リスティング広告の海外配信における5つの心得

リスティング広告の海外配信における5つの心得

例えばです。

「主要市場は日本と米国ですが、リスティング広告(主にGoogle アドワーズ)でも両方対応できますか?」

というような話を持ち掛けられた時に、リスティング広告広告運用者としてどのような心境でしょうか?リスティング広告キャンペーンの海外進出は大きなビジネスチャンスにもなると思いますが、しかし、いきなり海外配信などと言われても…やはり未知数も多く不安も残るのではないでしょうか。

そういった不安をすこしでも晴らすべく、リスティング広告の海外進出の際に、まずどの辺のことに気をつければいいのかを5つのポイントにまとめて紹介していきたいと思います。

多言語対応は翻訳にとどまらず

海外向けのアカウントを構築する、或いは引き継ぐことにあたって、真っ先に広告リスティング広告運用者の前に立ち塞がるのは言葉の壁でしょう。既存の日本語アカウントのローカライゼーションにしろ、全部を一から海外向けに作るにしろ、国際的なアカウントの構築と運用に伴うタスクには、まず外国語の対応が不可欠になります。

では、そういった比較的大きな挑戦を目前に、どうすればいいのでしょうか?

ついに安易な道を選ぼうと、翻訳ツールに魔の手が伸びてしまいそうな気持ちになるかもしれませんが、それはやめた方がいいです。翻訳ツールは近年の進歩が確かに目覚ましいことは否定しませんが、実際に使ってみた結果、文法がデタラメなケースや、固有名詞まで直訳するなど意図していない方向に動いてしまうケースが未だにけっこう多いのも事実です。翻訳は人間の方に任せましょう。

ただ、実は海外向けキャンペーンは翻訳が終わった後が本番だと言えます。配信を開始してから、検索クエリを見て入札するか除外するかを判断したり、広告の訴求の細かいニュアンスを変えたりするなど、日頃の数あるタスクを外国語で行うことが必要となってきます。理想を言うならば、ネイティブスピーカーかバイリンガルが一番望ましいですが、そういう者がいない場合、少なくとも対象言語が堪能な上に、文化や風習にも精通している運用者に海外向けキャンペーンを任せることをおすすめします。

通貨の混在は避けましょう

ユーロ圏のように通貨が一部共通している例外を除けば、大体の場合、国境を超えたら通貨も違ってくるのです。そのための対策も必要です。つまり外国のアカウントを構築するケースは、必ずアカウント側の支出とECサイトから流入する収益の通貨が統一しているかどうかを確認するようにしましょう。

例えば、日本のECサイトのリスティング広告アカウントを運用している場合、当然支出も収益も日本円になっていますよね。そしてある日突然そのサイトが米国市場にも進出し、米国向けにもリスティング広告のキャンペーンを依頼が来るとします。

もし、それらをすべて同じアカウントで管理するようであれば、特別な対策がない限り、米国ECサイトの方からのコンバージョン値がドルで管理画面に上がる結果となるでしょう。つまり一つのアカウントに支出の通貨(JPY)と収益の通貨(JPYとUSD)の混在が生まれるわけです。ヨーロッパ向けのアカウントだとユーロ圏に所属していないスイスや北欧の国に専用キャンペーンが加わった時に良くある問題です。

とにかく、そうなってしまうと、日頃の運用の中で費用対効果の確認やレポート作成に通貨を手動で換算するという無駄なタスクが1つ増えるのはまだしも、ROASなどに基づく自動入札を活用すると危険とさえ言えるシナリオも想像できます。特に日本円はドルやユーロに比べ、単位が桁違いになりますので注意が必要です。このような状態はなるべく避けたいところですね。

ECサイト側、或いはタグで予め支出・収益を統一させてくれる仕組みなどを利用すれば、問題はないでしょうけれども、経験上、国と通貨が違えば、念のため最初から収入支出ともに通貨が統一したアカウントで管理することか一番無難だと思います。

追記
※タグ側で収益の通貨を自動的に換算する方法についてはこちら
参照:https://support.google.com/adwords/answer/3419241?hl=ja

ユーザーの購買行動の違い

インターネットでの購買行動にも国の特徴が出ることは珍しくありません。

例えば、値段を徹底的にネットで比較するユーザーが多い国は、実際にコンバージョンに至るまでは広告との接触回数が多いため、CTRが高い傾向にある反面、CVRが極めて低い現象がよく見られます。つまりカスタマージャーニーが違ってくるということです。こういうケースは、RLSA(検索広告向けリマーケティングリスト)を主に活用し、既存のユーザーを狙った運用方針がコンバージョンに繋がりやすくなります。

また、ROPO効果(Research Online Purchase Offline、ネットでは調べるが、オフラインで買う)の度合いが強めの国には、来店コンバージョンも計測したり、ローカルビジネス向けのキャンペーンを作ったりするのも効果的です。
その他に、同じ商品やサービスを国によってユーザーが違う意図で利用しているケースもあります。もうちょっと具体的に説明しましょう。

