テレワークやビデオ会議などオンラインでのコミュニケーションが急速に広がり、企業側もセミナーやイベントをオンラインで配信することが一般的になってきました。
オンラインイベントは会場の人数制限を気にせず参加者を募ることができ、来場が難しかった遠方の方にもリーチできるというメリットがあります。
ただ、オンライン配信に慣れていないとまず何を準備すべきかわからないですし、「そもそもリアルイベントとオンラインイベントのどちらにすべきか迷っている」という方もいらっしゃると思います。
そこで今回は、リアルイベントとオンラインイベントの違いを説明した上で、オンライン配信をする際に準備すべき機材や注意点まで、詳しく解説します。
目次
イベントの開催方法の違い
まずはリアルイベントとオンラインイベント、さらに二つの形式を掛け合わせたハイブリッドイベントの特徴をそれぞれ見ていきましょう。
※ハイブリッドイベント:会場で行うイベントをオンラインでも配信する形式
メリット | デメリット | |
リアルイベント | ・対面でコミュニケーションができる ・展示やワークショップなど物理的な体験ができる ・音楽や映像、会場設営で空間を含めて演出できる | ・会場費などコストがかかる ・天候や災害などで開催や参加ができないリスクがある ・遠方に住んでいる人は参加ハードルが高い |
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オンラインイベント | ・自宅やオフィスから参加できるので、参加ハードルが低い ・会場のキャパシティを気にせず参加者を募れる ・開催が簡単かつコストを抑えられる | ・直接的なコミュニケーションは難しい ・配信で技術的な問題が起きる可能性がある |
ハイブリッドイベント(リアルイベントをオンラインでも配信する形式) | ・会場に行くかオンラインで参加するか、参加者の選択肢が増える ・リアルイベントとオンラインイベントの良いとこどりができる | ・オンラインイベント/リアルイベント両方の費用と工数がかかる ・参加者集約が煩雑になる |
リアルイベントは会場設営やワークショップ開催などで、参加者に「体験」を提供できるのが大きな特徴です。会場を準備する分費用と工数がかかりますが、直接的なコミュニケーションや強いインパクトを重視する場合はリアルイベントが合っているでしょう。
一方オンラインイベントは、会場に行く必要がないので参加者にとってハードルが低く、開催する側も会場設営がない分、費用や工数を抑えることができます。リアルイベントよりも人数制限を気にせず、遠方の方なども含めて多くの方にリーチできるのも魅力です。講演会や説明会など、参加者が話を聞いたり資料を見て情報を取得することが主目的で、会場での体験がマストではない場合は、オンライン開催を検討してみましょう。
上記のリアルとオンラインの良いとこどりをしたのが、ハイブリッドイベントです。会場に行くかオンラインで視聴するか選択肢が増えることで、より多くの人に参加してもらえる可能性があります。リアルイベントだけだと会場に入れる人数に制限があるため、「せっかくならオンライン配信も行って多くの人に見てもらいたい」という場合に、ハイブリッドイベントを選択する主催者も増えているようです。
「どんな目的のイベントなのか」「参加者に何を与えたいのか」を明確にした上で、どのイベント形式にすべきか検討しましょう。
オンライン配信の準備で押さえておくべきこと
ここからはオンラインイベント・ハイブリッドイベントのどちらかを検討している方に向けて、オンライン配信の手順や注意点を解説していきます。
オンライン配信の形式
一口に「オンライン配信」といっても、リアルタイムでの配信なのか、事前に撮影・編集した動画を配信するのか、配信形式もさまざまです。まずはどんな配信形式があるのか見ていきましょう。
ライブ配信
イベントが実際に進行している間、リアルタイムで配信する形式です。イベント中に参加者が質問をしたり、チャットでやりとりをすることもできます。配信トラブルが発生した場合は、迅速な対応が必要です。
アーカイブ配信
ライブ配信の録画をイベント後に見られるようにする形式です。都合が悪くイベントに参加できなかった人や、もう一度イベントを振り返りたい人にも動画を視聴してもらうことができます。
オンデマンド配信
撮影や編集が済んだ動画を事前に用意し、参加者が自分の都合の良い時間に視聴できるように配信する形式です。参加者は自分のタイミングでイベントを視聴することができます。配信側のメリットは、動画を編集することで最も伝えたい情報や動画の構成などを工夫することができ、わかりやすく情報を伝えられる点です。
配信機材の準備
オンライン配信の形式に合わせて、機材の準備を行います。最低限、カメラ付きのノートパソコンが1台あればビデオ会議をするのと同じようにオンライン配信することもできますが、イベントの目的や求めるクオリティによっては他にも機材が必要です。
パソコン
パソコンでオンライン配信ツールを立ち上げて、配信を行います。配信時に多くのソフトを立ち上げていたりブラウザが開いている状態だと、動作が重たくなり、配信の安定性と映像品質に影響を与える可能性があります。あらかじめ使用しないツールは終了させておきましょう。
ビデオカメラ
