SNS投稿や広告をはじめ、ビジネスでもあらゆる場面で動画を活用する機会が増えてきました。
「視覚」「聴覚」の両方を使う動画は、画像や文章と比べて、短時間で伝えられる情報量が圧倒的に多いのが強みです。
しかしながら最近は動画の見方も多様化しているため、必ずしも視聴者が集中して動画を見てくれるとは限りません。動画をバックグラウンド再生しながら別のアプリを開いていたり、ラジオ感覚で音だけ聞きながら家事やゲームをするといった「ながら見」をする人も増えています。
どんな状況でも情報が伝わるようにするには、映像やテロップなどの視覚情報だけでなく、聴覚で情報を伝えることができるナレーションも入れると効果的です。
そこで今回は、ナレーションを入れる上で押さえておくべきポイントと収録方法を解説していきます。
ナレーションの効果的な使い方とメリット
すべての動画にナレーションが必要かというと、そうではありません。
動画内の登場人物が直接セリフを話していたり、セミナーなど話している内容がメインとなる動画は、別途ナレーションを入れる必要はないでしょう。
また、認知度が高かったり見た目が重要な商材の場合、雰囲気を出すためにあえて映像とBGMだけにしてブランドイメージを伝えることもあります。
ナレーションは映像を補足する役割として、以下のような目的で使うと効果を発揮しやすいです。
- 商品やサービスの使い方を紹介する
- 場所や登場人物の心情など状況を説明する
- お得な情報やアピールポイントを強調する
「テロップを入れたくなる箇所にナレーションも追加する」と考えるとわかりやすいかもしれません。しかし、テロップと同じ内容でいいのであれば、なぜナレーションまで入れる必要があるのでしょうか?
具体的にどんなメリットがあるか見ていきましょう。
映像だけの場合より内容を理解しやすくなる
映像だけをじーっと見続けて内容を理解する場合、途中で目を離すことができないので集中力が必要です。
たとえば海外映画を字幕で見ている場面を想像してください。その国の言語を習得していないと、目を離した途端に内容がわからなくなってしまうことがありますよね。
映像にプラスしてナレーションがあると、耳からも情報を得ることができるので「ながら見」している人にも内容を理解してもらいやすくなります。
声のトーンで動画の印象を変化させる
人はコミュニケーションのときに、以下の割合で影響を受けると言われています。
<メラビアンの法則>
表情や動きなどの「視覚情報」・・・55%
口調やテンポなどの「聴覚情報」・・・38%
話の内容などの「言語情報」・・・7%
もちろん「何を伝えるか」が1番大切ですが、話の内容を理解するよりも早く、見た目や声のトーンが印象を左右するのです。
たとえば「今だけなんと……全品10%オフ!!!」とテンションが高くて抑揚のある声を聞くと、内容を理解する前に「なんだろう」と注目してしまいませんか?
