※2023年6月~9月にラストクリック、データドリブン以外のアトリビューションモデルの廃止が発表されました
-----
アトリビューションは、コンバージョンまでの経路のうち直接成果につながった接点だけではなく、コンバージョンに至るまでの複数の接点をさまざまな視点からみて、それぞれの接点に特定の方法で貢献度を割当てるという考え方です。間接効果と呼ばれているケースもあります。
さまざまな視点としていくつかの代表的な型(モデル)があり、これを用いて集客や顧客に対するコミュニケーションの方針を定めるための分析を行うことを「アトリビューション分析」と呼んでいます。今回はアトリビューションの基礎知識をわかりやすく解説していきます。
目次
なぜアトリビューションという考え方が必要なのか
ユーザーはコンバージョンに至るまでに、さまざまな広告との接点を持っています。
従来の通り、コンバージョンに繋がったユーザーが最後に接点を持った広告だけを評価する視点しか持っていないと、コンバージョンに繋がりやすい広告への投資を増やし、コンバージョンに繋がりづらい広告への投資を抑えることを行うことで、広告費用対効果を改善していくことでしょう。
それにより、商品を知ってもらう「きっかけ」として貢献していた広告は評価されず、いつの間にか、ユーザーとの接点を無くしていきます。結果として、広告費用対効果は改善できるものの、成果が頭打ちになることにもなりかねません。
私は最近、大手家電量販店のECサイトでノートパソコンを購入しました。はじめは、違うメーカーの機種を購入しようと検索をしている中で、たまたま訪れたブログで見かけたバナー広告が、実際に購入した商品を知ったきっかけでした。最後にはその商品名を検索して購入にいたりましたが、もしバナー広告を見なければ、検討台にも上がらなかったと思います。
私のように、ほしい商品が決まっていて、情報収集していたとしても、思わぬ出会いで検討の候補に上がることもあります。スマートフォンによりいつでも情報に触れられる中では購入の意思決定をするまでに接するメディアや情報は多岐にわたり、その経路は人によりさまざまです。
企業側から見ると、購入までの道のりが無数に増えている中で、どの接点が購入の意思決定により強く影響したのかを特定するのは難しいことです。ただ、広告の成果を高めるためには、これを見える化し、適切に評価する必要があります。
視点が変われば、広告の評価は変わる
運用型広告において多くのプラットフォームが採用しているコンバージョンの計測方法は、数ある視点の内のひとつでしかありません。たとえば、先ほどの例で言えば、最後の検索に対する施策のみを評価する方法(ラストクリック)が一般的です。
しかしこの評価方法では、私が商品を知るきっかけとなったバナー広告などラストクリック以前は、いっさい評価の対象となりません。こう言われてみるとなんだか違和感を感じますよね。
このように、ふだん当たり前だと思っている施策の評価方法では、限られた面しかみることができないのです。そのため、施策の貢献度を評価するには、さまざまに視点を変えてみる、という方法があります。そのひとつが「アトリビューション」を利用した方法です。コンバージョンまでの複雑な経路の中で、それぞれの接点がどの程度コンバージョンに貢献したかを評価・分析することができます
アトリビューション分析に向くケースと向かないケース
どんな場合でもアトリビューション分析を行えば、有効というわけではありません。たとえば、購入検討をし始めてからすぐの購入に至ることの少ない高額な商品など、比較的期間が長い商品などは向いていることが多いです。以下のような場合は、アトリビューション分析を検討する余地があります。
- コンバージョンまでに複数のチャネルを経由する
- コンバージョン数に占める指名検索の割合が高い
- リターゲティング広告の成果は増えているが、サイト全体の売上が増えていない
- コンバージョンに繋がったキーワードが極端に偏っている
- アトリビューションモデリング(アトリビューションレポート内)で見た時に、ラストクリックモデル(現行のモデル)とその他のモデルで差が見られる
逆に、扱っている商品やサービスがどこで購入しても差の少ない消費財など、比較検討されづらく、コンバージョン経路がシンプルな場合は、アトリビューション分析の結果得られる成果はあまり期待できないでしょう。
