BtoBマーケティング、2023年振り返りと2024年トレンド予測

BtoBマーケティング、2023年振り返りと2024年トレンド予測

アナグラムでBtoBマーケティング支援を担当している二平です。2023年もあと少しになりましたね。本日はBtoBマーケティングを支援していく中で2023年に感じたトレンドなどの振り返りと2024年以降のBtoBマーケティングで差が出るであろうポイント等を記事にしてみました。


2023年を振り返る

まずは2023年のBtoBでどんなトレンドが合ったかな?という視点で見ていきたいと思います。

ノウハウの流通でBtoBマーケティングの平均点が向上

2023年になり、より一層BtoBマーケティングの平均点が向上してきたのではないかと考えています。新たに支援させていただく企業さんなどでも、BtoBマーケティングの基礎的な部分を押さえていると感じることが増えました。

画像引用元:サイル社のHPより

たとえば、才流さんのようにBtoB向けのWebマーケティングの情報を積極的に発信している企業も増えていますよね。数年前に比べてノウハウに手軽にアクセスできるようになった影響ではないでしょうか。

Amazonで「BtoBマーケティング」と検索した時のキャプチャ

さらにはここ数年で「BtoBマーケティング」関連の書籍を目にすることも増えましたよね。

手軽にノウハウや事例にアクセスできるようになったが弊害も

手軽にノウハウや事例にアクセスできるようになったことで弊害もあると考えています。

例えば次のように、ノウハウをうまく自社に落とし込むことができずに失敗をしているケースを良く見かけます。

  • 「THE MODEL」による分業制を導入したが部署間の連携不十分で機能していない
  • 検索ニーズが少ないにもかかわらず検索広告を拡大しようとしている
  • ホワイトペーパーに取り組んだが、ユーザーに求められていない内容で商談に繋がっていない

このようにノウハウが流通した反面、正しく活用できておらず、機会損失をしている企業も出てきているのかと考えています。

BtoBにおけるSNSのマーケティング活用も増加

BtoBマーケティングにおいてもSNS活用がより一層、目立つようになってきたのではないでしょうか?X上ではビジネスにまつわる発信をしている人も多く見かけますし、YouTubeチャンネルを始めている企業も増えていると感じています。

広告代理店のオグルヴィ(Ogilvy)が行った調査によると「B2Bインフルエンサーのインフルエンサーマーケティングにおける需要が急増しており、B2Bビジネスの75%が、すでにキャンペーンにB2Bインフルエンサーを起用していることが明らかになった」とのこと。さらに同記事では「マーケティング担当者の90%が、ソーシャルメディア上のB2Bインフルエンサーは、業界の最新情報を得るために重要だと考えている」と記載があります。

私自身もXで広告運用やBtoBマーケティング関連の情報を発信している人々をフォローし情報収集しています。また、アナグラムでもX運用は力を入れており、2023年12月時点ではフォロワー数が1.7万になりましたが、お問い合わせの対応をしていると「Xを見てから問い合わせしました」という声が一定数あり、Xの影響力を感じられます。

SNSや友人・知人がテレビCMとほぼ同等またはそれ以上の影響度を持っている

画像
画像引用元:この結果を見てもまだ従来型のインフルエンサーマーケティングを続けますか?

上記はSNSなどマーケティング支援を手掛けるトライバルメディアハウス社の池田さんのnoteから拝借している画像ですが、Instagram、X、YouTubeがTVCMとほぼ同等の影響力を持っているというのが調査でわかりグラフにしているものです。
BtoC寄りなデータではあるのですが、BtoC、BtoBでも人を相手にしていることは変わらないため、影響力を与えるメディアとしてはBtoBでも同じようなことが言えるでしょう。

オフラインイベントも復活しオンラインとの使い分けが重要に

2023年になりオフラインイベントが復活してきたな!という感じがありますね。

私も今年になりいくつかのオフラインイベントに参加しましたが、これまでオンラインばかりだったのでオフラインイベントが新鮮に感じましたし、オフラインならではの交流などもとても楽しかったです。

Googleが出社を週3以上するようにしたように出社を増やしている企業が目立ってきています。一方でオンラインも並行して多く開催されており、今まで通りにやっていたウェビナーの内容をただ、オフラインに切り替えただけだと集客が難しく、交流会や現地でのワークショップを追加するなど。オンラインだからこその価値を追加しないとうまく集客ができない印象です。オンラインとオフラインをうまく使い分け、活用することが重要になった1年だったのではないでしょうか

