運用型広告未経験の新人に教えていく際に意識している7つのこと

運用型広告未経験の新人に教えていく際に意識している7つのこと
この記事は最終更新日から約3年が経過しています。

これまで新卒入社の新人や、中途の未経験者などにゼロから運用型広告の教えることがありました。この仕事のスタートがレポート作成だった筆者(個人的には良かったと思っています、よ…?)が考える新人の未経験者に運用型広告を教えていく際に意識していることをまとめていきたいと思います。

※以降、新人=トレーニー 教育者=トレーナー として書いていきます。



1.専門用語(コトバ)を憶えてもらう

まずは「コンバージョン」や「CPA」などこの業界の専門用語を憶えてもらいます。この世界の共通言語で、今後コミュニケーションをとっていく上で必要不可欠なものです。慣れないカタカナ、アルファベット3文字などが多いですが、必要最低限なものはそこまで多くないので基本的なものは暗記してもらうよう頑張ってもらいましょう。

2.良いソースを渡す


運用型広告の世界は日進月歩で進化しています。媒体からは日々アップデートが発表され、広告代理店やベンダー、事業会社、個人の方でもメディアやソーシャルアカウントなどを通して日々さまざまな情報を発信しています。情報の量も膨大ですし、情報の流れるスピードも速く、半年前の常識が非常識になったりすることも少なくありません。

一方で、そうした状況であるからこそ未経験者でも基礎は日々抑えつつ半年間くらい最新の情報をしっかりキャッチアップしていれば、古参の人間に伍していくことも充分可能だと考えています。

そのためまずはトレーニーに信頼できる発信元を厳選してあげて、それらをFacebook・Twitter・RSSなどでフォローするよう促し、信頼できる情報が自然に入ってくる環境を構築することを薦めています。

情報はつねに溢れ、たまにニセモノも混じっていたりと玉石混交です。トレーニーがしっかり自分で情報を選別できるリテラシーが身につくまでは、信頼できる情報元を厳選してあげ、良い情報に多く触れさせることが成長の近道だと考えております。

3.本質・原理原則を抑えておく

前項でも述べた通り、この業界は情報に溢れており、憶えるべきことが多岐に渡ります。そのため初期の頃に本質・原理原則を抑えてもらうことは有用だと考えています。

理由は2つあり、1つは思考の整理に役立つためです。新しいトピックを憶える際に、幹となる知識があることで理解が早まったり、体系立てて記憶していったりすることができると思います。もう1つはブレないためです。情報が溢れるなかで、しっかり良質な情報とそうでない情報を選別したり、変な情報に流されたりすることが防げると考えています。

例えば、広告の運用においては”誰に・何を・いくら”で見せるか、このターゲティング・クリエイティブ・入札の3点をコントロールするのが基本です。多くの広告メニューや機能などもだいたいこの3点に集約できると思います。この考えをもってすれば動的リマーケティングでも、データフィードはクリエイティブ、カスタムタグはターゲティング、といった風に分解でき、複雑に思える機能でも単純化して理解できます。このように新しい概念や機能が出てきても、思考を整理する軸ができていることで、頭のなかにすんなり収まっていくかと思います。またRPM(Revenue per Mille)※1という概念を理解しておけば、掲載順位の決定方法も腹落ちして理解でき、品質スコアの都市伝説なんかに振り回されないでも済むと考えています。

※1、参考:RPM、そのビジネスの中心 | Unyoo.jp

大学を卒業する学生へのアドバイスとして「好きなことを追求すれば、他のことは後からついてくる」とよく言われますが、これを AdWords 流に言い換えれば、「ユーザーにとって最も良いことをしていれば、他のことは(きっと)後からついてくる」となるでしょう。重要なのは品質スコアよりも、あくまでビジネスの中核を成す価値の提供です。また、オークションの際の品質評価と、アカウントに表示される 10 段階の品質スコアとの違いも忘れないようにしましょう。品質スコアは現在のパフォーマンスの目安となりますが、改善の目的はスコアそのものではありません。関連性と説得力を高め、広告で提案した内容を相違なく提供するランディング ページへとユーザーを案内できれば、それを反映して品質スコアも向上するはずです。

引用元:Google アドワーズ 公式ヘルプの「広告の品質」についてのページより

原理原則だけではなく心構えにまつわる話など、そうした普遍的な記事をストックしておき(こういった記事も溢れてしまうので日々整理が必要ですが)、トレーニーが変にすれてしまう前にできるだけ良質な情報を共有できるようにしています。

4.インプットよりもアウトプットを


新人の教育となると、まずは知識をつけさせるための座学の研修や、業務に慣れさせるためのレポーティングや入稿などを指示することが多いかもしれません。そうしたインプットや作業など受け身で取り組むものが多くなりがちな最初の頃だからこそ、トレーナーとしては、意識的にアウトプットを重視するよう取り組むべきだと考えています。

例えば筆者の場合、トレーニーに対し今日学んだトピックを1日の終わりに話してもらう、といったことをやったりします。インプットしたと思った内容でも、いざ人に話してみるとなると、案外うまく説明できないものです。またヘルプで新しい機能の内容を読んだとしても、実際にそれを設定してみるところまでしてみないと体得するのは難しいでしょう。そうしたようにインプットとセットでアウトプットに取り組むことで、理解が浅かった部分が明確になったり、実務で使えるレベルまで体得したりすることができるのです。