アトリビューション分析への取り組み方
それでは、代表的なアトリビューションの型(モデル)を紹介し、アトリビューション分析の基本、取り組み方を解説していきます。
基本的な5つのアトリビューションモデル
まずは基本的な5つのアトリビューションモデルを紹介していきます。
①ラストクリック
成果に結びついたユーザーの最後に接点へ貢献度合いを100%割当てます。
Google 広告やYahoo!プロモーション広告など媒体が提供しているコンバージョントラッキングのデフォルト設定であり、一般的にはもっとも多く採用されているモデルでしょう。
コンバージョンにもっとも近い広告接点を評価することができるので、獲得に対して高い評価をつけることができるため、費用対効果が合わせやすいため、もっとも慎重なアトリビューションモデルです。
②ファーストクリック
成果に結びついたユーザーが最初に接点を持った広告へ貢献度合いを100%割当てます。
ラストクリックモデルとは正反対で、ユーザーとの最初の接点に対して貢献度合いとして100%評価してくれるので、ビッグワードや図1のように未だ認知の薄いユーザーとの接点に対して高い評価をつけることが可能です。
コンバージョンから最も離れた広告接点を評価するという点では、積極的に新しいユーザーとの接点をもつことができるアトリビューションモデルと考えられます。
③線形
成果に結びついたユーザーが接点をもった広告全てへ貢献度合いを均等に割り当てます。
すべての接点を均等に評価するため、どの接点が良かったのか判断するために、一定量のまとまったデータが必要になります。反対に本当にその接点が必要なのか、判断することが難しいことも考えられますね。
④接点ベース
成果に結びついたユーザーが、接点をもった広告全てへ貢献度合いを割当てます。
割合は、最初と最後に接点をもった広告に対して比重が重く、40%ずつ。残りを中間接触の広告へ均等に割り当てます。
線形と同様にすべての接点を評価しますが、初回接点と最後の接点に多く貢献度を割り当てるため、コンバージョンに至る入り口と出口をバランスよく評価することが可能となります。
⑤減衰
成果に結びついたユーザーが、接点をもった広告全てへ貢献度合いを割当てます。
割合は、最後に接触した広告を最も割合多く評価し、最初の接触に向かうにつれ、接点を持った期間や応じて評価の割合が小さくなるよう割り当てます。
ラストクリックに重きを置きつつ、コンバージョンに近いほど、貢献度を多く割り当ててくれるため、比較的慎重なアトリビューション分析が可能となります。
成長戦略に合わせたアトリビューションモデルの選択
アトリビューション分析を行う一番の目的は、広告費用のリアロケーション(再配分)、つまり、広告費用の配分の見直すことです。
限られた予算内でもっとも成果を出すためには、広告に限らず何にいくら予算を費やすのかは非常に重要です。各接点のコンバージョンへの貢献度合いを見える化することで、広告であれば力を掛けて出稿すべき媒体やターゲットや、逆に予算を削るべきところを判断するのに役立ちます。
では、ご紹介した5つのアトリビューションモデルのどれを使うのがよいのでしょうか。まず考えるべきはどう成長させたいフェーズなのか、ということです。
上図では右に行くほど積極的に成長を図りたい場合に向いているアトリビューションモデルです。ユーザーが商品の購入を検討し始めた時点では、まだ購入の意志は固まっていないことが多く、費用対効果は購入前の接触地点に比べて悪くなりがちです。しかしながら検討初期のユーザーに広告予算を多く配分してアプローチすることで、商品を購入してくれる可能性のあるユーザーへ多く接触すること可能となります。たとえば費用対効果を多少下げてでも売上規模の拡大を図っていきたい場合に検討するのをおすすめします。
一方で、ラストクリックは、購入にもっとも近い接触となるため、比較的に費用対効果の合わせやすいモデルです。積極的な成長を目指すよりも慎重に拡大していきたい場合は、よりラストクリックに近いアトリビューションモデルから取り入れてみるのがよいでしょう。
Google 広告におけるアトリビューション分析
Google 広告では、コンバージョントラッキングのアトリビューションモデルを変更することで、効果測定やスマート自動入札へ活用する仕組みがあります。
