
運用型広告では適切な効果測定と、それに基づく配信データを元にした分析、そして改善の実行という一連のフローが欠かせません。なにより重要なのはコンバージョンをはじめとするユーザーの行動を正確に収集して、管理画面で分析したり機械学習のためのデータをプラットフォームに送信したりするための下準備が必要です。しかしながらそれらの手順や仕様は広告プラットフォームによりバラバラであり、経験のない人にとっては非常にややこしいのが現状です。
Facebook広告でもコンバージョン計測方法として「カスタムコンバージョン」と「標準イベント」の2種類が提供されており、さらに標準イベントの他にも「カスタムイベント」という、似たような名前のオプションも存在しています。初めて見る人にとってはこれらの何がどう違うのか、どれを利用すればよいのか判断に困ってしまうこともあるでしょう。
実は「カスタムコンバージョン」または「標準イベント」のどちらを利用してもコンバージョン数の計測は問題なく行えます。しかしそれぞれの特性を理解して活用することで、コンバージョン数以外にも売上金額などのさまざまな値を取得して運用に活用したりタグ設置の工数を最小限に抑えることができます。詳しくは後ほど解説しますがざっくりいうと、より設定が簡単なのが「カスタムコンバージョン」でより高機能なのが「標準イベント」です。
この記事ではFacebook広告でのコンバージョン計測方法の違いを理解し、施策やリソースごとに最適なものが選択できるようになることと、Facebook広告のコンバージョン計測の仕様を理解して正しい効果測定ができるようになることの2つを目的としています。それでは始めます。
Contents
Facebookピクセルについて
Facebookピクセルはいわゆるトラッキングコードやタグと呼ばれる類のもので、ウェブサイトやタグマネージャのソースコードに追加して設置します。Facebookピクセルをウェブサイトに設置することで、広告がクリックされた後のページ閲覧や購入や登録といったイベント情報を取得できるようになります。もしFacebook広告をこれまでに実施したことがないのであれば、まずはFacebookピクセルの取得・設置から始めていきましょう。
Facebookピクセル取得~設置まで
広告マネージャから下記の手順でFacebookピクセルを確認することができます。
① 広告マネージャ画面左上のメニューアイコンをクリックしてください
② 「すべてのツール」をクリックしてください
③ ピクセルをクリックしてください
閲覧中の広告アカウントで、まだFacebookピクセルを作成していなければ上図の画面になります。
④ 「ピクセルを作成」をクリックしてください
⑤ 任意のピクセル名をつけて「作成する」をクリックしてください
⑥ 環境にあわせて適したものを選択しますが、今回は「自分でコードをインストール」をクリックしてください
⑦ 少しスクロールすると、Facebookピクセルが確認できます。塗りつぶしてある部分には広告アカウントのIDが入ります。
このFacebookピクセルをコピーし、計測したいページ(全ページに設置することを推奨します)の<head>~</head>タグの間(できるだけ</head>の直前)に貼り付ければ設置完了です。今解説している部分はFacebookピクセルの「ベースコード」と呼ばれる部分です。ベースコードはこの後も何度か出てくる名称のため、覚えておいてください。これで最低限の準備は整いましたので次に進んでいきましょう。
イベントについて
イベントとはウェブサイトで発生する各種アクションを指します。特定のページを見た、特定のリンクをクリックした、といったアクションに合わせて所定のコードを読み込むことでアクションをイベントとして取得することが可能です。イベントはコンバージョンとして計測や最適化に使用したり、カスタムオーディエンスとして登録してターゲティングに活用したりできます。
Facebook広告には「標準イベント」と「カスタムイベント」の2種類があります。まずは標準イベントについて見てみましょう。
標準イベントとは
標準イベントはFacebook広告がサポートしているユーザーアクションのことで「購入」や「登録」をはじめ以下の9種類が用意されています。
・ViewContent(コンテンツ閲覧)
・Search(検索)
・AddToCart(カートに追加)
・AddToWishlist(ウィッシュリストに追加)
・InitiateCheckout(精算開始)
・AddPaymentInfo(支払い情報の追加)
・Purchase(購入)
・Lead(リード)
・CompleteRegistration(登録完了)
それぞれ、ウェブサイトで発生する様々なイベントに対して自由に割り当てることができます。たとえばビジネスに関心を示したアクションを取得する「Lead」であれば、何をもってリードとするかという判断はメルマガ登録だったり価格ページの閲覧だったりとビジネスや広告目的により様々でしょう。コンバージョン最適化やターゲティングのために価値があると判断したら、適したイベントを選択して計測していきましょう。
標準イベントを利用するメリット