普通の会話と同じように、あえて抑揚を少なくした話し方にすることでUGC(ユーザー生成コンテンツ)風の動画にしたり、落ち着いた声でゆったりと話して高級感を演出したり……。ナレーションの口調やテンポという聴覚情報を足すことで、動画の印象を変化させることができます。
ナレーションの収録方法
それでは、実際にナレーションを収録する方法を、以下の3つに分けてご紹介します。
- 自分で録音する
- 機械音声を使う
- プロに依頼する
それぞれの手順と押さえておきたいポイントを見ていきましょう。
自分で録音する
ナレーションを自分自身で録音する場合、手軽で費用はかからないものの、ナレーションを読み上げるスキルが必要になります。
- なるべく費用や時間をかけたくない
- クオリティの高いナレーションよりも、UGC風の動画を目指したい
<こんな方におすすめ>
STEP1:原稿を準備する
まずはナレーション原稿を用意します。原稿を用意せずに録音を始めると、よほど話上手な人でない限り、まとまりのない内容になってしまうことがほとんどです。
難しい言葉は使わず、一文を短くすることを意識してセリフを考えます。どのタイミングでどんなナレーションを入れると視聴者に情報が伝わりやすいか、映像を見ながら考えてみましょう。
STEP2:読み上げる練習をする
原稿が用意できたら、映像を再生しながら話すテンポやタイミングなどを意識して練習します。音声を入れる場所は編集時に調整できますが、映像よりナレーションが長くなってしまっていないか、練習時点で確認しておきましょう。
また、声のトーンが動画の雰囲気に合うように調整します。話している自分自身の声はわかりづらいので、一度録音して聴いてみたり第三者の意見を聴くのが良いでしょう。「このナレーションと同じような雰囲気にしたい」という参考動画を見つけておくと、目指す声のトーンやテンポがイメージしやすいです。
STEP3:録音する
録音するときは、物音のない静かな場所で録音しましょう。生活音や環境音のある場所だとナレーションにノイズが入ってしまい、聞き取りにくくなってしまいます。
録音機器はボイスレコーダーでも、スマホやパソコンのアプリでも問題ありません。iPhoneの場合は「ボイスメモ」というアプリが標準搭載されているので、そちらで十分です。標準搭載されていない機種であれば、録音アプリを検索してインストールしておきましょう。
録音機器は、手で持った状態で録音するとマイクが拾う音声ボリュームにバラつきが出てしまうので、机などに置き固定した状態で録音します。口からマイクまでの距離は15~20㎝だと声を綺麗に拾いやすいです。
一度にすべてのセリフを録音することにこだわらず、一文ずつ切りながら録音する形で問題ありません。納得できるまで何度もチャレンジしましょう。
機械音声を使う
2つ目の方法は、テキストを音声合成ソフトに読み上げさせる方法です。自分で録音するのと比べて録り直しが不要となるので、ソフトの操作さえ覚えれば、短い時間でナレーションを準備することができます。
機械音声というと、感情の起伏がなく淡々と文章を読み上げるイメージを持つ方もいるかと思いますが、最近の音声合成ソフトではナレーション機能の性能が向上しているため、高品質で滑らかな音声を作成できます。
- 自分の読み上げスキルに自信がない
- 音声合成ソフトの操作に抵抗がない
- 今後何度もナレーションが必要になる
<こんな方におすすめ>
STEP1:原稿を準備する
自分で録音する場合と同様に、ナレーション原稿を用意しておきましょう。
STEP2:音声合成ソフトを使って録音する
「音声合成ソフト」と検索すると、選びきれないほどたくさんのソフトが出てきます。ここではビジネスで使い勝手の良いソフトを2つ紹介します。
VOICEVOX(無料)
「VOICEVOX」はテキストの読み上げができる、無料の音声合成ソフトです。商用利用が可能で、20種類以上のキャラクターから声質を選べます。
さらに、音程のグラフでナレーションのイントネーションを調節できたり、話す速度や音声の高低や抑揚も細かく調節することができます。
使用する際は「VOICEVOX:(キャラ名)」というようにクレジットの記載が必要なので、利用規約を必ず確認しましょう。
VoicePeak(有料)
「VOICEPEAK」は、最新のAI音声合成技術を搭載した読み上げソフトです。テキストを入力するだけで、間の取り方やアクセントなど、違和感の少ない高品質な音声がすぐに作成できます。
