Google 広告に携わる方だけでなく、インターネット関連に携わる方であればCookieに対する制限について近頃トピックが多いのはご存知かと思います。
そしてその文脈でGoogle 広告の拡張コンバージョンという言葉を耳にした方もいらっしゃるのではないでしょうか?
しかし、ヘルプを読んでみるとサーバーにCookie、ハッシュ化……とWeb技術に関わる単語がたくさん出てきてなんだか難しいですよね。
そんな方のために今回は拡張コンバージョンについて概要から機能提供に至った背景、設定方法までわかりやすく解説していきます。
※拡張コンバージョンは2022年1月現在ベータ版機能ですので、導入できない場合があります。設定が管理画面から出来ない場合は、Google 広告の営業担当者に問い合わせてみることをおすすめします。
拡張コンバージョンとは
拡張コンバージョンとは、既存のコンバージョンタグを補完する機能です。
多くの場合、コンバージョンの計測にはCookieという技術が利用されていますが、現在ではこのCookieの利用が制限されるケースが増えており、コンバージョンの計測が十分に行えないことがあります。
GoogleはCookieが制限されている中でも広告の効果測定が行えるよう、拡張コンバージョンという計測手段を提供することで、このような欠損したコンバージョンデータの補完が可能となるよう対応を進めています。
拡張コンバージョンは、自社のウェブサイトで取得したメールアドレス、氏名、住所、電話番号などの個人情報をグローバルサイトタグがハッシュ化(暗号化)した上でGoogleに送信する、という仕組みです。
その後、送信したデータとGoogle アカウント(広告に対してなんらかの操作を行ったユーザーがログインしていたGoogleアカウント)と照合します。これにより正確なコンバージョンを計測することが出来ます。
拡張コンバージョンは、上記の仕組みから、登録、申し込み、購入など、顧客データが存在するコンバージョンでのみ機能します。次の 1 つ以上の顧客データが取得可能である必要があります。
- メールアドレス(推奨)
- 氏名と自宅の住所(番地、市区郡、都道府県、および郵便番号)
- 電話番号(上記の 2 つのいずれかと組み合わせる場合のみ。単体では使用できません)
機能提供の背景
このような機能はなぜ提供されることになったのか、その背景を解説します。
既存のコンバージョンの計測にはCookieという技術を使っています。
このCookieですが、コンバージョンの計測だけでなく、リマーケティングなどの個人の行動履歴や興味関心のターゲティングにも用いられております。
こういった広告配信に用いられている行動履歴や興味関心は、広告運用者にとって便利な半面、「いつも同じ広告が表示されてウザい」「知らない間に情報が取得され、広告のパーソナライズに利用されるのが気持ち悪い」などの声も大きくなっています。
また、Cookie自体がインターネットに関するテクノロジーの中でもレガシーなものになってきており、クロスサイトスクリプティング(XSS)の脆弱性を突いて、Cookie内の個人情報を盗み見られてしまうというケースも増えてきています。
これらの背景から、このCookieの利用を制限することで、第三者が勝手に個人の情報を利用することを防ぎ、利用者のプライバシーを守ろうというのが世界的な流れになってきています。
事実として、ブラウザやデバイスでサードパーティCookieの利用が制限されてきています。
たとえば、Appleが開発しているWebブラウザ、Safariでは10年以上前からサードパーティCookieの利用を制限していましたし、Google Chromeでも2023年後半までにサードパーティCookieのサポートを完全に終了することを発表しています。
これらの流れがあり、計測にはサードパーティCookieだけではなくファーストパーティCookieを利用することが増えています。しかしながら、そのファーストパーティCookieもAppleのITPによって制限がされたり、海外のGDPRやCCPAといったプライバシー保護に関する法律によって、Webサイトにアクセスした時点でCookieそのものの利用に関する同意を取らなければならないケースが増えてきているなど、Cookie自体の利用制限が進んできています。
