元Google社員が語る、AdWordsの品質スコアで知っておきたいこと

※筆者:Frederick Vallaeys氏

※以下はSearch Engine Journal の承諾を得て和訳したものです。
(Reprinted with permission of Search Engine Journal)

What You Need to Know About AdWords Quality Score From a Former Googler
http://www.searchenginejournal.com/need-know-quality-score-former-googler/108559/

 元Google社員が語る、AdWordsの品質スコアで知っておきたいこと

初めてのSearch Engine Journalでの記事投稿です。私が人気映画のVHSカセットを寮の部屋で売っていた1998年から携わっていたPPCについて、今後、月に1度は記事を書こうと思います。

私は2002年からGoogleのAdWords部門で働き始め、そこでAdWordsをベルギー語とオランダ語に翻訳しローンチさせました。その時に製品開発にも携わり、ついには唯一のAdWordsのエヴァンジェリストとなりました。

私のGoogleでの最も長い仕事の一つが品質スコアのチームでのものでした。そこで、品質スコアがシンプルなクリック率のアルゴリズムから、Googleの財政的な成功の大きな柱となる、高度な機械学習システムに進化するのを見届けることができました。適切な広告を適切なユーザーに適切なタイミングに見せることで、広告は、広告主と検索ユーザー双方にとってより便利なものになり、Googleは大きな収益を得られるようになったのです。

品質スコアは複雑な仕組みによって算出されますが、ここに多くの誤解が生まれてしまっています。なので、この私の初投稿は、まず広告ランク、そしてクリック単価と品質スコアについてのいくつかの基礎から始めたいと思います。

 品質スコアはクリック単価に直接影響を与える

今では、ほとんどの企業がAdWordsはクリック単価制の広告システムだと認識していますが、どのように広告が価格づけされるかについては、その仕組みを知ることを避けているかのように私は感じています。それは恐らく、それまで単純だった算出方法にブラックボックスな要素が導入され、より複雑になったからでしょう。私は、以下の2つのことに焦点を当てることで、品質スコアのクリック単価への影響がとても説明しやすくなることに気づきました。その2つとは、品質スコアがどのように作用してきたかの短い歴史と、Googleがどのように収益を得ているのかを説明することです。

 1.広告はどのようにして価格が決まっていたか

信じられないかもしれませんが、かつてAdWordsはインプレッション単価制(CPM制)を採用していました。最も高いCPMを払う広告主は誰でも、自然検索結果の上部に広告を表示することができていました。その後、AdWordsが、AdWords Selectと呼ばれるクリック単価制(CPC制)のシステムを導入してから、予想だにしない事が起こったのです。CPCで配信された広告は、以前のAdWordsで配信されたCPM制の広告に比べ、より高いCPMを叩き出すようになったのです。(訳注:CPMとは、広告1,000回あたりの費用を指す。例えば、CPC制の場合でCPC100円、CTRが1%であれば、1,000回表示あたり10クリックになるので、CPMに換算すると100円×10クリック=1,000円となる)そのためにGoogleは速やかにCPC制であるAdWords Selectにビジネスを移行、AdWords CPMを終了させたあとに、”AdWords” として再ブランド化しました。AdWords Selectが大きく成功した理由は、Googleがこのシンプルな式によって広告の順位付けをしようとしたことにあります。

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ただ単にCPCを順位付けに用いるのではなく、計算式に広告の関連性(クリック率)を使うことで、関連性の薄い広告が高い入札によって上位を独占することを防いでいます。

シンプルな例として、上限入札単価を2倍にすることと、クリック率を2倍にすること、もしくは組み合わせて2倍にすることは、広告ランクも2倍となることを意味します。広告ランクを維持するのなら、クリック率を2倍にすることができれば半分の入札単価でいいのです。さらに突き詰めると、もし2人の広告主が同じ単価の入札をしていた場合、クリック率の高い方がより上位に位置され、より安いクリック単価となるのです。

この関連性の要素によって、小規模の企業がAdWordsを有効利用することに成功しました。大規模な競合他社の持つ広告予算を持てない彼らが、広告の関連性で競うことができるようになったのです。

この式は、今やこのようになっています。

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広告ランクは現在、3つの要素による未知の関数となり、よりブラックボックス化しています。しかし、この記事を読み終わる頃にはもっと明らかになるでしょう。私達が言うまでもなく、品質スコアが2倍になれば広告ランクは2倍となるのです。クリック率はもう要素ではありません。このことが広告ランクをより複雑にしてしまいますが、Googleがどのように収益を得ているかをひとまず考えてみましょう。

