「この環境で活躍する力は、どこでも通用する」社長交代を経た120人超えのマーケ支援会社が、なおも”一気通貫”にこだわる理由と覚悟
2024年8月に、創業者である阿部から小山へと代表取締役社長のバトンが渡ったアナグラム。代表が代わるというと組織にとっては一大イベントですが、内部のメンバーにきけば「そんなに大きく変わった実感はない」との声もあがります。

それもそのはず。代表交代は1年をかけて準備してきたものであり、何よりアナグラムが大切にしてきた価値観や働き方の根底は揺るぎません。新体制への転換点を経た今のアナグラムについて、学生インターン(新卒)から10年間アナグラムに身を置き、現社長となった小山にインタビューしました。

一気通貫は専任を超えた“境界を溶かす手段”へ

ーーー代表交代を経ても変わらない理由の一つに、「一気通貫」を始めとする仕事の取り組み方が変わらない点があると思います。アナグラムの歴史を語るうえで外せないこのキーワードについて、現在の小山さんの考えを教えてください。


まず入念に準備してきたという意味では、社内の反応は狙いどおりで安堵する部分もありますね。一方で一気通貫についてはもっとやっていける余地があると考えています。

たしかに「1社1担当者制」ともいえる、運用担当と営業担当を分けない形式には、それだけで一定以上の価値があるでしょう。関わる人が少ないほど伝言ゲームが発生せず、施策を的確かつスピーディーに実行できます。また、クライアントのコミュニケーションコストを削減できる点でも、一見非合理に見えて合理的な仕組みだと思います。

ただ、それだけで終わるべきではない。一気通貫は、あくまでクライアントのビジネスを成功させるための「手段」に過ぎません。そのためには、運用と営業という2つの役割を統合するというだけではなく、無意識的に発生してしまうような役割や領域の境界を溶かし、「できることは何でもやる」というスタンスを、これまで以上に強めていく必要があると感じています。

ーーー領域を溶かす、というのはどういう意味でしょうか?


垣根を跨いで統合する、とでもいいましょうか。わたしはこの会社に10年いますが、もともとアナグラムは広告運用を専門とする会社でした。でも、クライアントにとってWeb広告は、数ある「手段の一つ」に過ぎません。

「金槌しか持っていない人は、すべてのものが釘に見えてしまう」ということわざのように、自分はWeb広告を担当していると考えるとそれだけに視点が向いてしまいがちですが、最終的に売上が伸びるのであれば、PRや商品企画、店舗改善など、どのようなマーケティング手法を取るかは重要ではないんです。

そこでわたしたちは、運用型広告を主軸としながらも、クライアントのマーケティング全般を支援する方向へと進化してきました。クリエイティブやテクノロジーといった分野にもアセットを増やしてきましたが、今後はさらにその境界を溶かして、複数の領域で活躍できるメンバーを育てていく必要があると考えています。

ーーー「一気通貫」を軸に据えたまま、その意味やコンセプトが年々進化・深化している、ということですね。ここでいう「複数の領域で活躍できる」とは、具体的にどんな状態を指しているのでしょう?

特に重要だと考えているのは、広告の運用とデザイン、どちらも勘所がわかって成果につながる施策を形にできることですね。

広告で成果を出していくには「商品の魅力をどう見せるか?」の視点が欠かせませんし、反対に「世の中にはどんな広告媒体があって、担当案件の成果はいまどうなのか?」を理解しなければ課題・目的に対して効果的なクリエイティブを作るのは難しいですよね。

アナグラムではデザイナー職があとから生まれたこともあり、それぞれ別の職種に分かれてはいますが、本来はこの両方を1人で担える人がいてもよいと考えています。職種のくくりで仕事を制限する必要はありませんからね。

ーーー最近では広告運用をメインとしながら動画クリエイティブのディレクションや撮影に取り組んだり、デザイン業務だけでなく案件の運用にチャレンジしていたり、といったメンバーも出てきていますよね。

とはいえ、メイン業務とは異なる、いわば未経験の領域へのトライを重ねていく必要があると思います。理想的といえど、大変じゃないでしょうか…?

そうですね、大変じゃないとは言いません(笑)ただ、それこそ最近ではAIの進歩も目覚ましいですよね。アナグラムではAIを単なる効率化のツールと捉えていないですし、むしろそれではもったいないと思っています。それぞれのバイアスや思考のロックを外し、複数の領域を横断して新しい視点を得るために役立てられるとよいんじゃないでしょうか。

同様に、アナグラムにとっての一気通貫も、単に最初から最後まで担当するだけの固定化された”業務の枠組み”ではないんです。「営業」「広告運用」「デザイン」といった異なる役割を統合し、お客さんのビジネスを伸ばすために、手段を限定しない”生きた指針”として、これからも更新し続けていくものですね。

クライアント支援に携わるメンバーは、全員が「お客さんの頼れる参謀」

ーーー一気通貫の徹底のためにこれまで取り組まれてきたことで、特に印象に残っていることはありますか?