5.指示よりも問いを


マネジメントでは、行動をコントロールするのか、結果をコントロールするのか、といった考え方があるかと思います。トレーニーを教育する際、初期の頃は、「○○というのを調べましょう(コンバージョントラッキングについて調べよう)」や「○○をやってみましょう(検索語句レポートを出してみましょう)」といった風に”行動”をコントロールすることが多いかと思います。しかしトレーニーもいずれは数値目標(結果)が与えられ、それを達成するための”行動”は自分で考え、実行していかなくてはなりません。そのためトレーナーとしては”指示”で行動を課すことから、”問い”でトレーニーが自分自身で行動を考えていくフェーズに徐々に移行していく動きをとる必要があります。

例えば「検索語句レポートを出しましょう」といった指示だったものを、「検索語句レポートからどういった除外ワードを設定すべきか?」といった問いに移行していきます。問いのレベルはトレーニーのレベルに合わせ調整する必要がありますが、基本的には徐々に高次にしていき、最終的にはクライアントの課題解決すべてという段階まで持っていく流れになります。

インプット一辺倒のトレーニングは早めに終わらせ、アウトプット重視の実地訓練がトレーニーに良い”問い”を与え成長を加速させるものと考えております。※注、戦場に放り込むという意味ではありません。

6.ググるのを促す


未経験者の教育をしてみるとわかると思うのですが、トレーナーのほうも圧倒的に学びがあります。それはトレーニーからいろんなトピックについて質問されるため、そうした質問に答える度に記憶が定着するからではないかと考えています(不安な時は、裏で確認のために再度調べ直したりしますのでより身につく)。でもそれでいいのでしょうか?トレーナーの目標がトレーニーの成長だとすると、(トレーナーの知識は深まるのですが)質問にただ答えていくのはあまり良くないと考えております。

どういった知識がしっかり定着するかというと、やはり自分で必死に調べたもののほうがより定着すると思います。疑問を持ち、Googleで検索してみるが、なかなかいい情報に見当たらない。どういうキーワードをたたけば望む検索結果が得られるのだろうか? そうやって自分で試行錯誤して調べたという過程が記憶をより強固なものとします。また何かを調べる過程でも、検索エンジンに打ち込むキーワードを考えることや、検索したワードに対してどんな検索結果(SERPs)が返ってくるかの発見など、非常に学びが多いです。疑問を持ち、それを試行錯誤して調べることはトレーニーにとって最高の成長機会なのです。それをトレーナーがドヤ顔で要約した情報を簡単に与えてしまっては非常にモッタイナイと筆者は感じます。

これらを踏まえ、サクッと答えられそうな質問でも心を鬼にして言いましょう「ググれ」と。そうすればトレーニーも次第に自分で情報を調べて理解する能力が備わっていき、今後より高次の課題にぶつかった際には、自分で適切な解決策を見つけていけるようになっていくと思います。

※ただしトレーニーのリテラシーが追いついていない場合は、例えば30分など時間制限を設けて時間内にどうしようもないときは、フォローをわからなかった時はフォローを入れるなどの必要があります。一方でGoogleなどではわからないモノゴト(仮説の妥当性など)は、積極的に質問してもらい、トレーナーもガンガン答えるようにしていきましょう。

7.リアルに引き戻す


運用型広告では大量のデータを扱います。管理画面に並ぶ大量のキーワードや数値。慣れないなかそうしたものに接していると、トレーニーによってはそれらを単なる”記号”や”数値”として処理してしまっている場合もあるかもしれません。キーワード毎に掲載結果の数値が表示されますが、それらは広告の1表示、1クリックを積み上げたものとなります。つまりリアルな世界の人たちの一つ一つの行動を積み上げた結果なのです。記号・数値で処理してしまっていては機械に確実にとって替わられますし、いずれ仕事の本質を見失います。

例えば、レポートを分析する際にAというキーワードは効果○、Bというキーワードは効果×という風に、キーワードを記号・数値で処理するようでは、ヒトとしてのバリューは出し切れていません。Aというキーワードがなぜ効果が良いのか?Aというキーワードを検索するユーザーの意図はどういったものなのか?Aのキーワードがそういった理由で効果が良いとすれば、ほかにどういった展開ができるだろうか?掲載結果を記号・数値で処理してしまうのでなく、リアルな人間の動きを想像していくことが重要となります。抽象的に考えることに関しては、まだヒトのほうに利があると思います。

またダイレクトレスポンス目的のアカウントであれば、コンバージョン・CPAがそのままクライアントの売上・利益に直結します。単純にそれら数値がどう動いたではなく、クライアントの売上に実際にどう影響するか。コンバージョン・CPAをどの水準にもっていけばクライアントの利益目標に達するのか。コンバージョン・CPAといった”管理画面側”の数字で考えるのではなく、より”リアルな”数字として捉えさせるようにします。

運用型広告ではどうしてもデジタルな頭になってしまいがちです。管理画面のデータから生活者の動きをどう掴むか。その数値・掲載結果はクライアントにどういった影響を及ぼしていくか。トレーナーはトレーニーに、バーチャルなものではなくリアルなものを扱っているんだ、という意識を常に忘れさせないようにしていくことが重要ではないかと考えています。

最後に


そろそろ春を迎え、新しく入社される方がいらっしゃるかもしれません。座学でドバーっと教えたり、レポートや入稿作業など下積み的な研修をさせたりする場合も多いかと思います。ただもしOJTで比較的余裕を持って教えられるのであれば、ぜひ本エントリーでまとめた内容を意識していただければ、グレてしまう人を減らせるのではないかなぁと考えております。

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