登壇者が動かずに話す場合は、パソコンについている内蔵カメラでも十分ですが、登壇者を引きで撮影したり、会場の様子を映したい場合はビデオカメラを用意しましょう。定点で撮影を行う時は三脚で固定します。複数台用いて映像を配信する場合は、ビデオスイッチャーという画面を切り替える機材も必要です。
外付けマイク
高音質で視聴しやすい環境を目指す上では、パソコンの内蔵マイクよりも外付けマイクの方が適切です。PC用スタンドマイクやヘッドセットなど、環境に応じて適切なマイクを選びましょう。
HDMIケーブル
ビデオカメラや2台以上のパソコンを使って映像を配信する場合、HDMIケーブルが必要なので忘れずに準備しておきましょう。
オンライン配信をスムーズに行うためのポイント
イベントをスムーズに行うためには事前準備が大切です。基本的な配信環境の確認から、イベント前後の案内など、意外と忘れがちなポイントまで紹介します。
撮影機材の接続確認ができているか
カメラやパソコン、マイクなどの機器が正しく接続されているか、事前にリハーサルをして動作確認をします。運営スタッフ数人で配信ツールを立ち上げ、聞こえ方や見え方に問題がないか、チェックしておくと安心です。
ネットワーク環境は問題ないか
オンライン配信の映像品質は、インターネット接続の安定性に影響されます。インターネットの回線速度が配信に適しているかを事前にチェックし、必要に応じてポケットWi-Fiなどバックアップ用の回線を準備しておきましょう。
オンライン配信における、解像度ごとのインターネットの配信可能速度は以下の通りです。
速度がギリギリの場合は画面がカクついたり音声が途切れたりと配信トラブルに繋がることがあります。
解像度 | 配信可能速度 | 推奨速度 |
SD(標準解像度) | 1〜3 Mbps | 9Mbps以上 |
HD(高解像度) | 3〜6 Mbps | 18Mbps以上 |
Full HD(フルハイビジョン) | 6〜10 Mbps | 30Mbps以上 |
4K(ウルトラハイビジョン) | 15 Mbps以上 | 45Mbps以上 |
インターネットの回線速度をチェックする際は以下のツールがおすすめです。リンクを開き「チェックする」ボタンをクリックすることで、お使いのインターネット回線の速度を確認することができます。
Google Fiber
参加者への案内はできているか
参加者に対して、オンライン配信のURLや準備事項などを共有し、参加者が円滑にイベントに参加できるようにしておきます。
イベントの予約受付から開催まで日にちが開く場合は、リマインドメールの送付も忘れず行いましょう。リマインドが早すぎると当日までに忘れてしまう可能性もあるため、前日にもう一度送っておくと親切です。
バックアップ体制は十分か
配信中に問題が発生した場合に備えて、バッテリーパックや予備の機器、代替の配信手段などを準備しておきましょう。また、イベント中は運営スタッフが登壇者のそばで待機して、トラブルが起きた時にいつでも対応できるようにしておきます。
動画を録画しておく
当日急に参加ができなくなってしまった方や、動画をもう一度見たい方向けにアーカイブ配信を行う場合、忘れずに録画しておきます。その場合は録画機能のある配信ツールを使うと便利です。事前に申し込みフォームなどで、参加者に録画する旨を伝えておきましょう。
アーカイブ配信の予定がなくても、主催者の間で振り返りに使ったり、編集した動画をオンデマンド配信するなど映像資産としても活用できるため、念のため録画しておくことをおすすめします。
配信後のアンケートを実施
参加者に対してフォローアップメールを送ることで、見込み顧客として購入や契約につながる可能性が高まります。
また、イベントに参加した理由や今後期待することなど参加者にアンケートを取ることで、次回のイベントに活かしたり、サービスによっては課題に応じた営業提案に活かすこともできます。
やりたいことにあった配信サービスを使おう
最後に、企業のオンラインイベントでよく使われている配信ツールである「Zoom」「Google Meet」「Microsoft Teams」「YouTube Live」の4つを紹介します。
配信ツールは他にも多数ありますが、仕事やプライベートで馴染みの深いものに絞りました。参加人数の上限や接続上限時間、チャットや録画機能など……開催しようと考えているイベントに必要な機能が揃っているかを踏まえてツールを選びましょう。
Zoom
Zoomは、ビデオ通話や会議、ウェビナー、チャット、画面共有など、リモートでのコミュニケーションに特化したオンラインプラットフォームです。仕事やプライベートのビデオ通話で使ったことがある方も多いのではないでしょうか。
Zoomを使ってオンラインイベントを開催する場合、「Zoomミーティング」「Zoomビデオウェビナー」の2つの機能から選ぶことができます。
Zoomミーティングは登壇者と参加者による、双方向のコミュニケーションを想定した参加型セミナーに向いています。
参加者がいつでも自由に発言できる勉強会を行う場合や、「ブレイクアウトルーム」という機能を使って小グループに分かれて討論するようなイベントを想定している場合はZoomミーティングがおすすめです。
無料版の参加上限は最大100人で時間制限は40分までとなっているので、参加者が100人以上1000人未満で40分以上のイベントを企画している場合は有料版を検討しましょう。
