いまだはびこる、悪しきリスティング広告の都市伝説7選

いまだはびこる、悪しきリスティング広告の都市伝説7選
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日本においてGoogle アドワーズがサービスを開始したのが2002年。それからはや14年、Googleアドワーズを始めとするリスティング広告は、今ではインターネット広告でのプロモーションを考える上で欠かせない存在となりました。一方で、リスティング広告が世の中に浸透しその知名度が上がるに連れて、ある事ない事、さまざまな噂が飛び交うようになったこともまた否めません。そしてこれらの都市伝説は今なお語られ、根深く残り続けている現状があります。

今回は、そんなリスティング広告のいまだはびこる悪しき都市伝説を1つ1つ噛み砕いてご説明していきたいと思います。


その1:アカウントを乗り換えると、過去から積み上げてきた品質スコアが下がるので危険

いきなりですが、重たいテーマから触れていきましょう。リスティング広告運用している広告代理店に、代理店の変更を検討している旨を伝えると「リスティング広告のアカウントを乗り換えると、今まで積み重ねてきた品質スコアが下がってしまうので危険です」といった類の説明を受けたことがある方は少なくないのではないでしょうか?

結論からいうと、アカウントを乗り換えることそのものがパフォーマンスに不利な影響を与えることはありません。公式のヘルプにも記載がされるようになりましたが、キーワードや広告文を新しいアカウントに移動する場合でもキーワード、広告文、ランディングページの履歴は保持されるため、品質スコアには影響しません。なぜなら、ユーザーにとっての利便性は変わらないためです。

リスティング広告の広告代理店を乗り換えるときや、外注からインハウスでの運用体制へ移行するケースなど、アカウント内容はそのまま引き継ぐのではなく、キーワードや広告文などを見直し、再設計を行う場合がほとんどです。そのため一時的なリセットが生じる可能性がありますが、ユーザーの利便性が向上する(あるいは維持される)よう、しっかりとしたアカウント設計を行えていれば、大半は気にしなくてもよいレベルの影響です。

もしもアカウントを変更したことで従来のパフォーマンスを維持出来なくなったのであれば、それ以外の原因が必ずあるはずです。その原因を品質スコアに押し付けるのではなく、きちんと見極めた上で対処を行っていきましょう。

参考:広告品質に関する重要事項 - AdWords ヘルプ
「アカウントの構成を変更しても、広告ランクの品質コンポーネントには影響しません。」を参照

その2:ランディングページにキーワードを詰め込むと、品質スコアが上がる

キーワードの乱用は、Googleの検索結果でのサイトのランキングを操作する明らかな誤りであることが明示されており、しかもユーザーの利便性を低下させ、サイトのランキングに悪影響が及ぶ可能性があることさえ示唆しています。

参考:キーワードの乱用 - Search Console ヘルプ

Google アドワーズにおいても、ランディングページでのキーワードの乱用は、利便性は高めないどころか、ユーザー体験を損なってしまう要素になりかねません。公式のヘルプでは、ランディング ページの利便性が品質スコアに関わる指標として扱われており、ランディングページの利便性を高めるための重要な5つの要素が挙げられています。

  • 関連性が高く、有用で独創的なコンテンツを提供する
  • ビジネスの透明性を確保し、サイトの信頼性を高める
  • モバイル端末やパソコンで簡単に操作できるようにする
  • ランディング ページの読み込みに時間がかからないようにする
  • サイトのモバイル対応を促進する

参考:ランディングページの利便性について - AdWords ヘルプ

コンバージョン率はランディングページでの利便性を測るひとつの優れた方法ですね。大切なのは広告をクリックしてウェブサイトへアクセスしてきたユーザーが、目的の情報にすぐたどり着くことができ、広告主が望んでいる行動をしてもらえることだということを念頭においておきましょう。

その3:広告文に複数のキーワードを詰め込むと、品質スコアが上がる

こちらも、1度は耳にしたことがあるのではないでしょうか。同じく品質スコアに関わる都市伝説です。

キーワードと広告の関連度は非常に重要な指標です。検索されたキーワードと広告テキストのフレーズの合致性を高めるため、キーワードを広告文に含めることはポピュラーな手法ですが、それと広告文に複数のキーワードを詰め込むことではまったく目的が異なります。

誤解を恐れずいえば、あくまでユーザーが探している内容を提示してクリックしてもらうことが最も重要で、キーワードと広告文の関連性を上げることは品質スコアを保つため、またはクリック率を高めるための手段のひとつに過ぎません。(もちろん、広告の費用対効果高めるうえで重要な指標であることには変わりません。)

広告文にキーワードを詰め込むことで、本来訴求すべきポイントが抜けてしまっては本末転倒ですよね。

参考:
広告の関連性 - AdWords ヘルプ

編集基準と表現 - AdWords 広告掲載のポリシー ヘルプ

その4:はじめに入札を上げると品質スコアが上がる

検索連動型広告をはじめて実施する際など、最初は少々費用対効果が悪くとも、入札を上げて上位掲載をしておくとクリック率が上がるから品質スコアが高まる、といった都市伝説です。

