Googleの検索語句レポートのアップデートから垣間見える広告運用者の未来像

Googleの検索語句レポートのアップデートから垣間見える広告運用者の未来像

検索連動型広告のキャンペーンを運用しているなら、誰もが頻繁に活用しているであろう検索語句レポート。今年の9月に、Google広告の検索語句レポートにかなり大きな変化をもたらすアップデートが行われ、それ以降は例え課金対象のクリックであったとしても、「多くの」ユーザーによって検索された語句のみがレポートに上がるという内容でした。

2020 年 9 月より、クリックを獲得している語句がある場合でも、多くのユーザーが検索した語句のみが検索語句レポートに表示されるようになります。そのため、レポートに表示される語句が少なくなることがあります。

参考:検索語句レポートを表示する – Google 広告 ヘルプ

導入の背景としては個人情報の保護をGoogle側から挙げられていますが、国内外を問わず運用型広告界隈で大きな反響を呼んだアップデートと言えます。

参考:Google Ads to limit Search Terms reporting, citing privacy

さて、9月に検索語句レポートが変わって以来、どのような影響があったか、また今後の広告運用に関してどのような意味を持つのかについて考察しました。

実際の影響について

検索語句データは実際のところどこまで閲覧できなくなったかが気になるところですね。複数アカウントを見た結果、データが減った範囲については一概に言えないものの、やはり確実に減少しています。影響を検証するために、弊社が扱っている広告アカウントで検索キャンペーンのキャンペーンレベルで確認できる数字と検索語句レポートで確認できる数字を導入前後で比較しました。つまり、どの程度の数値が検索語句レポートで確認できなくなったかを可視化しようという試みです。

あくまでも参考値ではありますが、上記のデータをベンチマークにしてみると、アップデート前はキャンペーンと検索語句レポートのクリック数とコンバージョン数、広告費が97%~98%一致していたのに対し、9月以降の検索語句レポートからは概ね次のような減少が見られています。

  • クリック数…約15ポイント減少
  • コンバージョン数…約10ポイント減少
  • 広告費…約20ポイント減少

さらにキャンペーンタイプ別に見ていくと非指名系の検索ワードを含むキャンペーンとGoogleショッピングキャンペーンの方に影響がより強く表れる傾向がありました。

海外の検証においても概ね同様な傾向です。米国のデジタルマーケティング代理店Seer Interactiveの調査では2020年9月以降、クリックが約20ポイント、広告費が28ポイントまで減少している結果に至りました。

参考:Google Ads Removes Search Terms for 28% of Paid Search Budgets | Seer Interactive

アカウント・商材によって登録しているキーワードの違いは当然あるので、実際にどこまでデータが制限されているかはまちまちですが、検索連動型広告に投下されている広告費の2割強がどのような検索語句によって発生しているか見えなくなっていることのインパクトは比較的大きいですね。

ビジネスに不要なトラフィックを削減することや、デリケートな商材でブランドイメージを守るために必要な除外キーワードを新しく発見することが難しくなりました。それだけでなく、コンバージョンした場合においてさえ、貢献した検索語句も一部確認できなくなってしまうリスクがあります。この点に関して部分的ではあってもコントロールを失ったことは、広告運用者にとって今回のアップデートのもっとも悩ましいところではないでしょうか。


※ちなみに表示されなくなった検索語句の掲載結果は検索語句レポートの下部の「他の検索語句」という項目にまとめられています。

不可逆な流れに適応するのが大事

今回のアップデートを時代的な文脈とあわせて考える必要があることも言わざるを得ません。広告運用者が従来、おもに手動でキャンペーンを調整するために活用していたデータが制限されたことが、機械学習を使った「スマート」なプロダクトの登場と並行に起きている現象です。しかもこれから新しくリリースされていくであろうプロダクトには恐らく手動で調整できる範囲も限られていると考えるのが自然でしょう。