Zoomビデオウェビナーは、Zoomミーティングで有料ライセンスを取得している人が追加料金を支払うと利用できるオプション機能です。
zoomミーティングとの大きな違いは、参加者が自分でカメラやマイクをオンにできず、他の参加者リストも表示されないという点です。登壇者が視聴者に対して情報提供をすることが基本となるような、出席者の多いイベントに向いています。参加者が発言したい場合は、主催者側による許可が必要です。
ライセンスに応じて500〜5万人まで参加が可能です。Zoomミーティングは有料ライセンスでも最大1000人までとなっているので、大規模なイベントを実施する場合はZoomビデオウェビナーを選択しましょう。
Google Meet
Google Meetは、Googleが提供するビデオ会議プラットフォームです。ビデオ会議ツールとして開発されているので、Zoomミーティングと同じく参加者と登壇者同士のコミュニケーションを積極的に取りたい場合に向いています。
無料版と有料版の提供がありますが、無料版だと録画機能や挙手機能が使えないため、アーカイブを残したい場合や、質疑応答といった双方向のコミュニケーションを想定したイベントの場合は有料版がおすすめです。
また、無料版の場合は参加上限100人、制限時間60分の制約があるので注意が必要です。
Microsoft Teams
Microsoft Teamsは、Microsoftが提供するビジネス向けに設計されたオンラインコミュニケーションのプラットフォームです。
Microsoft Teamsでオンラインイベントを開催する場合、「会議」「ウェビナー」「ライブ イベント」の3つのツールから配信方法を選ぶことができます。
Microsoft Teams 会議は参加者と登壇者の双方向コミュニケーションを想定したツールです。小グループに分かれてディスカッションできるブレイクアウト機能や、挙手などのリアクション機能があります。
無料版でも利用可能ですが、参加上限は100人まで、制限時間は60分までと制約があり、録画機能も利用不可です。有料ライセンスを取得すると、参加上限は300人に、制限時間は24時間に引き上げられ、録画も可能となります。
Microsoft Teams ウェビナーは、最大1000人まで参加可能で、画面共有やカメラ、マイクをオンにできる対象を登壇者に限定できます。加えて、事前に申し込みフォームを作成することができ、最大参加者数の事前把握や開始直前のリマインドが可能です。
Microsoft Teams ライブイベントは、大人数のオンラインイベントを想定したツールで,
最大1万人まで参加可能です。QA機能で参加者から質問を集めることができたり、配信中に巻き戻すことができる追っかけ再生機能なども搭載しています。登壇者から大勢の人に向けて発信する場合はライブイベントを選択しましょう。
ライブイベントはストリーミング配信となるため、視聴者に届くまでに時差が発生することもあります。双方向のコミュニケーションを想定したイベントの場合は不向きとなるので注意が必要です。
YouTube Live
YouTube Liveは、YouTube上でライブストリーミングを行うためのサービスです。
ホストがライブビデオを配信することで視聴者はリアルタイムでそのコンテンツを視聴ができます。クリエイターやブランド、メディア、イベント主催者などが利用し、ライブコンサート、ゲーム実況、講義、イベントの中継、Q&Aセッション、プロモーションなど、多岐にわたる目的で使用されています。ライブストリームはチャット機能を通じて視聴者と対話することができ、ライブ終了後も録画としてアーカイブされます
チャンネル登録者が1000人以上いる場合はYouTube Liveでは広告収益を得ることも可能で、クリエイターやビジネスにとって有用なコンテンツプラットフォームとして重要な存在となっています。
オープンなイベントで、多くの人に視聴してもらいたい場合はおすすめのツールですが、反対にクローズドなイベントには不向きです。参加者を把握することが難しい場合もあるので、イベント後にアンケートを取りたい場合も避けた方がいいでしょう。
- <注意点>
- モバイルからYouTubeライブを配信するには、50人以上のチャンネル登録者が必要(PCから配信する場合は50人未満でも配信可能)
- チャンネル登録者数が「50人以上1000人未満」の場合、配信の視聴者数に制限があったりYouTubeライブ配信後にアーカイブがデフォルトで非公開になる
- 過去90日以内にガイドラインの違反警告を受けていたり、ライブ配信で著作権侵害による削除の通知を受けた場合は配信ができない
まずは一度それぞれのツールを実際に使ってみることをおすすめします。ユーザー体験を通して、ツールが配信目的とあっているか期待通りに機能するかどうかを確認した上でツールの選定を行いましょう。
まとめ
今では当たり前となったオンライン配信を活用したイベントですが、配信に慣れていないと思いがけないトラブルが起きることもあります。
どんなことに気をつければよいか、事前に何を準備しておけばよいか知っておくことで当日も慌てずにイベント開催できると思うので、オンライン配信する際はぜひ今回紹介した内容を参考にしてみてください。