ChatGPTなど生成AIの登場

2023年最大の衝撃と言っても過言では無いでしょう。みなさんの業務もChatGPTなどを始めとした生成AIがだいぶ楽にしてくれているのではないでしょうか?正しくプロンプトを扱えば、今まで以上にリサーチ業務や簡単なアイデア出しが効率的に行なえますよね。

弊社でも広告文の言い回しや、アイデア出しで活用したり、新しい案件を扱う際の市場調査や情報収集に活用しています。

さらに最近ではGPTsやCopilot for Microsoft 365が登場し自分専用にカスタマイズできたり、資料作成まで補助してくれたりと、より業務を効率化してくれるようになるでしょう。

顧客管理や営業支援システムを提供するセールスフォース社も、CRMのための生成AI(人工知能)テクノロジー「Einstein GPT」を2023年3月7日発表しています。Einstein GPTを利用することで、営業担当者は顧客にあわせてパーソナライズしたEメールを作成したり、カスタマーサービス担当者は顧客の質問への具体的な回答をより迅速に作成したりできるようです。

BtoBは営業プロセスも長い傾向があり、その業務も多岐に渡るため、このような生成AIとどのように付き合うか?というのが今後一層、重要なテーマになりそうです。

2024年、BtoBマーケティングで差が出る5つのポイントは?

ここまで2023年のBtoBマーケティングのトレンドを振り返ってきました。ここからは2023年の動きを踏まえて、2024年のBtoBマーケティングで今後、より重要になりそうなポイントを解説していきます。

①質の高いコンテンツがより重要に

生成AIの登場もあり、コンテンツを作成するハードルは大きく下がりましたが、一方でコンテンツを作ることが目的になってはいないでしょうか?

BtoBのコンテンツマーケティング支援を行うファストマーケティング社の調査によると、「タイトルやメールの件名とのギャップにがっかりしたことがあるか?」という質問では「よくある」が17.3%、「ときどきある」が50.0%でした。合計すると67.3%が「がっかりした」経験があるようです。

画像引用元:「約7割がホワイトペーパーの内容に「がっかり」した経験あり」ファストマーケティング社のプレスリリースより

さらにこの調査によれば約8割が、ホワイトペーパーにがっかりしたことで、配信元の印象も「悪くなった」と回答しているようです。中身のないホワイトペーパーを出すと企業の印象も悪くなる可能性があるということですね。

私もダウンロードしたら、ほとんど商品紹介のような、中身のないホワイトペーパーだったことが数多くあります。確かに生成AIの登場で以前より手軽にコンテンツが作れるような環境が整ってきましたが、独自性がなく、ユーザーの役に立たないコンテンツを無闇矢鱈に量産してもマイナスになることはあってもビジネスにプラスにはならないでしょう。

コンテンツを通して「信頼」が生まれる

高品質なコンテンツは信頼を築く手助けとなります。ビジネスで行き詰まったり、情報が不足している時に、その分野の専門家に相談するとすぐに問題が解決することがあります。この経験は多くの人に共通しているでしょう。SNS、オウンドメディア、ニュースなど、さまざまなメディアチャンネルで専門的なコンテンツを発信し続けることは、市場での信頼度向上につながります。

たとえば、BtoBマーケティング分野では、サイル社がオウンドメディアやXなどのSNSを通じて積極的に情報を提供しており、「BtoBマーケティングならサイル」といった印象を抱く人も多いでしょう。こうした企業は、高品質なコンテンツを発信し続けることで信頼を築いています。

「信頼」はBtoBにおいてもっとも重要な判断軸である

同じくファストマーケティング社の調査では、約7割がホワイトペーパーにがっかりしたことで、配信元の印象も「悪くなった」とあります。また、ハブスポット社の調査「日本の営業に関する意識・実態調査」を見てもらいたいのですが、「信頼ができる」というポイントが意思決定に大きな影響を与えていると考えられますね。

