全てのリスティング広告プレイヤーは因数分解思考を手に入れよう

Factorization thought
リスティング広告の運用に携わっている方々はさまざまな悩みや葛藤の中で日々のチューニングや新しいトライを繰り返し行なっていることと思います。そんな方々の思考の負担を少しでも軽くするべく、今回の記事をリライトしました。

※筆者:Keiji Abe
※以下はSEM-LABOの記事をリライトしたものです。
http://sem-labo.net/blog/2012/12/11/0768/

私は比較的多くの書籍を読みます。村山由佳の恋愛小説からクラウゼヴィッツの戦争論まで、ジャンルを問わず面白そうな書籍は手当たり次第買いあさってしまう悪い癖があるようです。

そんなある日、トヨタ生産方式やシックス・シグマなどの製造業関連の書籍を読みあさっている際に気づきます。「リスティング広告は製造業と同じではないか?」いや、全く同じでなくても、メソッドは活用できるのではないか?近代経済学者のヨーゼフ・アロイス・シュンペーターが言ったように、イノベーションは新結合(既存のもの同士のこれまでと異なる組み合わせ)で起こるのだから。

ボトルネックを見極める

問題です。子どもたちが1列に並び遠足に出たとします。このスピードを決めるのは一体誰だと思いますか?
Child_Excursion
答えは先頭の子どもでも、一番後ろの子どもでもありません。“一番遅く歩いている子ども“が正解です。

もう一つ問題を出します。ひとつなぎの鎖があります。この鎖の強度を決めるのは一体何だと思いますか?答えは素材でしょうか?原子でしょうか?
Chain
正解は“一番弱い鎖”です。 一番弱い鎖が切れた時、ひとつなぎの鎖はそれでなくなるのです。

何を言いたいのかと言えば、ボトルネックを素早く見つけ、改善することが出来れば、問題点を限りなく最小化することができるのです。鎖の例で言えば、ひとつなぎの鎖はその形状をより長く保つことが出来るようになるのです。

製造業にとってボトルネック(流れやプロセスを滞らせる隘路)の改善につぐ改善は切っても切り離せないメソッドの1つです。ボトルネックを改善するには、ボトルネックそのものの要因を素早く見極め、仮説立てを行い、改善案を選択し、施策へ踏み込まなければなりません。その後検証を繰り返し、ボトルネックを正常な値に改善していきます。優れたプレイヤーとそうでないプレイヤーとの違いは何か?と問われれば、私は素早くボトルネックを見極める能力の差だと断言できます。これは数年前から新しい技術が生まれてきた現在でも変わることはありません。

リスティング広告で例えれば、アカウント全体の成績の良し悪しに大きな影響を与えるもの、つまりキャンペーンや広告グループやキーワード単位、場合によってはプレースメントなどがボトルネックに成り得ると言えるでしょう。

ボトルネックを改善しよう

改善はすべて因数分解で考えることができます。その状況を作った要因を見極め、改善に着手します。

例えば、特定のキーワードのCPA(獲得単価)が高騰してしまった場合の改善策は、CPAは何で出来ているのかから導き出すことができます。
Factorization1
CPA=CPC(クリック単価)÷CVR(コンバージョン率)

この公式からはCPCとCVRがCPAを構成しているという事になりますから、「CPCを下げる」or「CVRを上げる」ことで論理的にはCPAを引き下げることが可能になります。「CVRを上げる」のはサイト上の構成が大きな比重を割くと考えれば、スピーディーに対応できるのは「CPCを下げる」という選択肢であることがほとんどでしょう。ここでも再度因数分解を利用します。

Factorization2
CPC=入札価格×品質スコア(品質インデックス)
※実際のCPCが算出される公式は「CPC=(下位の広告ランク ÷ 品質スコア)+ 最小通貨単位」となりますが、下位の広告の品質スコアは自身で操作出来るものではないため、この公式では含んでおりません。

この公式からは入札価格と品質スコアがCPCを構成しているという事になりますから、「入札価格を下げる」or「品質スコアを上げる」ことで論理的にはCPCを引き下げることが可能になります。この問題に関しては「品質スコアを上げる」ことで対処する方が良いと判断します。何故なら、「入札価格を下げる」を選択した場合、広告掲載順位に影響を与える可能性が高いため流入数自体を減少させる可能性があるためです。「品質スコアを上げる」にはさまざまな要因が上げられますが(これも因数分解)、影響度の高い「広告文のCTR(クリック率)を上げる」or「広告グループを細分化する(キーワードと広告文を合わせる)」を選択するのが現実的と言えます。

因数分解した構造を理解する

何が増加(減少)したら何が影響を受けるのか?どこを調整すればどこにインパクトを与えることが出来るのか?など、リスティング広告に携わる者は常に因数分解した構造を頭の中に持ちあわせていなければなりません。これはリスティング広告プレイヤーとしての必須スキルだと筆者は思います。

Feynman

答えが出せる見込みがない問題に対して、時間を割かない方が良い。 by Richard Phillips Feynman

これは経路積分や、素粒子の反応を図示化したファインマン・ダイアグラムで有名な物理学者リチャード・P・ファインマンのセリフですが、リスティング広告だけに限らず、全ての事象に対して自分で対処できる範囲にだけ意識を傾けることが出来れば、出来る限り負担や疲弊を減らすことが出来るようになるはずです。

数年間全国を回った経験からさまざまな相談事を受ける機会がありますけれど、どの問題も今回ご紹介した因数分解した構造・思考を持ちあわせていれば即座に解決できる問題が95%以上でした。

まとめ

「ルール」と「仕組み」を知らなければスタートラインにすら立っていない。

私のセミナーやワークなどに参加したことがある方は周知の事実かもしれませんが、毎回伝えるフレーズの一つです。これには今回記載したような内容をお伝えしたかったからに他なりません。

リスティング広告に取り組む際には因数分解した構造を理解すること、そしてアカウント内で一番弱い鎖(一番費用対効果の悪いキャンペーンや広告グループ、キーワードなど)を初めに補強・改善することで、アカウントの最適化をよりスピーディーに行うことが出来るようになるのです。また、事象の分析を行う際は物事の「大から小へ」、この意識を忘れないように取り組みましょう。

そして最後に。
本気でリスティング広告のスキルを高めたいのであれば、リスティング広告やアドテク系の書籍ばかりを読んでいては絶対に伸び悩みます。さまざまなジャンルの偉大な先人達が築き上げた素晴らしい多くのメソッドを今こそリスティング広告業界に取り入れ、進化させていきましょう。

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Keiji Abe

Keiji Abe

アナグラム株式会社 代表取締役。大手アパレルメーカーを経て運用型広告の世界へ。現在はCPAの改善だけにとらわれず、ビジネスの最大化を目指す支援を行う。著書には「新版 リスティング広告 成功の法則」「いちばんやさしいリスティング広告の教本」など多数。主な仕事は戦略策定、及び人事、総務、経理、組織論などを担当。