そうですね、約1年前に執行役員に就任したタイミングで、デザイナーの働き方を「一気通貫」に切り替えました。これは象徴的な出来事だったと思います。

変更前からデザイナーには、ターゲットやコピーの部分から入ってもらって制作や改善を主体的に担当してもらっていました。ただ、そこに加えて、お客さんとのやりとりにもフロントとして直接携わる「コンサル」のような動きをしてもらうようになったことで、デザイナーならでは視点も加わり新たなアイディアが出やすくなったのを実感しています。

ーーー社内に限らず、業界全体でクリエイティブの重要性が年々高まっていますよね。

わたしたちも「気づきを与える広告」を大切にしていますが、動画広告なんて特にそういう役割を果たすのに適したフォーマットですよね。

だからデザインに知見を持ったメンバーの働き方を変えることには大きな意義があったんです。変更前後で成果が大幅に改善した事例も多くあります。

たとえば坂ノ途中さんでは、代表の方のインタビュー動画を広告配信することで、世界観を崩さずに新たな顧客層の獲得につなげたり、記事LPの執筆を通して、通常LPより15%高いF4転換率(4回継続利用する割合)を実現したりしていますね。

ーーーたしかに、戦略立案の段階からプロジェクトに携わるようになって、LP制作や動画撮影など、デザイナーメンバーが手がける仕事の幅や守備範囲が格段に広がったのを肌で感じています。

これまでは運用型広告エキスパート職を「コンサル」と呼んでいましたが、お客さんのマーケティング支援に関わるメンバーは全員がコンサル(お客さんの頼れる参謀)であるべきです。今後は「運用者」と「デザイナー」という呼称が適切かもしれません。

マネージャーアシスタント職(以下、マネアシ)でも、これまでの入稿サポートやデータ集計といった枠を超えて、どんどん役割が拡大しています。

もとはマネージャーの直下で担当チームのアシスタントを担うポジションでしたが、いまではテクノロジーやセキュリティ関連の業務など、組織全体を横串で支える役割を牽引しているくらいです。

規模の拡大によって生まれがちな新たな課題を積極的に拾いつつ全体に働きかけてくれていて、セキュリティ意識の全社的な向上にもつながりましたね。

ーーー他にも最近ではマネアシチームからコードを書ける方が出てきたりと、当初想像していなかった未来が現実になっている気がします。


本当にそうですね。わたしは「仕事を小さくしない」ということが大切だと思っています。自分の仕事を自分で広く定義すれば、どんどん面白くなっていくんですよ。

そのためにも挙手性を大事にしています。と言っても、「自分がやりたいことだけやっていいよ」という意味ではありません。自分で決めたことなら最後までやり抜けますし、成功するまで頑張れる。そうなると自然と楽しさも生まれてくるものなんです。

ちょっと極端な例かもしれませんが、たとえば「賽の河原の石積み」のような苦行だって、楽しめるんじゃないかと思うことがありますよ。

たとえば「一見アンバランスな石を使った超絶技巧な積み方」だったり「石の形に意味を持たせて、1つの世界観を表現する」など、自分なりの美学・ルール・競技性を持たせたりすると、きっと楽しくできるんじゃないかと思いますね。

深く事業を理解して全体最適で考えるために

ーーーここまでお話を伺ってきて、やっぱり小山さんは圧倒的にタフなんじゃないかという印象が強まっています(笑)プレイヤーとしても最初から順風満帆だったんでしょうか?

いやいや、全然そんなことないですよ。

代表交代インタビューで阿部さん(現会長)が表現されていたように「失敗しても立ち止まらずに改善を繰り返しているから、遠くから見ている人には成功しているように見える」ってことかもしれないですが、実際には失敗も多く経験してきました。一度マネージャーの役職を降りたこともあるくらいです。

でも一つ 言えるのは、「いい仕事をしたい」「クライアントを勝たせたい」という想いだけはずっとブレなかった、ということですかね。

ーーーブレない真摯さがあったんですね…

とはいえ、その想いがどれだけ強くても、成果につながる施策が実行できなければ意味がない、という現実はあると思います。ターニングポイントになった出来事はありましたか?


