2021年に押さえておきたい、運用型広告の周辺で注目すべきこと

2021年に押さえておきたい、運用型広告の周辺で注目すべきこと
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あけましておめでとうございます!本年もアナグラムならびにアナグラムブログをよろしくお願いいたします。

さて、毎年の初めに「その年に何が起こりそうか」という今年の展望を記事にしていますが、2020年は多くの企業が新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に振り回され、非常に変化の大きい年でした。2021年もこの状況がいつ終わるかわからない、先の見えない状況が続きます。

しかしながらよく考えれば、今回の変化がこれまでになく短期間で起こっていることを除けば、運用型広告においても予期せぬ変化の連続ではなかったでしょうか。何が起こるかわからない、と考えることを放棄せずに、まずは正しい情報を得る努力をし、自分の頭で考えることで未来に備えるのは大切です。あらかじめ仮説を持っておけば、変化にも素早く対応できるはずです。

前置きが長くなりましたが、2020年を振り返りつつ「2021年に何が起きそうか?」を一緒に考えていきましょう。


2020年の振り返り

2020年の年初には次の3つのことを取り上げていました。

  1. eコマース2020年問題
  2. タッチポイントの拡大とWalled Gardenの強化
  3. データのフラグメンテーションは止まらない

2020年に気にしておきたい、運用型広告の周辺領域で起きそうな3つのこと

それぞれ簡単に振り返っていきます。

eコマース2020年問題

2020年はeコマース抜きには語れません。

この1年は小売業界が10年分の進化を遂げたとも言われていますが、コロナによってより多くの消費行動がオンラインにシフトしました。ECプラットフォームのShopifyの調査によれば、74%の消費者が新型コロナウイルス感染拡大以降、オンラインで1回は買い物をしたという数値もあります。個人的にも今年のお歳暮は初めてオンラインで購入するなど、「必要以上に外へ出なくなった」ことで消費行動の変化を実感することも増えてました。

参考:~Shopify調査から分かる未来のコマースとは!?~コロナ禍における日本の消費者の購買傾向と2021年 5つのコマーストレンド予測を発表|Shopify Japan 株式会社のプレスリリース

その中でShopify などのヘッドレスコマース(※)という選択肢への関心はD2Cの台頭もありSMB(中小企業)を中心に急速に拡大していますよね。新たなECプラットフォームの登場もあり、顧客へのタッチポイントと決済や受注管理などの連携はスムーズになることが期待できます。

ただし、ここでもテクノロジーを使ってマーケティングデータを橋渡ししてつなげられる人材はまだまだ少なく、リアル店舗からeコマースへとシフトする過程ではさまざまな問題が発生していくことでしょう。

※ECコマースプラットフォームからプレゼンテーションレイヤー(たとえば、ECサイトの画面のような消費者とのタッチポイント)とオペレーションレイヤー(受注管理や顧客情報、決済、在庫など)を分離するシステム構造のこと

参考:米国で台頭するD2Cブランドが取り入れている「ヘッドレスコマース」。その概念や仕組み、メリットを解説 | Six commerce 〜ひらめきを与えるECメディア〜 | ネットショップ担当者フォーラム

タッチポイントの拡大とWalled Gardenの強化

各広告プラットフォームともに新しい機能や新たな広告枠を増やすという動きは引き続き活発化しています。ここでもやはりeコマースに関連するトピックが非常に存在感を増している印象です。

Googleが開始した「無料リスティング」やFacebookの「Instagramショップ」など、商品情報を連携することで増やせるタッチポイントはこの一年でも増加しています。まだ未知数ではありますが、TikTokやPinterestなどにおいてもeコマースへのタッチポイントは設けられていくため、引き続きタッチポイントの拡大は進行していくでしょう。

参考:
Googleに無料で自社商品が掲載できる「無料リスティング」とは? | EC Booster ラボ

Instagramショッピング機能とは?導入から使い方、広告での活用方法

また、日本ではまだ未実装ですが、「Googleで購入(旧:ショッピングアクション)」というプログラムを通じて販売業者の取り込みも積極的に動いている様子も伺えます。各社が商品データと決済を軸にWalled Gardenの強化を図り、eコマースにおけるチャネル争奪戦はますます激化していくのは想像に難くありません。

参考:「Googleで購入」の決済手数料無料化の本当のねらいとは? – rewired.jp

データのフラグメンテーションは止まらない

以下の記事でも詳しく述べられていますが、もはや決定された未来として、データですべてを語るのが難しい時代はすぐそこまで来ているのではないかと考えています。

iOS 14による運用型広告の広告配信やトラッキングに対する影響まとめ

また、GoogleもChromeブラウザでの3rd パーティーCookieのサポートを2022年1月を目処に終了するというアナウンスもされています。
Chromium Blog: Building a more private web: A path towards making third party cookies obsolete

ネット広告界隈では計測の欠損やCookieによるターゲティングが十分にできなくなることに対してネガティブな感想をもつ方も少なくありませんが、行き過ぎたターゲティング広告からの脱却を図る転機になる(しなければならない)と考えることで拓ける視界があるはずです。

2021年に注目しておきたいこと

あらためて振り返ってみると、2020年もネット広告における変化は突拍子もない大きな変化ではなく(時計の針は一気に進んではいますが)これまでと地続きであることがよくわかります。さらに言えば、2020年より前に挙げられていたトピックが、時代の流れによって根っこの部分は変わらず、形を変えて再度取り上げられ注目されているようにも見えます。

ではここからは、これまでの流れも踏まえて、2021年に注目しておきたいトピックについて考えていきましょう。

1.eコマースの成長が継続、ネット広告への投資も増加

日本では新型コロナウイルスの感染が拡大して以来、消費者の42%が年初と比較してオンラインでより頻繁に買い物するようになったという調査データもあり、2020年はeコマースが非常に大きく成長した一年でした。