画像引用元:日本の営業に関する意識・実態調査2022の結果をHubSpotが発表

BtoB分野では、課題解決のために社内にシステムを導入したり、コンサルタントを活用することが一般的です。

ただし、商品理解が十分でなかったり、選定に必要な知識が不足していることも多くあります。そのため選定側として最終的には、どれだけしっかりと支援してくれそうかという信頼感が重要なポイントのひとつとなっているのではないでしょうか。

特にBtoBの分野では、システムの導入ひとつとっても関与者が多くなるたため時間も労力も掛かりがちです。失敗したからと言ってすぐに取引を終了したり、別のサービスに乗り換えたりができないことも多くあります。そのため、単に企業の知名度だけではなく、意思決定の段階では「どれだけしっかりと支援してくれそうか」という信頼感が重視されています

②さらに多様化するタッチポイントへの対応が必要に

Council for Marketing Leadershipの調査を元に作成

上記はBtoBマーケティングを語る上でよく出てくる図だと思いますが、インターネットの登場で事前の情報収集の比率が増えてきているという調査結果になります。みなさんも体感としてはこの様なふうに感じている人も多いのではないでしょうか?

情報社会の現代としては、よりこの流れが強くなっているのではないでしょうか?事前に情報収集段階で認知してもらえないと検討段階にも入れなくなってきます。

見込み顧客に情報を伝えるためには、オンラインとオフラインの両方のチャネルを活用して接点を増やすことが重要です。

特に、狙っている顧客層がよく使うチャネルに焦点を当てるべきです。たとえば、Webマーケティング関連の業界では、マーケティング施策を行う場となっているSNSやYouTubeチャンネルは、関係者もよく見ているため効果的です。

ターゲットによって適切なタッチポイントは異なる

情報収集先の多様化もありタッチポイントを増やすのは検討するべきですが、しかしながら「トレンドだから」といった理由で闇雲に増やすのはおすすめできません。ターゲットによっては異なる方法が適している場合もあります。

たとえば地方で会社を売却を考えている売り手企業の経営者の場合、SNSなどでは目的とする情報が得られる可能性は低いため、より目的の情報が集まりやすい地方銀行や商工会議所などと連携してアプローチするのが的確である可能性が高いですよね。

③見込み顧客のタイミングに合わせたコンテンツの配置がさらに重要に

海外調査によると、見込み顧客の中ですぐには購入しない人は75%にもなります。また、営業のフォローをやめた後、その顧客の80%が2年以内に他社の製品を買っています。

BtoB市場では、顧客がすぐに製品を買うことは珍しいです。そのため、長期間にわたって関心を持ち続けることが大切です。この背景から、BtoBマーケティングでは「リードナーチャリング」が重要視されています。

しかし、リードナーチャリングもただ行えば良いというものではなく、顧客が必要なタイミングで必要な情報を得られるようにフォローしていくのが重要です。

企業が直面する問題や検討段階の変化に合わせたアプローチが理想的ですが、外からではそのタイミングを捉えることはなかなか難しいですよね。

そこで必要となるのが"コンテンツ"です。たとえば、顧客が自ら課題を発見できるように促すウェビナーであったり、課題の解決に興味や関心を抱いた際に、理解を深めるための記事コンテンツ。さらには購買を検討するフェーズで顧客を後押しするイベントなど、コンテンツの種類や内容もさまざまなものがあります。

今後はより、適切なタイミングでタッチポイントとなるコンテンツを配置できているかが、BtoBのマーケティングには重要となるでしょう。

④クリエイティブが重要な競合との差別化要因に

各社、BtoBマーケティングの偏差値が上がり、生成AIの登場で業務も効率化され、広告運用もAIのお陰で以前より平均点が取れやすくなりました。

そうなってくるとBtoBマーケティング施策も似たような施策に陥り、以前よりも他社がやっていないチャネルもなくなり、ただ、新しいチャネルを開拓する。新しい施策をただやるだけでは、差別化が難しくなってきているのではないでしょうか?