例えば、連絡船のチケットを売るECサイトは二つの国に同じチケットを売っているとしても、A国ではそのチケットを主に観光目的で買うユーザーがほとんどなのに対して、B国では同じチケットを通勤用に買うことが最も多いケースを想像しましょう。きっと「連絡船 チケット」はどちらの国においても大事なキーワードになるでしょうけど、それぞれ広告の訴求や表示オプションで打ち出すUSPは国によって使い分けるべきですね。

つまり、ただ広告文をそのまま違う言語に翻訳することが正解ではなく、対象のユーザーの趣向などを把握した上、訴求に反映させることもローカライゼーションの内です。

上記のようなユーザー行動の特徴を把握しているかいないかで、運用成果にかなりの差が出ると言えます。可能であれば前もってユーザー行動のことを調べたり、ヒアリングしたりして、リスティング広告の戦略にその知識を活かしましょう。

現地の市場の特徴を把握しましょう

同じ商材であっても市場自体が国によって異なる場合もけっこう結構あります。A国ではマーケットリーダーだったECサイトがB国へビジネスを展開した後、急に現地では新入りかニッチ的な存在になってしまったり、競合他社の強さで困ったりすることもさほど珍しくないです。或いは、A国でマイナーだった商品はB国に行けばバカ売れなど、という事態もあり得ます。とにかく、同じ商材でも国によってリスティング広告で別の戦い方をするように心の準備をしましょう。固定観念にとらわれずに、施策で柔軟に対応することがもっとも大切です。

それはシーズナリティも含めてです。海外は、繫忙期・閑散期や年内の売上ピークのタイミングがまったく日本と同じではないです。例えば、クリスマスシーズンは大きなピークであることは言うまでもないですが、その他にイースターなどの贈り物のきっかけとなる祝日も欧米に多く、一方英語圏ではブラックフライデー、サイバー・マンデーやバック・トゥ・スクールの格安セールも売上を大きく促進させてくれる要素が年内に点在しています。

同じ意味で、旅行商材の場合は対象の国の夏休みや連休を調べておくと決定的に有利になると思います。各国のシーズナリティは、予算分配や入札戦略、広告文や表示オプションの訴求に至るまで、多様な場面で役に立つ情報になっていますので、国際キャンペーンで利用しないと、逆にかなり勿体ないことをしているとも言えます。

チャネルミックスについて

同じリスティング広告でも、やはり国によっては鍵となるチャネルが違うことがあります。確かに、例外を除けばGoogleがほとんどの国のマーケットリーダーであるのはさすがにぶれないものの、各国のシェアに関しては意外とまちまちです。

例えば、日本ではGoogleとYahoo!がメインになっているのは周知のごとくでしょうが、だからといって、それが世界共通であるとは限らないですね。実は世界規模で見たら、日本の方もちょっと特殊の部類に入っているとさえ言えます。

さて、海外のチャネルですが、恐らくBingの存在が比較的大きいことは知られているかと思います。この、日本ではYahoo!の検索パートナーネットワークの立場にあたるBingは、海外だと独立している検索エンジンと広告ネットワークにもなっていて、専用の管理画面もエディターもあります。そのシェアはというと、米国では最近20%を超えることもあり、かなり重要度の高いチャネルです。Windows10のOS内検索もBingと連動しているため、その普及とともに他国のシェアも増加していますが、今では主に米国中心と考えてもいいでしょう。

他にも、ロシアのYandex、中国のBaidu、韓国のNaverやチェコのSeznamのように、その国特有の検索エンジンもありますので、そちらの国に進出するときに無視してはいけない存在です。ただし、チャネルによっては管理画面が英語、または他の外国語限定であったり、日本には支社も公式サポートもなかったりなど、日本からの運用を困難化する要素も否定できないため、導入を検討する場合にも費用対効果など考える必要があります。

まとめ

以上、リスティング広告の海外進出についての注意点でしたが、もちろんすべての国と商材を網羅することが不可能に近いため、海外向け配信を始める際に「この辺をまず意識すればいい」というふうに読んでいただければと思っております。また、すでに海外向けのキャンペーンを担当されている方にも、参考にしていていただければ幸いです。

やはり、同じ管理画面を見ているはずなのに、国が違えば新しい発見がたくさんありますし、海外向けのキャンペーンを担当することが運用者にとって大切な経験にもなります。ただ、管理画面がすべての正解を教えてくれないこともまた事実ですね。

さて、海外配信で何が大事かを一言でいってしまえば、それは恐らくローカライゼーションかと思います。それは勿論本来の意味でキーワードや広告文の適切な翻訳なども含まれますが、施策内容が本当にその国のユーザーのニーズに合っているかどうかを問い続けるという意味にもなります。

Jan Hugendick

Jan Hugendick

アナグラム株式会社 運用型広告エキスパート(海外・国内部門)。 ドイツの出版社で マーケティングやSEOに携わることをきっかけにリスティング広告に興味を持ち、 ドイツの某メディア大企業直属のWeb広告代理店に転職。そこで5年間、多国・多業界 のアカウントを担当することを経て、2016年にアナグラムに参画。広告運用の他、ブログ執筆と編集を行っています。

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