各イベントでは発生数以外の追加情報(以下パラメータ)を取得することが可能です。たとえば「Purchase」であれば購入された商品の種類や金額、通貨の情報を取得してFacebookに送信することができます。パラメータの取得は任意ですが、ROASベースでの運用管理・最適化やダイナミック広告のような商品の閲覧・購入情報に基づいた配信は標準イベントと特定のパラメータが必須であり、これが標準イベントを利用する最大のメリットといえるでしょう。
参考:Facebookダイナミック広告の仕組みと作成方法、成果を伸ばすためのターゲティング設定まで
参考: Facebook広告でROASベースの運用を行う際に活用したい2つの機能
使用できるパラメータはイベントごとに決まっており、たとえば「Purchase」であれば購入した商品数を示す「num_items」が、「Search」であれば検索ワードを示す「search_string」といったパラメータが提供されています。
また、Facebook広告の機能の中にはこの標準イベントを使用することで利用できるものがあります。たとえば広告パフォーマンスの状態に応じて自動的に広告設定を変更できる「自動ルール」で条件指定に利用できるのは標準イベントのみであり、後述のカスタムコンバージョンは対応していません。こういった細い部分でも恩恵を受け取ることができるのもメリットの一つといえるでしょう。
参考:Facebook広告「自動ルール」がアップデート!ルール条件やアクションがより柔軟に
標準イベントでの計測方法
イベントを計測するには、イベントが発生したことをFacebookに知らせるためのコードをベースコードに追記する必要があります。下図の①はウェブサイトのFacebookとは無関係のコード(今は無視してOKです)、②はベースコード、③はイベントのコードを表しています。下図の③は「AddToCart」の標準イベントのコードを②のベースコード内にパラメータ無しで追記しているものです。
画像引用元:標準イベントのベストプラクティス
イベントはイベントのコードが読み込まれることで計測されます。そのため、イベントと関係のないタイミングでコードを読み込ませてしまうと正しい効果測定や機械学習の妨げになってしまいます。手順を理解している人にとっては難しい作業ではありませんが、JavaScriptやタグマネージャの知識が関わってくるため環境やリソースによっては導入に高いハードルを感じるかもしれません。この記事ではこれらの技術的な部分は詳しく紹介しませんが、タグマネージャに関してはアナグラムのブログでも初心者向けの記事がありますのでご参照ください。
標準イベントを導入する際の注意事項
標準イベントを導入する際に注意するべきことがあります。それは複数のFacebookピクセルを同じサイトに設置している場合、意図せずにイベントが重複して計測される可能性があることです。
よくあるケースとして、ピクセルA(標準イベント「購入」)、ピクセルB(標準イベント「購入」)、ピクセルC(標準イベント「登録完了」)をサンクスページに設定したときを想定します。
ピクセルAを使用している広告アカウントでは、商品が購入されてサンクスページが表示されたときに、購入イベントの計測が1件上がるはずなのですが、ピクセルBの「購入」とピクセルCの「登録完了」も読み込んでしまい、購入2件、登録完了1件を計測してしまうことがあるのです。計測データをもとに広告配信の最適化が行われるので、コンバージョンの過剰計測が起こってしまい、最適化を妨げる要因となってしまうのです。
※ピクセルの設置順などによっても計測されるイベント数が変わるので、計測されるイベント数はアカウントによって異なります。
こういった標準イベントの使用による思わぬ事故を防ぐためにも、なるべく1ページにつきピクセルは一つとするのが望ましいのです。複数のアカウントで運用しないといけない時や、代理店に外注などの都合で複数のピクセルが埋めなければいけない時には、本記事で紹介したピクセルデータの共有を活用するか、カスタムコンバージョンのみの使用としてください。
引用元:複数のFacebook広告アカウントでオーディエンス・ピクセル情報を共有する方法と注意点
複数の広告代理店に依頼している、またはインハウスでの広告運用と広告代理店での広告運用が入り混じっているというような場合は要注意です。既に標準イベントによる計測が行われていないかを確認し、イベントが重複しているか新たにピクセルを設置することで重複してしまう場合は不要なピクセルを削除してください。もし既に広告を配信している状態でピクセルを削除する場合は広告レポートに影響が出ることを事前に必要な人に周知するとよいでしょう。
カスタムイベント
標準イベントはあらかじめ用意されている9種類しかありませんので、それらではカバーできない場合にカスタムイベントを活用することになります。導入方法は標準イベントとほとんど同じですが、たとえば外部リンクのクリックなど、標準イベントにはないイベントの種別やそのイベントのパラメータを自由に設定することができます。Google アナリティクスのイベントトラッキングをご存知であればイメージしやすいでしょう。
カスタムイベントの計測方法
カスタムイベントも基本的な流れは標準イベントと変わりませんが「track」ではなく「trackCustom」を呼び出します。下記の形式に沿ったコードをサイトに設定することでイベントの発生やパラメータを取得可能です。
