
2022年3月2日、Yahoo! ディスプレイ広告(以下、YDA)及びMCCアカウントを利用しているYahoo! 検索広告において2022年3月16日から新たに「アトリビューションモデル比較レポート」が提供されることが発表されました。
参考:アトリビューションモデル比較レポートの提供開始について
本記事では、これらの詳細や導入にあたっての注意点などを解説します。
※なお、アトリビューションモデルはレポート上のみへの提供となり、コンバージョン計測におけるアトリビューションモデルの導入ではありませんので、ご留意ください


目次
アトリビューションとは

一般的にインターネット広告では、コンバージョンに至る直前に接点を持った広告が重視される傾向にあります(直接効果)。
上記画像の「直接効果」のように最後に接触した広告のみを評価する場合、限られた面のみで広告の費用対効果を判断しなければなりません。
しかし、ユーザーはコンバージョンに至るまでに数多くのメディアやSNS、または広告といった様々な情報と接触しています。
直接効果だけで広告配信の評価や投資を決めてしまうと、間接的にコンバージョンに寄与していた広告(間接効果)への適切な評価ができないため、対象の広告キャンペーンを停止してしまった場合には、結果として「商品を知るきっかけ」が減り最終的なコンバージョン数が減少する事態になりかねません。
このようにコンバージョンに至るまでの複雑な経路を可視化し、間接効果も加味したコンバージョン獲得の貢献度を評価・分析する考え方を「アトリビューション」と呼びます。
今回のアップデートを通して、Yahoo! ディスプレイ広告・Yahoo! 検索広告(MCCアカウントを利用している場合のみ)でもアトリビューションを活用した効果のレポーティングが可能になりました。
アトリビューションの基本について知りたい方は、下記の記事をご覧ください。
アトリビューションモデル比較レポートとは
ここからは、新たに実装された「アトリビューションモデル比較レポート」について解説していきます。
アトリビューションモデル比較レポートについて

アトリビューションモデル比較レポートは、広告管理画面のレポート画面から作成することでキャンペーンや広告グループのコンバージョン獲得への貢献度を可視化できます。

上図を例にすると、従来はコンバージョンに直接寄与した「キャンペーンA」のみが評価対象でしたが、アップデート以降はコンバージョンが発生した際に過去に接点を持った「キャンペーンB・C」もそれぞれのモデルにより貢献度の適切な評価を行うことができるようになりました。

また、ディスプレイ広告のみならずMCCアカウントを利用していれば検索広告アカウントもレポートの対象に指定できます。さらに、各アカウント内のキャンペーンや広告グループのみならず、ディスプレイ広告アカウント・検索広告アカウントを横断して分析することも可能です。
外部ツールを使用せずとも、管理画面のレポートにてアトリビューション分析を元に全体最適化が行えるようになるのは嬉しいですね。
コンバージョン経路レポートとの違いは?
YDAには経路を分析するレポートとして「コンバージョン経路レポート」が存在します。
コンバージョン経路レポートもアトリビューションモデル比較レポートと同様にコンバージョン前の接点を可視化できますが、コンバージョン経路レポートはインターネットユーザーがコンバージョンに至るまでに接触したキャンペーンを表示するものであり、初回接触や間接効果などビジネス戦略に合わせた評価ができるものではありません。
加えて、アトリビューションモデル比較レポートには下記のメリットがあります。
- 直接効果のみならず、間接効果も加味してコンバージョンへの貢献度を可視化できる
- アトリビューションモデルを選択することで、より適切な予算配分で運用を行える
- キャンペーンのみならず広告グループ単位、さらには検索広告をも対象にレポートの集計ができる
上記を踏まえると、アトリビューションモデル比較レポートはコンバージョン経路レポートの上位互換といえるでしょう。
コンバージョン経路レポートの詳細について知りたい方は、下記をご覧ください。
レポートは4つのアトリビューションモデルに対応
今回は下記4つのアトリビューションモデルが提供され、それぞれ貢献度に応じた評価の枠組みが異なります。
①ラストタッチ
②線形
③接点ベース
④ファーストタッチ
選ぶ際には、ビジネスの成長戦略やコンバージョンまでのユーザーの動きに合わせたアトリビューションを使い分けると良いでしょう。それぞれの特性について紹介していきます。
①ラストタッチ

最後に接点を持った広告だけに貢献度を割り当てるモデルです。
現在提供されているデフォルトのコンバージョントラッキング設定で、一般的に最も広く採用されているモデルといえるでしょう。検討行動が短く、機能性重視で選択される商材におすすめです。(例:単品通販、旅行予約サイト、VOD、総合通販サイト)
間接コンバージョンが全く評価されないデメリットもありますが、コンバージョンに一番近い広告接点を評価できるため、費用対効果が合わせやすく最も無難なアトリビューションモデルと言えます。
②線形

