広告運用者として、いちビジネスパーソンとして普段から気をつけていることを一つ挙げるとしたらなんでしょう?
筆者は「ちゃんと命名すること」と答えたいです。
命名の機会は商品名やブランド名などのネーミングを決める時だけではありません。クリエイティブの画像ファイル名や広告アカウントのキャンペーン名、広告名、それからカレンダーで登録する予定の名前まで、ほぼ毎日何かしらの名前を決めているのです。
今回はそうした日常業務の細々とした命名をちゃんとすることの大切さや命名のポイントを紹介していきたいと思います。
目次
命名を大切にすることのメリット
命名は地味に面倒な作業です。そのためまずはきちんと命名することのメリットをお伝えしていきます。
認識・判別しやすくなる
適切な名前がつけられていると実態の把握がラクになるため認識・判別しやすくなります。
たとえば「請求書.pdf」よりも「2024年10月分_▲▲御中_請求書」の方が明確です。前者はファイルを開かないと、いつ何時の・どの会社宛ての請求書なのか判別できません。後者はファイル名を見ただけで内容の把握が可能です。適切な名前があれば認識するための時間も節約できますし、ファイルの取り違えなどのミスも減らすことができるでしょう。
取り扱いやすさが高まる
適切な名前は取り扱いやすさが高まります。
たとえば広告のキャンペーン名や広告グループ名が規則性のある名前になっていると、特定の文字列でフィルタリングして分析したり、オンオフなどの操作をしたりが容易になります。他にもスプレッドシートやBIツールなどで数値をまとめる際にもラクになります。このように対象物の活用シーンをしっかりイメージしながら適切な名前をつけると、取り扱いやすさが抜群に高まるようになります。
意図を明確にせざるを得なくなる
しっかり命名することが前提となると、その存在の意義や目的を強く意識せざるを得なくなります。カレンダー上の予定の名前を決める際に、目的が曖昧だと適切な名前をつけるのは難しくありませんか?
また、広告クリエイティブも訴求軸・バリエーションが何なのかを決めていないと適切な名前をつけるのは難しいです。
たとえば以下、バナーA,Bがあったとします。
テストの意図が明確であれば、Aは入会金が0円であることを訴求しているため「入会金訴求」、Bは手頃な月会費を訴求しているため「月額訴求」と命名することができるでしょう。そのためAの「入会金訴求」のパフォーマンスが良ければ、手頃な月会費よりも入会金がかからないほうがユーザーにとって魅力的だったのだと考察することができます。
これがもし事前に意図を考えられていないテストだとしたら(きちんとした命名もできず「A」と「B」のように単なる記号として処理していたら)、成果に寄与した要素を見つけ出すことは難しく、ただ闇雲にテストをし続けるしかなくなってしまいます。
意図が曖昧なまま無駄な会議を開催してしまうことや検証意図が不明なままクリエイティブテストを繰り返してしまうことをなくすためにも、適切な名前をつけられるかどうかを試金石に、意図や目的をきちんと考えられているか確認していきましょう。
命名する際のポイント
命名はガイドライン無しでは人によってアウトプットがバラバラになってしまいますし、すべて一生懸命考えていては疲弊してしまいます。そのためこのセクションでは命名に関するいくつかのTipsを紹介していきます。
名が体を表すように
「名は体を表す」という言葉がありますが、名前を決める際はそのものの実態を表すようなものにしましょう。
見積書と書かれたファイルが実は請求書だったり、最新と書かれたファイルが実は最新じゃなかったりすると困りませんか?特に命名などせず英数字や日付のみのファイルなど中身を確認しないと実態を把握できない名前はとても不便です。
また、命名した瞬間は問題ないかもしれませんが、時が経っても名前に実態が伴っているか、「名」が「体」を表しているかは定期的にチェックしていくことも重要です。もし「名」と「体」が合わなくなってきているようだったら、「体」を「名」に沿うように更新したり、「名」自体を変えたりなどをして、メンテナンスしていきましょう。
たとえばロゴデータという名前のフォルダに、ロゴ以外の画像ファイルも入っているようなら中身を整理したり、これまで最新だったロゴデータが最新じゃなくなったら、古いバージョンであることを示す内容を名前につけたりするなどが必要です。
命名ルールを決めておく
命名する機会は実際かなり多くあります。そのため都度いちから名前を考えていくのはとても大変です。そのため、個人や組織の中で命名ルールを決めておくと良いでしょう。
命名ルールでは名前に必要な要素や各要素の順序、使用文字などを定めておきましょう。事前にルールを定めておくことで命名に関する迷いが減ります。
また、よく練られた命名ルールに則った整理された名前があると、フォルダ内での並びでの一覧性が高まったり、レポート等での取り扱いやすさが高まったりと、手間や時間も削減できます。
画像のファイル名を例に考えてみましょう。
- ルール1…サイズ情報(縦_横)_画像特徴
- ルール2…画像特徴_サイズ情報(縦_横)
- ルール1の見え方
- ルール2の見え方
名前を昇順で並び替えたフォルダ内の見え方では(名前昇順の場合)、命名ルール1ではサイズ毎に並ぶように表示されるのに対し、命名ルール2では画像特徴毎に並ぶように表示されることになります。どちらの並びが扱いやすいかは使用者によって見解はわかれるでしょう。
命名ルールに正解はないですが、フォルダ内での並びや入稿作業、集計作業など、さまざまな観点で検討し、それぞれの現場にとって扱いやすいように命名ルールを定めておくと便利です。
同じものには同じ名前を、違うものには違う名前を
同じものは同じ名前を。違うものには違う名前をつけることが大切です。内容が同じものなのに名前が違うと差異を知りたくなってしまいますし、内容が違うものなのに同じ名前だと余計な混乱を招きます。
たとえば同じ広告アカウント内に内容が同じ広告(クリエイティブ)があれば、同じ広告名にしておくことでキャンペーンを跨って配信結果の集計することがラクになります。一方、内容が少しでも違う場合はしっかりユニークな名前をつけていきましょう。「同じ広告名なのに全然成果が違う!なぜだ?(実は違うリンク先URLでした)」といった混乱も防げます。
またファイルを管理する際も、しっかりファイルごとにユニークな名前をつけておけばうっかり誤って上書き保存してしまうリスクも防ぐことができます。
小さな命名も大切に
ファイル名一つ一つに適切な名前をつけることはとても面倒な作業です。ただそうした小さな命名行為を大事にすることで得られるメリットは長期的にみると大きいのです。逆におろそかにしてしまうと小さな手間やストレスが溜まっていったり、ときには重大な事故にも発展してしまうこともあるでしょう。
一緒に働く相手や未来の自分が気持ちよく働けるよう、日常の小さな命名に気を配ってみませんか。