fbq('trackCustom', 'eventName', {key: ‘value’});
「eventName」「key」「value」の部分を取得したいイベントに合わせてカスタムします。
たとえばウェブサイトに設置してあるFacebook、Twitterといったソーシャルアカウントへの外部リンクのクリックをイベントとして記録するとしましょう。
さきほどの形式にあてはめて、eventNameの部分を外部リンクのクリックを示すためにexternalLinkにしてみます。さらにkeyはクリックされた外部リンクがソーシャルアカウントであることを示すためにsocialにし、そのソーシャルアカウントがFacebookかTwitterかを分類するための文字列をvalueとします。それぞれの文字列をどのようにするかは任意ですが、誰が見ても何を指しているのかイメージし易いものにすると分析の際にスムーズでしょう。
上記の例では、最終的なカスタムイベントのコードは次のようになります。
fbq('trackCustom', 'externalLink', {social: ’facebook’});
該当するリンクがクリックされたらこのイベントが計測されるよう、HMTLタグやタグマネージャで設定してください。なお、今回は外部リンクのクリックを例に説明しましたがカスタムイベントの発生条件は必ずしもクリックである必要はありません。
カスタムイベントを広告レポートで確認したり、そのイベントに広告配信を最適化したりする場合は標準イベントと違いカスタムコンバージョンとして登録する必要があります。以下のカスタムコンバージョンの説明「イベントからカスタムコンバージョンを作成する」で手順を解説します。
カスタムコンバージョン
カスタムコンバージョンを使用すると、指定した条件が達成されたらコンバージョンを計測することができます。条件として指定できる要素には「URL」と「イベント」があり、これらを組み合わせて複雑な条件を作成することもできます。
参考:カスタムコンバージョンとは何ですか。どのように使うのですか。
参考:標準イベントとカスタムコンバージョンの違いは何ですか。
URLを条件にしたカスタムコンバージョン
特定のURLに到達したらコンバージョンとして計測します。たとえばECサイトの購入完了ページのURLが「/shop/thanks.html」なのであれば、このURLに到達したら達成という条件を指定するだけでコンバージョン作成が完了します。
この例であれば「/shop/thanks.html」のページにPurchaseのイベントコードを追加することでも購入コンバージョンの計測が可能ですが、URLを条件としたカスタムコンバージョンであればサイト側の改修が不要です。Facebookピクセルのベースコードさえ設置されていればシステム担当者の工数を使うことなく広告運用者が管理画面の操作でコンバージョン作成を完結させることができますので、何らかの事情で標準イベントを利用できない時にも役立つでしょう。
作成手順
カスタムコンバージョンは以下の手順で作成できます。ステップが多く複雑に見えるかもしれませんが、実際にやっていることはほぼURLの入力のみですので、広告マネージャの操作に慣れてしまえば1分ほどで完了してしまいます。
① 広告マネージャ画面左上のメニューアイコンをクリックしてください
② 「すべてのツール」をクリックしてください
③ カスタムコンバージョンをクリックしてください
④ 「カスタムコンバージョンを作成」をクリックしてください
⑤ Facebookピクセルを選択してください(異なるピクセルを選択すると計測できません)
⑥ 「すべてのURLトラフィック」になっていることを確認してください
⑦ コンバージョンとするURLのマッチタイプを選択してください
⑧ コンバージョンとするURLの内容を入力してください
⑨ 複数の条件を組み合わせる場合は「別のルールを追加」をクリックしてください
⑩ このカスタムコンバージョンの管理用の名称を入力してください
⑪ 選択肢から最も適切なものを選択してください
⑫ このカスタムコンバージョンの価値を入力してください(入力は任意です)
⑬ 「Create」をクリックするとカスタムコンバージョンが作成されます
⑫のカスタムコンバージョンの値については、固定値のみ設定可能です。コンバージョンごとの価値が一定でない場合や、価値がはっきりとしていない場合は入力する必要はありません。なお、通貨は広告アカウントで使用しているものが自動的に適用されます。
イベントからカスタムコンバージョンを作成する
標準イベントやカスタムイベントが発生したらコンバージョンとして計測します。カスタムイベントはカスタムコンバージョンとして登録しない限り広告レポートへの追加や配信最適化対象への指定ができないので、基本的にはカスタムコンバージョンの登録までが一連の流れになるでしょう。
作成手順
① 「すべてのURLトラフィック」をクリックしてください
② カスタムコンバージョンとして作成したいイベントをクリックしてください
③ 選択したイベントに追加するコンバージョン条件を「URL」または「Event Parameters」から選択してください