読むスピード(速さ)や、声の高さ(ピッチ)を調整できるほか、幸せ、楽しみ、怒り、悲しみの4つのパラメータがあるので、これらを動かすことでも細かくニュアンスを変えることが可能です。
体験版もあるので、目指すナレーションが録れそうかどうか、まずは使用感を試してみましょう。
▼公式サイトはこちら
VOICEPEAK 商用可能 ナレーター
VOICEPEAK 商用可能 6ナレーターセット
プロに依頼する
最後はプロの声優やナレーション制作会社、クラウドソーシングなどで依頼をし、収録してもらう方法です。
依頼したいナレーターや収録時間によっては費用が高くなることもありますが、質の高いナレーションを求めている場合は1番適しているでしょう。
- サイトに掲載するPR用の動画や説明会など、今後長く使う動画を作りたい
- ブランドイメージを的確に表現してくれるナレーターを探している
- 費用やスケジュールに余裕がある
<こんな方におすすめ>
STEP1:声のイメージを固める
どんなナレーションにしたいのか、明確な声のイメージを固めます。
一般的に、高い声はさわやかで明るい印象を、低い声は落ち着いた印象を与えることができると言われています。たとえばサービスの温かみや親近感のあるイメージを伝えたい場合は明るい女性の声でテンポの良いナレーション、金融や保険のような信頼感を重視したい動画の場合は、落ち着いた低い声の男性のナレーション……というように、動画で与えたい印象から声のイメージを考えましょう。
制作会社や事務所によっては、サイトにサンプルボイスが掲載されていることがあるので、事前に確認しましょう。
STEP2:原稿を準備する
原稿は読み間違えのないように漢字にルビをふっておきます。
商品名やサービス名などの固有名詞を含む場合、読み方やイントネーションがわからない可能性もあるため、正しい読み方をボイスメモで録っておくなど、別途補足しておくと安心です。
STEP3:見積もり、納期の確認をする
声優の事務所やナレーション制作会社、クラウドソーシングで依頼をします。
依頼する場合にもどこに依頼するべきか迷うと思います。依頼する場合のポイントを各依頼先ごとに見ていきましょう。
声優の事務所やナレーション制作会社
声優の事務所やナレーション制作会社に発注をかける場合は事務所や制作会社にお問い合わせし、ナレーターの候補者さんを複数提案いただく選ぶかたちになるため、比較的納期に余裕があり細かいナレーションの要望をかけたい場合の依頼に向いています。事務所や制作会社を通して手配いただくため依頼側の負担も少なく、収録後の修正から納品まで一括して対応いただけます。
- 複数のプロのナレーターさんを紹介いただける
- 細かい要望にも応えていただけて高いクオリティのナレーションが制作可能
<声優の事務所やナレーション制作会社の特徴>
クラウドソーシング
クラウドソーシングは個人に発注をかけるため必要な費用はナレーターさんのみとなり、声優の事務所やナレーション制作会社と比べてコストを抑えて制作を行うことができます。クオリティよりもスピードを重視、金額もい抑えた発注を行いたい方に向いています。
ただし、個人依頼の場合はナレーターさんの技量にナレーションのクオリティが左右されるため音質の面など気になる可能性も出てきます。納得のいくお取引とならない場合は再度自分でナレーターさんを探さなければいけない手間も発生する可能性もあります。
- 声優の事務所やナレーション制作会社と比べてコストを抑えて制作可能(ただし平均の相場はなくナレーターさんによって変動あり)
- 個人間での発注となるため料金や納期など柔軟に調整できる
<クラウドソーシングの特徴>
見積もりの時点で動画や原稿、声のイメージ、仮ナレーションが必要な場合があるため、事前に確認しておきましょう。
金額や納期、キャスティングに問題がなければ、正式発注します。
・・・
最後に、収録したナレーションの音声データを、動画に追加したら完了です。
映像とタイミングが合っていないと違和感を与えてしまうので、編集しながら何度も再生してタイミングが合っているか確認しましょう。
まとめ
映像だけでも動画は成り立つので、さらにナレーションを入れるのは手間だと感じるかもしれません。
しかし、最近では「タイムパフォーマンス(タイパ)」という言葉も生まれ、時間を効率的に使うために動画を「ながら見」するユーザーも増えています。
参考:Z世代の映像コンテンツ視聴、「ながら見」が8割【SHIBUYA109 lab.調査】:MarkeZine(マーケジン)
どんな状況のユーザーにも情報を届けられるよう、ぜひ記事を参考にナレーションを入れるかどうか検討してみてくださいね。