ではどこで差別化するのか?と考えるとコンテンツにも似てくるのですが、AIでは生み出せないクリエイティブや新しいものを生み出すような発想が求められてきます。

例えば、この施策が当たっているかは分かりませんが、話題になった事例として、ECフォース社がこれまでなかやまきんに君さんや出川哲朗さんを起用し、話題になるようなCMを展開していました。

今年はタレントの出川哲朗さんを起用し、落とし穴の有識者に対してECカートの落とし穴を聞いてみたというものなのですが、ユーモアあふれる面白い内容でした。

このような発想はAIでは出すことが難しいでしょう。また、ユーモアあふれるものであればいいのか?という訳でもありません自社の独自性が伝わるメッセージが重要です。

そのメッセージをどのメディアでどんなクリエイティブで展開するのか?といったことを真剣に考えていく必要が2024年はいっそう求められてくると考えてます。

⑤顧客情報の積極的な活用がさらに重要に(SFA&CRMと広告媒体を連携)

BtoBマーケティングに取り組んでいると次のような課題がよくでてきます。

  • リードは獲得できたけど商談に繋がらない
  • 様々な広告媒体を扱っていて媒体ごとの費用対効果が分からない

BtoBではリード獲得ができても、その後の商談や受注に繋がらないと意味がありません。今後さらに3rd Party クッキーの制限等で広告単体で成果が見えにくくなりますので、リード獲得後の成果までをトラッキングしないと正しいアクションが実行できず、商談や受注を生み出すことがむずかしくなります。

これらの課題を解決するにはSFAやCRMと広告媒体の連携が必要不可欠です。

SFAやCRMと連携をすることで各広告媒体ごとにリード獲得後の商談化率や受注率までが見える化され、商談化や受注ベースで費用対効果を元に正しい予算の配分や訴求の改善ができます。

例えば、Meta広告はリード獲得CPAが安かったため全体予算の6割をかけていたが、商談化や受注ベースで見てみると、リード獲得単価は高い検索広告のほうが商談化CPAや受注単価が安かったため、検索広告に予算をアロケーションしたり、広告キャンペーンごとに商談化率が高い広告に予算を寄せたり、商談化の低いキャンペーンのクリエイティブを改善したりといったことが可能になります。

オフラインCVの活用をすすめる

SFAやCRM連携とも繋がるのですが、オフラインコンバージョンの活用もBtoBではより重要になります。オフラインコンバージョンとは、ユーザーがオフライン上で行った行動をコンバージョンとしてカウントすることを指します。

BtoBで当てはまるのであれば、リード獲得後に商談化、受注といった形でリードのステータスがSFAやCRM上で変わるのでそれらのデータをGoogle広告やMeta広告に返すことで、管理画面外のデータであるMQL化(※)、商談化、受注をコンバージョンとみなして最適化することができます。

私が取り組んでいる案件でもオフラインコンバージョンを活用することでMQL率や商談化率が増加した事例もあります。SFAやCRMと広告媒体の連携が必須です。まだ取り組めてない方は2024年に取り組むべき施策の一つになるでしょう。

※MQL・・・「Marketing Qualified Lead」の略語。「マーケティング活動によって作られたリード」

広告運用者はこれから、どのように立ち回るべきか?

2023年のトレンドを振り返りつつ、2024年のBtoBマーケティングで差をつけるポイントについて述べてみました。これに基づいて、広告運用者がどのように対応すれば良いか考えてみましょう。私の個人的な意見では、「テクノロジーを味方にする」ことと「領域を広げる」ことの2つが重要だと思います。

「テクノロジーを味方にする」については、新しい技術が導入されることで仕事が奪われるというネガティブな考えではなく、逆にテクノロジーに積極的に触れ、活用することが重要です。広告業界は急速に変化しており、新しい媒体が生まれたり、消えたりします。そのため、新しいテクノロジーに対応し、柔軟に対処していくマインドが求められます。

「領域を広げる」に関しては、以前よりも作業が迅速になり、リサーチ手法も進化しています。ただし、広告運用者は、単に広告予算の管理や入札価格を調整するだけでなく、ビジネスの上流にも目を向け、幅広い知識を身につけていくことが重要です。

BtoBであれば、リード獲得だけではなく、インサイドセールスやフィールドセールス、その後のCSなど全ての業務に対して解像度を上げていけば、クライアントに提供できる価値は必然と大きくなってきます。特にBtoBであればリード後に受注できなければ意味がないので、リード獲得後の部分も支援できた方が良いに決まっています。

広告運用の仕事ではないから、と自ら領域を狭めてしまうのは本当にもったいないことだと思います。広告運用は解決手段のひとつですので、2024年はぜひ関連領域に広く目を向けて広告運用者の可能性を広げてみてはいかがでしょうか。

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