当然ながら、デバイス側でCookieの利用が制限されたり、Webサイトへのアクセス時点で同意が得られなければCookieを利用することができくなるため、Cookieを使った計測の精度は大幅に落ち込むことになります。
参考までに、現在の日本ではCookieの利用に際して事前の同意は必須ではありませんが、海外展開を行っている日本企業の場合はCookieの利用に際して同意を取る必要があるケースがあり、既にCookieを利用した計測で測定データの欠損が発生しやすい状況下に置かれています。
時代はこのまま規制を強化していく流れが続くと思われます。そうなると、日本でもいずれCookieを使った計測が出来なくなる日が到来します。
こういった流れを受けて、正確なコンバージョン計測ができなくなるという懸念から、既存のCookieによるコンバージョン計測を補完する拡張コンバージョンの機能提供につながりました。
従来のコンバージョン測定との違い
従来のコンバージョンと拡張コンバージョン、何が違うのか解説していきます。
従来のコンバージョンではサイトに設置したタグがWebブラウザのCookieにクリックID(GCLID)を書き込み、その値をもとにクリックされた広告を特定し、コンバージョンとして計上します。
しかし、Cookieの利用が制限されGCLID値がGoogleに送信できなくなっていると、どの広告がクリックされたが分からないため、本来計上されるべきコンバージョンが計上できなくなってしまう場合があります。
このようにCookieの制限によってコンバージョンデータに欠損が発生した場合に、広告主から送信されたファーストパーティデータ(コンバージョンに至った顧客の個人情報)とGoogle アカウントのデータを照合し、広告クリックとコンバージョンを結びつけることが出来ます。
このように拡張コンバージョンは、従来のコンバージョン計測を補完する役割を果たすことから、まさしくコンバージョンの”拡張”機能といえるでしょう。
拡張コンバージョンの導入方法
導入にはGoogle タグマネージャーを使用する方法と、Google 広告のコンバージョンタグ、グローバルサイトタグを使用する方法があります。
それぞれ下記のページに詳細がありますので、ヘルプを確認し、またサイトの改修が必要になりますのでサイトの管理者に相談しながら導入を進めましょう。
Google タグ マネージャーを使った拡張コンバージョンの手動導入(ベータ版) - Google 広告 ヘルプ
グローバル サイトタグを使った拡張コンバージョンの手動導入(ベータ版) - Google 広告 ヘルプ
また、拡張コンバージョンの性質上、ファーストパーティデータをGoogleのサーバーに送信することになります。この際、ファーストパーティデータの扱いについて法務部門との調整を行う必要があります。
Googleに送信できるファーストパーティデータはタグによってハッシュ化(暗号化)されるものの、タグ経由で送信する場合はハッシュ化されていない情報をタグに設定するため、企業ポリシーとしてどこまでがGoogleとの共有がOKなのかは事前に決め、承認を得たりプライバシーポリシーへの記載と事前同意の取得など行えるように進めておきましょう。
ファーストパーティデータを使った計測が主流に
広告効果測定において現在はほとんどがCookieを用いた計測ですが、今後拡張コンバージョンのようなファーストパーティデータを用いた計測方法が主流になる可能性は高まっています。
たとえば、同じくCookieを利用しない効果計測への対策を進めているFacebook広告ではGoogle 広告の拡張コンバージョンと同様に計測タグ(ピクセル)を通してファーストパーティデータを送信し、計測精度を向上させる手動詳細マッチングや、APIを通してFacebookのサーバーに直接コンバージョンデータを送信するコンバージョンAPI(CAPI)の機能を提供開始しています。
拡張コンバージョンの理解にはCookieやハッシュ化などWebやブラウザの知識が必要となり、実装するための工数もそれなりにかかります。しかし、昨今主流となっている自動入札はコンバージョンの計測が正しく行われている前提で働きます。よってコンバージョン計測ができていなければ見かけの成果(管理画面上での数値)が悪化し、広告費用対効果の減少・またそれに伴う配信量の低下といった事態も起こりえます。
こういったデメリットを考慮し、導入するのか、導入するのであれば自社で行うのかパートナーにお願いするのか、しっかり検討しましょう。