デザイン制作でよくあるコミュニケーションのすれ違いと、プロジェクトを成功に導く秘訣

デザイン制作でよくあるコミュニケーションのすれ違いと、プロジェクトを成功に導く秘訣

Webサイトや広告、プロダクト開発などデザイナーと連携してプロジェクトを進めることは、多々あります。

目的に沿ったデザインに仕上げるためには、依頼主とデザイナーがお互いの意見を尊重し、歩み寄ったコミュニケーションを取ることが大切ですよね。

しかし実際には、コミュニケーションのすれ違いが原因で、何度も修正依頼が発生してしまったり、目的を見失ったデザインになってしまうケースも少なくありません。

そこで今回は、デザイン制作でよくあるコミュニケーションのすれ違いについて、依頼主とデザイナーそれぞれの視点から原因と解決策を考えていきます。


すれ違いの原因1:抽象的な依頼

おそらく、コミュニケーションがすれ違う原因として最も多いのが「抽象的な依頼」でしょう。

依頼主からの「いい感じに仕上げてほしい」のような指示を受けて、デザイナーは自分なりの解釈で「いい感じのデザイン」を制作します。

すり合わせが不十分なまま進めても「なんか違うんだよね」「うーん、もう3案見てみたいです」のようにフィードバックも曖昧になり、何度か繰り返しているうちに、そもそもの目的が見失われることさえあります。

このすれ違いを防ぐために、依頼主とデザイナーはそれぞれどのように立ち回るのが良いでしょうか。

<依頼主側の対策>制作の目的や背景、実現したいことを整理して伝えよう

人によっては、デザイナーに頼めば次々とデザイン案が出てくるようなイメージを持っているかもしれません。しかし、デザイン制作のスタート地点は、いきなり表現をはじめることではなく、制作の背景や目的を理解することです。

依頼主として準備すべき情報を提供せずに「それを汲み取るのがプロでしょ」「腕の見せ所ですよ」などと全てデザイナーの責任にしてしまっては、都合の良い責任の押し付けになってしまいます。

まずはデザイン制作を依頼した背景や、デザインで成し遂げたいことを伝えましょう。言語化が難しければ、参考例をなるべく複数揃えてどんな部分を参考にしたいのか伝えると、デザイナー側もイメージしやすくなります。

たとえば、特定の要素を強調したいのであれば「文字を大きく、赤色にしてください」と伝えるよりも「ここが一番目立つようにしたい」と伝えることで、デザイナーは全体のバランスを調整できます。

何を伝えればわからない……という場合は、生成AIに頼って言語化を手伝ってもらうのも良いでしょう。

ChatGPTに要件の整理を手伝ってもらうことも

それでも、できあがったデザインに対して「何か違う……」と感じることはあると思います。その違和感の正体は、「これでは制作の目的を果たせないかも」という思いによるものか、個人的な好みによるものなのか判別が必要です。

目的を果たせないと感じる場合は、デザイナー側の意図を聞いた上で自分の意見を伝えると、質の高い議論ができるでしょう。好みによるものであれば、そのままデザイナーに伝えるのではなく、ターゲットがどんなものを求めているか改めてリサーチした上で、それでも修正した方が良いか検討する必要があります。

依頼する時にどのような情報を伝えれば良いかは、下記の記事もご参照ください。

<デザイナー側の対策>制作の目的を理解して能動的に提案しよう

「良いデザイン」の条件は見栄えだけではありません。制作する目的や、制作物に関する価値基準があってこそ、良い・良くないを判断することができるのです。良いデザインとは、言い換えれば目的を達成できるデザインのことです。

どのような要素があれば良いデザインになるのか、依頼主の考えを引き出しながら目的や価値基準をすり合わせることが大切です。

デザイナーが「依頼が抽象的で分からない」「依頼主はデザインのことを何も分かっていない」と受け身や批判的な姿勢でいては、プロジェクトが進まないのは当たり前です。

デザイナー自身も施策の意図を理解し、依頼主がうまく言い表せないことを汲み取ったり、デザイナーならではの発想を活かし、意見を交換しながらイメージをすり合わせることで、より良いものが作れるのです。

当然ながら、打ち合わせの時に理解できなかったことを聞くのが気まずいからと放置してしまうと、すれ違いの原因になります。デザインに何が求められているか、迷いがない状態になってから手を動かすようにしましょう。

すれ違いの原因2:互いの立場を尊重しない態度

共通のゴールに向かうプロジェクトメンバー同士であっても、見えている景色や事情など、異なる部分はどうしてもあります。そこに関心を持つことがコミュニケーションの助けになるはずです。