2. Googleはどのようにして広告収入を得ているか

Googleは、広告がクリックされ、広告主が該当するクリック単価を支払うことによって収益を得ます。

株式市場のアナリストたちは、Googleの四半期ごとの収支報告の中でも、Googleが稼いでいるCPCの推移に非常に注目しているようです。しかし私には、彼らには全体像が見えていないのではないかと思います。GoogleはこれまでCPCの推移を気にかけたことはなく、いつもCPMを気にかけていました。AdWordsのデビューは広告そのものへの価格付けでランクが決まっていましたが、CPC制が導入されたのちは、 Googleは明らかにCPMを元に広告のランク付けをしたのです。

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少しばかり単純化しすぎていますが、Googleは賢明な行動を取ったと思います。なぜならば、この式の採用はGoogleの運命を左右するほどのものだったからです。これは私が確信していることですが、もし広告がCPCだけでランク付けされていたら、Googleの収益は多くの外部要因、例えば経済状況の変化による広告主が支払うクリック単価の変動や、検索ユーザーのクリック行動の変化などによって左右されていたことでしょう。

しかしながら、もしGoogleが広告をCPM制で販売し、これをそれなりに安定して運用することができるのであれば、検索数を2倍にすることでGoogleの収益も2倍にすることができます。一般的に、企業がすべきことは決まっています。商品を優れたものにすることと、その商品を人々に使ってもらうことです。Googleにあてはめてみれば商品とは検索エンジンであり、毎月1,000億の検索クエリがあるということは、その商品がそれだけ使われているという素晴らしい事実があるのです。

ご理解いただきたいのは、現在のGoogleは複雑なランク付けの式を用いていますが、最も高いCPMの広告主が最上位に掲載されるという、Googleが収益を得る方法自体は、実際のところ今までと特に変わりないのです。そのため複雑な式はひとまず忘れて、CPMがクリック率(CTR)とクリック単価(CPC)によって算出できることを考えましょう。まずは、新しいランク付けの計算式と、これまでのシンプルな計算式とを比較してみましょうか。

 品質スコアはほとんどクリック率で決定される

現在、Googleは広告ランクを決めるのにクリック率よりも品質スコアを注視すると言っていますが、正確には品質スコアとは何なのでしょうか?品質スコアは次の3つの構成要素によって決定されます。クリック率、関連性、ランディングページの品質です。初めの2つの要素は同じくクリック率についてのことだと言えます。それぞれについてもう少し詳しく掘り下げてみましょう。

 品質スコアにおけるクリック率の要素

Googleのチーフエコノミストを務めるHal Varian氏は、過去のクリック率は、品質スコアの構成要素として最も大きいと公表しています。私が先ほど説明した、Googleが高いCPMの広告を優先づけることで収益を得ている、という観点からも、これは非常に理にかなっています。ここで気をつけたい点は、Googleが広告主が見ることのできないクリック率を使っていることです。

Googleは公平なオークションの場を作るために、オークションに加わる全ての広告を同一条件でのクリック率で計算しています。つまり、Googleプロパティのみの検索のうち、検索クエリが入札キーワードと完全一致した時のクリック率だけを適用するのです。また、モバイル・デスクトップそれぞれのクリック率も個別に確認し、何らかの方法で2つを結びつけることによって、AdWordsの管理画面上でキーワードの隣に表示される品質スコアを算出しているのです。

 品質スコアに関連する要素

広告ランクの決定要素がクリック率から品質スコアに取って代わったことで、広告主は悩んでいます。ただ単にクリック率を確認するのとは違うため、ブラックボックスな要素は広告主たちを困らせました。しかし、これは分かりにくい要素ではありますが、ただ単に違う観点でクリック率を見ているというだけなのです。

Googleが品質スコアを導入したのは、過去のクリック率だけでは大した関連性は導けないことを理解しており、それを踏まえて、リアルタイムにすべての検索クエリのクリック率を、様々な要素に基づいてより正確に予測できるシステムを構築できたからです。例を挙げると、検索ユーザーのクリック行動は、時が変われば毎回それぞれが違ったものとなり、どこに住んでいるのか、どんな種類のデバイスを使っているか、どういった単語を追加で入力するのか、など様々です。これらのクリック率の差異をGoogleは ”関連性” として見ていますが、これだけだとまだクリック率が主な要素です。

このシステムの働きは単純で、例えば、「Steve Jobs」という検索クエリに対して、「jobs」というキーワードに入札している転職サイトと伝記の出版社の2つがあった時に、どちらがより最適な広告なのかを区別しています。もし単純に過去のクリック率のみを見るのなら、転職サイトの方がこれまで高いクリック率を示していると思うので、広告もそちらが出ていた可能性もありますが、品質スコアの影響によって、出版社の広告の方が関連性が高いと判断されます。