参考:~Shopify調査から分かる未来のコマースとは!?~コロナ禍における日本の消費者の購買傾向と2021年 5つのコマーストレンド予測を発表|Shopify Japan 株式会社のプレスリリース

また、その中でもネット広告への投資にも、運用型広告とソーシャル広告は市場を牽引しています。

参考:2020年下期のネット広告市場、ソーシャル広告・運用型広告が躍進。2021年はキャンペーン費増に期待【CCI調べ】 | Web担当者Forum

2021年上期は、2020年のキャンペーン費と比較すると、38.0%が増加する見通しとの調査もあり、今後もこうした状況が続くことが予想されます。

ただし、予算をネット広告にシフトしてはいるものの、企業によってはこれまでオフラインや他の集客手法に割いていたパフォーマンスの穴埋めにまで至っていないケースも多々あります。ネット広告単体のパフォーマンスとクライアントのビジネスの成果との間に乖離がある可能性にも考慮しておくのがよさそうです。

2.データベースの整備がより重要に

消費者の選択肢のひとつとなり得るために、データベースの整備が重要なのはこれまでも繰り返し述べてきたとおりです。Googleであればショピング広告を掲載するためにMerchant Centerへきちんと情報を登録するだけで頭一つ出られるケースも多々ありました。

しかしながらここへ来てGoogleの無料リスティングも開始がされ、ECカート事業者も次々にデータの連携を開始している状況にあっては、取り組んでいない状況はむしろマイナスとなるでしょう。

また、参入者が増えれば触れるほど、単に商品情報を登録しただけでは成果につなげることは難しくなるため、今後はますますデータベースを”運用”していくことが求められていくでしょう。

3.機械学習・自動化と上手く付き合える広告運用者が成果を出せる時代に

2020年の大きなトピックのひとつに、検索語句の一部が確認できなくなるというアッデートがありました。勤勉な広告運用者であればあるほど検索語句を細かくチェックしているため、国内外を問わず運用型広告界隈で大きな反響を呼んでいました。

他にもGoogleでは、スマートショッピングやファインドキャンペーンなど、詳細な掲載結果の確認ができず人の手を入れる余地の少ないキャンペーンタイプの提供が増えています。

近年主流となってきている手動で調整できる内容がほとんど提供されない手法や、これまでのやり方に変更を余儀なくされるアップデートに対して戸惑う広告運用者も少なくないでしょう。しかしながらルールが変われば勝ち方も変わっていきます。

仕様変更に抗うよりは、むしろこの来たるべき状況下で今後の広告運用者がどういうふうに対応・適応すべきか、どのようなスキルがより強く求められるかに目を向ける価値があります。

Googleの検索語句レポートのアップデートから垣間見える広告運用者の未来像

あなたに媒体の仕様変更に抗う気持ちがまだあるのであれば、機械学習・自動化の仕組みを上手く使える広告運用者がより成果を出しやすいことを早々に理解しておくことが大切でしょう。機械学習や自動化はあくまでひとつの「手段」に過ぎません。用意されたカードで、いま何ができるのかを考える「姿勢」が広告運用者にとってはより大事になるのではないでしょうか。

4.個人データ保護に伴う媒体制限の拡大

ネット広告はインターネット上で収集可能なさまざまなデータを利用したターゲティングやパーソナライズが可能な反面、個人データやプライバシー保護という課題と常に向き合っています。

Googleは2020年6月に、住宅・雇用・クレジットの広告で、性別・年齢・子供の有無・配偶者の有無・郵便番号に基づく広告のターゲティングや除外を禁止することを発表しました。

参考:Upcoming update to housing, employment, and credit advertising policies

これまでにあった民族性・性的指向・国籍・障害によるターゲティングの禁止事項止に新たに追加された形です。

Google では多様性を尊重し、他者への思いやりを大切にしています。そのため、衝撃的なコンテンツを表示したり、憎しみ、偏見、差別を助長したりするような広告やリンク先は許可していません。

参考:不適切なコンテンツ - Google 広告ポリシー ヘルプ

公式ヘルプでも、個人情報に対するスタンスをこのように提示しており、今後も規約を通して世の中のニーズに合わせた制限を必要に応じて追加していくものと考えられます。

広告運用はあくまでプラットフォームのルールに沿って行う必要があるため、媒体規約を正しく理解しその中で戦うにはどうしたらよいか考え続けていくことが今後もより一層大切になっていくでしょう。

綺麗ごとをきれいにやる

この言葉は昨年、僕は出会った中でもっとも印象的なものでした。

「綺麗ごと」は「実情にそぐわないことを上辺だけで言う」という意味です。たとえば、サステナブルを謳っている企業が過度な包装で商品を送ってきたらどう思うでしょうか。もしも広告の健全性を重視する広告媒体が、ユーザーの多様性に配慮のない広告を掲載していたら。

広告代理店の立ち場で言えば、どんなに見栄えの良い提案でも売上につながらなければ価値はありませんし、逆にどれだけ売上を上げようともブランドの理念に反する広告文やCookieが使えるからといって過剰に追い回して上げた成果にどれだけの意味があるのでしょうか。

今回のような世の中の変化や業界の変化による問題、クライアントの課題は、かんたんに解決できないものがほとんどです。しかしながら業界やプラットフォームのルールチェンジを傍から眺めて綺麗ごとを語るだけでは意味がありません。

2021年も現在抱えている課題や新しく出てくる問題に対し、クライアントや広告業界の方たちと一緒に悩み、ちゃんと藻掻いて、きっちりと成果に繋げられるような1年にしたいと強く願っています。

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