「unBoxed 2022」でAmazonが見せる10のイノベーション

「unBoxed 2022」でAmazonが見せる10のイノベーション
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今年も「unBoxed」というAmazonの広告ビジネスの大きなカンファレンスが開催されました。昨年はオンライン限定で行われたこのイベントは、今回はニューヨークでリアル開催され、様々な広告のイノベーションについての発表を生で聞くことができる機会でした。

参考:unBoxed|Amazon Ads

特に初日のキーノートでは、Amazon広告の今後の戦略的方向性が新しい機能や技術革新とともに詳細に紹介されましたが、その後のセッションにおいてもAmazon広告の将来の機能に関するさまざまな知見を得ることができました。その中から、特に印象的な新機能・イノベーション10個を紹介しつつ、Amazonの広告事業の今後の方向性を見ていきます。



スポンサー広告

セルフサービスソリューションの分野では、ディスプレイ広告と動画広告に強いフォーカスを感じることが多く見られました。昨年のunBoxedですでにAmazonによって示された広告事業のフルファネルアプローチが今回さらに強調されている印象です。

1. スポンサーディスプレイの動画クリエイティブ

動画広告をスポンサーディスプレイキャンペーンにおいても掲載することが可能になり、こうしてブランドのストーリーテリングの幅をかなり広げることができるようになりました。新しい動画クリエイティブは最長45秒で、例えば、チュートリアル、体験談、開封などのコンテンツを通じて、ブランドと潜在顧客との接点を新たに作るのに適していると思われます。

Example video ad on Amazon
画像引用元:Sponsored Display launches video creative capabilities to better showcase products and brands | Amazon Ads

2. スポンサーブランド動画広告でストアへのリンクが可能に

これまで、スポンサーブランド動画広告には、ストアページにリンクするオプションがありませんでしたが、今回のベータ版機能によって設定可能となりました。また、キーノートで口頭でアナウンスされたのですが、今後スポンサードブランド動画広告は、検索結果の上部にも表示できるようになり、視認性の向上を期待できそうです(これまでは、検索結果の中段のみに表示されていました)。

Drive traffic to your Store with Sponsored Brands video creatives
画像引用元:Drive traffic to your Store with Sponsored Brands video creatives | Amazon Ads

3. リワードスポンサーディスプレイ広告を展開予定

現在はまだクローズドベータテスト段階ですが、2023年からはこのフォーマットにより、表示された商品をクリックして購入した際に、スポンサードディスプレイ広告を通じて、Amazonショッピングのクレジットを直接ユーザーに提示することが可能になる予定です。この機能はすでにAmazon DSPで利用でき、非常に良い結果を残しているため、セルフサービスソリューションへの展開への期待値が高いです。

Rewarded Sponsored Display
画像引用元:unBoxed 2022: Amazon Ads announces new Sponsored Display, physical store advertising, and campaign optimization capabilities

4. Amazonに出品しないブランド向けのスポンサードディスプレイ広告

同じくクローズドベータの段階で、Twitchの広告在庫を対象に提供していますが、Amazonでは、例えば旅行、ホテル、教育、自動車や金融サービスなど、Amazonで直接販売していない業種でもスポンサーディスプレイ広告を利用できるようにする動きを見せています。今回のunBoxedでは、Amazon広告へ未着手なことが多い業種にも利用してもらうための動きがところどころに見受けられますが、こちらのベータ機能もその流れの一環として捉えられます。

5. スポンサープロダクト広告の事前設定されたキャンペーン

この新機能は、1日の予算や入札戦略をはじめ、ターゲティングなどの項目があらかじめ設定されることで、スポンサープロダクトキャンペーン作成を簡素化することが可能となります。また、過去の販売データに基づいてプロモーション対象とする製品を推奨する機能も備わっており、流れとしては近年のGoogle 広告の「スマート」なプロダクトと同様に、最初のキャンペーンをすぐに始められるように敷居をできるだけ低くする動きをAmazonが見せました。

参考:Sponsored Products launches campaigns with preset campaign settings | Amazon Ads

6. スポンサーブランド広告の動画ビルダー(ベータ版)

ベータ版の機能ではありますが、今回かなり興味深かったのは、スポンサーのブランド動画広告用の「動画ビルダー」でした。残念ながら日本へのロールアウトは現時点で未定ですが、このツールを使えば、簡単な動画クリエイティブを素早く作ることができるので、動画制作のリソースが厳しいときには特に役に立ちそうです。前述のプリセットを使ったスポンサープロダクトキャンペーンと同じく基本的にアクセシビリティへのフォーカスは強いプロダクトで、Amazon広告をもっと沢山の人により広く使ってもらうように工夫している姿勢がうかがわれます。

Customizable templates in Video Builder (beta)
画像引用元:Video builder now available for Sponsored Brands video placements | Amazon Ads

