こういった1つ1つの工夫を地道に積み重ねていくことこそが、採用への近道だと感じます。

企業側と求職者側、双方が幸せに「つながる」採用活動を目指したいですね。

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