過去の広告の掲載結果から判断される推定クリック率(広告がクリックされる可能性)は、品質スコアに大きく影響を与える要素なのは間違いがありません。特に掲載実績のない場合には、上位掲載をして高いクリック率を得た方が有利と考えるのは、一見もっともらしい主張のように聞こえます。

結論としては、広告の掲載順位は品質スコアには影響されません。掲載順位の高い広告は低い広告に比べてクリック率が高くなる傾向があるのは想像に難くありません。しかし推定クリック率は、広告掲載順位の違いによって生じるクリック率の差を除外して算出されています。

同じ掲載順位でも、広告主のサービスの内容や利益構造によりその価値は異なることも合わせて認識しておきましょう。

参考:広告品質に関する重要事項 - AdWords ヘルプ
「広告の掲載順位は品質スコアには影響しません。」参照

以上、ここまで連続して品質スコアに関連する都市伝説を挙げてきました。品質スコアの理解をより深めるには、下記の記事もご参考にしていただければと思います。

参考:
Googleアドワーズ、品質スコアと広告ランクについてよくある6つの質問

元Google社員が語る、Adwordsの品質スコアで知っておきたいこと

Googleアドワーズの品質スコアの基本と3つの誤解

その5:リスティング広告を出稿するとSEO効果があり、検索結果の順位が上がる

こちらも、1度は耳にしたことがある話なのではないでしょうか。マクロ的な意味でSEM(Search engine marketing)といえば、自然検索の順位対策(SEO:Search Engine Optimization)とリスティング広告での有料集客対策を含みますので、一見すると関係があるように思えるかもしれません。

はっきり申し上げてリスティング広告を出稿することが自然検索結果の順位向上につながることは断じてありえません。その根拠として、GoogleのMatt Cutts氏は「Googleは、ユーザーに対して広告を購入してもらうために検索結果のアルゴリズム修正を行っているわけではない」と述べており、広告を出すことが自然検索結果に影響を与えないことをハッキリ言及しています。

今でこそこのような話を口実に営業電話をかけてくるリスティング広告会社は少なくなりましたが、万が一このような都市伝説を耳にした際には、下記の動画をそっと提示して、にこやかな笑顔で真実を教えてあげてくださいね。

参考:What are some myths about SEO?

その6:「効果が出るまでに、最低3ヶ月はかかります」説

こちらは、広告代理店を乗り換えて、以前のアカウントと比較してなかなか成果が見えない場合に時々耳にする都市伝説です。事前にしっかり仮説を持って作り込まれたアカウントであれば、基本的にはほとんどのケースにおいて広告の配信開始後、もしくは代理店切り替え後の初月で改善傾向は把握できます。

検討期間が長く後付けコンバージョンが極めて多い商材や季節性の強い商材などの場合でも、事前にデータを分析できていれば初月の数値をもとに広告主が傾向を把握できるだけの説明をきちんとできるはずですよね。

契約の締結~広告配信開始までの期間が十分に確保できないままとりあえずのアカウント構成で臨んでしまうと、このような言い訳をしなければならない状況に陥ってしまうのではないでしょうか?基本的には、運用会社が変わるタイミングでアカウント構成を再考し、新しいアカウントに十二分な仮説を反映させた上で広告配信に臨むべきであると筆者は考えています。

その7:入札するキーワード数は多ければ多いほど成果があがる説

「入札したキーワードの数が多ければ多いほど、リスティング広告の成果が良くなる」という考えに遭遇したことはありませんか?これに似た話で、広告代理店・広告主の立場を問わず、アカウントの構築要件として「入札キーワードの数」が挙げられるという例も耳にします。

追加キーワードの数を増やしたとしても、検索ボリュームが少なければ広告は表示されませんし、ユーザーの検索ニーズから遠いキーワードであればクリックこそされどコンバージョンに結びつかないケースがほとんどです。大事なのは、「成果に直結するキーワードがいかに網羅されているか」というただ一点に尽きます。

クライアントや上司の方からこの都市伝説に関するタスクを振られた際には、一度冷静になって「追加しようとしているキーワードは本当に成果に結びつく有益なものだろうか?」という問いを立てて見て下さいね。

ましてや、追加したキーワードの数が毎週報告にあがっているようなレベルでは話になりませんし、それらがKPIとなっているような状態は目的と手段を履き違えているといえるでしょう。

最後に

ここでは比較的よく耳にしがちな都市伝説について述べました。もし万が一、上記に当てはまる都市伝説が正しい主張としてまかり通っている場合、腕によりをかけて構築したアカウントの本来の力を引き出せていない可能性がありますので、このような事象がないか一度確認してみてください。

大切なのは、リスティング広告運用に携わる個々人が、どうしてこれらのような都市伝説が生まれたのかを考えること、なぜ誤りなのかを正しく認識することではないでしょうか?情報は情報として受け止め、決してそれらを鵜呑みにせず、自分で思考できるクセをつけていきましょう!

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