個人のnoteでも書いたんですが、部分最適ではなく、全体最適で考える必要性に気づいたことです。それって言われてみれば当たり前のことなんですが、実行するのは簡単ではないんですよね。

クライアントにとっては、短期的に購入者が増えることも大事ですけど、それ以上に長期的な売上が続いていくほうが価値が大きいんです。

目先の利益を優先した訴求だと、かえって本来の顧客層ではない人にまで届いてしまうことがあります。全体最適で考えるためには、クライアント以上にクライアントの事業を深く理解して、長期的なストーリーを描けるようになることが必要不可欠なんですよね。

広告によってLTV(顧客生涯価値)が大きく変わるのだという確信を得たのもこのころです。サンスターさんの事例には、この気づきがとても活きました。

※LTV…Life Time Value(ライフ タイム バリュー)の略。顧客ひとりあたりが生涯を通じて企業にもたらす価値を表す指標

ーーー確かに効率化や業務の分担を重視しすぎると、全体感を見失ってしまいがちですよね。広告がLTVに影響を与えるというのも、たとえば、自分を偽って広く浅い人間関係を築いても、それが長く続かないことを想像すると、すごく納得感があります。


似ているところはあるかもしれません。この学びも紆余曲折を経て得たものですし、そういった学びは仕事に限らず人生に活きますよね。だから会社の仕組みも、仕事を通した気づきや成長の機会を提供できるものでありたいと思うんです。

一気通貫のスタイルを続けるのはそのためでもあります。各々が全体最適の視点を持ちやすい環境を整えることで、自分で選んだことの結果を引き受ける経験を積み重ねながら、学び続けてもらえたらいいですよね。

もちろん、自分で決めないとならない分ハードルは上がりますし誰にでもできる仕事ではなくなるのですが、だからこそアナグラムが取り組み続ける意味があるんじゃないでしょうか。

一歩先の方向性を示し続ける評価制度

ーーーアナグラムの仕組みは、「クライアントを勝たせる」という大きな目的に紐づいたものが多いですよね。一気通貫や挙手性もしかりですし、評価制度もその一つだと思います。


そうですね。評価制度については、しかるべき仕事やそれを担ったメンバーをきちんと評価するために、実態に即したかたちにアップデートを重ねていく責任があると考えています。現に入社から1年半で年収が数百万円上がったというケースも珍しくないですよね。

売上ノルマを設けないのも、だからといって「売り上げを度外視する」という意味ではありません。むしろ逆で、ノルマがないからこそ、自社の都合にとらわれることなく、クライアントのビジネスを伸ばすための仕事に集中してほしいんです。

この環境を最大限活かして、商売を成功に導ける人になってほしいと思っています。

ーーー迷わず仕事に向き合っていける環境を整えているのですね。数年働いてきた実感として、一つ一つの制度が独立せずに連動しあっていることもそれを大きく支えていると感じます。


それは意図的に設計している部分でもありますね。アナグラムの独自性とも言える部分かもしれません。

たとえば評価項目の一つに口コミ記事の執筆がありますが、これを達成するためには、クライアントならではの「勝てるストーリー」を提案段階で描けている必要があるんです。

そしてご支援を通して成果が出せたときには、クライアントに貢献できるのはもちろん、記事が弊社のマーケティングにも活かされます。一連の流れの中で、結果として採用応募や案件リード作りも担えるんです。

加えて、事例化するような仕事ができた時点で個人の経験値やスキルも上がっていますよね。

つまり「クライアントを勝たせて口コミをいただく」ことがクライアント、会社、個人にとってのWINにつながるように制度を組み立てています。このように連動した仕組みは、一つの成果から複数の価値を生み出すからです。

ーーーまさしく一石数鳥、ということですね…!

評価制度は単なる基準でなく、社員へのメッセージにもなりますよね。だからこそ「集ったメンバーの成長に合わせて、一歩先の未来を示すもの」であるべきだと考えています。評価制度も良い仕事を引き出す装置の一つと捉えて、常にベターを模索し続けているんです。

ーーー評価制度は半期ごとに更新されていますし、それこそ「生きた指針」だと思えてきます。

とはいえ先ほどのお話を思い出すと、自分で決める経験を奪ってしまわないバランスも大切ではありませんか?