④ ルールが表示されていない場合や、2つ以上のルールを組み合わせたい場合は「別のルールを追加」をクリックしてください
⑤ イベント以外のルールが不要であれば✕をクリックして削除してください
⑥ ルールでEvent Parametersを選択すると、パラメータの選択肢が表示されるので条件に使用したいものを選択してください
⑦ 値のマッチタイプを選択してください
⑧ パラメータの値を入力してください
⑨ ルールでURLを選択している場合はコンバージョンとするURLのマッチタイプと内容を入力してください
標準・カスタム問わずイベントを元にする場合は、対象になっているイベントが事前に計測されていないとカスタムコンバージョン作成の際に選択肢として表示されませんので注意してください。パラメータも同様に実際に取得しているものだけを選択することができます。カスタムコンバージョン作成に必要なイベント発生は広告経由である必要はありませんのでイベントを利用する場合は出来るだけ早くFacebookピクセルの設置やイベントコードの記述といったサイト側の改修を済ませてしまうとよいでしょう。
レポート
ここまで解説してきた標準イベント、カスタムコンバージョンが広告経由でどれほど発生しているか確認するために、広告マネージャのレポートを編集していきましょう。
レポートのカスタマイズ手順
広告マネージャにアクセスし、下記の手順でレポートをカスタマイズしてください。
① 「列:」部分をクリックしてください
② 「列をカスタマイズ」をクリックしてください
③ 「コンバージョン > ウェブサイト」をクリックしてください(または④のエリアをスクロール)
④ レポートで確認したいコンバージョンイベントにチェックを入れてください
⑤ 「プリセットとして保存」にチェック。名称は任意のものを設定してください。※必須ではありませんが、これらのレポート項目を継続的に確認するのであれば設定を保存しておくことをお勧めします。
⑥ 「実行」をクリックするとレポートに反映されます
Facebook広告におけるコンバージョン計測の仕様
レポートに反映されるコンバージョン数はFacebook広告が、どれほど貢献していると見なすかによって数字が変化することがあります。Facebook広告ではデフォルトで「広告を見てから1日間、または広告をクリックしてから28日間」で発生したコンバージョンをカウントしています。これらの期間についてはレポートカスタマイズの際に「アトリビューションウィンドウ」から編集することが可能です。
① 列のカスタマイズ画面で「比較ウィンドウ」をクリックしてください
② 確認したい期間にチェックを入れてください
③ 実行をクリックするとレポートに反映されます
他の解析ツールとは計測仕様が異なることを理解する
Google アナリティクスなどの計測ツールで確認できるコンバージョン数や実売数と広告管理画面で確認できるコンバージョン数の乖離はどうしても発生するものですがFacebookはその傾向が強く、管理画面で確認できるコンバージョン数がGoogle アナリティクスで確認するより非常に多いということも少なくありません。
Facebook広告のクリックスルーコンバージョンにはリンクのクリック以外にも「いいね!」や「Facebookページへの遷移」といったウェブサイトへの訪問を伴わないクリックも対象になります。広告に「いいね!」を押してもらったりFacebookページに移動して情報を見てくれたりしたとしても、サイトに訪問していなければGoogle アナリティクスのタグは読み込まれません。そのため、Facebookから直接サイトに訪問せずに発生したコンバージョンは当然Google アナリティクスで計測することはできません。
また広告をクリックしてからコンバージョンまでの期間によっては、モバイルアプリでの広告クリック後、日を空けてからウェブブラウザで検索してコンバージョンというケースもあるでしょう。このような場合もモバイルアプリとウェブブラウザではCookieの種類が異なるため、やはりCookieベースでの計測ツールでは間接効果も含めて捉えることのできないコンバージョンです。
Facebook広告ではFacebookのログイン情報を利用することで、複数のデバイスを横断した人ベースでの計測が可能です。Google アナリティクスなどCookieベースだけでは同一人物として捉えられないコンバージョンも、Facebook広告の管理画面であれば同一人物によるコンバージョンとして計測することができます。さらにサイトへの訪問を伴わないコンバージョンも計測する仕様になっていますから、Google アナリティクスとFacebook広告の管理画面を比較したときにFacebook広告管理画面のコンバージョン数が多くなるのはある意味当然なのです。
まとめ
管理画面だけで設定を完結させることができる「カスタムコンバージョン」と、タグ編集が必須である代わりに売上などのデータを取得できる「標準イベント」の違いやメリットについて紹介しました。ROASベースでの運用・最適化やダイナミック広告を実施する場合は標準イベントの導入方法はもちろん、使用しているショッピングカートで動的な値の取得やタグの編集が可能かも含めて確認するとよいでしょう。