接点を持った全ての広告に貢献度を均等に割り当てるモデルです(例: 4つあれば25%ずつ)。
線形モデルは検討期間が長く、各検討段階へのアプローチに貢献度を割り当てたい商材におすすめです。(例:普通車・軽自動車、保険、人材、金融、不動産、通信キャリア)
全体像を把握する上では非常に有効ですが、全て均等に評価されることで逆に施策の重要度が測りにくくなります。各施策の評価は一定量データがまとまった上で判断するのがよいでしょう。
③接点ベース

最初と最後に接点を持った広告の貢献度を40%ずつとし、残りの20%を途中に接点を持った広告に均等に割り当てるモデルです。
接点ベースモデルは、検討行動に表れないが購入に対しブランドイメージや好感度が影響しやすい商材に適しています。(例:飲料、消費財、ファッションブランド)
認知と獲得の両方を広告で評価できる一方で、検討期間中に接触した間接効果の評価が低くなる点には気をつけましょう。コンバージョンに至る出入り口をバランスよく評価したい場合に便利なモデルです。
④ファーストタッチ

最初に接点を持った広告だけに貢献度を割り当てるモデルです。
明確な顕在層に貢献度を振り分けるラストタッチと異なり、ファーストタッチでは最初の接点を評価してくれるため初回時の印象が重要な商材におすすめです。(例:輸入車・高級車、ラグジュアリーブランド)
ラストタッチのように獲得に直接寄与した広告を評価できない一方で、認知段階のユーザーに積極的にアプローチしていく上で有効なモデルです。
主な注意点
アトリビューションモデル比較レポートの注意点として、下記が挙げられます。
レポートにはビュースルーコンバージョンも含まれる

Google 広告ではクリックや視聴等のインタラクションを元にアトリビューションが判断される(≒クリックスルーコンバージョンを元に評価を行っている)一方で、Yahoo! 広告ではインプレッションを元にアトリビューションが判断されます。したがって、「広告は表示されたがクリックをしなかった」場合のビュースルーコンバージョンも、アトリビューションモデル比較レポートに含まれます。
直接広告をクリックした際に発生するクリックスルーコンバージョンを本レポートで抽出することはできないため注意しましょう。
項目・対象アカウントによってレポートを集計できる期間が異なる
ディスプレイ広告(予約型・運用型)と検索広告では、レポートを集計できる期間が異なります。
対象となる指標 | Yahoo! ディスプレイ広告 | Yahoo! 検索広告 | 複数アカウント |
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コンバージョン数(ビュースルー含む) | 2020年9月1日以降のデータが集計可能 ※ルックバック期間は2020年8月1日以降が対象 |
2021年3月1日以降のデータが集計可能 ※集計期間は最大30日 |
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コンバージョンの価値(ビュースルー含む) |
それぞれの集計期間をよく理解した上で分析を行うようにしましょう。
検索広告レポート集計上の制限
ディスプレイ広告ではレポート上の評価にビューアブルインプレッションを含める・含めないを選択することが可能です。しかし、検索広告で計測されるインプレッションはビューアブルインプレッションではないため、検索広告上のレポート集計では通常の「インプレッション」が評価対象となります。
また、検索広告のコンバージョンタグで「初回のみ」を設定している場合も、アトリビューションモデル比較レポートではすべてのコンバージョンが集計される点にも注意が必要です。
その他の注意点
その他、下記の点にも気をつけましょう。
- アトリビューションモデル比較レポートは前日分までのデータが対象
- アトリビューションモデル比較レポートのコンバージョン関連の項目は、 キャンペーンの「最適化に使用するコンバージョン」の設定により計上方法が変わる
アトリビューションモデル比較レポートを使用する際は、上記の点に留意して活用しましょう。
まとめ
限られた予算で成果を出すためには、「どこにどれくらい投資をするか」を見極めることが非常に重要です。アトリビューション分析を行うことで、それぞれの商材に合ったモデルを元に、配信上強化すべきポイント・再配分すべきポイントが明確になります。
ツールはより便利になっていきますが、企業のマーケティング活動の根本は昔も今も大きくは変わっていません。同じビジネス・商材でも成長戦略や出稿している媒体によって評価方法・分析内容は変わってくるため、常に「何が最適か?」を問い続けながらアトリビューションモデルを活用し配信をブラッシュアップしていきたいですね。