そうでしょうね。最近よく考えるのは、「命令は脆弱だ」ということです。人によって響くものは違いますし、命令されたい人なんていませんよね。

だから案件のアサインにも配属にも挙手制を敷いていますし、案件にまつわる判断の権限は現場メンバーが持つ逆ピラミッドです。現場のメンバーが1番情報を持っているはずなので、「倫理と論理」に照らして正しいと思うならすべてGOだと伝えています。

評価制度や判断基準は一つの道しるべとしてわかりやすく提示しながら、同時にマネジメント側は相手の得意や好きがどこにあるのかよく観察して理解することも必要ですね。

相手の個性や能力と組織の方向性とが重なり合う部分はどこなのか。日々コミュニケーションを重ねれば、ヒントは見えてきそうです。

人の可能性を信じられる懐の深い会社でありたい

ーーー率直に言って、アナグラムで求められるレベルは低くはないですよね。それなら経験者を採用したほうが早いという意見もありそうですが、どうでしょうか?

たしかに、わたしたちが理想とするのは「一つの会社が持つべき機能を、一人で持てるようになること」です。そういう意味では、ハードルが高いのは間違いないですね。

ですがお話してきたように、一気通貫で行う広告運用は、仕事の幅や視野を狭めずにすむと考えています。これは、それぞれが入社前に培ってきたバックグラウンドを活かしやすい「懐の深さ」にもつながると思っているんです。

分業の場合は特定業務の専門性を高めやすいかもしれませんが、こういった懐の深さは一気通貫ならではじゃないでしょうか。

大切なのは、普遍的に活かせる力や、その他の得意分野を持っているかどうか。むしろ経験者のアンラーニングコストのほうが高くなることもあるでしょうし、入社以前に広告運用を経験しているかは重視していないです。

ーーー事実、ここ数年に限れば、全体の8割以上のメンバーが未経験から活躍していますよね。

はい、最近では経験者の方が珍しいくらいですね。

他の専門領域を持っている人は、それを横断的に活かすことで成果を何倍にもできる可能性があります。逆に言えば、一見すると関係なさそうなスキルや経験を、どれだけつなげて考えられるかにかかっているところがあるかもしれません。

社内にも、ワイン愛好家、車好き、サッカー/野球好き、アイドル好き、ゲーム好きなど、いわゆる”オタク趣味”を持つメンバーは多いです。関連案件の担当者に知見を提供することで直接貢献できる場面もありますし、何より特定の分野を絶えず掘り下げ続けてきた姿勢や経験は、間接的にマーケティング業務に活きているんじゃないでしょうか。

わたしも日本史が好きなんですが、過去の為政者のエピソードが仕事に役立つと感じることも多いですよ。

ーーーアナグラムで働く一人として、多くのコンテンツを自分の中に蓄える必要性や、それを育む機会の多さを実感する毎日です。

専門領域を複数持つほど価値が上がるという話もありますが、社内で目立つメンバーもいろいろな場面で存在感を発揮していますよね。

変に賢くリソースを配分するより、できることに全力で取り組んだほうが力がつくのではないでしょうか。今後も、決まった仕事に人を当てはめるのではなく、人の成長に合わせて組織でできることをさらに増やしていきたいと思っています。

たとえば向いている人にはどんどんマネジメントにもチャレンジしてほしいですね。アナグラムでのマネジメントは、対象が狭いようで広いんです。ときには部下の気持ちを温めるところから始める必要がありますし、その際の方向づけも相手によって違い、複雑です。

でも、「考えて動ける人」を自ら育てるなんて、手がけた仕事のインパクトが相当に大きくなると思いませんか?

ーーーそれは本当に大きなやりがいですね…!

何ならこれは全員に経験してほしい、くらいに思っているんです。

もちろん、わたし一人ですべてのメンバーを見るのは難しいですが、それを委ねられる存在として各マネジメントがいてくれています。

ーーーアナグラムのプロダクトは「人」である、というのはここにも言えるんですね。

まさにそうです。業界を取り巻く環境は、特にテック周りなど、今後もどんどん変わっていくでしょう。アナグラムも社長が変わりましたし、今後さらにメンバーが増えれば、その顔ぶれや雰囲気も少しずつ変わっていくかもしれません。

でも、人が成長し続ける限り、アナグラムも変わらず成長していけると思っています。そして、その成長を最もよいかたちで支えられるのが「一気通貫」という仕組みだと信じているんです。

アナグラムでは2025年も引き続き、一緒に働く仲間を募集しています!この考え方に共感するという方や、成長できる環境を求めているという方、ぜひ一緒に働きませんか?

発信の内容やイメージからハードルが高いと思われる方もいらっしゃるようですが、もしご興味を持っていただけた場合は、勇気を出してわたしたちの門を叩いてみてください!

説明会も随時開催していますので、まずは雰囲気を掴みたい方はそちらへのご参加も歓迎です。