お互いの立場を尊重して意見を交わすには、依頼主とデザイナーがどのような点に気をつければ良いでしょうか。

<依頼主側の対策>何がクオリティの低下に繋がるのかを知ろう

デザインは誰のことを考えて作られるべきでしょうか。もちろん依頼主ではなく、そのデザインを受け取るユーザーです。

しかし、デザイナーの立場を尊重しない態度が続くと、デザイナー側の意識は「ユーザーにとって良いものを作り、目標達成を助けること」ではなく「依頼主を納得させて、少しでも早くプロジェクトを終わらせること」に向いてしまいます

たとえば以下のようなコミュニケーションは、デザイナーの意欲を奪い、結果的にクオリティの低下を招きます。

  • 依頼に対して必要な時間や費用を確保しない
  • 勝手に工数を見積って「このくらいならすぐ出来るよね?」のような発言をする
  • デザイナーの意見を聞き入れず、表現を具体的に指定しすぎる
  • 依頼主都合の「変更」に対して「修正」と表現する

デザイナーのスキルを最大限活かすには、専門家としての意見を尊重した上でコミュニケーションを取ることが大切です。

<デザイナー側の対策>依頼主が失敗を恐れる気持ちを理解しよう

デザイナーからすると受け入れがたいフィードバックや、当初の依頼には含まれていなかった追加要望など、依頼主からの思わぬ連絡に戸惑ってしまうこともあると思います。

しかし、デザインがある程度カタチになってから初めて気づけることがあるのも事実です。

また、依頼主はデザイン制作の依頼に、もしかしたら大勝負になる予算を捻出していたり、一大プロジェクトの成否を懸けるリスクを背負っているかもしれません。

デザイナーは、依頼主が失敗を恐れる気持ちや、万全の状態で世に出したい背景を理解し、なぜそのデザインにしたのか説明する責任があることを知りましょう。

もちろん、プロジェクトの成功を見据えた上での専門家としての意見は尊重されるべきですが、だからと言って依頼主の意見を「デザインの知識がないから」と退けるのが正解とは限らないのです。

すれ違いの原因3:ユーザー不在の評価基準

たとえば、デザイナーが「これがトレンドだ」と考えて提案した余白を多く取り入れたデザインに対し、依頼主は手抜きで寂しい印象を持ち、「もっと情報を盛り込みたい」とリクエストしたとします。これはどちらも、ユーザーの視点に欠けた評価です。

「抽象的な依頼」のセクションでも触れたように、良いデザインとは目的を達成できるデザインなのですから、ユーザーの視点が欠けていてはプロジェクトの成功は望めません。

<依頼主側の対策>大目的を共有して細部はデザイナーの専門性を尊重しよう

例にあげたような余白のあるデザインに対して、「情報を詰め込んだ方がたくさんのことが伝えられて得だ」と感じるかもしれません。

ただ、もしかしたらユーザーから見ると「情報がゴチャゴチャしていて見にくい」と感じてスルーしてしまう可能性もあります。

余白はただの一例ですが、デザインの評価はあくまでユーザーを想定して行うことが大切です。個人の好みは意識的に排除し、目的達成にはユーザーとどのようなコミュニケーションを取ることが必要なのか、という観点でデザインを評価しましょう。

<デザイナー側の対策>フィードバックを客観的に捉えよう

デザイナーも同じように、ビジュアル的に整っていることやトレンド、自分がやりたい表現かどうかなどを評価基準にしてはいないでしょうか。

デザイナーはある意味、最も遠い場所からデザインを見ていると言えるかもしれません。自ら作り上げたデザインだからこそ、どこにどのような情報が配置されているか知ってしまっているため、パッと見た時のユーザーの印象が想像しづらいものです。

よく「デザインが完成したら一晩寝かせよう」と言いますが、適切な距離を持って評価することがいかに大切か分かりますよね。

制作したデザインを自己表現のように認識してしまうと、フィードバックをまるで自分自身への攻撃や批判かのように受け取ってしまい、負の感情に支配されてしまいます。

たとえば依頼主が「なぜこのデザインにしたのか」と純粋に質問をしているだけなのに、変更依頼やクレームだと捉えてしまっては、必要な議論が困難になります。

少しドライかもしれませんが、デザインはプロジェクトの成功のための手段だと捉えて、自分自身との人格とは切り離して接するべきでしょう

まとめ

デザイン制作でよくあるコミュニケーションのすれ違いについて、依頼主とデザイナー双方の立場から対策を考えてみました。

こういったすれ違いによるトラブルはSNSでも時々見かけますが、「デザイナーは自己満足でデザインを決めている」「依頼主の指示が曖昧でわからない」のように一方の視点からしか語られていないことが多い印象です。

本来、プロジェクトメンバーは立場の違いはあっても、同じゴールを目指す仲間であるはずです。互いに理解し歩み寄ることで、プロジェクトを成功に導くことができると考えます。

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