「失った検索語句」を取り戻したい気持ちは、私も含めてどの広告運用者にもあると思いますが、こういった時代と技術の流れを不可逆な動向と捉えた方がいいのではないかとも考えられます。従って、仕様変更に抗うよりは、むしろこの来たるべき状況下で今後の広告運用者がどういうふうに対応・適応すべきか、どのようなスキルがより強く求められるかに目を向ける価値があります。

この点も、先日米国のWEB広告最適化サービス「Optmyzr」のFrederick Vallaeys氏が主宰する動画シリーズ「PPC Townhall」で俎上に載せられ、今回テーマとなっている検索語句レポートのアップデートのみならず、地域レポートの仕様変更も含めて最近のレポートの不透明化を背景に広告運用者の未来像について議論が繰り広げられました。

かなり的確な見解がなされていましたので、一部引用します。まずはゲストのMartin Röttgerding氏がこう言いました:

With Google doing everything with these black box campaigns like smart shopping, discovery, or local campaigns, it becomes more and more important to make sure that their systems have the right data to go on. This is also an important field for agencies and advertisers to set themselves apart from the crowd.

Googleでは、スマートショッピング、ファインドキャンペーン、ローカルキャンペーンなどという、ブラックボックスのようなキャンペーンが主流になっている中、運用のために正確なデータをシステムに与えるのがますます重要になっています。これは、代理店や広告主が競合に差をつける意味合いでも重要な分野です。

また、Frederick Vallaeys氏:

Automation is a great way to handle daily mundane tasks, but PPC professionals shouldn’t confuse it with ‘autopilot’. Though machines might be able to perform a high number of actions quickly and efficiently, they will still rely on us for timely inputs and tweaks.

So whether it’s now, or 5 years into the future, marketers will always have something to do for there is no replacement for human intellect, ingenuity, improvisation, and intuition.

自動化は毎日の反復的なタスクをこなすのに素晴らしい手段ですが、広告運用者がそれを「自動運転」と混同してはいけません。確かに機械は大きな作業量を素早くかつ効率よくさばいてくれてはいますけど、依然として我々からの適切なインプットと微調整に依存しているわけです。

したがって、今日も5年先もマーケッターには常にやることはあります。人間の知性、創意工夫、即興、直感に代わるものはないからです。

参考:PPC Town Hall 26: Foolproofing your Business with PPC Automation

まとめ

検索連動型広告の分析に重宝されている検索語句レポートですが、9月の仕様変更による一部データの消失のみならず、レポートに含むか否かの判断基準自体が「多くのユーザー」とやや曖昧に定義されていることも広告運用者にとって歯がゆいことでしょう。

さすがに、検索語句レポートが完全になくなることはしばらくなさそうだと推測できますが、それでも「もし、以前とれていたデータが急に手に入らなくなったら」というシナリオを思考実験程度に想像してみるのもいいかもしれません。

運用型広告の自動化や「スマート」なプロダクトの流れを止めることはできませんので、近い将来は主流になる技術もどんどん変わってくるはずです。

PPC TownhallのゲストのMartin Röttgerding氏も示唆したように、データ処理の基本的な理念「Garbage in – Garbage out」(=無意味なデータを入力すると、無意味な結果が返ってくる)通りに、従来の手動タスクを今後機械がこなすようになった場合、機械が処理すべきデータについてのリテラシーがますます大切なスキルになるのは間違いないでしょう。

つまり、どのキーワードを入稿すべきか、などというキーワード単位の思考を持つよりも、機械学習・自動化と上手く付き合える広告運用者の方が勝つ時代にこれからなってくる可能性は非常に高そうです。そもそも、手動タスクでも自動化も「手段」に過ぎないので、時代に応じてそれらを最も有益な形に使い分ける「姿勢」が広告運用者にとって大事ですよね。

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Jan Hugendick

Jan Hugendick

ドイツの出版社でマーケティングやSEOに携わることをきっかけにリスティング広告に興味を持ち、 ドイツの某メディア大企業直属のWeb広告代理店に転職。そこで5年間、多国・多業界 のアカウントを担当することを経て、2016年にアナグラムに参画。広告運用の他、ブログ執筆と編集を行っています。

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