 品質スコアにおけるランディングページ品質の要素

クリック率だけではクリックの獲得に熱心な広告主がかなりズルをすることができるので、ある時点でGoogleは、品質の低い、騙すような広告増加による品質危機に直面しました。Googleはこれらの悪質な広告主を排除するため、ランディングページの品質要素について公表しました。これは、SEOで言うパンダアップデートと極めて類似しています。パンダアップデートが繰り返されるにつれて、アルゴリズムは、様々な形式の中身の乏しいコンテンツを見分けられるよう改良されていきました。

同じように、今ランディングページの品質は、低いランク付けをされるであろうぞっとするようなランディングページから、ランクを引き上げるに値する良質なものまでを見分けることができます。これは、今日のGoogleの収益構造に直接的な影響はありませんが、(ランディングページの品質はCPM制の計算式に含まれる要素ではありません) 検索ユーザーにとっていい検索体験ができることを保証し、広告を信用し続けてもらうことによって、Googleの未来の収益を守ることに繋がっているのです。

 広告表示オプションの品質スコアへの影響

現在、Googleは広告表示オプションについても広告ランクの要素としています。 広告表示オプションは品質スコアには影響を与えませんが、広告のクリック率に大きな影響を与えます。広告表示オプションが品質スコアではなく順位付けのために考慮されていると考えると納得がいきます。もし2つの広告が競っていて、片方の広告がサイトリンクによりクリック率が17%が引き上げられているとします。この時、Googleは広告のランク付けとして使っているCPMの計算に、間違いなくこの大きなクリック率引き上げ(をしたサイトリンク)を考慮に入れたいでしょう。これは、広告表示オプションの使用により、広告主のクリックコストを下げることも意味しています。もし広告表示オプションがクリック率を2倍にするのなら、広告主は広告ランクの維持に半分のクリック単価で済むのですから。

もちろん、クリック率が改善されたことで、一般的には高いクリック単価が必要な高順位に広告を押し上げることにもなるので、必ずしもクリック単価が安くなるわけではありません。大事なことなのでもう一度言いますが、「クリック率」と呼ばれていない掲載順位決定の要素も実際はクリック率のためにあるのです。

 品質スコアをより高めるには

どうすれば品質スコアを高められるのか?キーワードに対してより広告の関連性を高め、それぞれがより高い関連性を持たせられるよう広告グループを構築することです。場合にもよりますが、どの広告グループにも30個以上のキーワードが設定されているのならば、より細かいグループ分けを行い、それぞれに具体的な訴求の広告文を設定することができるでしょう。そして、常に(新しい)広告文によるABテストを行い、クリック率を高めることに焦点を当てましょう。

ご理解いただけましたでしょうか、現在のAdWordsの広告ランクは複雑な式で算出されており、品質スコアはクリック率ほど把握するのに分かりやすい指標ではありません。しかしこれらは、実は同じことについてただ違った言い方をしているだけなのです。あなたが素晴らしいクリック率の実現を目指しているのなら、品質スコアはこれに応えてくれるでしょう。


~訳者談~

本記事は、実際にGoogleの裏側を支えたメンバー Frederick Vallaeys氏によって書かれている非常に信頼性のある情報であり、その多くに私たちも賛同します。本記事の中で特に素晴らしいのは「Jobs」と登録した2つの広告主の部分でしょう。この2つの広告は「Steve Jobs」と検索するユーザーに対して、就職サイトの広告と伝記の出版社の広告どちらが関連性が高いのか?をGoogleはしっかり判断しているというのが非常に興味深いですよね。

品質スコアについては、誤解を招くであろう表現や記事が世に溢れています。良くある間違いの一つが、「掲載順位を上げると品質スコアが上がる」といったものです。

これを本記事ではこれを明確に否定していますね。Googleは掲載順位、競合性、キーワードなど、さまざまな条件を元にクリック率の高さを正規化によって評価しています。Aというキーワードが1位である場合に「高い」と評価されるべきクリック率、Bというキーワードが5位である場合に「低い」と評価されるべきクリック率があるのです。つまり、「掲載順位を上げると品質スコアが上がる」という表現は間違っているのです。

これは1つの事例に過ぎませんが、昨今の日本ではリスティング広告のブログが乱立しており、見る側にもリテラシーが必要なケースが非常に多くなってきました。私たちはリスティング広告の情報の洪水のなかで生きていると言っても過言ではないでしょう。情報を発信する側は正しい知識を、情報を受けとる側はその価値や正誤を見分ける眼を持つために正しい知識を勉強し続けないといけません。こういったメディアリテラシーは今後非常に大事な能力だと思います。

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Yuhka Suzuki

Yuhka Suzuki

アナグラム株式会社 ソーシャルメディア エキスパート。 学生時からSEMに惹かれ、運用型広告を扱う企業にて多様なビジネスのコンサルティングを経験。運用型広告を通してより深くマーケティングに向き合いたいと考え、2014年からアナグラムに在籍。現在はリスティング広告だけでなく、ソーシャルメディアの広告運用やプランニングをメインに行っている。