また、そのほかGoogle 製品においても比較的手軽にアトリビューション分析に取り組める環境があります。
Google 広告
検索アトリビューション
検索広告(検索キャンペーン、ショッピングキャンペーン、動的検索広告)を対象に、検索アトリビューションという名称で、アトリビューションレポートを確認することが可能です。また、アトリビューションレポートの中の「アトリビューションモデリング」から、現行のモデルとその他のモデルの違いで、成果へどんな影響を与えるのか確認することが可能です。
参考:アトリビューション レポートについて - リニューアル版 - Google 広告 ヘルプ
①管理画面右上「ツール」を選択
②「検索アトリビューション」をクリック
③「アトリビューションモデリング」を選択
④比較したいアトリビューションモデルを選択
比較する階層は、アカウント/キャンペーン/広告グループ/キーワード/マッチタイプ/デバイスを選択可能です。
データドリブンアトリビューション(DDA)
先に紹介した基本的な5つのアトリビューションモデル以外に、利用可能なアトリビューションモデルがあります。過去に弊社ブログでもご紹介している「データドリブン アトリビューション(DDA)」です。
参考:Google アドワーズのデータドリブン アトリビューション(DDA)について理解してみる
基本的な5つのアトリビューションモデルではあらかじめ決定された割合で成果を割り振っていましたが、DDAでは接点に割り当てる貢献度は、機械学習を利用した動的なアルゴリズムに基づいています。
「過去30日間に15,000回以上のクリックと、各コンバージョンアクションに600回以上のコンバージョンが必要」という利用条件があり、利用のハードルは高めですが、十分なデータが集められるのであれば、オーダーメイドなモデルの利用が可能となります。
Google アナリティクス
無料のアクセス解析ツールとして幅広く活用されているGoogle アナリティクスにもアトリビューション分析機能があります。
Google 広告のアトリビューションモデルとは異なり、カスタムパラメータを設定することで、自然検索なども含めたGoogle 広告以外のチャネルを含めたクロスチャネルでの分析ができます。
参考:GoogleアナリティクスでYahoo!プロモーション広告を計測するための計測パラメータ完全版
それにより、広告戦略で活用しているすべてのプラットフォームを横断して広告費用のリアロケーション(再配分)が可能になります。
なお、Google 広告のスマート自動入札への活用に関しては、ラストクリックモデルのみ活用が可能であるため、自動入札への活用に関しては、注意が必要です。また、Yahoo!やFacebookなど他広告プラットフォームの入札へ干渉することは出来ません。
Google アトリビューション
Google アトリビューションは2017年5月すでに発表されていますが、いまだベータ版での提供のみのため、正式リリースが心待ちにされているGoogleが提供するアトリビューション分析ツールです。
大半のアトリビューション分析ツールで課題となる以下の点をクリアするできるツールとして注目を浴びています。
- 設定が難しい
- ユーザーが複数のデバイスを使用している場合、それらをまたいで購入経路を測定できない
- 広告ツールと連携していないため、対処が難しい
参考:アナリティクス 日本版 公式ブログ: 機械学習が後押しする広告と解析におけるイノベーション
これまでご紹介してきたGoogle の他の製品では、それぞれできないことがありましたが、これらを一通りなかなうことができるツールですので、導入が待たれますね。
最後に
一昔前にくらべ、アトリビューション分析を行うための環境が整備され、実施のハードルはとても低くなっています。ラストクリック型から脱却について言及される機会も増え、テクノロジーの進歩でこれを実行できているケースも着実に増えているのも実感できます。
広告だけにとどまらず広告主のマーケティングが本当に効果があるものなのかという疑問を、定量的なデータ分析が可能となることで、いよいよデータドリブンなマーケティングは現実味を帯びます。広告施策をはじめとして、広告主のマーケティング活動全体の効果を測る方法のひとつとして、できるところからアトリビューションに取り組んでいきたいですね。