Amazon DSP

Amazon DSPの分野では、Cookieや広告IDに関する状況が変わっても、ターゲティングの精度を維持する方針が強かった模様です。

7. Amazonオーディエンスの拡大

ECサービスのamazon.comをはじめ、twitchやfreeveeなどのストリーミングサービスを含めた複数のAmazonのプロパティを介して何百万ものショッピングやストリーミングのシグナルが存在するため、こちらの豊富な情報を基に将来的には、サードパーティのクッキーに頼ることなく、既存のターゲティングの精度を更に高める方針を示しました。このような動きはもちろん偶然ではなく、サードパーティーのクッキーや広告IDの廃止という文脈を明確に見据えた一歩ととらえるべきでしょう。

8. コンテクスト・ターゲティングのアップデート

まだベータ段階であるAmazon DSPのコンテクスチュアルターゲティングのアップデートも、このような背景から見る必要があります。ここでは、スポンサー広告と同様に、40,000以上のカテゴリーからなるAmazonの商品分類を利用して、Amazon内外のサードパーティーの在庫をコンテクストベースにターゲティングすることが可能になるようです。

計測について

昨年導入されたアマゾン・マーケティング・クラウド(AMC)への強いフォーカスに加え、小売・ECの世界以外の指標まで網羅できるようにする方針を示しました。

9. モデル化されたコンバージョン

GoogleやMetaと同様に、Amazonもモデル化されたコンバージョンをレポーティングに統合する方向に進んでいます。この機能はより広く展開され、Amazon DSPのレポートを新しいデータポイントで充実させることで、広告のインタラクションとコンバージョンとの決定的な関連性が従来可視化できていない場合にも、コンバージョンを補完的に測定できるようになります。

参考:Modeled conversions now reported for Amazon DSP campaigns

10. オムニチャネル指標

オムニチャネル指標(Omnichannel Metrics)は、消費財や食料品分野で正式に利用できるようになりました。この機能により、キャンペーンのパフォーマンスを総合的に捉え、インターネット上の販売の成果だけにとどまらない評価軸を加えることが可能になったため、現在、AmazonがいかにOMO(Online merges with Offline) を重視しているか明確な動きでした。現時点では、OCMはまだ米国限定の機能ですが、定着すれば世界展開の可能性も高いでしょう。

参考:Omnichannel Metrics launches for general availability | Amazon Ads

イノベーションと強力な業務協定による「アドレサビリティ」の向上

前回のunBoxedにおいても、Amazonはフルファネル・ソリューションのプロバイダーとしてますます存在をアピールしていましたが、この傾向は今回さらに前面に出てきていました。キーノートやその後のセッションでも特によく出てきた「アドレサビリティ」という言葉がその方針をよく表していると言えます。

背景から考えるとインターネット利用が徐々に細分化され、引き続き新しいユーザーへ正確にリーチすることが大きな課題です。例えば、2019年には1世帯あたりのインターネット対応機器が平均11台だったのに対し、たった2年後にはすでに25台と倍以上に増えていることもその傾向を示していると思います。

参考:Report: Connected Devices Have More Than Doubled Since 2019 - Telecompetitor

しかし、それに加えてサードパーティCookieや広告識別子の廃止に伴う現在の規制により、ターゲティングや計測にも課題があります。これらすべては、もちろんAmazonが無視できないテーマばかりです。前述したディスプレイ、動画、オムニチャネルなどの新機能はユーザーを包括的にアプローチするニュアンスが強かったのですが、もっと俯瞰すると今回のカンファレンスでもう一つの大事なポイントは、戦略的なパートナーシップの強化でした。

ここで一つ代表的なのは、Amazonがマーケティングリサーチ会社のKantarと共同で開発したツール「Audience Activator」だと思います。このツールは、特にAmazonで直接販売をしていないブランドや業種に対して、関連する視聴者についてのインサイトを提供することができます。現在では金融サービス部門を対象としたパイロットテストが開始されました。

参考:Amazon Ads Dives Deeper Into Insights-Driven Advertising

また、スポーツエンターテインメントにおけるパートナーシップも大きかったです。Amazon Prime Videoでアメリカンフットボール番組「Thursday Night Football」の11年間の独占放映権契約がAmazonと米アメフトプロリーグNFLで結ばれており、アメリカの文化におけるこのスポーツの影響力を加味して、今後の広告事業にとっても大きな可能性を秘めているステップだったのは間違いないでしょう。

参考:Amazon Prime Video’s ‘Thursday Night Football’ starts strong with 15.3 million viewers | TechCrunch

広告プロダクトなどの技術的な革新に加えて、このような大きなパワープレイこそが、特にデジタル広告の分野で大きな変化をもたらす可能性があり、GoogleやMetaのような競合他社に対する重要な優位性を意味する可能性もあるのではないかと考えられます。

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